一般的な配球                     トップページへ


この項は、配球の基本と合わせてご覧下さい。


 わざわざ、「一般的」と表現したのは、捕手独特の勘違いや思い込みが、以外に多いためです。特別な事ではありませんが、意識しているかどうかで、結果は全く違いますので、あえて解説いたします。

 勘違いで最も多いのは、自分の苦手なコースや球種を、目の前の打者も苦手だと思ってしまう傾向があります。逆に言えば、ピンチな場面では、自分の得意なコースには、怖くてサインが出せなかったりします。

 強いチームでも、外角が得意な選手は、けして多くはありませんが、得点力の高いチームには、必ず何人かはいますので、勘違いしたままでは、高い確率でやられてしまいます。

 しかし、こう言った事が、しっかり頭に入っている捕手なら、無駄な点をやる事が無くなりますので、強いチームとも対等に戦う事が出来るようになります。頭を使う者同士の戦いは、お互いの騙し合いですので、失敗する事も多々ありますが、この失敗を気にしてはいけません。要は、相手よりも失敗が少なければ良いのです。この考え方こそが、接戦をものにする鍵になります。


事前に出来る事

 まずは、相手チーム全体の総合力を評価します(予想で構いません)。

1)相手に取られる可能性の高い点数(大体でOK)
2)相手から取れそうな点数(大体でOK)

 失点範囲の目標は、実際に取られそうな点の半分(切上)です。
1~2点なら1点
3~4点なら2点
5~6点なら3点
7~8点なら4点
それ以上は5点

 得点の目標は、実際に取れそうな点数でOKです。もし、「得点」-「目標失点」が、マイナスの場合は、目標失点を得点まで下げるしかありません。

 この目標は、十分実現可能でありながら、勝率は4倍に跳ね上がります。つまり、何点か取れるなら、0点に抑えなくても勝てると言う事ですので、出来れば、投手と一緒に、事前にセーフティーラインを確認しておいて下さい。

 試合が始まったら、1イニング毎に修正していきます。ポイントは、リードされても焦らず、最終イニングまでの全体で考える事を忘れない事です。


試合開始までに出来る事

 試合前に、相手チームの中に、当たれば飛びそうな強打者風な選手が何人いるかを確認します。

 大まかな基準は、3人以内か、それ以上かです。

 3人以内なら、一般的なチーム構成です。定石だけでも0~3失点が可能です。

 4人以上の場合は、無理に0点にこだわらず、終始、最小失点を心がけましょう。(1失点よりも、大量失点を防ぐ事が大事)


試合中にやる事

 打者は、ネクスト打者も見ておきましょう。基準は、長打力が有りそうか、無さそうかです。ランナー無しの場面で、目の前の打者が強打者でも、次がたいした事なさそうなら、シングルヒットや四死球はOKです。大事なのは、長打を打たせない事です。逆に、ネクストが強打者で、目の前の打者がそうではない場合は、全力で仕留めなければなりません。

 常に、点差を意識しましょう。リードしていない時は、劣勢だからと言って、強打者を三振にしようなどと無理をすれば、大量失点の原因になります。余裕が無い時こそ、最小失点が大事です。リードしている時でも、調子の良い打者には気を付ける必要があります。たとえ、2アウトランナー無しでも、長打を打たせないように、十分、気を引き締めて配球しましょう。最善と最悪も参考にして下さい。

 3番・4番・5番のクリーンナップは、どのチームでも怖いものですね。しかし、3人全員が好調なんて事は殆どありません。一般的な可能性としては、以下の通りです。

3人中3人が好調で不調は0人  5%
3人中2人が好調で不調は1人 30%
3人中1人が好調で不調は2人 50%
3人中0人が好調で不調は3人 15%

 つまり、4番が不調で5番が好調なんて事は普通に有りますので、打順よりも、その打者が好調か不調かを意識しましょう。4番でも、不調な場合は、「外角3つ」とか、「スライダー3つ」なんて言う単純な配球でもアウトに出来る事があります。

 1番は、あまり不調だと替えられてしまいますので、基本的には、そこそこ好調だと考えておきましょう。しかし、本当に優秀なら、クリーンナップに入るはずですから、通常は、そのチームの真ん中くらいの実力と言えますので、しっかり抑えましょう。
 参考までに、1番打者の多くは、簡単に三振しない選手が多いものです。それは、バットを当てられるゾーンが広い事を意味します。こんな選手に、コースだけで勝負すれば、簡単にはアウトになってはくれませんので、同じ球種やコースでも、少し急速を変えながら配球し、内野ゴロを打たせるくらいの意識の方が討ち取りやすいでしょう。

 2番は、そのチーム状況により、様々ですので、バント要員なんて思い込んではいけませんが、実力が上位ではない可能性は高いでしょう。そのため、厳しいコースを振り回す可能性は低いので、ランナーがいない場面なら、急速よりも、コースを丁寧に突いて、ストライクを先行させる配球を心がけましょう。ランナーがいる場合では、送りバントの可能性も高いので、スライダーやアウトハイのスピードボールから入る方が無難です。ただし、警戒しすぎてボールが先行してしまうと、余計に苦しくなりますので、「見逃したらストライク・バントなんか成功させない!」位の方が、圧倒的に良い結果になります。

 6番~9番は、比率で考えます。4人いれば、1人位はポテンヒットやラッキーパンチでヒットになる事もありますので、いちいち気にしてはいけません。しいて言えば、人生のピークを迎えたかのように、無駄にラッキーな選手がいる事がありますので、このタイプに振り回されない事です。考え過ぎると悪循環しますので、前後の選手をしっかり抑えましょう。
 基本的には下位の選手です。チーム内の信頼度は2番よりも低いのですから、コースや変化球で早めにカウントを整える意識を持ちましょう。


 1番~9番までの9人中、好調なのは2人~3人が一般的ですので、好調な2人~3人は長打のみ警戒し、1塁に出す程度はOK、他は、たまにヒットも有るだろうが、積極的にアウトを取りに行く事になります。総合的に、4人でアウトを3つ取るくらいの意識を持っていた方が、落ち着いて配球する事が出来ます。


打者に対してやる事

1)タイプを決める

 まず、これから打席に立つ打者のタイプを決めます。相手の情報は、少ないのが普通ですから、「やってみたら違っていた」と言う可能性は、最初からあるのですが、これをやっておかないと、2順目・3順目でも修正が出来ず、同じ打者に、何本も打たれる事になります。

基準

 長打を狙うタイプ Or 短打を狙うタイプ
  最初は、体格や顔つきで判断するしかありませんが、2順目以降は問題ないはずです。
 引っ張るタイプ Or 押すタイプ
  分かる時は、それで良いのですが、分からない時は、とりあえず、長打を狙うタイプは「引っ張り」・短打を狙うタイプは「押す」で行きましょう。
 内角が好き Or 外角が好き
  分からない時は、とりあえず、「内角が好き」で行きましょう。
 高めが好き Or 低目が好き
  これも、分からない時は、とりあえず、「高めが好き」で行きましょう。
 直球が好き Or 変化球が好き
  これも、分からない時は、とりあえず、「直球が好き」で行きましょう。

 以上の基準が、全て分かれば迷う事は無いでしょうが、実際は、最初の「長打を狙うタイプ Or 短打を狙うタイプ」位しか分からない事も多いと思いますので、暫定的な判断が、以下のようになります。

長打を狙うタイプは
 引っ張るタイプが多い
 内角好きが多い
 高め好きが多い
 直球好きが多い


短打を狙うタイプは
 押すタイプが多い
 外角好きが多い
 高め好きが多い
 直球好きが多い


 ご覧の通り、緑字は共通していますので、「長打を狙うタイプはインハイの直球が好き・短打を狙うタイプはアウトハイの直球が好き」と考えれば、9人中6~7人は当てはまる事が多いものです。
 例外としては、チーム全体が流し打ちを教えられている場合です。この場合は、外角全体が危険になりますが、インコースの危険度は下がります。


2)デッドゾーンを決める

 暫定のタイプが決まったら、デッドゾーンを決めます。デッドゾーンとは、投げてはいけないコースの事です。コースは、インハイ・インロー・アウトハイ・アウトローの4種類です。当然、真ん中は誰でも好きですから、この4箇所の内の、打者が好きそうな1つ+真ん中がデッドゾーンになります。
 それでも打たれたら、次は、打たれた所をデッドゾーンにしてみましょう。漫然と配球するよりは、試合後半の失点が減ります。

3)仕留める球を決める

 仕留める球が決まっていなければ、見せ球を上手に使う事も出来ませんので、打者を見ながら最初に仕留める球をイメージします。最終的には、理想的な決め球1つと妥協的な決め球2つ位をイメージしてほしいのですが、慣れるまでは、まず、理想的な決め球1つを決めましょう。

 例えば、打ち気満々の強打者を、真ん中から逃げる速球系の小さいスライダーで討ち取りたいなら、初球は、「高さ真ん中のストレート」を外角に外すと効果大です。ピンチの場面なら、2球目をインコース寄りのストレートを打者のヘルメットくらいの高さに外してからでも構いません。

 気を付けなければならないのは、決め球で決められなかった時です。実際に、決め球で決められる確立は50%程度です。ヒットは仕方ありませんが、ファールや空振りの場合は困りますね。こんな時の判断は、大まかに2種類あります。

 A)同じ球種がヤバそうなら、決まらなかった決め球を見せ球と考えて、次の配球をする。
 B)コースや高さがヤバそうなら、同じ球種を、コースや高さ、あるいは急速を変えて勝負する。

 見せ球の極意は、「何を意識させるか?」ですので、慣れてくると、決め球で決められなかった場合も想定して見せ球を使えるようになります。


迷った時の判断

 後悔する確立が高いのは、迷った時の判断で失敗した時ですが、逆に言えば、「分からない時はこうする」と決めておけば、いちいちネガティブに考える必要はありません。
 例えば、迷ったら、とにかくスライダーとか、強打者はスライダーで、それ以外は外角ストレートと言った感じです。やってみて、もし、うま行かなければ、次はその打者のみ変えれば良いのです。

 ここでのポイントは、「迷った時に失敗は付き物」だと言う事です。プロの選手でも、そうなのですから、これは仕方ありません。大切なのは、何度も繰り返さない事です。


 「後半になるほど、相手のチャンスが減っていく。」これが、優秀なキャッチャーの証です。



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