逆転裁判4(通常版) 特典 オドロキヘッドフォン付き
逆転裁判4(通常版)(特典無し)
逆転裁判4(限定版) 特典 オドロキヘッドフォン付き
新作が出るたびに人気を高めていった「逆転裁判」シリーズ。
前作の3までの「ナルホド編」とは、また別の新章「オドロキ編」がここから始まります。
前評判が高く、限定版も入手しにくい状態になった「逆転裁判4」。
レビューを始めます。
「新章開廷」を宣言したこのゲームの導入は、新主人公「王泥喜 法介」(オドロキ ホウスケ)が弁護士デビューの裁判。なんと弁護する被告人は前シリーズの主人公・成歩堂龍一!
殺人容疑で逮捕された彼の職業はなんと弁護士ではなく、ピアニスト兼ポーカーのみの勝負師という驚愕の設定です。
敵として立ちはだかるのは、おなじみアウチ検事。
・・・残念ながら、どうもリアクションや台詞など、キレが悪かった感じです。
3までは第1話はチュートリアル的な導入をしていましたが、今回は少し趣が違います。
まさにこの”4”という作品の導入です。そういう意味では新鮮ですが、若干4の重要な謎である「7年前」の事件を引っ張りすぎていて、
くどく感じるかもしれません。
かなり今までと違いやさぐれたナルホドにガッカリする人もいると思います。ですが途中でかつてのナルホドを髣髴させる部分が出てきて、そこは非常に盛り上がります。
ですが、その結果・・・新主人公であるオドロキくんの出番を見事に食ってしまうことに。
これで第1話の主人公の印象付けが弱くなってしまい、この作品全体で主人公のキャラが立たないという悪い流れを生んだように思います。
今までの逆転裁判の続編ならばOKですが、今回の”新章”という意味合いにおいて今回の第1話配置は、残念ながら失敗だったように感じます。
このゲームでは、新章からの主人公であるオドロキや謎の少女魔術師・みぬき、ガリュウ兄弟などの新キャラクターと、
ナルホドやサイバンチョなどの旧キャラが共演しているスタイルになります。
残念ながら、いつもナルホドの近くにいた人気キャラは、ほとんど登場してきませんが、
新旧キャラがうまく絡み合えば、「逆転裁判シリーズ」の深みはさらに増し、より一層の発展が見込めます。
おそらくそれを狙ってくると思われましたが・・・今回はそれが見事に空回りしたと言っても過言ではないほどに、新キャラがうまく生きていません。
まず主人公のオドロキくんですが、性格がほとんどナルホドと同じ。
詳しく見れば、ナルホドよりも毒がないものの、突っ込むところはちゃんと突っ込む青年という感じで、
それ以外に人の癖などから緊張している部分に注力して指摘する特殊能力「みぬく」があるくらいです。
この能力もうまく機能しているとはいいがたく、作品内で突っ込まれていますが、「みぬく」こと自体に説得力や根拠が全くないので、
どうにも爽快感が得られません。そういう意味ではナルホドの劣化コピー的な印象を与えました。
登場時はナルホドがやさぐれているため、その代役としてはいいのかもしれません。
ですが、新章の主人公を背負わせるのにはどうにもインパクトに欠けました。
それに驚く顔の表情も”いかにも脇役”のような地味さとカッコ悪さ・・・
しかも強力なライバルであるはずのガリュウ(弟)検事も、以前御剣や冥・ゴドーのように勝負にこだわるタイプではなく、
弁護士と協力してでも”真実”を見出すことを目的としているため、「法廷バトル」という逆転裁判の主柱の一本が
ここで見事に破綻してしまい、真実を導くためにガリュウに利用されている主人公というなんともダメダメな印象を
さらに与えてしまいました。
また弁護士の師匠であるはずのガリュウ(兄)がある事情で去る時も、ほとんど感傷らしいものなしだったため、薄情という
印象を受けたのも、マイナスポイントです。そのため師匠が再び姿を現した時のよりドラマティックに展開できるはずだった部分が
悲しいくらいにあっさりと進んでしまいました。
主人公の良さをアピールできる部分がほとんどなく、最後までそれが解消できないままゲームが終わってしまうのです。
これは正直非常に残念なポイントだったと思います。もったいないなあと。
それ以外の新キャラに関しても、焼きまわしのようなキャラや性格や思考破綻しすぎている者ばかりで、
ビジュアル的にも変に小ぎれいなキャラばかりでイトノコやおばちゃんのような味のあるキャラがいませんでした。
そういう意味で新キャラはほとんど印象に残らないか、悪い印象が先行してしまった面は拭えません。
3でも評価しましたが、各キャラの台詞によるテンポの良さは相変わらず素晴らしいです。
ただ主人公キャラが変わったことにより、ナルホドやマヨイ、御剣らの掛け合いというお約束がなくなってしまった穴はさすがに埋められませんでした。
今回は前述の通りに新キャラ立てが従来ほどされていないので、今後の作品で新しいお約束ができるかどうかも正直不安です。
今までとは違い、今回導入されたのが「動画再生」。
特に3Dを使ったグラフィックで描かれるシーンが出た時は驚きました。
これの導入によって”ライヴシーン”を見ながら証拠を探すなど、従来とは違う展開が可能になりました。
特に現場検証などに使われたのは、素直に評価したいです。
反面、ライヴシーンの再生機会が非常に多いためにイライラさせられたのも事実です。
そういう意味で演出過多によるくどさを感じてしまったのは、残念でなりません。
今回は従来の作品以上にDSの機能を生かしたミニゲームが何回か登場してきますが、
怪しいと思うところに粉や液をかけて、それを口で吹いて指紋や毒を検出する、いわゆる”カガク調査”というヤツが中心です。
ただこれを活かしきれたかというと、なんとも言えない微妙な感じで、とってつけた感が拭えませんでした。
”カガク調査”の主役ともいえる宝月 茜(ほうづき あかね)も、かりんとうばかり食ってるかわいげのないキャラという印象も
そういう考えにつなげる遠因かもしれません。
1、3と盛り上がれるいい曲が多かったのですが、今回は肝心のBGMがいい曲だが盛り上がりには欠ける感じです。 そのせいで法廷におけるいまいち乗り切れない新キャラ同士の掛け合いに、追い討ちをかける形で盛り上がらないという結果を生んでいます。
今回苦言が多かったように思いますが、前述していない素晴らしい点は当然あります。
1.プレイ時間
今回のプレイ時間は一気に進めるにはちょうどいい長さでした。短いと感じる方は多いかも。
2.各エピソードをひとつにリンク
逆転裁判のお約束ですが、「え?これとこれがつながるの?」というポイントはいつも通り。
これは「さすが」だと思います。
3.宣伝関連
3以上にWEBや広告など多彩な宣伝はイメージキャラのあの弁護士は無意味に感じましたが、うまくいっていたと思います。
また限定版も豪華で手にしたいと思わせるように告知していたと思います。
4.小さいところにサービス精神
今回も非常にわかりにくいところに、心憎いファン向けの演出があります。そういった点はさすがです。
今回は残念ながら、不満点がかなりあります。
1.トリックや動機の破綻が多すぎる
従来以上に今回は説明を放棄してしまっている点が多いのが目に付きました。
しかもあれだけ引っ張ってきた犯行動機があまりにも稚拙で、説得力に欠けるのも・・・
2.無理やり?のメイソンシステム
メイソンシステムとは、日本でも導入される「裁判員制度」をモデルにゲームのようなシミュレータで
判決を決めようとする新しい試みです。
元々これはカプコンの上層部からの「裁判員制度を組み込め!」というお達しが原因らしいのですが、
変に現実感がなく、しかも最終話の最後を決めるオチにつなげたのは、残念ながら逆転裁判らしさを
損ねる結果を生みました。
従来の弁護士と検事との熱きやりとりの結果、裁判長がそれを審判するという「逆転裁判」の良さとは
正反対の要求ですから、これは要求した上層部のミスといわざるを得ません。
あそこまで形にしたのはさすがですが、根本的にその要求が厳しすぎたのかもしれません。
3.希薄感
今回は過去の作品と違い、製作スタッフが大幅に変わったそうです。
その影響か、脚本・デザイン・音楽・システムなどの連携やスタッフの楽しんでやっているという
熱意を今回は残念ながら感じられませんでした。
苦痛の中でなんとかやってる、仕方なくやっている、とにかく続きをという印象が残り、それが
作品全体に漂ってしまっています。
それが各キャラやBGMなどの印象を薄くした原因がそこにもあると思います。
また探偵パートでもいじれる箇所が異様に少ないなど、物足りなさも残りました。
4.逆転?裁判
今回全ての裁判で「逆転した!」と感じられませんでした。
理由はナルホドとガリュウ(弟)の存在でしょうね。
被告もなんらかの形で犯罪に関与しているため、スッキリしない点もモヤモヤしました。
証言や検事の作戦で追い詰められて、そこを逆転するのが醍醐味だっただけに・・・
5.新機能は必要か?
正直「逆転裁判」という作品のシステムは1である意味完成されています。
しかし続編が出るたびに”新機能”が追加されていますが、自分は必要ないと思っています。
ここまで来るとわずらわしさの方が先行してしまい、やる気をそがれることもしばしば。
プレイヤーはなぜか「前と変わらない」ということをよく言い出しますが、変えない方がいいものも
あるということを少し考えるべきかもしれません。
自分は巧さんには新システムでそちらに力を注ぐことでシナリオやキャラの作りこみの甘さに影響が出るならば、そのような判断
をした方がこのシリーズの場合うまくいくと思うんですけどね。
(宣伝しにくいなどの理由はありますが)
総合的に言えば、ゲーム単体で見れば、及第点。「逆転裁判の続編」としては不満が大いに残るという評価です。
続編を作ることは大変難しいです。趣味で自分もゲームを作っていますが、それを痛感しています。
今回は新しい「逆転裁判」を作ろうとしたが、うまくいかなかったといわざるを得ません。
1〜3をプレイしている人からすると不満が多いかもしれませんが、未プレイの方は不満はそれほど感じないのではないかと思います。
ただ3以後のナルホドくんがどうなったかが気になる方はプレイしてみるのもいいでしょう。ただ傷つくこともあると思いますので、あまり期待しないでおくことが大切かもしれません。
全体的に製作スタッフのモチベーションが低く、作品自体に愛が感じられなかったのは本当に残念です。
シナリオの流れから言っても、続編が作られることは間違いないと思いますが、次回はシリーズの正念場になるでしょう。
今回出なかった旧キャラが登場して集客は出来るかもしれませんが、それは完全に切り札です。
それよりも新章のキャラ立て・やりとりをちゃんと固めてから出ないと、今回と同じかそれ以上にまずい形になるかもしれません。
かつてのスタッフが離れてしまい、現状と過去では環境は大きく異なり大変だとは思いますが、ぜひ巧さんをはじめとするスタッフの方々にも頑張っていただきたいと思います。
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(他に取り上げて欲しいものがあれば、そちらもお知らせください。)
・逆転裁判:逆転裁判1をレビュー!
・逆転裁判2:このゲームの続編をレビュー!
・逆転裁判3:このゲームの続編をレビュー!
・逆転裁判公式サイト:体験版や製作者裏話が楽しい公式サイトです。
・たのみこむ 逆転裁判コーナー:みんなの願いが届き、サウンドトラックなどを限定発売。