「みずほ点訳」ホームページ

「みずほ流」点訳入門教室

2.数字−1



数字(『てびき』p20〜)

数字を打つときは、始めに、これから数字です! という宣言をします。
その印を数符といいます。
数符がないと、仮名として読まれます。
「34歳」と打つつもりでうっかり数符を忘れると、さてなんて読まれるでしょう?
ローマ字入力だと、数字のキーを押しただけで、数符付きの数字が現れますが、6点入力では自力で付けなければなりません。
ひとつの数符に率いられるのは、ひとつの数です。
ですから、1の前にも、9999の前にも、それぞれ数符はひとつだけ付きます。
4桁までは、原則としてそうやって打ちます。
ただ、例外的に、千の位で終わり、あとの端数がない数は、000の代わりに仮名で「セン」と打つことも多いのです。
その方が読みやすいからですね。

それ以上の大きな数は、途中に「マン」とか「オク」とか、仮名で入れ、そこで1マスあけて、もう1度数符を入れ直してその下の位を打ちます。
数符5マン■数符6789 という具合です。
目で読んでも、数字が10も20も並んでいたら、下から、一、十、百、千、万、十万・・・と勘定していかないと最初の桁が決められませんね。
点字でも同じことで、ひと続きの数字の最後まで触ってみてから順に帰ってこないと、最初の桁がわからない。
指で読む場合、目で見るより全体像が捉えにくいので、大変読みにくくなります。
最初に「5マン」と言ってくれればずいぶん楽ですよね。
但し、点字でも、たとえば決算書だとか統計資料だとか、数字がたくさん並んでいるようなものについては、墨字のように、位取り点を入れる方法で打ちます。(『てびき』p22)

単位や助数詞などの数字に続く仮名は、続けて打ちます。
数字は、1、2、4、5の上の4つの点だけを使っているので、次に3や6の点が含まれる字がくれば、ああ仮名だな、とわかるんですね。
ところが、仮名でも、ア行とラ行の字は3、6の点が含まれません。
これでは、数字の続きだと思ってしまいます。
数符の効力は、仮名が入ったりマスがあいていたりすると、そこで自動的に切れますが、数字として読める字が続いている限り、どこまでも効いてしまいますからね。
そこで、苦肉の策として、この場合だけ、ツナギ符(3、6の点)というものを間に挟みます。
ほんとは続けて打ちたいんだけど、そうするとちょっと具合が悪くてね、というような意味合いです。
ハイフンのようなものでしょう。
これも、ローマ字入力の場合には、勝手に付いてきます。
賢いソフトですね。
ところがひとつだけ、勝手にやってくれないことがあります。
これは非常に特殊な例で、『てびき』旧版では「5割り入り」という例が出ていました。(今の版にはありません)
理屈の上では、この言葉はツナギ符が必要な言葉なんですが、そんなものが実際に使われることはないだろう、と皆が思っていたのです。
ところがある日、新聞に「イチロー、4割入り!?」という見出しが踊ってしまったんだそうです。

さて、なぜこれにツナギ符が必要なのか?
数字のあとにきているのは「ワ」であって、ア行でもラ行でもありません。
「ワ」は3の点なので、数字と間違われることはなさそうです。
実は、3の点は、数字モードにおける位取り点なのです。
位取り点は、次に必ず3桁の数字が続きます。
ですから、数字モードになっているときに3の点があっても、そのあとに数字に読まれそうな、ア・ラ行の字が3文字だけ続く、という希有な場合を除いては、位取り点だと思われることはないのです。
そして、その希有な例が、「4割り入り」「5割り入り」なんですね。
このレアケースについては、T-エディタは、自動的な処理をしてくれませんので、ご注意ください。
一生に1度出会えるかどうかの言葉だとは思いますが・・・。

小数点は2の点です。
これは数字モードの中の記号なので、数符の効力はその先まで続きます。
分数は読んだとおりに打ちます。
「数符3ブンノ■数符1」という具合です。

さて、それでは、練習問題3を打ってみませんか。
6点入力の場合は、ツナギ符はご自分で必要と思われるところに入れてください。
ここからは、文に番号を付けますので、それも打ってください。
行頭2マス下げて番号を打ち、そのすぐあとにピリオドを打ちます。
ピリオドは、日本文の句点と同じ記号ですが、句点は、そのあと2マスあけて次の文が始まるのに対し、ピリオドは1マスあけで次にいきます。
なお、マスをあけるところは■で示しましたが、数字の中で必要なマスあけは、ご自分で入れてください。
ここは数字の練習ではありますが、助詞の「は」や長音にも気をつけて打ってみてくださいね。

      −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
  練習問題 3
 1.■6点■点字は、■1825年に■ルイ■ブライユに■よって■考案■された。■■日本では■1890年、■日本語を■表せるように■翻案■された。
 2.■今年は■9月■15、■16日と、■22、■23日が■2週■続けて■連休だ。■■土曜日も■入れれば■3連休が■2回■続く■ことに■なる。
 3.■コンサートは■6時■15分■開演なので■私たちは■その■1時間■40分■前に■行って、■10列目の■席を■7人分■確保■した。
 4.■アルファベットは■26文字。■■仮名は■50音と■いうけれど、■実際には■48文字です。■■今■普通に■使って■いるのは■46文字ですね。
 5.■近鉄■バッファローズの■タフィ■ローズ■選手の■2001年度の■成績は、■打率■3割■2分■7厘、■55本塁打、■131打点、■9盗塁。■■ホームランは■日本で■1位■タイの■記録だそうです。
 6.■長崎の■出島は■面積■およそ■130アールの■扇形。■■1634年、■ポルトガル■商人を■居留■させる■ために■埋め立てた■人工の■島で■ある。
 7.■寛永■14年、■肥前■島原と■肥後■天草の■農民が■切支丹■信者と■結んで■反乱を■起こした。■■16歳の■少年を■頭と■した■約■37000人の■抵抗に、■12万余の■幕府の■大軍は■4カ月も■苦戦を■強いられた。 
 8.■外国■小説を■読むと、■ヤード■ポンド法で■躓く。■■6フィート■4インチの■男、■3ポンド■8オンスの■肉、■5300エーカーの■土地、■100ブッシェルの■小麦などと■言われても、■見当が■つかない。■■1インチは■1/12フィート、■1オンスは■1/16ポンド、■1エーカーは■4840平方ヤードだそうだ。■■ああ、■イギリスの■少年■少女たち、■頑張れ。
 9.■太陽の■表面■温度は■約■5800度、■コロナの■温度■約■100万度。■■半径は■696,000キロメートルで■地球の■109倍。■■平均■密度■1.41。■■地球からの■平均■距離■14960万キロメートル。
 10.■なぞなぞです。■■300円■持って■買い物に■行き、■50円の■お菓子■1個と■130円の■ジュース■1本を■買いました。■■おつりは■いくらだったでしょう。
      −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


<練習問題3>について

 2.「9月15、16日と、22、23日が連休だ」というとき、15日だったか16日だったか忘れちゃったんだけど、という意味ではなくて、15日と16日の両日、ということなので、点字でおよその数を打つときの「数符15数符6」という表記はできません。
およその数ではないからですね。(この「およその数」については、次の「3.数字-2」ところでちゃんと触れます)
この場合は「数符15、■数符16ニチト、」と打ちます。
 2.「3連休」は、数字のあと「れ」が続くのですが、ア・ラ行の仮名なので、6点入力の場合は自力でツナギ符を挟みます。
以下、3.の「10列目」、4.の「50音」、5.の「7厘」、「1位」、6.の「130アール」、8.の「4インチ」、「8オンス」、「5300エーカー」など、10.の「300円」なども同じですね。
 3.「15分」は「数符15フン」、「40分」は「数符40プン」と打ちます。
発音どおり「フン」になったり「プン」になったりするわけです。
 7.「頭」という字は、訓読みが「あたま」「かしら」「こうべ」「かみ」「かぶり」など、音読みが「とう」「ず」といろいろあって、読み分けが厄介ですね。
この場合の「頭」は「カシラ」でしょう。
 「37000人」は、「数符3マン■数符7000ニン」か「数符3マン■数符7センニン」です。
こういう場合は、分量を表す数字で、端数がないので、「000」とは打たず、仮名で「セン」と打つことも多いのです。
触読には「セン」の方が便利だという声は多いので、「みずほ点訳」では原則として「セン」と打っていますが、グループによって考え方は少し違うようです。
ただし、西暦2000年とか、電話番号456−7000などという場合には、「000」と打ちます。
これらは年や電話の名前みたいなもので、数量ではないからです。
 8.「1/12」「1/16」は「数符12ブンノ■数符1」「数符16ブンノ■数符1」と打ちます。
ひとつの分数の中なのに、マスあけも必要ですね。
もし過分数であれば、「数符3ト■数符8ブンノ■数符5」などと打ちます。
これも読み下したとおりですね。
尤も、数学の計算式などでは、こんなまどろっこしいことはしていられないので、別の書き方があります。
でも、普通の文章の中では、このような発音どおりの表記になります。
 9.「696,000」は、「数符69マン■数符6000」か「数符69マン■数符6セン」と表記します。普通の文章の中では、位取り点を使って数字を続けることはまずありません。


つなぎ符が要るとき・要らないとき

Tエディタにかぎらず、パソコンで点訳するとき、数符をつけないで数字を打つと、その文字を数字とは認識してくれませんので、画面上に数字を表示してくれません。
「私は34歳です」と書こうとしたのに、「34」の前に数符をつけ忘れると、「私はうるさいです」となってしまいます。
パソコン点訳のありがたいところは、そういったことをすぐに墨字で確認できるので、「34歳」と「うるさい」の間違いが、修正されることなく、点訳書が出来上がってしまうことはまずありえません。
でも、手で打っていたときは、点字しか見ることができませんから、校正に気を抜いていると、つい数符がついていないことを見逃してしまったりしていました。
読まれた方は、唐突に「うるさいひと」が登場して、とまどったことでしょう。
ほんとうに、パソコンで点訳ができるようになって、良かったですね。

そういうわけですので、パソコン画面上では、数字かそうでないか、の見分け方が容易になりました。
でも、ここにちょっと落とし穴があるんです。

単位や助数詞などの仮名は、数字に続けて打つけれど、その仮名が「アイウルラエレリオロ」のときは、続けてしまうと、数字として読まれてしまうので、つなぎ符をつけて、ほんとは続けて打ちたいんだけど、という気持をこめて(?)例えば、「数符3つなぎ符ルイダ(3累打)」のように打つ、ということでした。

では、例えば「100両」なんていうときは、どうでしょう?
「100」のあと、墨字では「リョウ」ですので、「り」は数字の「8」だから、じゃあ、つなぎ符がいるんだな、と思ってしまう場合があんがい多いんです。
でも、よく考えてみてください。
拗音のところで、拗音を表す時は、あらかじめ、次の音は拗音になるよ、ということを知らせる符号を前置する、という説明がありましたよね。
つまり点字では「100」のあとにくるのは、「り」ではなくて、拗音符の4の点です(点字の「リョ」には、「リ」という文字は使いませんしね)。
こういった場合、4の点を数字に読み間違えることはありませんので、つなぎ符は要らないのです。
しかし、画面上ではつなぎ符をつけてもつけなくても「リョー」は「リョー」として表示されますから、その間違いに気付きづらいのです。
「34歳」が「うるさい」になってしまったら、誰でも気付きますけれど、「100リョー」が「100_リョー」と表示されていると、ついそれで納得してしまいます。
画面上の墨字は、点字そのものを表しているわけではなく、あくまでも晴眼者が点訳するさいの、便宜的なものだ、ということをわかっていないと、こういった間違いに陥ります。

中には、数字を書いて、単位や数詞が続くときには、なんでもつなぎ符を入れてしまう人もいます。
墨字画面上では、そんなにおかしな表示には見えませんからね。

さて、つなぎ符が必要な数字はどれとどれ?
カギ括弧は、開きも閉じも3、6の点です。

      −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
  練習問題 4
「三方一両損」
「一流大学に落ちて二浪した」
「2000立米の体積と50アールの広さ」
「10万両の儲けとは、お主もワルよのう」
「そのうちの3割は、お代官様のものでございますよ」
      −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

練習問題3の数字も、どこにつなぎ符が必要で、どこに必要ないか、できれば墨字だけでなく、点字も見ながらやってみてくださいね。


<練習問題4>について

「三方一両損」
三方・・・3ポー
一両損・・・1リョーゾン
数字のあと、拗音符の4の点がきますので、つなぎ符は要りません。

「一流大学に落ちて二浪した」
一流、二流は、数字で書きます。つなぎ符は無し、理由はもうお分かりですね。
二浪は、「2つなぎ符ロー」、三浪も四浪もありますから、数字。

「2000立米の体積と50アールの広さ」
2000立米・・・2センリューベイ
50アールには、つなぎ符が必要です。

「10万両の儲けとは、お主もワルよのう」
「そのうちの3割は、お代官様のものでございますよ」
この場合の「3割」の「ワ」は、位取り点に間違えられることはありませんからつなぎ符は要りませんね。






<<BACK   INDEX   NEXT>>