ホントに斬る(斬る2改題)

どうも注意事項となるとくどくど述べたくなる傾向があって、読者諸兄には不快に思われた向きもあろうが、まあ我慢していただきたい。

さて、では実際にどのように切るか、の話になる。
基本は、損傷部の切除は最小限とし、できるだけ健康な元板を残すことが望ましい。しかし、損傷部が比較的狭い範囲に多数あったり、修理後の仕上がりがやたらにパッチだらけになったりすることが明らかな場合は、健康な部分を多少含んでも大きく切除して、大きなパッチもしくは新たなパネルをあてたほうが、仕上がりも良く、強度もあり、重量も軽くできることがある。

今回、大きく切除して新たなパネルに張り替えたのは、

というところだった。いずれも、サビで崩壊して原型が失われていたり、広範囲にわたる大きなサビ穴があったり、狭い間隔で多数のサビ穴が分布していた個所で、強度上も比較的重要な個所だ。

また、パッチ修理で済んだのは、

などだった。これらは損傷範囲が比較的小さいか、あるいは強度上それほど重要ではない個所だ。

ほかにも、強度にも居住性にも影響がなく、したがって車検にも直接影響がないので修理を保留とした、今後修理すべき個所として、

があるが、これらはパッチ修理で済みそうだ。

助手席側の切除状況
助手席の壁も床も切ったよー、と、足を通して見せるおとうさん。
子供ならくぐれるくらいの穴だ。

大きく切り取る場合、具体的な切断ラインの決定は、最小限という原則と、見てくれと作業性のバランスを考えて行う。
と一言で片付けるのはたやすいのだが、実際はこれがなかなか難しい。だいたい、どんなボロとはいえ、自分のクルマのボディを自分で切るというのは、なかなか勇気がいることなのだ。定石といえる基準がない以上、じっくり損傷部分を確認し、修理後のイメージを紙に描くとかして、設計図を引くとまではいかなくても、納得がいくまでプランを練り上げる。実際に切るのはそれからだ。
しかし、仕上がり具合は、結局はセンスがものをいうのだ。このような修理のセンスは、天性のものというよりも、場数を踏むことで身についていくものなので、初心者にはなかなか難しいものなのだ。だいたい普通の生活をしていて、リベットだの板金だの、一生のうちにどれだけ機会があるか、考えるまでもない。私はたまたま本業でこのような修理も行うことがあるので、本当の素人よりは経験を積んではいる。しかし、「それだけで食っている」本当のプロに比べたら、私など足元にも及ばないのだ。お金を頂こうというのだから、当然と言えば当然だ。悲しいけれど仕方ない。
でも、それで商売にするのでなければ、その「素人くささ」も、また味なのだと思っている。プライベートホームページと同じ、自己満足を衆目にさらすというだけのことなのだ。本人が満足していればオッケーなのだ。だから私など、そこらの小型トラックとかで、オーナーが片手間に直して、余った船底用のペンキでも塗ってあるようなやつを見ると、つい、「やるじゃないの」と思ってしまうのだ。
だからいいのだ。もしその必要があるならば、思い切ってばっさり切るのだ。どんな直し方でも、きちんとくっついていさえすれば、穴が開いているより百倍も千倍もいいではないか。
・・・と思うことができれば、あとはジグソーなりトーチなりを握るだけ。決心をつけるというのはなかなか大変なことなのだな、文字にしてみると。

今回の場合の切除の状況は、何しろ作業に集中すると写真のことを忘れてしまうので、たくさんは記録していない。それでも何とか記録していたものを、画像が多いので別ページにまとめてみた。ご覧になりたい方はこちら
しかし切ってみると、ジープはもともとのよく考えられたデザインと、コストダウンによるずさんなデザインがみごとに混在していることがわかる。車体の構造もよく理解できるし、たまには切ってみるのも悪くないかな、と思ってしまったのだった。
車体の板厚は、場所によって違っている。理想的には元の板厚と同じで修理するのがいいのだが、DIYではなかなかそうもいかないので、私は1mmの鉄板を買って使った。壁や床とは同じか少し薄いくらいのようだが、元板は塗装が厚く、塗装を削ると1mmくらいのように見える。しかし塗装を剥離材で溶かしたわけではないので、たとえノギスをつかったとはいえ、正確に測ったとはいえない。どちらにしても、ボディは一次構造部材(車体の強度を主に受け持つ部材)ではないので、まあ問題はあるまいと判断した。カバー類や荷台の壁などは、もっと薄い、屋根用のトタン板や0.6mmや0.8mmの鉄板を使った。トタンはキャラバンのマフラーの修理のために買ったものがあったし、薄い鉄板はもらいものだ。正規の厚さではないかもしれないが、まあ気にしない気にしない。DIYなんだから。


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