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「みずほ流」点訳入門教室

3.数字−2



およその数

数字の練習問題、いかがだったでしょう?
つなぎ符の必要なところさえ注意すれば、あとはそのまま数字を書いていけばいいので、そんなに難しくはないですね。
前回も書きましたけど、パソコンの点字画面上で「4オンス」の「4」と「オンス」の間に入れるべきつなぎ符を忘れると、「49ンス」、「7厘」だと「78ン」という妙な表記になって現れますので、 こういった間違いは、たいてい気付くことができます。

気をつけたいのは、画面上では、いっけん正しいように見える表記、というやつです。
『てびき』p22に、およその数の書き方が載っています。
「二、三日」とか、「七、八千人」とか、おおざっぱに数をいうとき、点字では、原本どおりに読点を使って、次を1マス空けて、ということはしません。
これは、点字表記の原則のひとつである「耳で聞こえるように表記する」ことに由来するのだと思うのですが、私たちが「二、三日」というとき、間に読点があっても、「にさんにち」というふうに続けて発音していますよね?
点字でこれを表記するときには、その音とリズムのとおり、「2」と「3」を続けて書いてしまいます。
と言って、「数符23」と書いてしまったら、それは「二十三」のことになってしまいますから、こういった場合、「2」と「3」それぞれに数符をつける、ということをやります。
点訳ソフトはとても偉くて、「数符2数符3」と入力すると、ちゃんと「2、3ニチ」と表示してくれます。
二つの数字の間には、空白マスがないのがおよその数の書き方です。

しかし、ここにまた落とし穴がひとつ。
およその数である「二、三日」を、読点があるから、読点を打って、そのあと1マスあけて、という書き方をした場合、「数符2読点■数符3ニチ」と表示されますから、一見おかしくは見えません。
しかし、これは、「およその数」の表記の仕方ではなく、「2」と「3」を別々に書く際の表記です。
つまり「2、■3ニチ」は「2日」および「3日」ということになってしまうのです。
「九月には二、三日旅行するよ」と「九月の二、三日は旅行するよ」では(文脈にもよりますが)、 かなり意味が違います。
およその数の書き方をするのは、前者のほうですね。
もっとも、後者の場合の「二、三日」は、「ふつか、みっか」というのが普通でしょうが、そういう場合の数字(和語読みの数字)の場合の表記の仕方には、また別のルールがありますので、それはまた後で取り上げたいと思います。

およその数の書き方は、重ねて書きたい数字をマスあけせずに、それぞれに数符をつけて、続けて書きます。
どんなに大きな数字でも、それは同じです。
「七、八万」は「数符7数符8マン」
「5、600」は「数符5数符600」
「6、7千」は「数符6数符7セン」です。

ここで注意したいのは、重ねるべき数字の上の位をどうするか、ということです。
「二百五、六十」は、重ねるのは「五、六十」のところです。
こういったときは、まず「数符2ヒャク」と、百の位のところを仮名で書いて、そのあと1マスあけます。
そして「数符5数符60」とします。
つまり「数符2ヒャク■数符5数符60」ということですね。
三千七、八百万円 → 数符3ゼン■数符7数符800マンエン
一億五、六千万人 → 数符1_オク■数符5数符6センマンニン 
(「1億」の場合、「1」のあとに「オ」がきますので、つなぎ符が必要です)
三百四、五十名 → 数符3ビャク■数符4数符50メイ、等々

およその数は、よく出てきます。 原本に読点が入ることが多いので、間違えやすいのですが、重ねる数字の部分には、マスあけはない、と覚えてくださいね。


二百五、六十

「およその数で数が重なる場合」の打ち方、墨字とちょっと違いますが、わかっていただけましたか?
「二、三日」とか「十七、八の娘」とかいうのは、読点を付けない分、むしろ墨字より簡単ですが、「三千五、六百」などは、重なる部分の上の位を仮名書きしたりして、ずいぶん面倒くさいことをするなあ、という感じがしますか?
点字の表記として、音に忠実に、しかも、別の意味になってしまわないようにすると、こういうことになるんですね。
「二百五、六十」という数字でみてみましょう。
発音は「にひゃくごろくじゅう」です。
意味は、250か260か、なんかそのくらい、ということです。
意味を伝えようとして、250と打ってしまうと、発音と違ってしまいますね。
でも、発音どおり「にひゃくご」と伝えるためには、数字は205となってしまって、意味が違います。
「ごろくじゅう」の部分の表記を生かして、その上に「にひゃく」を付け足そうと「数符200数符5数符60」としても、意味がヘンです。
そこで、「数符2ヒャク」を付け足すことになったんだろうと思います。
「200」と「2ヒャク」は、意味が違うんです。
「200」は、201ではなくて、202でもなくて、まさに、一の位まで決定済みの200なのです。
「2ヒャク」は、百の束が2個ある、ということです。
細かいことは未定なのですね。
というわけで、「ヒャク」と打つのですが、仮名書きすると、もう1度数字モードに戻すためには、また数符を付けなくてはなりません。
墨字の表記も、実は部分的に見ると、「二百五」となっていて、まるで205みたいですね。
でも、私たちはそう思わない。
それは多分、次の「六十」まで視野に入っているからでしょう。
その辺が、点字と墨字の事情の違いだと思います。


Q. 「1000」は「セン」でも「数符1セン」でもいいのですか?
  「何十」は「ナンジュー」でも「ナン数符10」でもいいのですか?


1000を「セン」と打つか「数符1セン」と打つかは、あまり難しく考えなくてもいいように思います。
「セン」と打ちたくないとき、というのが、あることはありますね。
ひとつは、「1000万」「1000億」などの場合。
これは多分「1センマン」「1センオク」の方が一般的でしょう。
それから、たとえば、「極北の雪原1000キロの旅」とか「残された1000余人の運命や如何に!」というような、かなり力の入った言い回しの場合。
「セン」でもいいのだけれど、ちょっと軽くなっちゃうかな、という感じもします。
さらに、数字だということをはっきりさせたい場合。
「千人」なのか「専任」なのか、あるいは「仙人」なのか、しばらく読んでいけばわかるけれど、できればすぐにわかった方がいい、ということもあります。
もちろん、「1」が付いただけでは、たいしてわかりやすくはならない、ということもあります。
大勢いる中の「一仙人」かもしれませんからね。
そんなことを勘案して、こりゃ「数符1セン」の方がいいな、と感じたときは、そうしてください。
無論、人の感じ方はさまざまですから、「たったひとつの正解」があるようなことではないと思います。

「何十」についても、「ナンジュー」と打っても「ナン数符10」と打ってもいいのですが、『てびき』は一応「ナンジュー」を原則というか、主たる表記としています。
つまり、理屈からいえば、この「十」は10か11かということを問題にしているのではなく、10の束がどれだけ、という、位のこと、あるいは桁のことをいっているので、仮名書きがいいだろう、というのでしょう。
「百」や「千」も、こういう意味で使われるときは仮名書きですから。
ただ、「ナンジュー」という場合、「何重」という漢字変換もできてしまうので、その混乱を嫌って、従来、「ナンジュー」と「ナン数符10」の書き分けが一部で行われてきました。
その方が読みやすければ、それでもいいですよ、というのが『てびき』の立場なのでしょう。
「みずほ」では、ある読者の「数字だということがサッとわかっていい」という意見を根拠に、原則として「ナン数符10」と表記しています。
もちろん、仮名書きがいい、という方もたくさんいらっしゃると思いますが、みなさんにアンケートをとるわけにもいかなかったので。


数字(『てびき』p24〜)――数字を使うとき、使わないとき

人口が1億3千万人とか、お金が1万4千円とか、身長・体重が180センチ・75キロ、テストの結果が300人中48番とかいったように、はっきり数量・順序とわかる言葉は、数符を用いて数字で書き表せばいいので、考え方は、基本的に墨字と同じです(およその数などの例外だけ、きちんと押さえておけば)。

でも、墨字の表記では数字を使っているけれど、数量的・順序的な意味が薄れてしまっていて、ふだん数字であると意識して使っていない語が数多くあります。
そういったものは、点字では数字を使わない場合が多いのです。
その例は、『てびき』のp24に出ています。
どういった言葉が、数量的な意味が薄れている、と考えるか、墨字で数字を見てしまうと、ちょっとわからなくなってしまいますね。
判断のひとつの目安として、それが数えられれば、数字を使う、数えられないものであれば仮名、というのがあります。
「青二才」とは言っても、「青一才」とか「青三才」とは言いませんよね?
「一般的」も「二般的」「三般的」というように数えることはありません。
「四角い」はどうでしょう?
「三角」は、点字では「3カク」と数字を使うので、「四角い」も数字を使えそうな気もしますね。
でも、「四角い」という言い方は形容詞としてありますが、「三角」「五角」があるからといって、「三角い」といったり「五角い」と言ったりはしません。
「三角形」「四角形」「五角形」なら数字ですが、「四角い」は、それとは別の系統の言葉なんですね。
だから仮名です。

点字の数字表記の考え方は、墨字でどう書かれているか、というより、むしろ、その語に数量的・順序的な意味があるか、です。
だから、『てびき』p24にあるように、墨字で数字で書かれていても、点字では仮名にしなければならなかったり、逆に墨字では仮名になっているのに、点字では数字を使わなくてはならなかったりします。
「数えられる場合は、数字」という判断の目安が、数字を含むすべての語にあてはまるわけではありませんが、それでも、「一番になった」なら、「二番になった」も「八番になった」もあるから数字だろう、とか、「一番大きい」は「二番大きい」とか「十番大きい」とは言わないから、どうやら仮名らしい、という推測はつきそうです。
「一番」の考え方として、「もっとも」に置き換えられれば仮名、というのが点訳者の中では一つの目安となっています。
「一番偉い」は「もっとも偉い」に置き換えられるので、仮名、「試験で一番になった」は「試験でもっともになった」はヘンなので、数字、というわけなのですが、それでも迷う表現に出会うことは再々です。
だから、目安は、あくまでも目安で、絶対確実な方法、というのは、・・・・ないですね(ありゃりゃ)。

『てびき』p26にあるように、地名・人名など固有名詞に使われている数字も、仮名書きが原則です。
ほとんどの場合、常識的に判断すれば、おおむね大丈夫ですが、やっぱり、固有名詞の表記にも例外はたくさんあります。
その点については、また後ほど。

どれが数字で、どれが仮名か、考えてみてくださいね。
中点は5の点、そのあとを1マスあけます。
?は2、6の点です。文の終わりにあるときは、句点と同じように、次を2マスあけます。

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  練習問題 5
「三重県四日市市の3丁目3番地に住んでいる、田中六郎さんは、6人兄弟の一番下」
「お城の二の丸・三の丸が、敵軍の一斉攻撃で、一瞬のうちに一部を残して壊滅した」
「会議の資料のコピーは、一部を第二課の課長に、三部は一般職の社員に配布」
「一杯、二杯、と飲むうちに、お腹が一杯になってしまったって? 食事を一番大切に考えないで、お酒一辺倒だと、この五人の中で一番目に病気になるよ」
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<練習問題5>について

「三重県四日市市の3丁目3番地に住んでいる、田中六郎さんは、6人兄弟の一番下」

ミエケン■ヨッカイチシは、仮名でいいですね。
でも、「3チョーメ■3バンチ」は「4丁目」「5丁目」も「1番地」も「2番地」もあるので、数えられるわけですから、数字で書きます。
「六郎」さんは、もちろん仮名。
人名を数字で書くことは、たぶん特殊な場合を除いてないと思います。
『てびき』に「ルイ■14世」の例が載っていますが、「14世」って、名前なんでしょうか?
いずれにしても、このへんのことは常識的に考えれば大丈夫です。
「一番下」は、「イチバン■シタ」、「もっとも下」と言い換えられるので、仮名で書きます。

「お城の二の丸・三の丸が、敵軍の一斉攻撃で、一瞬のうちに一部を残して壊滅した」

「二の丸・三の丸」は数字です。助詞の「の」が入っていますが、一語と解釈して「2ノマル」「3ノマル」と続けて書きます。
「一斉」「一瞬」「一部」は仮名です。
しかし、次の「一部」はちょっと違います。

「会議の資料のコピーは、一部を第二課の課長に、三部は一般職の社員に配布」

この場合の「一部」は、たくさんのコピーがあって、そのうちのひとつ、という意味です。
この場合は、「一部」も「二部」も「五十部」もありうるわけですから、数字で書きます。
前の問題の「一部を残して」の「一部」は、数的な意味ではなく、部分を表しているので、仮名になります。

「一杯、二杯、と飲むうちに、お腹が一杯になってしまったって? 食事を一番大切に考えないで、お酒一辺倒だと、この五人の中で一番目に病気になるよ」

この場合、最初の「一杯」は、一杯、二杯、三杯、と数える場合の「一杯」です。
だから数字で書きますが、あとの方は、たくさん、やまもり、満杯、といった意味ですから仮名になります。
「一番」も最初の方は、「もっとも」大切に考える、ということですから、仮名、あとの方は、5人の中での「一番目」という意味で、二番目も三番目あるわけですから、数字になります。


和語の数字(『てびき』p25〜)

和語・漢語(漢字音)という言葉は、『てびき』の中によく出てきます。
ごく簡単に言ってしまえば、訓読みの漢字は和語、音読みの漢字は漢語です(ほんとうは、もっと複雑なものらしいんですが、ここでは便宜的にそういうことにしておきます)。
ふだん、言葉をいちいち和語だ、漢語だ、と意識して使うことはありませんので、『てびき』で突然和語・漢語、と言われても戸惑ってしまいますよね。
しかし、点訳上では、和語と漢語では、さまざまに表記の仕方が違うので、これを無視して通るわけにはいきません。

数字の表記では、大雑把にいえば、和語は仮名で書き、漢語は数字で書きます。
「ひとつ、ふたつ、みつ、よつ・・・」もしくは、 「ひい、ふう、み、よ・・・・」と数えるのが和語。
「いち、に、さん、し(よん)・・・」と数えるのが漢語(漢字音)です。

「一つ、二つ」と書いてあった場合、晴眼者は、「一」と、そのあとの「つ」を両方いっぺんに見て取りますから、ああ、これは「いちつ」と読むのではなく「ひとつ」と読むのだ、とわかります。
「一」のあと、「つ」があったら、和語読みすることを、私たちは経験的に知っているので、「いちつ」と読み間違えることはないのです(たぶん)。
考えてみると、これはすごいことで、私たちは、「一」のあとに「日」がついていたら、「いちにち」、文脈によっては「ついたち」、「つ」がついていたら「ひとつ」と、瞬時に読み分けています。
いくつかの文字を同時に認識できると、経験的にこういったことも可能になるらしいですね。
しかし、点字では、まず数符があって、読んでいる人は、「次は数字だな」という情報を受け取る。
それから「1」がきて、「あ、数字の1(いち)だ」とわかる。
ところが、そのあとに「つ」がきてしまうと、せっかく「数符1(いち)」まで読んだのに、どうやらそういうふうには読まないらしい、ということになって、混乱をきたします(と想像します)。
ですから、原本に「一つ」「二つ」と書いてあっても、「数符1つ」より「ひとつ」と仮名で表記されていたほうが、はっきり意味をとらえることができるのではないでしょうか(と想像します)。
「一つ」「二つ」は、和語読みで、「ひとつ」「ふたつ」なので、点字では仮名で「ヒトツ」「フタツ」と書き表します。
ここでも、点訳が、すべてを原本どおりに写すものではない、ということがわかります。
「一日」を「いちにち」と読めば、「いち」は漢語読みですから数字です。
「ついたち」と読んだ場合は和語ですので、「ツイタチ」と、仮名にします。
「一品」を「いっぴん」と読んだ時は「数符1ピン」、「ひとしな」だったら仮名で「ヒトシナ」。
気をつけたいのは、「4」と「7」です。
「9月4日」は「9ガツ■ヨッカ」と仮名表記になりますが、「9月24日」だと「9ガツ■24カ」と数字になります。
同じ「よっか」なのに、どうしてこういうことが起きるかというと、「4日」が和語の系列だからです。
つまり、「ついたち」「ふつか」「みっか」「よっか」「いつか」、と和語読みが続いていく中での「よっか」です。
これに対して「24日」は、「21日」「22日」「23日」「24日」と、漢語読みの数字が続いていくなかに含まれる「にじゅうよっか」なのです。
和語読みと漢語読みの音が一致しているので戸惑いますが、「4日」と「14日」「24日」は、異なる系列の数字なのですね。
「7」も同様に、たとえば、「七色の虹」なんていうときは、「ひといろ(一色)」「ふたいろ(二色)」「みいろ(三色)」・・・と続いていく、和語系列の数字なので、仮名で「ナナイロ」と書きます。
しかし、「7階建てのビル」を「ななかいだて」と読んだとしても、それは、「1階」「2階」「3階」・・・と続く漢語系列の数字なので、「数符7カイ」と書くわけです。

和語と漢語は、けっこう複雑です。
ふだん意識して使っていないだけに、墨字で数字が使われていると、それが和語か漢語か、考えないでそのまま数字にしてしまったりします。
そのうえ、語によっては、和語でも漢語でもとくに支障をきたさないように思えることも多いのです。
「マンションが二棟」は「マンションガ■フタムネ」でしょうか?
それとも「マンションガ■2トー」?
「一部屋」「二部屋」は「ヒトヘヤ」「フタヘヤ」が普通でしょうが、「三部屋」「四部屋」・・・となると、「みへや」「よへや」と読む人より、「3(さん)へや」「4(よん)へや」と読む人が多くなるかもしれません(どちらが正しいか、という問題はここでは考えません)。
「二重まぶた」を「2ジュー■マブタ」と読む人はさすがにいないと思いますが、「二重カギ」だったら、「フタエカギ」と「2ジューカギ」、両方ありそうです。
こういった読み方の違いは、かなりの部分、年齢的なものが関係しているようです。
漢語音で読む傾向にあるのは、若い世代、和語音で読むのは比較的年配者に多いように思うのですが、どうでしょうね。
「一人、二人、三人、四人・・・」などは、途中からはっきりと、和語と漢語に分かれてしまっています。
「ひとり、ふたり」と和語がきて、次からは「サンニン、ヨニン・・・」と漢語で読んでいます。
もともとは、「三人、四人・・・」も「みたり、よたり・・・」と和語で言っていたんですが、いまではもうこういう言い方をして、人数を数えるひとにはお目にかからなくなりました。
私の祖母などは、「・・・みったり、よったり・・・」なんて言いながら数えてたりしましたけど。
閑話休題。
いずれにしても、和語・漢語を頭において、文脈・前後関係・読みやすさ・わかりやすさを考慮しながら、どう読むか、適切なほうを選びます(それがなかなかたいへんなんですが・・・)。
原本に数字が書いてあっても、点字ではすべてを数字で表記するわけではない、ここがポイント。
数字を含む語のうち、どれが数字で、どれが仮名か、また、どれが和語で、どれが漢語か考えてやってみてください。つなぎ符の必要なところにも気をつけて。

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  練習問題 6
 1.■一昔■前までは、■100円も■あれば、■一食分の■食事くらいは■十分に■まかなえた。■■今は■五百円玉■一つでは、■なかなか■お腹は■一杯に■ならない。
 2.■三軒■先の■お宅は、■五つの■男の子が■一番■上で、■その■下に■四才、■三才の■女の子が■二人、■一番■下は、■二卵生■双生児の■男の子だって。■■三男■二女の■全部で■五人。
 3.■マンションは■二部屋が■洋室で、■一部屋が■和室の■四畳半、■リビングは■十畳ほどだから、■二人と■猫■一匹が■住むには、■まあまあの■広さかな。
 4.■十月■四日は、■母の■五十歳の■誕生日だから、■花を■一束■買って、■三ツ星■レストランにでも■食事に■行こう。■■料理■五品の■コースは■多すぎるかな?
 5.■「一面の■菜の花が■美しい」なんて、■四十■男に■しては■詩人の■一面も■あるのね。
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<練習問題6>について

「一昔」は「ヒトムカシ」と「一」を和語読みしていることばですので、仮名。
「一食分」の「一」は漢語で、音は「イッショクブン」ですが、こういった場合、数字の1のあとに、促音(小さいツ)はつけません。「数符1ショクブン」と書けばいいのです。
「1本」「1回」なども、音は「イッポン」「イッカイ」と、促音が入っていますが、書き方は「1ポン」「1カイ」です。

「二卵生双生児」は、「数符2つなぎ符ランセイ■ソーセイジ」

「一部屋」「二部屋」はやはり、「ヒトヘヤ」「フタヘヤ」でしょうね。
いや、私は「1(いち)ヘヤ」「2(に)ヘヤ」と読む、というひともいるかもしれませんが、このあたりは、まだ和語読みが生きている部分だと思います。
五部屋、六部屋・・・になったら、どうしたものでしょう。
「イツヘヤ」「ムヘヤ」・・・は、やはりちょっと現代では使いませんねえ・・・。

「一束」は「ヒトタバ」、「三ツ星」は「ミツボシ」、これはいいですね。
「五品」はどう読むでしょう?
「イツシナ」は、ちょっとわかりづらいですか?
「ヒトシナ」「フタシナ」「ミシナ」「ヨシナ」ときて、「イツシナ」だったら、わかってもらえそうですが、やはり単独なら数字を入れて「5シナ」あたりが妥当ですね。
「5ヒン」も間違いではないですが、料理の品数(しなかず)ですし、「シナ」という語を入れたいと思います。
「一面の菜の花」などの「あたり一面」という場合は、仮名ですが、様々な面のうちのひとつ、という意味のときは、数字で書きます。
だから、「詩人の一面」は「シジンノ■1メン」。
「彼の性格の良い一面」だとか、「そういう一面があるとは知らなかった」とかいう場合の「一面」ですね。


墨字にだまされないで

点字表記は原本どおり、という原則があります、と言ったばかりなのに、数字については墨字表記にかかわらず、意味を考えてください、という話が出てきましたね。
そうです、矛盾と言えば矛盾なんですが、数字の表記では、墨字の書き方に惑わされては(?)いけないんです。
たとえば墨字では、回数を言うとき「一度」という書き方も「1度」という書き方もあり、「いちど」もあります。
「いちど」と書いてあったりすると、仮名で打つのかなあ、と思いがちですし、「1度」と「いちど」は表記を変えないといけないような気がしてしまうのですが、実はみんな、「数符1ド」なのです。
「もういちど」「今一度」などでも、「モー■数符1ド」「イマ■数符1ド」と打ちます。
ところが、「一度に」とか「いちどに」とかいう場合には、同時に、というような意味の副詞なので、「イチドニ」と仮名書きします。
「数符4カク」と「シカクイ」の関係と一緒です。

数字の表記って、ほんとに曲者ですね。
どう表記したらいいかわからない、数字かもしれないけど仮名かもしれない、と迷うケースはたくさんあります。
多分、相当点訳歴の長い方でも、あれこれ悩んでいらっしゃるのではないかと思います。
ですからそれは、いろいろなものを打って、さまざまな例に出くわしていく中で、たっぷり悩んでくださればいいのです。
今は、数字的な意味がはっきりあって、漢字音で読むときは数字で打ち、数字的意味が薄れた言葉や、和語読みの場合は仮名で打つ、ということさえ頭に入れておいてくださればいいと思います。
だいたいのところは、了解していただけたでしょうか?






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