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交響曲「画家マチス」
Mathis der Maler

EUROPEAN AMERICAN MUSIC  レンタル譜  50,000円



 「画家マチス」の描いた絵を一枚開くごとに一つづつ、別のウィンドウが開きます。 「うざったいなぁ」と思われるかもしれないけれど、裏に回ったウィンドウに絵が流れていくのを知らずに「おいおい、二枚目以降が出てこないぞ」という慌て者がいるかもしれないので・・・  ちなみに絵のファイルサイズは約150KBあります。

第1楽章「天使の合奏」 Engelkonzert  
 これはもともとオペラの前奏曲に当たる部分で、グリューネワルト(画家マチス)が書いた、いわゆる「キリスト降誕」の図を表しています。 ドイツの古謡``3人の天使が歌う''による第1主題が、`天使の楽器'であるトロンボーンで演奏されます。 これはオペラの全曲を貫く定旋律でもあったらしい。 (オペラは聴いたことがないので分からないけど、そう書いてあった)

第2楽章「埋葬」 Grablegung  
 これは、かつて、その地方をおそった「アントニウスの火」(丹毒:連鎖状球菌が傷口から入って起こる急性・化膿性の伝染病。 患部の皮膚が赤くはれ、激痛を伴う)という疫病で命を落とし、「埋葬」されようとしているキリストの絵。 いやいや、「磔刑にされたキリスト」の絵を表しているという説もあるのだ。 ということで、「磔刑にされたキリスト」の絵を載せました。 どちらにせよ、「埋葬」の部分を拡大した絵は見あたらなかったんだけど。
ヒンデミットは三部形式の受難曲としてそれを描いたけど、オペラでは終景(第7景)への間奏曲にあたるそうです。

第3楽章「聖アントニウスの誘惑」 Versuchung des heiligen Antonius  
 イーゼンハイムの修道院が属していた教団「聖アントニウス会」は、その名の通り、聖アントニウスを守護聖人としていました。 ここで画家は自ら聖人と化し、魔物たちから堕落の道へと誘われる幻影をみる、という内容で、オペラでは第6景の中心部分になっていました。 「とてもゆっくり、自由なテンポで」と指定された導入部に続き、第1部「とても生き生きと」は、終始悪魔的な内容を象徴する音楽でありますの。 第2部「ゆっくりと」では、叙情的な旋律がチェロで歌われるのよねー。 第3部は「生き生きと」と指示されたテーマが金管の演奏で始まる。 ここの中間部でヴィオラに美しい旋律が出てくるよ。 第4部は再び「とても生き生きと」と題されている、速い3/4拍子。 これは一種の無窮動で、木管が聖歌を演奏してクライマックスに向かうのだ。 第5部「ゆったりした2分の2拍子」は金管が「全力で」アレルヤを吹き鳴らす。

 さて、第3楽章「聖アントニウスの誘惑」というタイトルのすぐ下に、いわゆるサブ・タイトルとして、こんな文字が書いてあります。
``Ubi eras bone Jhesu /
ubi eras, quare non affuisti /
ut sanares vulnera mea?''
『主よどこにおられたのですか?
なぜ最初のときはここに来てくださらなかったのでしょうか?
それになぜわたしの傷も治してくだされなかったのでしょうか?』

次が練習番号31のフルート・オーボエ系の旋律があるところに
``Lauda Sion Salvatorem''
『シオンよ、汝の救い主を讃えよ』

そして最後は2/2で金管が力強く演奏する
``Alleluia''
『アレルヤ』

 ``Lauda Sion Salvatorem''というのは、ローマ・カトリック教会の典礼で歌われるセクエンツィア(続唱)で、特にフランスでは正式に認められた、たった5曲のうちの1曲なのだ。 ちなみにセクエンツィアというのは、本来は``アレルヤ''の最後の母音を意味していたらしいよ。


「画家マチス」の描いた祭壇画  

 まずは第一面から見よう。 この面は扉が閉ざされている状態で、中央の二枚の扉に「キリストの磔刑」、右翼に「聖セバスティアヌス」、左翼に「聖アントニウス」、そして飾台(台座)に「キリストの埋葬」が描かれている。

 次に「キリストの磔刑」が描かれている扉を左右に観音開きしてみよう。 中央に「キリスト降誕」、右に「復活」、左に「受胎告知」の第二面が出てくる。 ところで、「キリスト降誕」のうちの左半分しか絵がなかったので、右半分に似ているけど別の絵を見てもらいましょうか。

 第二面の「キリスト降誕」をさらに左右に開こう。 中央に「聖アントニウス」、その右に「聖ヒエロニムス」、左には「聖アウグスティヌス」、そして飾台には「キリストと十二使徒」のそれぞれ彫刻が現れる。 この彫刻はグリューネワルトの作品ではないけどね。 そして右翼には「聖アントニウスの誘惑」(もとの絵が暗かったので、明るさを20%増量しました)、左翼に「聖アントニウスと聖パウロの会話」(同じく20%増量)が描かれた第三面が展開するのだ。 平常時にはこの第一面、すなわち扉を閉ざした状態が示されていて、宗教的な年中行事にあわせて扉が開かれ、それぞれの画面が公開されたらしいよ。

 最後に「聖アントニウスの誘惑」の拡大図を見てもらおうかな。 この絵だけはいい色が出ているんだ。
「怪物君たちの拡大図」(はな垂れ小僧もいるよ)

  聖アントニウスの生涯
  画家「マチス」 (マティアス・グリューネワルト)
  ヒンデミットとナチス


参考文献: 北島 廣敏 「聖アントニウスの誘惑」 雪華社、1984年   定価6500円