<補 遺>
このページは 「増補落語事典」の「補遺」の項で紹介されている演題です 。

 ※赤文字の見出しは新たに追加した演題



明石飛脚
<おもな演者>米朝
飛脚ネタ三題の1つ目。この後『雪隠の飛脚』『うわばみ飛脚』へと続く。
CD集「桂米朝上方落語大全集 第一期」8巻(2006、東芝EMI)に収録されたのち、
2020年にユニバーサルから「桂米朝 昭和の名演 百噺」8巻として単品発売された。

後に心(後に心がつかぬ)
<おもな演者>新左衛門
寄席で時間が無い時の逃げ噺を、曽呂利新左衛門が明治期にSPレコードに残した。
復刻CD「落語蔵出しシリーズ」9巻(1998、コロムビア)に収録がある。

尼 恋(尼恋い)
<おもな演者>2小南
上方落語。無筆の男が、尼になった娘に恋心を抱く。
1974年発売のレコード「桂小南集」(CBSソニー)の特典盤に収録された。

按摩控帳
<おもな演者>2円枝
サゲがそのままタイトルになった短い落語。
上方で大正~昭和初期に活躍した2桂円枝のSPレコード音源が
CD-ROM「ご存じ東西噺家紳士録」(2005、エーピーピー)に収録されている。



犬の無筆(無学の犬)
<おもな演者>2春団治
犬の出てくる短い上方落語。2春団治がやった。
CD集「二代目桂春団治 ライブ十番」別巻(2011、日本伝統文化振興財団)所収。
2008年に九雀の高座で、『元犬』に続けて演じたのを聴いたことがある。

いもりの黒焼
<おもな演者>米朝
モテない男が策を講じる上方落語。
前半は『色事根問』(別項参照)と全く一緒。後半はかなりSFがかる。
米朝の高座音源がたびたび出ているが、あまり他の演者に広まらない。
CD「特選!!米朝落語全集」40集(1993、東芝EMI)他に収録。

色事根問(恋根問)
<おもな演者>仁鶴/他多数
上方の根問物の定番として広く演じられる噺。
「一見栄、二男、三金、四芸、五精、六おぼこ、七セリフ、八力、九胆、十評判」
のくだりを覚えれば自由に創作できそう。
東京では『恋根問』のタイトルで演じられることがある。



謡大根(大根売)
<おもな演者>4円蔵
吃音の大根行商人の噺。元は三題噺だったとのこと。
四代目橘家円蔵の貴重なSP音源が、
CD集「昭和戦前面白落語全集 東京篇」(2006、日本音声保存)に収録された。

鰻 谷
<おもな演者>円都
大阪市南区にある地名の由来の噺。橘ノ円都が演じた。
CD「ビクター落語 上方篇 初代橘ノ円都」2巻(2004、ビクター)に高座が収録されていて、
ここでは『鰻屋(素人鰻(2))』に続けている。

うわばみ飛脚
<おもな演者>米朝
飛脚ネタ3題の3つ目。『明石飛脚』『雪隠の飛脚』の後に続く。
CD集「桂米朝上方落語大全集 第一期」8巻(2006、東芝EMI)に収録されたのち、
2020年1月にユニバーサルから「桂米朝 昭和の名演 百噺」8巻として単品発売された。



絵 図(上下のしるし)
<おもな演者>五郎兵衛(五郎)
短いバレ噺。五郎兵衛は大家のお嬢様を出すが、武家の娘のパターンもあるとのこと。
『上下のしるし』の題でCD「露の五郎 とっておきの艶噺」(1998、クラウン)所収。



大安売り
<おもな演者>6文枝(三枝)/4文我/他多数
寄席向きで笑いの多い相撲ネタ。東西で演者多数。
その割にCDは4文我の「おやこ寄席ライブ」1巻(エーピーピー)など、あまり種類が無い。
6文枝が前名・三枝時代の1976年、ポリドールからレコードリリースしている。

お好み吸物
<おもな演者>五郎兵衛(五郎)
卵入りのお吸い物にまつわる、頓智の効いたバレ噺。
CD「露の五郎 とっておきの艶噺」(1998、クラウン)に収録がある。

おさん茂兵衛(2)
<おもな演者>米朝
バレ噺。同題の別項(1)とは、登場人物に経師屋がいる以外共通点が無い。
1988年発売のCD「桂米朝 艶笑上方落語いろはにほへと」(東芝EMI)所収。

落ちゃるか(おちゃるか/ゆらしゃるか)
<おもな演者>米朝/露の五郎
忠臣蔵七段目のエピソードのパロディ。小咄として演じられることが多い。
五郎兵衛がCD『落語仮名手本忠臣蔵』(1997、クラウン)で一席物として演じている。

鬼薊清吉(鬼あざみ)
<おもな演者>文紅
江戸期に実在した盗賊・鬼坊主清吉をモデルにしたという、上方の人情噺。
4桂文紅が40余分かけてじっくり演じた高座が、
CD「ビクター落語 上方篇」(2006、ビクター伝統文化振興財団)から出ている。

鬼の面
<おもな演者>桂雀三郎
民話のような趣きのある上方落語。小佐田定雄の脚色によって桂雀三郎が復活させた。
大阪MBS「特選!!米朝落語全集」などで雀三郎が口演している。
ネット情報によると、東京では林家しん平が持ちネタにしているとのこと。

お初徳兵衛
<おもな演者>志ん生/10馬生
『船徳』(別項参照)の元となった人情噺。志ん生・10馬生が持ちネタにした。
また五街道雲助は、『船徳(表記は『舟徳』)』とまとめて収録したCDをリリースしている。
2014年にソニーが発売した「朝日名人会 ライヴシリーズ98 五街道雲助」9巻に収録がある。






戒名書き
<おもな演者>米朝
お彼岸の大阪・天王寺を舞台にした上方の小咄。
CD「米朝珍品集」2巻(1989、東芝EMI)に『しゃらりぶらり』『悟り坊主』とともに
『小咄 天王寺三題』のタイトルで収録されている。

改良善哉(ぜんざい公社)
<おもな演者>桃太郎/2小南/他多数
『ぜんざい公社』の題で上方では超スタンダード。
2桂春蝶や4春団治(春之輔)など大御所のCDリリースもある。
東京では2小南から芸協中心に広まり、2001年にはキングから昔昔亭桃太郎のCDが出た。

蛙の牡丹餅(おはぎ大好き)
<おもな演者>円窓
1999年5月のNHKラジオ「真打ち競演」で三遊亭円窓が口演。
「増補落語事典」に掲載された人物設定と違うのは、民話を元に円窓が創作したため。
主だった筋立ては全く同一なので、ここで紹介した。

嬶違い
<おもな演者>文太
上方落語。長屋を舞台にした、夫婦2組のドタバタ劇。
5文枝の持ちネタで、門弟の桂文三(前名・つく枝時代)の高座を2度聴いた。
桂文太がABCラジオ「土曜名人会」で口演した音源がある(放送時期不詳)。

鏡 屋(鏡屋女房)
<おもな演者>米朝
都会見物に来た田舎者の勘違いネタの一つ。
CD「米朝珍品集」1巻(1989、東芝EMI)には『鏡屋女房』の題で収録されている。

加賀見山
<おもな演者>五郎兵衛(五郎)
1小文治もやったという芝居ネタ。上方の芝居噺の特徴である、じっくり芝居を演じて見せる演出。
五郎兵衛が五郎時代、1999年5月のNHK教育(現・Eテレ)「日本の話芸」他で演じた。

風の神送り(2)
<おもな演者>米朝
米朝が復活させた上方落語のうちの一つ。
古くから伝わる風の神送りの風習を、お囃子をまじえて賑やかにやる。
CD「特選!!米朝落語全集」21巻(1991、東芝EMI)所収。
03年1月にNHKラジオ「真打ち競演」で、東京の三遊亭好楽が演じたのを聴いたことがある。
同題の(1)は小咄(別項参照)。

刀屋丁稚(波平行安/刀屋小僧)
<おもな演者>五郎兵衛(五郎)
「増補落語事典」では『刀屋丁稚』と『波平行安』が別話扱いになっているが、
『波平行安』のサゲの後、会話が数言加わる程度しか違わないので、ここでは同じ噺とみなす。
復刻CD「春団治三代 初代桂春団治」11巻(1999、クラウン)に『刀屋小僧』の題で収録。
レコードでは、露の五郎兵衛が1馬の助と二人で収録した
「真打による東西前座ばなし」3巻(1975、キャニオン)がある。

釜 猫
<おもな演者>米朝
上方の若旦那ネタ。演じ手がほとんどいなかったが、米朝によって復活された。
CD「米朝珍品集」2巻(1989、東芝EMI)所収。

蟇の油(2)
<おもな演者>円生
おなじみ『蟇の油』(別項(1)参照)のお色気バージョン。
1985年にコロムビアから出たテープ「ききたい落語家ベストシリーズ 円生ライヴ篇」6巻に
収録されたが、その後CD化はされていないようだ。

軽石屁
<おもな演者>九雀
上方落語。『東の旅』シリーズの一つに含まれる旅ネタ。
小佐田定雄が脚色したものを桂九雀が持ちネタにした。
2010年にテイチクからCDとDVDがそれぞれリリースされた。

軽業講釈
<おもな演者>5文枝
5文枝が前名・小文枝時代に復活させた上方落語。
高座とお囃子が一体となって大盛り上がりの一席。
CD集「五代目桂文枝上方噺集成」(1998、ソニー)に収録がある。



鬼門風呂
<おもな演者>円都
易学にまつわる上方落語。橘ノ円都が晩年、艶笑味をまじえてNHKで口演した。
その時の高座がCD「ビクター落語 上方篇」3巻(2004、ビクター伝統文化振興財団)に収録。

京名所
<おもな演者>多数
上方の『東の旅』シリーズの一つ。
『三十石』の冒頭の名所ガイドの部分で、ここだけ独立して演じられることは無い。

近所交際(近所付き合い)
<おもな演者>6松鶴
何ともあっけらかんとした江戸時代のフリーセックス?のバレ噺。
スタジオ収録で6松鶴がかなりきわどく演じている。
CD集「六代目笑福亭松鶴 上方はなし」(2004、ビクター伝統文化振興財団)に収録。

金弥め(欣弥め)
<おもな演者>談志/馬風
お姫様の寝間で「欣弥めにござりまする」と家来が繰り返す、知る人ぞ知るバレ噺。
CD集「談志百席 第二期」13集(2005、竹書房→2010年コロムビアから単品発売)に
談志のスタジオ録音口演が収録された。他に馬風のCDもある。
「増補落語事典」の表記は『金弥め』だが、CDの表記はいずれも『欣弥め』。



口合按摩(口合あんま)
<おもな演者>1南天
口合(シャレ)の得意な子連れ按摩の噺。
2006年、東芝EMIのCD集「桂米朝上方落語大全集」の特典盤として
1桂南天の貴重な音源が収録されたもの。
ちなみにレコード集が完結した1976年にも、特典盤として同じ音源のレコードが付いた。

首提灯(2)(上燗屋)
<おもな演者>枝雀/ざこば/6松喬/他多数
東京版の『首提灯(1)』(別項参照)は酔漢が田舎武士に絡む場面から始まるが、
上方版では、上燗屋の客が支払い銭をくずしに露店の道具屋へ出向く。
そこで購入した真剣を握っているうちに、突然試し斬りがしたくなって…という流れ。
従って(1)と(2)は、タイトルとサゲ以外全く内容に接点が無い。
前半の上燗屋のくだりだけで『上燗屋』の題で口演されることもある。

首の仕替え
<おもな演者>7松喬(三喬)
『首屋』(別項参照)をひと回り笑いの多い構成にしたような落語。
2012年1月発売のCDブック「落語 昭和の名人 完結編」25巻(小学館)に
桂文紅の口演音源が収録されたが、それ以外の市販は無いようだ。
かつてCS伝統文化放送の落語番組で、笑福亭三喬(現・7松喬)の高座が放送された。
余談だが、「増補落語事典」には『顔の仕替え』という別話が載っていてまぎらわしい。



芸子草(芸妓草)
<おもな演者>5小円太
『植木のお化け』と似た趣向の、上方の音曲噺。現在は誰もやらない。
CD-ROM「東西噺家紳士録」(2000、エーピーピー)には『芸妓草』の題で、
音曲が得意だったという5橘家小円太のSP音源が収録されている。

喧嘩の仲裁
<おもな演者>1春団治
上方落語。『長持』(別項参照)の前半部分が独立して一席になったもの。
『長持』は艶笑落語に含まれるが、こちらのストーリーには艶笑味は無い。
1999年発売のCD「春団治三代 初代桂春団治」11巻(クラウン)所収。



幸助餅
<おもな演者>4染丸
相撲取りとタニマチの関係を描いた上方の人情噺。歌舞伎や松竹新喜劇で舞台化もされた。
2008年発売のDVD集「上方噺 林家染丸の世界」(よしもとアールアンドシー)に
4染丸の高座が収録されているが、単品発売は今のところ無いようだ。
NHK教育(Eテレ)「日本の話芸」では、2007年に4染丸、2017年に春之輔(現・4春団治)の放送があった。

腰 布(腰巻しらべ)
<おもな演者>1福郎
『鈴振り』の女性バージョンともいえる艶笑ネタ。1森乃福郎は『腰巻しらべ』の題でやった。
CD「抱腹絶倒 上方お色け噺 上方落語名人選」(2005、ケイエスクリエイト)所収。

五里五里(五里五里いも)
<おもな演者>2春団治
小咄程度の短い噺。CD「春団治三代 二代目桂春団治」3巻(1999、クラウン)に収録された。
東京では彦六が『三百植木』のマクラにやっていたのを聴いたことがある。

こんな顔(のっぺらぼう)
<おもな演者>11文治(平治)/彦六(8正蔵)
寄席の短い時間向けの怪談噺。近年は『のっぺらぼう』のタイトルが主流。
11文治が前名・平治時代の2010年に『のっぺらぼう』の題でCDリリースしている。
「桂平治名演集」6巻(ポニーキャニオン)所収。
彦六は『権兵衛狸』のマクラで小咄としてやっていた。






逆い夢(大和橋)
<おもな演者>1ざこば
大阪の地名を題材にした古い上方落語。
CD-ROM「ご存じ東西噺家紳士録」(2005、エーピーピー)に収録がある。

佐野山
<おもな演者>10馬生/権太楼/南光/他多数
講談『谷風の情相撲』としておなじみ相撲ネタ。
現在の相撲の年寄名跡「佐ノ山」とは文字表記が違うのでご注意。
CD「日本の伝統芸能シリーズ 落語」13巻(1995、テイチク)他に収録がある。



地口合わせ(ぢぐち)
<おもな演者>4左楽
ご隠居と八五郎が地口(ダジャレ)合戦をやりあう噺。
エピソードが多かったことで後世に名を残した4柳亭左楽の貴重なSP音源が残っていて、
レコード収録の際、時間を間違えたのか、「えっ」という声とともに口演がプツリと終了している。
2008年発売のCD「芸能全集<SP盤復刻>明治・大正 寄席名人集」(コロムビア)所収。

地獄八景(地獄八景亡者戯)
<おもな演者>米朝/枝雀/他多数
フルで口演して70分近くかかる、上方の大ネタ中の大ネタ。
古くからある地獄の描写と、新しい社会風俗のクスグリを作る、両方の力量を要す。
米朝が戦後復活させてオハコにしたのち、門弟を中心に演者が増え、
春風亭小朝や立川生志ら東京の落語家も高座にかけるようになった。
東京の『地獄めぐり』(別項参照)は、この一部を切り取ったものだろう。

下 口
<おもな演者>五郎兵衛(五郎)/5文枝(小文枝)
新婚夫婦が登場する上方のバレ噺。橘ノ円都が演じ、5文枝に伝えた。
CDでは「露の五郎 とっておきの艶噺」(1998、クラウン)所収。
上方艶笑落語テープ集「秘蔵版・上方艶笑落語」(エヌジーシー)には
5文枝の小文枝時代の高座が収録されている。

七両二分
<おもな演者>10馬生/円生
近所同士の浮気を題材にした、短い艶笑落語。
CD「スーパー落語1500 傑作小ばなし55話」(1994、ビクター)に10馬生の口演がある。
円生では、1985年発売のテープ「ききたい落語家ベストシリーズ」6巻(コロムビア)に
『艶笑噺』(『七両二分』『品川の豆』『蟇の油』の3席)のタイトルで収録されているが、
この音源のCD化はされていないようだ。

写真屋盗人
<おもな演者>2春団治
2春団治が残した上方の泥棒噺。戦後の流行風俗が見えて楽しい。
CD集「二代目桂春団治 ライブ十番」別館(2011、日本伝統文化振興財団)所収。

しゃらりぶらり(四百ぶらり)
<おもな演者>米朝
お彼岸の大阪・天王寺を舞台にした上方の小咄。
CD「米朝珍品集」2巻(1989、東芝EMI)に『戒名書き』『悟り坊主』とともに
『小咄 天王寺三題』のタイトルで収録されている。
またCD-ROM「古今東西噺家紳士録」(2000、エーピーピー)には、
『四百(しひゃく)ぶらり』のタイトルで3文団治のSP復刻音源が収録されている。

商売根問(茶栗柿麩)
<おもな演者>米朝
商売の失敗談を並べた、上方の根問物。
2006年にCD集「桂米朝上方落語大全集 第一期」7巻(東芝EMI)に収録されたのち、
2020年に「桂米朝 昭和の名演 百噺」(ユニバーサル)から単品発売された。
ちなみに筆者は2立花家花橘が「茶栗柿麩」の題で演じたSP音源を持っている。

菖蒲売り(せんだん菖蒲)
<おもな演者>五郎兵衛(五郎)
菖蒲が咲く季節の上方落語。聞き違いからひと騒動起こる。
露の五郎兵衛(五郎時代)のレコード「艶笑落語傑作集」4巻(1977、ビクター)や、
1988年に同音源を使った通販テープ集「艶ばなし名人選」など市販音源はあるが、
それ以外にCDとしては世に出ていないようだ。

知れたこと(煙草返し知れたこと)
<おもな演者>1枝雀
上方の色街が舞台の落語。1桂枝雀がSP音源を残した。
CD-ROM「ご存じ東西噺家紳士録」(2005、エーピーピー)に収録がある。

神道又(三年酒)
<おもな演者>米朝
『三年酒』の題で米朝だけが演じた、珍しい上方落語。昔の宗教の慣習が噺の基礎にかかわる。
CD集「桂米朝上方落語大全集 第二期」17巻(2006、東芝EMI)に収録されたのち、
2020年1月に「桂米朝 昭和の名演 百噺」17巻(ユニバーサル)として単品発売された。



西瓜売り(穴門の西瓜売り)
<おもな演者>1南天
大阪・南御堂が舞台の上方落語。
昔の南御堂には穴門(あなもん-石垣などをくり抜いて造った低い門)があって、
ここが涼しかったため、西瓜売りには格好の場所であったという。
CD-ROM「東西噺家紳士録」(2000、エーピーピー)に1桂南天の貴重な音源が収められた。



石塔陰門(墓場の若後家)
<おもな演者>1福郎/10文治
亡夫を思う後家さんが艶っぽいバレ噺。1森乃福郎の持ちネタ。
CD「抱腹絶倒 上方お色け噺 上方落語名人選」(2005、ケイエスクリエイト)所収。
小咄としては10文治の口演がCD「スーパー落語1500 傑作小ばなし55話」(1994、ビクター)にある。

切 腹(米屋の腹切り)
<おもな演者>5小勝
金を借りた武士が店に来て借金の弁明をする、他の借金取り撃退劇とは逆の噺。
1970年にキングから出た10枚組レコード「日本落語大全集」2巻に5三升家小勝の音源が収録。

節 分(ふぐは口)
<おもな演者>3金馬/柳枝
『掛取万歳』(別項参照)の節分バージョン。昔は大晦日に集金できない時、節分に集金した。
CD「三代目三遊亭金馬 落語傑作集」6巻(1996、コロムビア)に『ふぐは口』の題で収録。

雪隠壺(祝いの壺)
<おもな演者>米朝
東京の『こいがめ(家見舞)』(別項参照)とほぼ同じ筋立ての上方落語。読みは「せんちつぼ」。
後半ババア芸者が登場して、『こいがめ』とは違ったサゲになる。
CD「米朝珍品集」5巻(1989、東芝EMI)所収。

雪隠の飛脚
<おもな演者>米朝
飛脚ネタ3題の2つ目。『明石飛脚』と『うわばみ飛脚』の間に入る。雪隠の読みは「せんち」。
CD集「桂米朝上方落語大全集」第一期8巻(2006、東芝EMI)に収録されたのち、
2020年1月にユニバーサルから「桂米朝 昭和の名演 百噺」8巻として単品発売された。



そってん芝居
<おもな演者>吉朝
そってんそってん、と芝居のお囃子に乗って仕事をする床屋が登場する上方落語。
後半は東京の『蔵前駕籠』(別項参照)と同じ内容。
夭折した吉朝の遺作CD「桂吉朝 吉朝庵 形見噺」(リリース2006年、東芝EMI)に
遺作『弱法師(よろぼし)』とともに収録された。






代書屋(代 書)
<おもな演者>3春団治/枝雀/権太楼/他多数
3春団治の十八番。枝雀の稀代のキャラクター・松本留五郎を生んだ噺。
米朝の師匠・4米団治の作で、米朝が原作をきっちり踏襲した戦前の型で口演する音源も存在する。
近年は東京でも広く演じられ、権太楼のオハコの一つになっている。

大名道具
<おもな演者>馬風/五郎兵衛(五郎)
大名が自分の持ち物を神頼みで取り換える、マンガチックなバレ噺。
演芸研究家の小島貞二が発掘し、鈴々舎馬風のために新たに脚色して提供した。
CD「風流艶くらべ」5巻(2000、キング)に馬風のライブ音源が収録された他、放送にもかけている。

痰医者(たん医者)
<おもな演者>桂文左衛門(2文枝)
上方の古い医者噺。CD-ROM「東西噺家紳士録」(2000、エーピーピー)所収。
「落語レコード八十年史」下巻(1987、国書刊行会)に速記が掲載されている。



近目の煮売屋
<おもな演者>米朝
上方の商売人泣かせシリーズの一つ。噺自体は短く、あまり演じ手がいない。
CD「米朝珍品集」4巻(1989、東芝EMI)に収録された。

ちしゃ医者(チシャ医者)
<おもな演者>枝雀/1春団治
田舎の藪医者と使用人が出てくる上方落語。
使用人が仕事の無い先生を思い、流れ星にお祈りする枝雀の演出はホロリとする。
CD「枝雀落語大全」11巻(2000、東芝EMI)所収。他に1春団治のSP復刻CDもある。
枝雀の他、東京の6月の家円鏡が持ちネタにしているとのこと。

茶漬間男(二階借り/お茶漬)
<おもな演者>米朝/柳昇
上方の艶笑落語。『二階の間男』(別項参照)とほぼ同じ内容。
柳昇が口演した『お茶漬』は、CD「談志が選んだ艶噺し」12巻(2000、コロムビア)所収。



月並丁稚
<おもな演者>3春団治
上方落語。『粗忽の使者』(別項参照)の丁稚定吉バージョン。
3春団治のCDが「春団治三代 三代目桂春団治」1巻(1999、クラウン)他から出ている。

つづら(つづらの間男)
<おもな演者>10馬生/雲助
間男をつづらに閉じ込めて運び出す珍しい噺。
10馬生が「十代目金原亭馬生 十八番名演集」3巻(2007、コロムビア)、
雲助が「キング落語名人寄席」(2001、キング)と、師弟それぞれのCDがある。



出歯吉
<おもな演者>1小文治/4染丸(染二)
出歯吉という男と小照という女郎の騙し合いを描く上方落語。
1976年発売のレコード「落語名人選」7巻(CBSソニー)に1小文治の口演が収められた。
CDでは「秘蔵版・上方艶笑落語」(2013、ケイエスクリエイト)に
4染丸(染二時代の1987年収録)の高座が出ている。

天狗刺し(天狗さし)
<おもな演者>米朝
マヌケな男が分不相応に珍しい商売をしようと試みる上方落語。
CD「特選!!米朝落語全集」1巻(1989、東芝EMI)所収。
2020年にはCD「桂米朝 昭和の名演 百噺」17巻(ユニバーサル)として再発売された。

電話の散在(電話の遊び/電話室)
<おもな演者>雲助/4染丸
電話が普及しだした時代の空気感が味わえる、古風な噺。
元は上方落語で、4染丸から門弟に受け継がれている。
東京では『電話室』または『電話の遊び』のタイトルで演じられていて、
五街道雲助のCD「朝日名人会ライヴシリーズ50 五街道雲助」2巻(2008、ソニー)が出ている。



動物園
<おもな演者>米朝/5文枝/雀々/他多数
寄席などでは東西ともに超スタンダード。
上方は移動動物園の虎、東京は珍獣動物園のホワイトライオンと、東西の演出は異なる。
演者は多いものの、短い落語のため市販音源が少なく、特に東京版のCDが無いのは残念。
枝雀の英語落語『WHITE LION』はCD「枝雀落語大全」38巻(2001、東芝EMI)に収録。

殿様だんご(殿様団子)
<おもな演者>4円馬
士族の商法で団子屋を始める、明治期の殿様の噺。
かつて4円馬が持ちネタにしたのを、芸協の3橘ノ円・2小文治らが受け継ぎ、さらに若い世代にも伝わっている。
4円馬の音源はCD集「古典落語の巨匠たち 第二期」(1998、ゲオ販売)所収。

トンボとり(トンボさし/やんま釣り)
<おもな演者>五郎兵衛(五郎)
子供の出てくるバレ噺。五郎兵衛は『やんま釣り』の題で演じる。
CD「露の五郎 とっておきの艶噺」(1998、クラウン)所収。






鍋墨大根
<おもな演者>米朝
上方落語。買い物上手のおかみさんにやられる大根行商人の噺。
米朝と一部の門弟しかやらず、いまだに市販音源が無い。
大阪・MBSの「特選落語全集」で1999年頃に放送されたらしい。
また「米朝落語全集」5巻(初版1981、創元社)には速記が掲載されている。



猫の恩返し
<おもな演者>志ん生
回向院にある猫塚の由来の物語という点で『猫定』(別項参照)と似ているが、
川戸貞吉著「落語大百科」4巻(2002、冬青社)によれば、こちらの方が由来としては正しいらしい。
志ん生が晩年に一度だけ口演した音源が、1975年ビクターからレコードリリースされたのち、
テープ「ちくまカセット寄席 古今亭志ん生」12巻(1994、筑摩書房)等、数社から出ている。
ちなみに講談『猫塚の由来』とは無関係。



能狂言
<おもな演者>円生/4文我
殿様が家臣を困らせるシリーズの一つ。
CD「円生百席」34巻(1997、ソニー)に収録がある。「円生全集」(青蛙房)には未掲載。
「増補落語事典」の解説には「米朝もやる」とあるが、「米朝落語全集」(創元社)にも未掲載。
米朝の孫弟子の4文我がCD「四代目桂文我」2巻(2001、エーピーピー)に収め、速記も残している。

覗き医者(のぞき医者)
<おもな演者>3文我
3文我がやった上方の珍しい艶笑落語。覗きからくりの口上が聴き所。
CD「ライヴ上方艶笑落語集」9巻(1996、コロムビア)他からリリースされた。






百人坊主
<おもな演者>米朝
東京の『大山詣り』(別項参照)は上方演出だと設定やサゲ周辺が異なっていて、
「増補落語事典」では『百人坊主』の題で別項目になっている。
ただし東京の8柳枝や8可楽は『百人坊主』の題を使っていた。
2006年発売のCD集「桂米朝上方落語大全集 第三期」29巻(東芝EMI)に収録されたのち、
2020年1月に「桂米朝 昭和の名演 百噺」29巻(ユニバーサル)が単品発売された。

ヒョットコそば
<おもな演者>蔵之助/遊三
2006年9月のチバテレ「浅草お茶の間寄席」で、橘家蔵之助が口演。
蔵之助はサゲで手拭いを使い、百面相のヒョットコの顔を作っていた。
また、三遊亭遊三が『時そば』のマクラの小咄として演じたのも聴いたことがある。



福禄寿(1)
<おもな演者>円生/さん喬
円生が落語家人生の最晩年に持ちネタとした人情噺。
2007年発売「ビクター落語 六代目三遊亭円生」12巻(ビクター伝統文化振興財団)所収。
最近ではさん喬が持ちネタにしていて、CDが複数の会社から出ている。
ちなみに同題の(2)は福禄寿の長い頭をネタにした短い噺。

無精風呂
<おもな演者>3金馬
正岡容が『無精床』を参考に書いたという新作。
復刻CD集「昭和戦前面白落語全集 東京篇」(2006、日本音声保存)に
3金馬のSP復刻音源が収録されている。

冬の遊び(2)
<おもな演者>米朝
昔の大阪・新町を舞台にした、スケールの大きなお茶屋噺。
CD「米朝珍品集」1巻(1989、東芝EMI)所収。
「増補落語事典」掲載の同題(1)も上方噺だが、そちらは近年演じられず、音源も無い。

風呂敷丁稚
<おもな演者>2春団治
小咄程度の短いネタ。ご隠居と丁稚のリフレインのやりとりが笑える。
CD「春団治三代 二代目桂春団治」1巻(1999、クラウン)所収。



牡丹湯
<おもな演者>1春団治
田舎の二人組が上方見物をする噺。近年は演じ手がいない。
SP復刻CD「春団治三代 初代桂春団治」5巻(1999、クラウン)に収録がある。
米朝の著書「米朝落語全集」7巻(1982、創元社)には『上方見物』の題で紹介されている

法華坊主
<おもな演者>米朝
上方の小咄程度の短いネタ。ニワトリの鳴き声が別の言葉に聞こえる噺。
昔の寺社や信仰を題材にした珍しい噺の音源は、ほぼ米朝の一手引き受け状態。
宗教にまつわる落語は放送になかなか乗らないので、記録用の価値として大変貴重。
CD「米朝珍品集」4巻(1989、東芝EMI)に収録された。

本能寺
<おもな演者>米朝
上方の芝居噺で、みっちりお芝居を演じる場面のある「見る落語」。
「三日太平記」というお芝居を、ギャグをまじえつつダイジェストで演じる。
米朝が復活させ、門弟などに受け継がれている。
DVD「特選!!米朝落語全集」9巻(2002、東芝EMI)に映像が残されている。






まちがい(息子の結婚)
<おもな演者>笑三/10文治/米朝
東西で演じられる艶笑小咄。一席に延ばしてやることもある。
艶笑小咄集には結構な確率で収録されている。
三笑亭笑三は寄席や放送で『息子の結婚』や『異母兄妹』などのタイトルで高座にかけた。

松医者
<おもな演者>米朝
ご家老が大事にしていた松の木が枯れかけたことから始まる、上方の掌編。
CD「米朝珍品集」4巻(1989、東芝EMI)所収。






宿屋陰門(宿屋かか)
<おもな演者>五郎兵衛(五郎)/1福郎
宿屋の常連客が主人に無理な注文をする、上方のバレ噺。
市販音源では『宿屋かか(または宿屋嬶)』のタイトルが使われる。
CD「廓噺・艶噺集成」(1997、クラウン)他に収録。
5小さんが小咄として演じたCD「スーパー落語1500 傑作小ばなし55話」(1994、ビクター)もある。

宿屋町
<おもな演者>米朝/枝雀
上方の『東の旅』シリーズの一つ。
『瘤弁慶』の宿屋逗留までのくだりで、この部分が独立して演じられることは無い。

矢橋舟
<おもな演者>米朝/枝雀
上方落語『東の旅』シリーズの一つ。登場人物の設定が巧みに入り組んでいて面白い。
CD集「桂米朝上方落語大全集 第三期」30巻(2006、東芝EMI)に収録されたのち、
2020年1月に「桂米朝 昭和の名演 百噺」(ユニバーサル)として単品発売された。



湯巻ほめ(湯文字誉め)
<おもな演者>3文我
男が腰巻をしていた時代の古風な艶笑落語。3文我の持ちネタだった。
CD「上方落語名人選 秘蔵版上方艶笑落語」(2013、ケイエスクリエイト)他に所収。

湯屋の娘(風呂屋)
<おもな演者>笑三
風呂屋が舞台のバレ小咄を、三笑亭笑三が一席サイズに延ばした高座音源がある。
エヌジーシーの通販テープ集「秘蔵版 艶笑落語」(発売時期不詳)所収。



揚子江
<おもな演者>五郎兵衛(五郎)/1福郎
中国のスケールが大きなバレ噺。
五郎兵衛の口演がCD「廓噺・艶噺集成」(1997、クラウン)他に収録がある。

欲の熊鷹
<おもな演者>6松鶴
上方落語。笑福亭系のお家芸である妄想展開ネタ。
タイトルは「欲の熊鷹 股裂くる(欲が深すぎると災いを招く)」という故事から。
7松鶴を追贈された松葉のCD「珍品抱腹 上方お色け噺 上方落語名人選」(2005、ケイエスクリエイト)所収。
テレビでは6松鶴の1979年の落語研究会の高座が、TBSで1983年と1987年の二度オンエアされた。






災は下から(禍は下)
<おもな演者>米朝
上方落語。東京の『権助魚』(別項・『熊野の牛王』参照)にもうひと展開加えた噺。
米朝は『禍は下』のタイトルで演じた。現在門弟の桂宗助らが持ちネタにしている。
1997年の大阪・MBS「特選落語全集」で放送された。

綿医者
<おもな演者>喬太郎
「増補落語事典」に掲載されたあらすじを元に、喬太郎がオリジナリティ強めに構成した。
2011年発売のDVD「柳家喬太郎 寄席根多独演会」(コロムビア)に収録されている。



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