配球の基本(捕手向け)                     トップページへ


 「捕手は、チームの大黒柱」と言われますが、正に、その通りです。戦況は、捕手の判断で動きますので、責任重大です。・・・と言った事は、一般論として、ご存知でしょう。しかし、このサイトをご覧の方が、一般論では面白くないでしょうから、「悩める捕手」向けに、考え方や、ポイントをご紹介いたします。

捕手が悩む理由
 捕手が悩む理由にも色々ありますが、代表的なものを幾つか上げてみましょう。
1、投手が、サイン通りに投げられない(ノーコン)
2、投手が、サイン通りに投げない(サイン無視)
3、「配球が悪い」と指摘される
4、セカンド送球がうまくいかない→(捕手の送球を参考にして下さい)
5、ショートバウンドがうまく捕れない→(捕手を参考にして下さい)
6、そもそも、捕手を希望していないのに、監督にやらされている
7、「守備体形の指示が悪い」と指摘される

 他にも有るでしょうが、悩みの多くは、いずれかにあてはまる方が多いでしょう。チームにおける、捕手の役割は、総合的なものですので、考え方から順を追って紹介致します。個別の回答が欲しい所だと思いますが、焦らずに、全体をご覧頂いてから、もう一度、悩む理由について考えてみて下さい。

捕手の判断で試合は動く
 前述した通りで、実際に捕手の判断で試合は動きます。しかし、過剰に責任の重さを考えても良い結果には結び付きません。凡才先生が見てきた選手で、責任感が過剰な選手は、単純にマイナス思考です。責任とは、全力で戦う事です。全力で戦った結果、敗れたとしても、十分に責任を果たしたと言えます。そもそも、勝敗=責任ではありません。一つ一つアウトを積み重ねて行く中で、全において正しい判断をする事は不可能ですので、間違いは付き物です。しかし、間違ったからといって、悔やんでいても仕方ありません。大切なのは、それまでの経過ではなく、「これからどうするか」です。常に、間違いを減らす努力こそが全力だと言えます。

捕手は楽しむべし
 前述で、責任過剰はマイナス思考だと説明しました。凡才先生が捕手に一番望む事は、プラス思考です。考え方として「ヒットを打たれるのを阻止する」のは、何かをされたくない思考です。結果は同じですが、何かをやらせようと言う思考もあります。例えば、「引っ掛けさせて、内野ゴロを打たせよう」とか、「詰まらせて内野フライを打たせよう」あるいは、「ハイボールを決め球にして三振させよう」と言った考え方です。もちろん、毎回うまく行くわけではありませんが、アウトを取る事に積極的になれますので、自然に配球にも幅が出てきます。強打者ほど、思い通りにアウトが取れた時には嬉しいものです。
 結局、楽しめないような配球では、良い配球とは言えません。打者を、自分の思った通りにアウトにしてこそ、捕手は輝きますので、配球を楽しむ事が、責任を果たす第一歩だと思って下さい。ある程度、配球を楽しむ事が、出来るようになれば、目的が明確になりますので、守備体形の指示も自然に良くなります。

ノーコン投手は結果オーライ
 制球の悪い投手は、捕手にとって頭が痛いですね。しかし、それ自体は捕手の責任ではありませんから、この投手を上手に生かす事が出来たら、優秀な捕手と言えます。悪くて当然、良ければラッキーですから、結果オーライです。ノーコン投手にも種類がありますので、個別に対策を考えてみましょう。

*普段はまずまずなのに、ランナーを出した途端に制球が悪くなるタイプ
 このタイプはよく見かけますね、凡才先生は、あわて者タイプと呼んでいます。普段の制球はまずまずなのですから、制球が悪い時の多くは、投球リズムが乱れています。具体的に言えば、本来のリズムよりも早くなっています。これは、盗塁されたくないから、早く投げたいと言う、一般的な投手の心理によるものです。しかし、打者がアウトに出来なければ、盗塁されるよりも状況は更に悪化します。この悪循環で自滅する投手は決して少なくありません。
 捕手は、普段から投手の投球リズムを把握し、必要に応じてアドバイス出来る様にしておかなければなりません。

*試合後半に制球が乱れるタイプ
 試合状況にもよりますが、基本的には投手のスタミナ不足です。ストレートの切れも悪くなりますし、スライダーが抜けたり、掛かり過ぎたりで暴投も増えます。代わりがいれば投手の替え時ですが、いなければ捕手が何とかしなければなりません。どんなに努力しても、この状態では、ある程度のミス投球を覚悟しなければなりませんが、まったく手の打ちようが無い訳でもありません。
 制球が乱れるにしても、その多くは、ある程度規則性があるのが普通です。構えた位置からどの方向にどれ位ずれるのか、どこを要求するとずれやすいのかなどを普段から把握しておきましょう。
 実際の試合で制球が乱れて来た時、どの方向にどれ位ずれるのか分かっていれば、ずれた時の事も計算に入れて配球する事が出来ます。一つの目安ですが、ずれる方向は、腕を振る角度に比例する場合が多いものです。例えば、右投げのオーバーハンド投手に、右打者に対しての外角低めを要求したとき、真ん中付近に来てしまう事は珍しくありません。ランナーがいて、2ストライク後なら大変危険な球になってしまいますが、ずれる事を最初から計算に入れて、高さは真ん中付近で外角いっぱいでボール気味に構えれば、ミス投球が高めの釣り球(ハイボール)になりますので、最悪の真ん中よりはましです。このように、最善が難しい場面でも、最悪を回避する事は可能ですので、練習試合で、状況により色々試しておくと良いでしょう。

*普段から制球が悪い投手
 この手の投手は、そもそも投球バランスに問題がありそうですが、試合中にそれを言っても改善は難しいものです。結果として、少しでも安定して欲しい訳ですから、少し工夫をしてみましょう。
 まず、球速のサインを作りましょう。通常でも、ストレートとチェンジアップ位のサインは有るでしょうが、それだけでは、この手の投手には不十分です。最低でも3段階で、MAX、8割、6割(チェンジアップ)位が良いでしょう。(可能なら4段階でも構いませんが、単純な方が効果的です)多くの場合、8割程度の球速で比較的に制球が安定しますが、イメージですので、9割だったり、7割だったり個人差があります。

 配球の仕方は、次の通り
1)MAXは1打者に1〜2球程度にする
2)慎重な打者には8割で先にカウントを整える
3)強打者には、簡単に8割でストライクを取りに行かない(主に見せ球に使う)
4)状況によりスライダーを多用しても良いが、スライダーのコースは外寄り主体(MAXを生かすため)
5)そもそも制球が悪いため、MAXはベースの内側(真ん中付近)に構える。

 基本的には制球難投手対策ですが、考え方が分かれば、強豪チーム相手の強打対策にも応用できます。コントロールできる投手なら、変化球に球速の変化が加わると、更に配球が楽しくなりますが、出来ないものを無理に要求するのは賢い判断とは言えませんので、欲張り過ぎないように注意しましょう。

打者を見極める
 見極めると言っても、見た目で全てが分かる訳ではありませんから、およその見当をつけると言う事です。大まかな区分と対策の仕方は次の通り。

1)慎重タイプ
 このタイプの傾向は、真ん中付近が来るまで簡単には打って来ない傾向があり、制球が良ければ、丁寧にコーナーでカウントを整え、スライダーやハイボールのボール球で仕留めるのが理想的です。

2)行け行けタイプ
 このタイプの傾向は、明確なボール球と苦手なコース以外は積極的に打ってきます。簡単に言うと、打ちたくてうずうずしているタイプです。甘い球でなくても振って来ますので、最初のストライクで仕留めましょう。強打者に多いタイプですので、仕留める確率を上げる為に、1〜2球の見せ球が必要ですが、慎重タイプよりも球数は少なくて済みますので、考え方によっては、楽な打者です。

3)狙い撃ちタイプ
 本人の意思で打つ球を決めている場合も有りますが、ベンチの指示でそうしている選手の方が多いでしょう。行け行けタイプがストライク付近を簡単に見逃したり、慎重タイプが真ん中でもないのにいきなり撃ってきたりする時は、注意が必要です。狙い通りの球は、安打になりやすいので、何かを狙っている事に早く気づかなくてはなりません。「さっきは外角だったから次は内角」と言った根拠の無い発想は、打者の安打の可能性を上げるだけです。狙っている付近(得意なコース)はボール、ストライクはそれ以外で取るのが定石です。良いチームほど、こちらの対策に気づき、狙い球を替えてきますので、単調にならないように工夫が必要です。(単調で問題ない場合はそれで十分です)

 他にも、引っ張りタイプや流しタイプ、高め大好きタイプなど色々ありますが、見た目で分かりやすいものは、上記タイプと合わせて判断して下さい。


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