<た 行>
 ※赤文字の見出しは新たに追加した演題



大工調べ
<おもな演者>志ん生/志ん朝/他多数
長屋+江戸っ子+与太郎+お裁き物の複数要素が絡む、東京落語の大ネタ。
多くは棟梁が大家に啖呵を切る前半までで切られ、
お白洲で決着する後半まで演じられることは少ない。

大 黒(1)
<おもな演者>米朝
(1)とあるのは、「増補落語事典」に別話(2)があるため。
七福神の神様とは別に、「大黒」とは寺言葉で「僧侶の妻」の符丁でもある。
米朝がCD「米朝珍品集」1巻(1989、東芝EMI)所収の『ぬの字鼠』でマクラに使っている。

大黒の頭巾
<おもな演者>米朝
上の『大黒』同様、CD「米朝珍品集」1巻の『ぬの字鼠』でマクラに使われる小咄。

たいこ腹(幇間腹)
<おもな演者>小朝/小遊三/他多数
寄席でおなじみ幇間ネタ。真打昇進前後の春風亭小朝が放送で盛んにかけていた。
現代風のクスグリがたくさん盛り込まれた演出の元祖が小朝だった。
上方でも高座にかかるが、鍼のシーンが必要以上に痛々しい。

大根舟
<おもな演者>米朝/他多数
大根を舟で売りに来た時代の、マンガチックなバレ噺。
1988年発売のCD「桂米朝 艶笑上方落語 いろはにほへと」(東芝EMI)所収。

大師の馬(弘法の馬)モレ追加
<おもな演者>五郎兵衛(五郎)/円生
弘法大師(空海)の逸話噺『大師の杵』(別項参照)の艶笑版。
五郎兵衛のCD「廓噺・艶噺集成」(1997、クラウン)に収録がある。
CD「円生百席」11巻(1997、ソニー)の『がまの油』のマクラにも出てくる。
(注・更新前のコレクション一覧からモレていたので改めて追加)

大師の杵
<おもな演者>3金馬/5円楽
若き日の空海(弘法大師)のロマンスと川崎大師の成り立ちにまつわる地噺。
3金馬と5円楽という落語界の蘊蓄王2人のCDが出ている。

大師めぐり
<おもな演者>6松鶴
いかにも笑福亭系らしい極道息子の上方噺。
かつて大阪有線で流されたという音源を所持(詳細不詳)。

大神宮の女郎買い(太神宮)
<おもな演者>雷蔵
大神宮と阿弥陀が吉原に登楼するという珍しい落語。
CD「風流艶くらべ」5巻(2000、キング)に春雨や雷蔵が『太神宮』の題で収録し、初リリース。

大仏餅
<おもな演者>8文楽/彦六(8正蔵)/さん喬
短い噺のため、8文楽の市販音源では『馬のす』と続けて演じられている。
かつて三遊亭円朝が三題噺として創作したといわれる落語で、
お題の一つが「新米の盲乞食」ということから、現在放送にはかかりにくいが、
1987年4月にTBS「落語特選会」でさん喬の高座がオンエアされた際はノーカットだった。

大丸相撲(素人相撲)
<おもな演者>志ん生
演じ手の途絶えた相撲噺。残されている志ん生の唯一の音源も部分カットが多い。
CD「古今亭志ん生 名演大全集」17巻(2005、ポニーキャニオン)所収。

大丸屋騒動(村 正)
<おもな演者>5文枝/五郎兵衛(五郎)
江戸時代に京都で実際に起きた事件を題材にした落語。
5文枝のCDは2005年にソニーから、五郎兵衛のCDは1998年にクラウンから出た。
東京では10馬生が『村正』の題でやっていた。

代 脈
<おもな演者>円生/志ん朝/仁鶴
東西で演じられる医者ネタの爆笑編。
志ん朝のCD「落語名人会 古今亭志ん朝」12巻(ソニー)に収録がある他、
円生の音源が複数の会社からリリースされている。

太 陽(お日いさんの宿)
<おもな演者>5小さん/1春団治
与太郎の小咄。5小さんは『浮世根問』(別項参照)のマクラに使っていた。
CD「五代目柳家小さんセレクト」(2005、日本伝統文化振興財団)所収。
1春団治は『八問答』(別項参照)の冒頭に入れている。

高 尾(仙台高尾)
<おもな演者>円生/3金馬
高尾花魁を寵愛しながらも、ままならなかった仙台伊達公の地噺。
CD「円生百席」25集(1997、ソニー)には『仙台高尾』の題で収録されている。
なお、3春団治が十八番にした『高尾』は東京では『反魂香』(別項参照)のことだが、
「増補落語事典」にはその旨の記載が無い。

高砂や
<おもな演者>6柳橋/8助六/5小さん
結婚式で行う余興の失敗ネタの一つ。
謡いが途中から御詠歌になる型は6柳橋と8助六で、近年主流の柳家系のサゲとは異なる。

高田の馬場
<おもな演者>3金馬/志ん朝/夢楽
仇討ちシーンからの種明かしがハイライトだが、前半の蟇の油売り口上も聴かせ所の一つ。
3金馬が十八番にした演目だったという。
CD「三代目三遊亭金馬 落語傑作集」1巻(1996、コロムビア)他に収録がある。

たがや
<おもな演者>3三木助/談志/他多数
江戸庶民文化が噺の題材になる落語の中で、
花火が登場するのは意外にも『たがや』が唯一無二の存在。
演者の年代によって演出やクスグリが大きく異なり、談志はさらにサゲも変えた。

他行医者(他行)
<おもな演者>多数
父親が集金人の相手を倅に任せる、おなじみの小咄。
「増補落語事典」では『他行医者』が本題だが、医者の設定で聴くことはほぼ無い。
円生は『金明竹』(別項参照)の一部としてやる。

だくだく(書割盗人)
<おもな演者>志の輔/他多数
仕草も笑いも多い泥棒噺。『書割盗人』は上方のタイトル。
寄席などでは珍しくない演目だったが、なぜか市販される機会に恵まれなかった。
志の輔のCD集「志の輔らくごBOX」(2003、コロムビア)への収録が初リリースで、
それ以降はだいぶ市販点数が増えた。

竹の水仙
<おもな演者>5小さん/歌丸/6松鶴
江戸期の名工・左甚五郎の逸話。浪曲でも有名。
東京版だとサゲらしいサゲは無いが、上方の演出ではサゲが付く。
四代目円歌も前名・歌之介時代の2010年にCDを出している。

蛸芝居
<おもな演者>5文枝/吉朝
全編歌舞伎パロディの上方落語。蛸が歌舞伎のミエを切る場面が最大の見せ場。
こういう遊び心に満ちたネタはなぜか東京には流出しない。
桂吉朝のDVD「特選 吉朝庵」(2006、東芝EMI)所収。CDもいいけどぜひ映像で。

蛸坊主
<おもな演者>彦六(8正蔵)/五郎兵衛(五郎)
ゆすりを行う生臭坊主たちと一戦交える老僧の噺。
1992年5月にNHK教育(現・Eテレ)「日本の話芸」で五郎の高座がオンエアされた。
彦六の高座は1996年に新潮社からVHSビデオで発売されたが、DVD化はされていない模様。

たちきり(立ち切れ線香)
<おもな演者>5文枝/米朝/他多数
大阪の花街を舞台にした悲恋物の大ネタ。近年は東京でも演者がかなり増えた。
それ以前に、東京では3春風亭柳好が持ちネタにしていた。
『立ち切れ(たちぎれ)線香』の題は主に上方で、『たちきり』の題は主に東京で使われる。

立 浪(立つ浪)
<おもな演者>5小勝
CD集「昭和戦前面白落語全集・東京篇」(2006、日本音声保存)に収録された若旦那物。
ただしSP音源なので時間が短く、ストーリー前半のみ。

辰巳の辻占(辻占茶屋)
<おもな演者>10馬生/5文枝
色街の嘘がテーマの噺。10馬生が持ちネタにし、門弟の11馬生や世之介もやる。
上方では『辻占茶屋』の題で、途中お囃子が入る演出。

館 林
<おもな演者>喬太郎/小満ん
素人の武者修行失敗噺。長らく演じられなかったネタを喬太郎が復活させた。
2005年1月のBS-i (現・BS-TBS)「BS落語研究会」にてオンエア。
2010年には小満んの記録用CD(エコー)も製作頒布された。

狸の釜
<おもな演者>花緑
狸シリーズの中では口演される回数が少なく、音源や映像の市販も無い。
花緑の高座が2005年9月のBS-i (現・BS-TBS)「BS落語研究会」でオンエア。

狸の鯉
<おもな演者>5小さん/志ん生/他多数
一連の狸シリーズは柳家一門のお家芸。
御大・5小さんの狸の登場シーンは、何度聴いても笑ってしまう。

狸の札
<おもな演者>5小さん/他多数
寄席では最もよくかかる狸ネタ。狸シリーズをつなげて演じる際、おもに最初にくるネタ。

狸化寺(狸の化寺)
<おもな演者>米朝/ざこば
上方の狸噺。東京の狸シリーズとは無関係。埋もれていた噺を米朝が復活させた。
CD「特選!!米朝落語全集」38巻(1993、東芝EMI)所収。

狸 賽(狸の賽)
<おもな演者>5小さん/志ん生/米朝
一連の狸シリーズとつなげて演じられる場合もあるが、多くは独立して演じられる。
米朝一門の演出では、サイコロの試し振りをする場面の手捌きが見事。
2002年発売のアニメ映画『平成狸合戦ぽんぽこ』DVD(ブエナビスタ)の特典で、
他所で市販されていない志ん朝の『狸賽』の高座映像(客無し)が収録されていた。

田能久
<おもな演者>談志/円生
昔話のような筋立てのストーリー。円生が持ちネタにした。
その後談志が継承し、ショートショート風のサゲに変更している。
CD「円生百席」27巻(1997、ソニー)他に所収。

たばこ好き(六郷の煙草)
<おもな演者>7円蔵
まだ煙草が公共の場で喫えた時代には、こういう落語も聴けたのであった。
1967年6月の東京落語会で7円蔵が『六郷の煙草』の題でかけた音源が、マニア間で出回っている。
その後、柳家喜多八も持ちネタにしていた。

たばこの火(莨の火)
<おもな演者>5文枝/3染丸/彦六(8正蔵)
お大尽の派手な遊びっぷりが痛快な、上方の大ネタ。
彦六が上方から移植し、内容を東京に置き換えて持ちネタにしたとのこと。
2011年発売のCDブック「落語 昭和の名人」22巻(小学館)に3染丸のCDが収録された。

魂の入れ替え
<おもな演者>扇橋
幽体離脱を扱ったSF風味の珍しい掌編。5小さんが演じた。
門弟の扇橋が持ちネタにしていて、2005年5月に上野鈴本で聴く機会があった。
また1994年12月に岐阜放送で口演した扇橋の音源もある。

手向けのかもじ
<おもな演者>7円蔵
7円蔵が『くやみ』につなげて演じた、円蔵以降誰もやり手のいないネタ。
1997年3月放送の東海ラジオ「源兵衛太助寄席の旅」でオンエアされた。

試し斬り
<おもな演者>多数
侍が河原の浮浪者を試し斬りする小咄。
「増補落語事典」では一席物扱いだが、多くは『首提灯』(別項参照)などのマクラに使われる。
なお、CD「春団治三代 初代桂春団治」19巻(1999、クラウン)に収録された『試し斬り』は
『首屋』(別項参照)の別題なので要注意。

試し酒
<おもな演者>5小さん/米朝/他多数
酒噺の大ネタとして演者が多く、寄席でもよくかかる。
ただの仕草だけでなく、盃の蘊蓄や都々逸、久造の軽口など、聴き所が多い。
相羽秋夫の著書「現代上方落語便利事典」(1987、少年社)によると、
米朝は登場人物を変えて、弟子の朝丸(ざこば)・米朝・スポンサーにして演じたことがあったそうだ。
CD「米朝珍品集」6巻(1994、東芝EMI)には通常版が収まっているが、この改作編も聴いてみたい。

たらちね(延陽伯)
<おもな演者>3金馬/枝雀/他多数
長屋の婚礼を扱った前座噺。新婦の口上は演者によって異なる。
資料によっては『たらちめ』の題もあるが、市販音源は『たらちね』で統一されている。
上方では『延陽伯』の題で、新婦の名前も延陽伯となる。

俵藤太(2)
<おもな演者>談志(小ゑん)
「増補落語事典」には同題の地噺(1)が紹介されているが、こちらはバレ小咄。
1988年に出た通販テープ集「艶ばなし名人選」9巻(ビクター)所収。
このテープはのちにCD化されたが、小ゑん(談志)のネタは外された。
その後、1999年に発売されたCD集「談志が選んだ艶噺し」(1999、コロムビア)の
談志の高座『四季の小噺し』の中でやっているので、聴きたい人はこちらをチェック。

探偵うどん
<おもな演者>志ん生
明治期の匂いが伝わってくる捕り物噺。
志ん生以外市販の音ナシ。他に3小円朝がやったという。
CD「五代目古今亭志ん生 名演大全集」7巻(2005、ポニーキャニオン)所収。

短 命(長 命)
<おもな演者>談志/小三治/3文我/他多数
艶笑落語としては最もポピュラーで、放送や寄席にもしょっちゅうかかる。
上記2パターンのタイトルが並行して使用されていて、
『長命』のタイトルでは歌丸・5円楽・夢楽らのCDがある。



ちきり伊勢屋
<おもな演者>円生/彦六(8正蔵)
全編通しで演じると2時間以上に及ぶ大長編。
人情噺は掲載しない方針の「増補落語事典」が、この噺には項目を設けている。
CD「円生百席」53巻(1998、ソニー)所収。

千早振る
<おもな演者>5小さん/志ん生/他多数
寄席などでおなじみ、百人一首を扱った落語。
上方では『百人一首』または『竜田川』の題が使われる。
ちなみに竜田川という力士は存在しないが、年寄名跡に立田川は実在する。

茶釜の喧嘩
<おもな演者>2円歌
2円歌しかやらなかったネタ。登場人物や設定が『天災』(別項参照)に似ている。
CD「ビクター落語 二代目三遊亭円歌」7巻(2001、ビクター伝統文化振興財団)所収。

茶 金(はてなの茶碗)
<おもな演者>米朝/枝雀/志ん生
上方では『はてなの茶碗』の題で広く演じられる大ネタ。
時の帝(天皇)が出てくるということでは稀有な落語。
茶碗の持ち主が徐々にスケールアップしてゆく行程が聴き所の一つでもある。
東京では『茶金』の題で、志ん生一門を中心に定着している。
新作で定評のある春風亭百栄が寄席で演じたのを聴いたことがある。

茶の湯
<おもな演者>3金馬/円生/志の輔/他多数
根岸の閑静な住宅地を舞台にした、知ったかぶりのドタバタ劇。
かつて3金馬が十八番にして、現在は若手からベテランまで演者が多い。
利休饅頭は実在する饅頭の種類だが、噺の中では架空のネーミングとして描かれる。
講談種で『荒大名の茶の湯』という演目もあるが、全く別のネタ。

中風小便
<おもな演者>1福郎
小便の音で運勢を占う、上方の珍しい艶笑落語。
1972年に近畿放送(現・KBS京都)の「上方落語特選」で流れた1福郎の音源が
マニア間で出回っているが、市販はされていない。

長者番付(うんつく酒)
<おもな演者>5小さん
東西で演じられる旅噺。上方では『うんつく酒』のタイトルで、『東の旅』シリーズに含まれる。
5小さんが演じる、旅の男の口から出まかせ蘊蓄が、言い立てのごときスピード感で見事。
サゲは元々「生まれついての貧乏はしょうがねえもんだ」というものだったが、
近年は表現が配慮され、「生まれついての貧乏性か」と変わった。

長 短(気の長短)
<おもな演者>10文治/8助六/5小さん/他多数
気の短い男と気の長い男のやりとりが笑える「見る落語」。
8助六だけは気の長い関西人が登場する演出で、サゲも他と違った。

提灯屋
<おもな演者>5小さん/1春団治
上方落語の定番、商売人泣かせシリーズの一つ。
東京でやる場合、大阪弁でスッポンを「まる」、鶏肉を「かしわ」と呼ぶことを仕込む必要がある。
1春団治のSP復刻音源の中に、サゲを「スッポンにお月様」と言い間違えているのがある。

町内の若い者(町内の若い衆)
<おもな演者>5円楽/鳳楽
長屋が舞台の、ライトな艶笑落語。
放送や寄席で持ち時間の短い時などによく聴く。円楽一門がよく演じるイメージ。
『氏子中』の別題もあるが、同題の別話がある(別項参照)。

ちり塚お松(出世夜鷹)
<おもな演者>1夢丸
お松という夜鷹の出世を描いた、演じ手の少ない落語。
2001年11月と2008年3月の二度、NHK教育(現・Eテレ)「日本の話芸」で1三笑亭夢丸が口演した。



付き馬(早桶屋)
<おもな演者>志ん生/10馬生/志ん朝/他多数
朝の浅草を巡る街並みの描写と、早桶屋と若い衆のやりとりがそれぞれに面白い。
悪事を働こうとする男ほど明るく調子よく演じる志ん朝の高座が実に楽しい。
志ん生親子の他、円生・3金馬・談志・小三治らのCDもある。

突落し(突き落とし/棟梁の遊び)
<おもな演者>5小さん/6松鶴
『居残り佐平次』『付き馬』と同様、色街から遊び逃げする男たちの噺。
上方では『棟梁の遊び』のタイトルで、2002年に6松鶴のCDが出ている。

継 信(初音の鼓)
<おもな演者>円生
『初音の鼓』には別名『ポンコン』と呼ばれる同題別話(別項参照)があり、
どちらも殿様が鼓を打つ噺。ただし筋立てはかなり違う。
1985年にコロムビアから発売されたテープ「ききたい落語家ベストシリーズ」に
円生の高座が収録されたが、その後CD化はされていないようだ。

搗屋無間
<おもな演者>8柳枝
職人が錦絵の花魁に惚れる導入部は『紺屋高尾』に似ているが、
展開がややこしい上、マクラで大量の仕込みを要するため、近年は演じ手がいない。
8柳枝のCD「NHK落語名人選74 八代目春風亭柳枝」(1994、ポリドール)所収。

佃 祭
<おもな演者>志ん朝/5円楽/権太楼/他多数
無声時代のコメディ映画のような起伏のある人情絡みの筋立てながら、
主人公の生死がストーリーに関わるため、展開はシリアス。
演者によっては、後半に登場する与太郎の存在感を際立たせる演出を施す。

辻駕籠
<おもな演者>3小円朝
3小円朝しかやらなかった駕籠屋の失敗話集。
1976年にCBSソニーから出たレコード「落語名人選 三代目三遊亭小円朝」に収録があるが、
他の駕籠ネタと重なる部分もあり、CD化はされていないようだ。
2004年4月の両国寄席で、4小円朝(前名・円之助時代)が口演したのを聴いたことがある。

辻八卦
<おもな演者>1馬の助/歌丸
「忠臣蔵」をベースに、お芝居をもじるクスグリたっぷりの珍しい噺。
歌丸のCD「朝日名人会ライヴシリーズ30 桂歌丸」6巻(2005、ソニー)に収録された。

常太夫儀太夫
<おもな演者>五郎兵衛(五郎)
上方の『東の旅』シリーズの一つだが、現在ほとんど演じられない。
1994年度「上方お笑い大賞」(よみうりテレビ)で審査員特別賞を受賞した
五郎兵衛(五郎時代)が、6分半だけダイジェストで演じていた。


<おもな演者>2円歌
1林家正楽の書いた落語で、2円歌でしか聴いたことがない。
CD「ビクター落語 二代目三遊亭円歌」2巻(2001、ビクター伝統文化振興財団)所収。

壺 算
<おもな演者>枝雀/6小勝/他多数
東京の若手を中心に、近年高座にかける人が増えた印象が強い噺。
計算のくだりをあっさり演じる人から、人物像をじっくり掘り下げて演じる人まで様々。
かつて6三升家小勝が得意ネタにしていたという。

釣指南
<おもな演者>10馬生
指南所の小咄。『あくび指南』などのマクラにつける。

つ る
<おもな演者>枝雀/歌丸/他多数
若手を中心に東西で広く演じられる、定番中の定番ネタ。
CD「枝雀落語大全」19巻(2000、東芝EMI)他、大御所の個性ある口演も楽しい。

つるつる
<おもな演者>8文楽/志ん生/談志
幇間ネタが多かった8文楽が十八番にしていたのはよく知られているが、
志ん生も演じていたのはあまり知られていない。
CD「五代目古今亭志ん生 名演大全集」23巻(2005、ポニーキャニオン)所収。
談志はサゲを変えて、不憫な一八が救われる展開にしていた。



手紙無筆(平の陰)
<おもな演者>談志/文朝
時代を経て演者が減った無筆ネタの中では、今も比較的高座にかかる前座噺。
1987年1月30日放送の深夜番組「録画チャンネル4.5」(フジテレビ)では
パーキンソン病の春風亭栄橋が口演する高座が放送された。

出来心(花色木綿/間抜け泥)
<おもな演者>5小さん/6松鶴/小遊三/他多数
泥棒ネタの代表格的落語。柳家のお家芸の一つ。
前半だけだと『間抜け泥』、後半中心だと『花色木綿』のタイトルが使われることもある。
ちなみに花色というのは、花柄のことではなく、縹色(はなだいろ)といって薄い藍色のこと。

手切れ丁稚
<おもな演者>6松鶴
隠居と妾の間にはさまって難儀する丁稚を描いた上方落語。
6松鶴のCD集「六代目笑福亭松鶴 上方はなし」(2004、ビクター伝統文化振興財団)所収。

鉄 拐
<おもな演者>談志/3三木助
仙人が徐々に人間界の俗っ気にまみれてゆく有様を、談志が皮肉たっぷりに演じた。
3三木助の高座音源が2010年に初めて市販されたが、セット販売のみ。

てれすこ
<おもな演者>円生/2円歌/3金馬
江戸期ならではのちょっとした謎解きと教訓をまじえた掌編。
タイトルの語感も含め、かつては「落語らしい落語」と称されたが、近年は演者が減った。
CD「円生百席」28巻(1997、ソニー)は『テレスコ』とカタカナ表記。

天狗裁き
<おもな演者>10馬生/米朝/他多数
東西で演者の多い落語。夢がモチーフだが、普通の夢ネタとは一線を画す。
『羽団扇』は『天狗裁き』にひと展開加えた噺(別項参照)で、
10馬生の『天狗裁き』はその中間のような内容だった。

天狗山(てんぐの酒もり)
<おもな演者>4文我
昔話のような上方落語。『東の旅』シリーズの一つで、別題『高宮川天狗酒盛』。
2001年に発売された子供向けCD集「おやこ寄席ライブ」4巻(エーピーピー)では
子供にも分かりやすいように『てんぐの酒もり』という表記で収録された。
現在市販されているのは2016年にパンローリングから再発売されたもの。

天 災
<おもな演者>5小さん/6柳橋/ざこば/他多数
紅羅坊名丸という、落語の世界で唯一無二の学者キャラクターが登場する。
八五郎を訥々と説諭する名丸が、急に「おい!」と気合いをかける5小さんの演出が絶妙。
上方ではざこばが得意ネタにしている。

転失気
<おもな演者>3金馬/2小南/他多数
テーマがオナラだからなのか、知ったかぶりの嘘が分かりやすいからなのか、
落語初心者向けのネタというポジションにある前座噺。
わかりやすい口調の3金馬のCDが複数の会社から出ている。

天神ばち
<おもな演者>米朝
上方の童謡がモチーフの小咄。
『天狗刺し』(別項・補遺参照)のマクラに出てくる。

転 宅
<おもな演者>3金馬/夢楽/小三治/他多数
お囲い者の女がマヌケな泥棒をひっかけて夫婦約束をかわす噺。
「増補落語事典」には通常とは別のサゲが載っているが、そちらは聴いたことが無い。

天王寺詣り
<おもな演者>6松鶴/百生/他多数
賑やかなお囃子とともに名所の情景を描写する、上方落語の王道ネタ。
昭和30年代に東京で上方落語を演じて人気を得た三遊亭百生のCDがある。



道 灌(太田道灌)
<おもな演者>5小さん/3金馬/他多数
ご隠居と八五郎のやりとりで進行する、典型的な前座噺。
かつて「賤の女(しづのめ)」という表現が放送上引っかかったらしく、今も放送は多くない。
上方では橘ノ円都が『太田道灌』の題でCDリリースしている。

胴斬り(胴切り)
<おもな演者>枝雀/6松鶴/7松鶴(松葉)
よくSF落語とも表現される、荒唐無稽さが楽しい落語。
ストーリー展開が似ていることから、『首提灯』(別項参照)のマクラに使う演者もいる。
7松鶴襲名前に他界して名跡を追贈された笑福亭松葉のCDがある。

道具屋
<おもな演者>5小さん/10文治/仁鶴/他多数
東西で演じられる与太郎噺の代表。上方ではそそっかしい喜六が主役。
大名人から前座まで幅広い年代層が高座にかける。
クスグリや演出が演者ごとに異なり、聴き比べが楽しめるので、繰り返し聴いても飽きない。

道具屋曽我
<おもな演者>4円馬
お芝居やテレビ時代劇で近年演じられなくなった、曽我兄弟の仇討が題材。
元ネタを見かけない昨今、演じ手も4円馬以降いなくなった。
1974年2月にNHKラジオで放送され、1997年11月の「ラジオ名人寄席」で再び流れた。

胴取り
<おもな演者>6松喬
博打用語がタイトルになった上方落語。
酔漢が武士に斬られるまでは、東京版の『首提灯』(別項参照)と同じ。
6松喬の音源がマニア間で出回っているが、詳細不詳。

唐茄子屋政談(唐茄子屋)
<おもな演者>円生/志ん朝/他多数
人情噺として演じられる若旦那物の大ネタ。
前半の叔父さんの心情、後半の貧乏長屋のドラマなど、聴かせ所が多い。
現在は政談の部分が残っていないため、CDタイトルでは『唐茄子屋』となることもあるが、
滑稽噺の『かぼちゃ屋』と間違いやすいのでCD購入時は確認が必要。
上方では『南京屋政談』というタイトルで演じられることがある。

胴乱幸助(胴乱の幸助)
<おもな演者>5文枝/枝雀/2小南
大阪~京都を舞台にした、生粋の上方落語。
タイトルの「の」は演者によって入ったり入らなかったりする。
稽古場で浄瑠璃『桂川連理柵(お半長)』を演者が本息で語る場面がある。
東京では2小南がやっていたこともあって、同じ芸術協会の春風亭柳太郎で聴いたことがある。

遠山政談
<おもな演者>円生
昔ながらの因果物仕立て。政談とあるもののお白洲の場面は無い。
CD「円生百席」28巻(1997、ソニー)所収。

時そば(時うどん)
<おもな演者>5小さん/6柳橋/枝雀/他多数
東京は『時そば』、大阪は『時うどん』のダブルスタンダード。
セリフや演出が東京と大阪ではかなり違うが、サゲはだいたい同じ。
春風亭昇太が『時うどん』を口演したのを聴いたことがある。
一方では、桂吉朝が東京の『時そば』の構成で『時うどん』と題して演じていた。

殿集め
<おもな演者>6松鶴
京都・清水寺を舞台とした、笑福亭系妄想ネタシリーズ。
1987年にワーナーパイオニアが発売した10本組テープ集
「六代目笑福亭松鶴大全集 第2集」2巻に収められたが、CD化はされていないようだ。

土橋万歳(土橋物語)
<おもな演者>米朝/松之助/2小南
演じ手のあまりいない上方落語の大ネタ。夢オチながら演出は重厚。
「増補落語事典」の表記は「万歳」だが、市販音源によって「萬歳」「萬才」など異なる。
松之助はサゲに三河万歳を使わなかったので、『土橋物語』の題でやった。

笘ヶ島(苫ヶ島)
<おもな演者>6松鶴/松之助
紀州の殿様が大蛇退治をする、昔話のような上方落語。
「増補落語事典」の表記は「笘ヶ島」だが、和歌山の実際の地名(旧名)は「苫ヶ島」。
読みはいずれも「とまがしま」だが、文献によって表記が異なる。
6松鶴のCD「ビクター落語 上方篇」6巻(2002、ビクター伝統文化振興財団)の表記は『苫ヶ島』。

富 久
<おもな演者>志ん生/8文楽/8可楽/他多数
2019年のNHK大河ドラマ「いだてん」で一躍脚光を浴びた、暮れの大ネタ。
ドラマの影響で『富久』=志ん生のイメージが強まったが、昭和の名人が数多く演じており、
それぞれに焦点のあて所が異なるので、複数の聴き比べ推奨。

豊竹屋
<おもな演者>円生/4染丸
でたらめ義太夫(浄瑠璃)の文句と、即興の口三味線の掛け合いが面白い。
義太夫と上方弁が堪能だった円生の十八番で、CDも数社からリリースしている。

とろろん
<おもな演者>2小南
旅籠を舞台にした音曲仕立て。タイトルはデロレン祭文とかかっている。
市販音源は2小南のレコード「桂小南集」10巻(1976、CBSソニー)のみ。

とんちき
<おもな演者>1馬の助
明治期の遊廓風景のひとコマを描いた落語。「とんちき」は当時の流行語。
1997年発売のCD「廓噺・艶噺集成」(クラウン)に1馬の助の高座が収録された。
ストーリーにさほど起伏が無いこともあって、現在はやり手が無い。

頓知の藤兵衛(松田加賀)
<おもな演者>彦六(8正蔵)
神道者の松田加賀が、知恵を使って盲人同士の揉め事を収める噺。
彦六は『松田加賀』のタイトルで持ちネタにしていた。
彦六の高座をまとめたCD集「古典落語の巨匠たち 第四期」(2000、セブンエイト)所収。



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