捕手の送球                     トップページへ


 この項では、投球を捕球した後を前提に、基本的な技術をご紹介します。

一塁への送球
 一塁ランナーのリードが大きい場合、捕手が一塁へ送球する事があります。アウトに出来ればラッキーですが、中々アウトに出来るものではありません。アウトに出来ないからと思って投げない捕手も多いのですが、それでは、ランナーの第二リードが大きくなるだけです。

 ランナーのリードが大きい場合、早い段階で「一塁への送球」をして下さい。その後は、モーション(投げるふり)だけでも走者にプレッシャーを掛けられます。

基本的に、一塁への送球は牽制です。最初のリードは投手の牽制ですが、第二リードを牽制するのは捕手です。最初からアウトに出来る可能性は低いのですから、慌てずに、制球重視が鉄則です。(暴投は論外)

 制球のコツ
1)右足は、普段よりも、やや後方に移動しておけば、左足をスムーズに踏み込めます
2)ミットは、捕球の流れを生かし、スムーズに右肩付近に移動
3)右手は、捕球ポイントと右肩の間に準備して、リレーのバトンタッチのように、スムーズにボールを持ち替えます
4)左肩は、2)3)の動きに合わせて一塁方向に向けます
5)送球は、右肩をしっかり出して、腕を真っ直ぐに振ります

ポイントは、慌てずに、捕球の流れを生かす事です。特に、ボールを持ち替える動作は、きちんとやらないと制球が不安定になります。

パスボールでは意味がありませんから、制球の悪い投手の場合は、コースを見てから右足を移動しても構いません。

 左打者の場合、打者の体が邪魔になります。外は前に出れば、送球ラインを作れますし、それ以外は、審判に接触しないように、右に移動すれば、送球ラインが作れます。ポイントは、捕球後に送球ラインが作れる所まで、足を使って、しっかり移動する事で、歩幅を多きめにすると、リズムも作りやすくなります。

参考動画 細川の牽制球 

二塁への送球
 二塁ランナーのリードが大きい場合は、「一塁への送球」と、考え方は同じで、方向が二塁になるだけです。
多いのは、一塁からの盗塁を阻止するための二塁送球で、基本的な考え方は同じですが、目的が違います。
前にランナーがいない場合は、牽制ではなく、盗殺が第一優先になりますので、捕球から送球への移行も早くなくてはなりませんし、セカンドベースの上に投げなくてはなりません。

 ここで、盗殺するための優先順位を確認しておきますが、捕球から送球へ移行の速さは二番目で、最優先はセカンドベース上に投げる事です。捕手の盗殺成功率は、どれだけセカンドベース上に投げられるかの確率に、概ね比例します。

 しかし、多くの捕手が投げる事を急ぎ過ぎて送球ミスをしてしまいます。これを防ぐ一番のコツはリズムです。構えて1、捕球して2、送球時に腕を振って3、と、頭の中で構わないのでリズムを作りましょう。ポイントは、2〜3の間を捕球状態に合わせて変化させる事です。体に近い捕球ポイントからは、送球姿勢が作りやすく、間隔が短くても、正しく送球動作をする事が可能ですが、手を伸ばして捕球した場合や、左側で捕球した場合等、体から遠い捕球ポイントであった場合、持ち替える動作に時間が掛かりますので、体に近い捕球ポイントの時と同じリズムでは、正しく送球動作をする事が出来ません。この場合、高い確率で送球ミスになります。

 次に、リズムの作り方です。凡才先生の経験では、最速から遅くしていく方法では、あまり効果が期待できません。そもそも、慌てる傾向がある選手に、最初から微妙な加減を要求しても、圧倒的に失敗が多くなりますので、効率がよくありません。他のリズムの作り方とも共通ですが、最初は極端に遅い事から始めて、うまく行く状態を維持しながら、少しずつ早くして行き、捕球状態に最適なリズムを、体が学習できるような工夫が必要です。

 送球ミスを減らすコツ

1)左右の制球が乱れやすい場合

 腰から頭(上体)の回転軸がぶれないようにする。(個人差がありますが、首から上の力を抜いて、頭が宙に浮くようなイメージが良いようです。)回転軸がぶれると、リリースポイントも変わりますので、無意識に方向が変わってしまいます。

 投げる時、最後まで指をベース上に向ける。(ベース方向へ真っ直ぐで、きれいな回転をイメージすると良いようです。)”早く投げたい”気持ちが、”焦り”と、なります。常に、「真っ直ぐで、きれいな回転をイメージする事」が出来れば、極端な暴投は防ぐ事ができますので、普段の練習でも、緊張感を持ってこれを実践し、試合では体が自然にそうなるように習慣付けましょう。

 左右の肩をベースに向かって真っ直ぐにする動作(送球準備)の速度を、正しくボールを持ち替えられる速度に合わせる。(少し遅くする)送球準備の時間と、ボールを持ち替える時間がピッタリ合わないと、送球リズム崩れます。胸付近で捕球できた時は早く出来ますが、遠い位置で捕球した場合は、その分だけ時間が掛かります。つまり、時間が掛かるのが悪いのではなく、必要な時間を掛けない事が問題なのです。
ポイント:参考動画でも分かりますが、送球準備は、捕球後、足(下半身)から動くイメージが良いようです。


2)距離が合わない場合

 捕球位置に関係なく、ミットを捕球の勢いのまま右肩付近に引き寄せ、右手で受け取るように持ち替える。投球直前の右ひじの位置(トップ時の位置)が安定しないと、送球時の上下角度も変わってしまいます。ショートバウンドやオーバーが多い選手は、トップをきちんと作りましょう。

 状況にあわせて高さの目標を変える。送球の勢い(速度)は、捕球の状態に大きな影響を受けます。体勢が十分でないのに、強引に早い球を投げようとすれば、狙った所に投げられないのは当たり前の事です。前述の通り、暴投は論外ですので、制球が第一です。しかし、体勢を整え直す時間はありませんから、球速が若干落ちても、ベース上にコントロールする工夫が必要です。色んな工夫がありますが、凡才に、最も効果の高い方法は、高さの目標を変える事です。他の事は何も考えず、高さの目標だけを変えてみましょう。速度が出せない分だけ、目標の高さを変えれば、結果として丁度良くなります。例えば、十分な状態でベース上にピタリなら、腰の高さや頭の高さなど、投げられる速度によって変えてみると、他の事は何も意識しなくても、簡単に距離を変える事が出来ます。あとは、捕球状態による丁度良い目標を、何種類か習慣付ければ、自然に体が動くようになるでしょう。

 初期軌道の角度を意識する。球場の違いや天気の違いで距離感が合わない事があります。また、自身の体調の違いでも距離感が合わない事が有ります。これを強引に修正しようとすると、大きく制球を乱してしまうものです。「感覚のずれ」そのものを、技術的に修正しようとすると、一日中違和感が付きまとい、その後のスランプの原因になる事もあります。状況による「感覚のずれ」は、有るのが当たり前ですので、オーバーする時は、ベースが少し近くにあるつもりで、あまり高く初期軌道の角度を付けない。ショートする場合は、ベースが少し遠くにあるつもりで、いつもよりも若干初期軌道の角度を付ける方が、その後のスランプになる可能性は低くなります。感覚の問題なので、ボール回しの段階で確認しておきましょう。

普段の練習方法は、2〜3m程度、ベースの手前と先、定位置と合わせて3箇所の距離を、初期軌道の角度だけを変えて投げ分ける練習が効果的です。

参考動画 石原スローイング 會澤スローイング


三塁への送球
 基本的に打者が邪魔になります。左打者での一塁送球と似てはいますが、中身は大分違います。外角の場合、牽制なら捕球後に前へ出ても送球出来ますが、反転送球になるため、三盗を防ぐのは難しくなります。そのため、大半は左後方へ移動しての送球になります。ポイントは、右手が振れる位置まで移動する必要があるため、左打者での一塁送球の時よりも、自分の体一つ分多く歩く事になり、歩数が多くなります。

 制球のコツは、歩数が多くなっても、送球時の最後の踏み出しは、大きくしっかり行う事です。

 大半は左後方へ移動しての送球になりますが、インコースに要求した投球が外角に大きく外れたり、アウトローに要求した投球が高く外れた場面では、左後方への移動に時間が掛かりますので、打者の頭上を通して送球する方法があります。この方法は、打者の頭上を越すために、多少山なりの(威力の無い)送球となりますが、歩く事なく、すぐに送球できるので、覚えておくと便利です。特に、牽制としての効果は高く、三塁ランナーのリードが大きい場合は、ぜひ、試してみましょう。


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