-----ウチのジープ掲示板「VOJ Lover's BBS」より引用-----
[35]エンジンかかりました - by おとうさん@大家族---2003/02/16/23:49
1年半、いや、2年半?以上ぶりになると思いますが、J54のエンジンをかけてみました。
車載のバッテリーはアウトなので、会社の機材用の24Vという特殊バッテリーで、機材用としては検査不合格で取りおろし、ジャンクになったものを借りてきて、つないでみました。
セルキャップが12個もある24Vバッテリー
気温はほぼ0度。車載バッテリーは巨大な95D31Rが二個直列ですが、特殊バッテリーはその一個分の半分もありません。大丈夫かな、などというのは杞憂でした。
オイルとクーラントを見て、一応大丈夫そうなので、ブースターケーブルで特殊バッテリーをつないで、しばしグロー。思わず深呼吸してから、スタート!・・・ガルルルルルルン!!
4DR5は、見事に息を吹き返したのです。
燃料ポンプが冷え切っているので、派手に煙を吹くのはしかたがありません。
にんまりしたのもつかの間、まもなく、電流計が充電から放電に振れ始めました。
コラムにも書いたとおり、乗らなくなってからこんな症状が出るのです。
いろいろ見てみると、どうもオルタネーターのブラシが当たっていないか、線が切れているような感じです。ブラシホルダを外してみると、案の定、二個あるブラシのうちの一個が引っ込んだまま引っかかっていました。ホルダの錆のせいのようです。修正して取りつけ、再始動すると、今度はバッチリ充電しました。
エンジンが温まると、排気煙もなくなりました。
一応他のシステムも見てみると、電装はまあ一部球切れはあるものの、作動はします。ブレーキはスカスカ。ただしバキュームは正常のようです。クラッチはペダルがまったく動きません。
クルマのシステムとしては、油圧系統(ブレーキ・クラッチ)のオーバーホールをすれば、一応完動にはなりそうです。
むふふふ。俄然やる気が出てきたもんね。
-----引用ここまで-----
というわけで、わがJ54は、年式相応にへたってはいるにせよ、心臓がまだまだ健康であることが確認できたわけだ。
1977-1980年式までのJ54は、騒音対策としてフレームの下に大きなアンダーカバーが付いている。ちょっとしたアンダーガードにもなるので結構なのだが、整備のときは邪魔くさいし、凹ませてしまうとゆがんで一度外したら付かなくなったりするし、騒音対策としても外部騒音が「ないよりはまし」という程度に改善されるだけで、中に乗っている者にとっては騒音反射板でしかなく、エンジンとミッションの音が余計耳につく、という代物なのだ。
この4DR5というエンジン、フードを開いてエンジンを回すと、ガチャガチャと調整不良タペットのガチャつく音や、ボムボムと低周波の吸気のサージ音、直結の冷却ファンの風切り音や、オルタネータについているバキュームポンプの音等々のノイズが排気音に加わって、今のクルマでは想像できないほどにぎやかだ。
そしてアクセルを軽く踏み込むと、グゥワァルルルルルルルゥゥゥン!と、まさに「咆哮」としか表現できないような吹け上がりを見せてくれる。
4DR5は出力数値的には80馬力と、いまどきのリッターカーにも及ばないのだが、軽いジープの車体に載せられると、低速でもストールしそうでしない粘り強さとまあまあの吹け上がりとあいまって、悪路の実用的な速度の走行や、超悪路の極低速走行にはかなりいいマッチングなのだ。
逆に高速道路はつらい。100km/h走行では平地でもほとんど常時アクセルがフロアにくっつく寸前で、強い向かい風やゆるい登りですでにペダルはフロアにくっついてしまう。登り坂で100km/hキープなど夢のまた夢、ターボなしの4DR5では、登坂車線が指定席だ。走行性能曲線を見ると、100km/hでは、勾配2%あたりで余力ゼロになる。つまり、100km/hでは、わずか2%のゆるーい上り坂で、アクセル全開の全力疾走になってしまうのだ。だから、水温計は面白いように上がっていくし、ドライバーは血の気が面白いように退いていくのだ。そして、ためらいなく左フラッシャーを出すことになる。
しかし一般道なら、逆に登坂車線に入る必要はまずない。車体が軽いので、60km/h程度の速度では、トルクに物を言わせて空気抵抗をものともせずに急坂を駆け登ってしまうのだ。減速比も4速50-60km/hで最大トルク付近を生かせる設定になっている。走行性能曲線では、4速でも60km/hでは9%、50km/hでは10%程度の登坂力がある。10%といえば、これはもうかなりの急坂だ。
ちなみに、空気抵抗は速度の二乗に比例するので、100km/hのときの空気抵抗は、60km/hのときの約2.8倍、50km/hのときの4倍、30km/hのときのなんと11倍にもなる。ジープのような角張って背の高い車体では、これがもろに効いてくる感じなのだ。
ジープの前面投影面積は2.3平方メートル(30系だけは2.42平方メートル)だが、単純化するためにジープが仮に1面2.3平方メートルの立方体として、それを100km/hで走らせるとすると、実に116kgの空気抵抗がかかるのだ。これがカウンタック(乗ったことないのでネットでデータ調べて、前面投影面積は推測(笑)、抗力係数は意外に大きい0.4で推算。巨大なエアスクープのために抵抗が大きいのだとか)なら38kgかそこらである。ジープの空気抵抗はカウンタックのなんと3倍ではないか!!
100km/h走行時のジープの駆動力は、性能曲線によれば160kgくらいだから、100km/hのジープは、空気を掻き分けるのに馬力の大半を食われてしまっているのだ。グラフでは、100km/hのとき、走行抵抗に対して駆動力の余裕は40kg位しかない。しかもこれは「全負荷」つまり、アクセル全開の状態での数値だ。
それが証拠に、強い追い風で空気抵抗が減ると、J54でも平地で(内緒だけど)110km/hは出て吹け切り状態になる。グローブボックスについているコーションプレートによれば4速の限界速度(エンジンのバルブトレーンなどが正常に動ける機械的限界として超えてはいけないレッドラインという意味だろう)は120km/h(J54)だから、(後注1)この辺が本当に実用的限界なのだろう。普通は下り坂ならともかく、平地ではまず出せないと思っていい。
ちなみに120km/hでは、立方体の仮定では空気抵抗は167kg、走行性能曲線で120km/hの駆動力は・・・ありゃりゃ、出てないぞ。スケールアウト。100km/hからグラフを延長してみると・・・おお、抵抗が駆動力を上回る。平地無風の限界速度、つまり走行抵抗に対して駆動力の余裕がゼロになるのは、107km/hくらいだ。つまり、平地では計算上4m/s以上の追い風でないと120km/h出ないわけだが、4m/sでは、120km/hに達するのに気が遠くなるような時間がかかるはずだ。実用的な感覚で120km/hを獲得しようと思ったら、まず8m/s以上の強い追い風がないと無理だろう。(後注2)
だからジープは、幌を外すと少し加速がよくなるし、風防を倒すとさらに別物のように速くなるのだ。風による「体感速度」の違いだけではない。ほんとに速くなる。前面投影面積が減り、形状も変わるためだ。
・・・なんか柳田理科雄さん(空想科学研究所)みたいになっちゃったな(笑) <<じつは大好きだったりする。
今回トラブった「オルタネーター」とは、クルマの発電機のことだ。普通は「ファンベルト」で駆動される。構造的には、交流発電機と整流器が一体になっていて、直流を出力する。チャリのダイナモも交流発電機だが、永久磁石がローターとして回転するチャリダイナモとは違って、オルタネーターはローターに界磁(フィールド)コイルが巻かれ、そこに電流をくれて「電磁石」として回転させることで磁界の変化を作り、ケース内側に巻かれた3本の発電コイルに電流を発生させる。その際、各コイルには交流が発生し、120°ずつ位相をずらされた3本のコイルをまとめると、三相交流が出力される。その交流を整流器で直流にして取り出しているのだ。
で、回転する界磁コイルに電流を送るための部品が「ブラシ」という、カーボングラファイトの小さな塊なのだ。大昔は本当にブラシ状の部品をローター軸の電極に接触させて通電していたらしく、「ブラシ」の名はその名残である。
このブラシは、ローター軸の「スリップリング」という環状電極に、ばねの力で接触している。高速回転する金属の輪に接触しているわけだから、摩耗して短くなってくる。短くなると、ばねの力で「ブラシホルダ」という筒の中をどんどんローターに押されていくわけだ。そのブラシホルダの内面が錆びていて、ブラシが引っかかりやすくなっていて、ブラシの摩耗か、はたまたスリップリング表面のわずかなうねりかベアリング軸のわずかなガタかなにかで、少し引っ込んだブラシが出て来れなくなり、界磁コイルに電流が行かなくなって、発電しなくなったのだ。
ジープにはアンメータ(電流計)が装備されていて、バッテリーの充電/放電を指示させている。ゲージの中央が0で、バッテリーが放電中はマイナス、バッテリーが充電中はプラスの指示になる。エンジンをかけずにライトをつけたりすると大きくマイナスに振れるし、エンジン始動直後はバッテリーが弱っていて充電電流が増えるため、エンジンをかけてちょっとの間はかなりプラスに振れる。走行中は、ほとんど0付近でわずかにプラスであれば正常だ。ライトをつけたりモーターを回したりすると、起動の瞬間は大きな電流が流れてオルタネーターの出力制御が追従できず、一瞬ピクンとマイナス側に振れて、すぐに元に戻る。
このアンメーターのおかげで、電源系統の不具合は早期に発見できるのだ。
ちなみに、バッテリーは基本的にエンジン始動専用電源であり、エンジンがかかっている間は、バッテリーは次の始動に備えて常にオルタネーターで充電されているのが普通だ。ただ、アイドリングではオルタネーターの出力が十分に得られないため、雨の夜の渋滞中などで、アイドリングでライトやワイパー、エアコンにオーディオなどをつけまくっていれば、充電が追いつかなくなり、バッテリーから放電しなければならなくなって、あげくにバッテリーが上がってしまうことがまれにあるので、注意が必要だ。エアコン自体はエンジンでベルト駆動されているが、エアコンのクラッチが電磁クラッチで、これがかなり電力を食う。もっとも、バッテリーがよほどへたっていなければそんな心配はないし、そのうえジープはエアコンないし、AMラジオはほとんど電気食わないし、ジープみたいな超シンプルな電装では、あまり心配ないかな。
車種 | ガソリン車 (H-J26,H-J26H,H-J38, H-J46,H-J56,H-J58) | ディーゼル車 (J24,J24H,J36,J44,J54) |
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トランスファ位置 | 高速 | 低速 | 高速 | 低速 | |
ギ ア 位 置 |
1速 | 40 | 16 | 30 | 12 |
2速 | 73 | 29 | 54 | 21 | |
3速 | 97 | 38 | 72 | 28 | |
4速 | 120 | 52 | 100 | 38 | |
後退 | 42 | 17 | 31 | 13 |