<か 行>
※赤文字の見出しは新たに追加した演題
蚊いくさ
<おもな演者>円生
演じ手の少ない夏の長屋噺。
円生の高座が2000年発売のCD集「古典落語の巨匠たち」(セブンエイト)に収録。
2019年10月に三遊亭好の助の高座がBS-TBS「落語研究会」でオンエアされた。
開帳の雪隠
<おもな演者>円生
便所の噺だが汚さは無い。マクラに『御印文』(別項参照)をつけることがある。
2008年にコロムビアから発売されたCD「六代目三遊亭円生 落語名演集」6巻所収。
貝野村(手水廻し)
<おもな演者>2小南/6松鶴/文珍
上方落語。現在は後半の『手水廻し』がメインで、最近は東京でも演じられるようだ。
前半部分は2小南「なごやか寄席」(2009、ユニバーサル)などに収録されている。
粥やろう
<おもな演者>円生
『豊竹屋』など音曲噺のマクラに使われる小咄。短いが風格がある。
蛙の女郎買い
<おもな演者>志ん生
廓噺のマクラで志ん生がやった小咄。擬人化した蛙の描写が志ん生ならでは。
火焔太鼓
<おもな演者>志ん生/10文治/8円蔵/他多数
志ん生一門のお家芸で、近年では別系でも演者が増えた。
冒頭ののんびりしたムードから、クライマックスシーンのスピード感になだれ込む落差に圧倒される。
よく「火炎太鼓」と誤表記する記事を見かけるが、市販音源ではさすがに無いようである。
志ん生の高座をリミックスした8センチCD「ラップ火焔太鼓」(1994、ポニーキャニオン)なんてのもある。
加賀の千代(1)
<おもな演者>円都/3三木助/扇橋
橘ノ円都が上方にわかを落語に改作し、その後3三木助→弟子の扇橋へと継承された。
円都の口演はCD「ビクター落語上方篇 初代橘ノ円都」1巻(2004、ビクター伝統文化振興財団)所収。
鶴満寺(鶴万寺)
<おもな演者>8文楽/雀々
春の大阪が舞台。タイトル表記が2種類あるが、「増補落語事典」は『鶴満寺』。
CDは「桂雀々 落語のひろば」6巻(2004、東芝EMI)他がある。
景 清
<おもな演者>8文楽/5文枝/米朝/他多数
失明した定次郎が願掛けに日参し、ついに成就する噺。
東京版はしっとり演じられる反面、元々の上方演出ではクライマックスで大立ち回りになる。
枝雀はさらに演出を変えて、サゲ前に浄瑠璃「壷坂霊験記」を語った。
その口演はCD「枝雀大全」37巻(2001、東芝EMI)に収録がある。
掛取万歳(掛取万才/かけとり)
<おもな演者>円生/10文治/米朝/他多数
人情噺が多い暮れの大ネタの中では、カラリと笑える落語。東西で演じられる。
入れ事の量によって伸縮自在なので、寄席のトリネタ向きといえそう。
CD「円生百席」9巻(1997、ソニー)に収録された、多芸な円生の口演は聴き応えがある。
柳亭市馬の改作『掛取美智也』は昭和歌謡好きにはたまらない。
笠 碁
<おもな演者>10馬生/5小さん/他多数
「碁仇は憎しも憎し懐かしし」。年を重ねた二人の友達同士の、囲碁を介した心理合戦。
すげ笠を被って肩をすぼめる10馬生の仕草が忘れられない。
将棋好きの志ん生は『雨の将棋』と改作してやっており、
CD「五代目古今亭志ん生ベスト・コレクション」(1996、クラウン)に収録がある。
鰍 沢
<おもな演者>円生/彦六(8正蔵)/志ん生
山場のスペクタクルシーンが聴きものの大ネタ。三遊亭円朝の作。
脚本をそのまま映像化しても見応えある2時間ドラマになりそう。
彦六(8正蔵)は昔ながらの芝居噺として演じることもあったそうだ。
鰍沢二席目(鰍沢Ⅱ)
<おもな演者>小満ん
『鰍沢』の続編だが、正編は円朝の作、こちらは河竹黙阿弥の作と、作者が別々。
柳家小満んの高座がエコーから2010年6月にCD化されたのち、
2012年にはソニーのCD4枚組「特選 柳家小満ん 江戸景色」に収録された。
火事息子
<おもな演者>円生/彦六(8正蔵)/3三木助/他多数
町火消しが市井のヒーローだった時代の人情噺。
親子愛を情感たっぷりに演じる派と、さらりとストーリーを聴かせる派に分かれる。
数取り
<おもな演者>米朝
尼さんのバレ小咄。CD「桂米朝 艶笑上方落語 続いろはにほへと」(1988、東芝EMI)所収。
風の神送り(1)
<おもな演者>8柳枝
上方に同題の一席物(別項・補遺参照)があるが、
こちらは8柳枝が『搗屋無間』のマクラでやっていた小咄。
『搗屋無間』のCDは「NHK落語名人選74 八代目春風亭柳枝」(1994、ポリドール)がある。
片 袖(幽霊の片袖)
<おもな演者>2小南/円都/松之助
幽霊や「忠臣蔵」六段目が出てくる、上方の音曲噺。
円都のスタジオ録音がCD「ビクター落語 上方篇」(2004年、ビクター伝統文化振興財団)他から発売。
ちなみに「幽霊の片袖」の話は、都市伝説の怪談としても広く伝わっている。
片 棒
<おもな演者>3金馬/9文治/さん喬/他多数
ケチな男・赤螺屋吝兵衛と3人の息子が登場する、寄席などではおなじみの噺。
祭りのような葬礼を行う空想シーンでの、口囃子と山車の人形の当て振りが見所。
ベテランから若手まで、幅広く演じられている。
かつぎ茶屋(けんげしゃ茶屋)
<おもな演者>米朝/6文枝(三枝)/4円馬
『けんげしゃ茶屋』の題で、主に上方で演じられる新年の噺。
けんげしゃ(=縁起担ぎ)の芸妓一家にゲンの悪い言葉をぶつける皮肉なギャグが満載。
前半のババの旦さんのくだりは、東京では『粟餅』という独立した噺(別項参照)になっている。
6文枝(三枝)も1976年にレコード「爆笑!上方落語」(ビクター)をリリースした。
かつぎや(七福神)
<おもな演者>3小円朝/4円遊
商家が舞台の正月ネタ。上方の『正月丁稚』(別項参照)とほぼ同じ。
3小円朝のCDは「昭和の名人 古典落語名演集 三代目三遊亭小円朝」(2011、キング)がある。
金釣り
<おもな演者>6松鶴
上方落語。ちょっと足りない男が金儲けを画策する噺。
6松鶴のテープ集「六代目笑福亭松鶴大全集 らいぶ浪花落語」2巻(1987、ワーナーパイオニア)所収。
現在、松鶴の曾孫弟子にあたる笑福亭生寿らが持ちネタにしている。
壁 金
<おもな演者>1蔵之助/歌六
CD‐ROM「古今東西噺家紳士録」(2000、エーピーピー)に1橘家蔵之助のSP音源が収録され、
2012年7月には、都家歌六が口演するCDが「幻の落語・壁金 八代目都家歌六」というタイトルで
日本伝統文化振興財団からリリースされた(販売はビクター)。
この歌六のCDには、前記蔵之助の音源も合わせて収録されている。
かぼちゃ屋(みかん屋/みかん売り)
<おもな演者>5小さん/1春団治/2ざこば/他多数
与太郎は決してバカではないんだなー、と思わせる爆笑編。
炸裂する与太郎の数々の屁理屈は、落語以外でも使ってみたい衝動に駆られる。
上方ではかぼちゃでなくみかんを売り、タイトルも『みかんや』または『みかん売り』となる。
釜どろ(釜 泥)
<おもな演者>円窓/談志
寄席などではよく演じられるが、市販音源が意外と少ない泥棒噺。
2010年発売のDVD「らくごin六本木」(ポニーキャニオン)に、6円楽(楽太郎時代)の高座が収録された。
蟇の油(1)(がまの油/蝦蟇の油)
<おもな演者>3柳好/円生/談志/他多数
大道商売の「蟇の油売り」口上が聴きものの落語。
表記は上記の通りさまざまだが、「増補落語事典」の表記は『蟇の油』である。
3柳好は自身の代名詞にもなった唄うような名演。円生は夜店の蘊蓄たっぷり。
談志は他国語バージョンの立て弁が入るサービス付きと個性それぞれ。
同題の艶笑バージョン(2)もある(別項・補遺参照)。
紙 入(紙入れ/紙入れ間男)
<おもな演者>円生/歌丸/他多数
寄席や放送にもよくかかる艶笑ネタ。中にはかなりきわどい演出をする人もいる。
東西で演じられ、上方では主に『紙入れ間男』の題が使われる。
昭和の名人から現役まで市販音源多数。
紙屑屋(浮かれの屑より)
<おもな演者>5文枝/4染丸/他多数
浄瑠璃や歌舞伎モノマネ等、入れ事たっぷりで賑やかな上方落語。
4林家染丸の高座では、後半で座布団から立ち上がって踊る。
東京でも小朝・正雀・たい平ら演者多数。
亀屋佐兵衛(亀 佐)
<おもな演者>米朝
米朝が発掘した極めて古風な掌編。
1989年発売のCD「米朝珍品集」3巻(東芝EMI)所収。
その後、1993年にはCD「特選!!米朝落語全集」36巻(東芝EMI)にも収録された。
からくり屋
<おもな演者>4金馬
1993年7月、4三遊亭金馬の高座がNHK教育(現・Eテレ)「日本の話芸」でオンエア。
6馬楽も演じたというが市販音源は無い。
からし医者
<おもな演者>1春団治
SP復刻CD「春団治三代 初代桂春団治」13巻(1999、クラウン)所収の医者噺。
かつて笑福亭鶴光が「オールナイトニッポン」でやっていた
「な~るほど、わ~かるか」がこのネタのギャグフレーズだと知った時は驚いた。
唐茶屋
<おもな演者>8文治
唐土に渡って廓遊びをする、不思議な旅噺。8文治が演じた。
SP復刻CD集「昭和戦前面白落語全集・東京篇」(2006、日本音声保存)に収録がある。
軽 業
<おもな演者>2小南/米朝/3文我
上方の『東の旅』シリーズの中でも、ひときわ賑やかな落語。
指と扇子を使って綱渡りを表現する場面と、口上~囃し唄の場面がクライマックス。
前半に『もぎどり』(別項参照)を付けて一席とすることがほとんど。
映像としては2002年発売のDVD「特選!!米朝落語全集」19集(東芝EMI)所収。
かわいや(たけのこ)
<おもな演者>米朝/喜多八
武家屋敷を舞台とした短い落語。東京では柳家喜多八がよく演じた。
CD「米朝珍品集」1巻(1989、東芝EMI)他に収録。
蛙茶番
<おもな演者>5柳朝/円生/10文治/他多数
昔の素人芝居でひと騒動起きる、カラッとした艶笑落語。
聴く人に場面を想像させて笑わせる。上記演者以外にもCD市販多数。
代り目(替り目/かわり目)
<おもな演者>志ん生/10文治/他多数
寄席ではしょっちゅうかかる酒呑み噺。夫婦のやりとりが聴かせ所。
サゲまで演じず、途中の夫の独白シーンで切られることが多い。
「増補落語事典」のタイトル表記は『代り目』だが、市販音源は『替り目』が多数派。
志ん生はSP復刻音源も含め複数のCDをリリースしている。
上方では米朝・枝雀らが持ちネタにしていた。
かんしゃく
<おもな演者>8文楽/小三治
明治~大正頃の世相が描かれたモダンなストーリーの古典落語。
噺のあらすじよりも、演者の表情演技がテーマのようなネタである。
小三治のCDが1996年にソニーから発売されている。
勘定板
<おもな演者>談志/1福助/他多数
汚い方の下ネタの代表ともいえる落語。ごくたまに放送にかかる。
場合によっては光景を想像したくないようなすごい演出もされる。
「増補落語事典」によれば、上方落語『大和閑所』(別項参照)の前半が独立した噺とのこと。
雁とり(鷺とり)
<おもな演者>枝雀/1春団治
上方落語。最近は上方の『鷺とり』の題が東京でも定着した。
枝雀が演じる鷺の表情やアクションが忘れ難い。
野次馬が「にわかじゃにわかじゃ」と騒ぐシーンも大いに盛り上がる。
堪忍袋
<おもな演者>3金馬/市馬
ストレス社会を戯画化したような落語。近年は上方でも演じられる。
市馬のCDは2007年にポニーキャニオンから発売。
看板のピン(看板の一)
<おもな演者>三三/米朝/他多数
寄席や放送では頻繁に聴ける博打の噺。
それだけにエアチェック数は多いが、市販音源はさほど多くない。
映像では柳家三三のDVD「三三独演」2巻(2013、ソニー)他に収録がある。
雁風呂
<おもな演者>円生/米朝
落語としては珍しく水戸黄門が登場するストーリー。CDは円生・米朝の2人だけ。
「円生百席」12巻(1997、ソニー)と「米朝珍品集」8巻(1999、東芝EMI)にそれぞれ収録。
巌流島(岸柳島)
<おもな演者>志ん生/円生/8可楽/他多数
侍同士の時代劇のようなやりとりがスリルたっぷり。
タイトル表記は『巌流島』と『岸柳島』の2通りある。
武蔵と小次郎の巌流島とは直接関係は無い。
祇園会(祇園祭)
<おもな演者>志ん生/8文治
江戸と上方の行き来が少なかった時代に生まれた、カルチャーギャップ論争がテーマの噺。
東西交流が普遍的になった現在は、京言葉にリアリティが無いと、聴いていてつらい。
志ん生が現役の時代は、まだ不問だったのだろう。
菊江の仏壇(白ざつま)
<おもな演者>米朝/1小文治/歌丸
放蕩息子と信仰に篤い父親を描いた、上方落語の大ネタ。
東京では10馬生・歌丸らが演じた。
さん喬は『白ざつま』のタイトルでやる。CD「柳家さん喬名演集」14巻(2012、ポニーキャニオン)所収。
紀 州
<おもな演者>円生/志ん生/3金馬/他多数
徳川家継承のエピソーを落語チックに表現した地噺。
マクラとして、聞き違いにまつわる小咄を使うことがある。
紀州飛脚
<おもな演者>米朝/五郎兵衛(五郎)
大きなイチモツの男が飛脚になって大活躍するバレ噺。
上方の旅噺を集めたCD「桂米朝上方落語選集〈旅のはなし〉」(2016、ユニバーサル)等に収録がある。
義太夫息子(浄瑠璃息子)
<おもな演者>8文治/円都
上方の『浄瑠璃息子』を8文治が東京に移したが、現在は演者が無い。
円都の音源は2004年CD「ビクター落語 上方篇 初代橘ノ円都」3巻(ビクター伝統文化振興財団)に、
8文治のSP音源はCD集「昭和戦前面白落語全集 東京篇」8巻(2006、日本音声保存)に収録。
狐つき(2)
<おもな演者>円生
江戸の学者・熊沢蕃山のエピソード噺。
「増補落語事典」には『狐つき』という題の落語が3本掲載されていて、これはそのうちの一つ。
1961年4月のNHKラジオ「円生五夜」で流れた放送音源が、マニア間で出回っている。
擬宝珠
<おもな演者>喬太郎
不思議な理由で患う大店の若旦那の噺。
久しく演者がいなかったが、2000年代中頃から柳家喬太郎が持ちネタにし始めた。
雑誌「BRUTUS」2007年6月1日号(マガジンハウス)の落語特集の付録で喬太郎のCDが付いた。
また2009年にはCD「柳家一門名演集」1巻(ポニーキャニオン)にも収録されている。
きめんさん(紀免散)
<おもな演者>7円蔵
易者を志す若旦那の噺だが、これまた現在は演者が途絶えている。
7円蔵が1964年5月に文化放送で演じているが、サゲまでやらず途中で切っている。
胆つぶし(胆潰し/肝つぶし)
<おもな演者>円生/米朝/他多数
元は上方落語。前半は夢話、後半は芝居がかりとなる。
「増補落語事典」のタイトル表記は『胆つぶし』だが、会社によっては「肝」の字をあてている。
きゃいのう(団子兵衛)
<おもな演者>金語楼/歌丸
柳家金語楼が初めて書いたという落語。本人の市販音源は途中で切っている。
歌丸は1987年1月放送の「演芸指定席」(NHK)で、『団子兵衛』のタイトルでサゲまで演じた。
この映像は、2018年にNHKエンタープライズから出た歌丸のDVD集に収録されている。
伽羅の下駄
<おもな演者>彦六(8正蔵)
彦六以外演じ手のない珍しい噺。
2000年発売のCD集「古典落語の巨匠たち 第四期」(セブンエイト)所収。
その後、2009年7月発売のCDブック「落語 昭和の名人 決定版」15号(小学館)に収録された。
九州吹戻し(九州吹き戻し)
<おもな演者>談志/談春
スケールの大きな旅ネタ。
談志の口演はCD集「立川談志プレミアム・ベスト」(2008、コロムビア)のスタジオ収録で、
三遊宗家・藤浦敦が談志の依頼により脚色担当している。
門弟の談春のCDは「夢空間噺 20年目の収穫祭」(ユニバーサル)の題で2005年発売。
他にも五街道雲助が演じる。
狂歌家主
<おもな演者>3金馬
暮れの長屋の借金取り撃退ネタの一つ。
『掛取万歳』で川柳の応酬をする場面と似ていて、近年は演者は少ない。
CDは3金馬の「昭和の名人 古典落語名演集 三代目三遊亭金馬」2巻(2009、キング)くらい。
京の茶漬
<おもな演者>3文我/米朝/5文枝
上方落語の掌編。県民別性格判断が落語になったようなネタ。
3桂文我のCD「ビクター落語 上方篇 三代目桂文我」2巻(2002、ビクター伝統文化振興財団)等に収録。
以前5文枝はテレビ用に短くして、よくやっていた覚えがある。
胸肋鼠(生兵法/武術狂)
<おもな演者>8柳枝
武術に凝った若旦那が、ネズミを握りつぶして殺しちゃうエグい噺。
2009年発売のCD「昭和の名人 古典落語名演集 八代目春風亭柳枝」2巻(キング)に収録
……と一部ネット記録にはあったが、別のCD記事では収録リストから外れている。
おそらく上で書いたような内容のため、収録が見送られ、先行リリース記事と食い違ったのだろう。
ちなみにキング音源の初市販は1970年発売のレコード「落語大全集 想い出の名人芸」で、
同社はその後、1997年の通販テープ集「お笑い福袋」に収録した。
(ここでの表記が「七代目春風亭柳枝」になっているが、
元々過去に一代飛ばした経緯のある名跡なので、七代目で必ずしも誤記ではない)
それら上記のもろもろとは全く関係なく、『武術狂』の別題で出たSP音源が
CD集「昭和戦前面白落語集 東京篇」(2006、日本音声保存)に収録されている。
御 慶(鶴 亀/富 八)
<おもな演者>5小さん/志ん生/志ん朝
正月に演じられる明るいネタ。5小さんの「ギョケーッ!」は剣道の気合いみたいだった。
志ん生は『鶴亀』のタイトル(1994、CD「決定盤 志ん生落語集」コロムビア)で、サゲまでやらず。
「増補落語事典」には別に『鶴亀』という艶笑小咄が載っている(別項・補遺小咄参照)。
魚売人
<おもな演者>4円喬
漢学者と無学者のやりとりによる古風な噺。
1909年(明治42年)に録音された4橘家円喬のSPレコードの復刻音源が
CD「明治大正夢の名人寄席」(1987、コロムビア)に収録されている。
ただし初期SP音源なのでほんのサワリだけである。
きらいきらい坊主
<おもな演者>米朝/五郎兵衛(五郎)
「坊主+聞き違い」のつながりから、米朝は『法華坊主』のマクラに使った。
その『法華坊主』はCD「米朝珍品集」4巻(1989、東芝EMI)に収録されている。
金魚のお目見得(金魚の芸者)
<おもな演者>小満ん
『元犬』に季節感と優美さを加えたような噺。
小満んの高座は2006年9月、チバテレ「浅草お茶の間寄席」にてオンエア。
2012年発売のCD4枚組「特選 柳家小満ん 江戸景色」(ソニー)にも収録された。
現在、柳亭こみちも持ちネタにしている。
近日息子
<おもな演者>2春団治/3三木助
ちょっと頭の鈍い息子と、その父親がひと騒動起こす。
元は上方落語だが、東京で3三木助・7柳橋・喜多八らが演じていた。
途中大幅に脱線するシーンがじつに上方落語っぽく、大いに笑えるのだが、
東京ではこのくだりは演じられない。
禁酒番屋(禁酒関所)
<おもな演者>5小さん/10文治/他多数
武士への反骨ネタの代表。上方のタイトルは『禁酒関所』。
酒を飲んでしまう門番が、噺が進むにつれてだんだん酔いも回ってくる演技が見もの。
瓶に小便を集めるシーンを、やや艶笑がかった演出にする人もいる。
金玉医者
<おもな演者>談志
談志が1993年9月15日深夜放送の「落語のピン」(フジテレビ)で、原語入りで口演していた。
この放送はDVD化され、2009年にポニーキャニオンより発売。
金玉茶屋(狸茶屋)
<おもな演者>6松鶴
上方の廓噺。松鶴代々の持ちネタ。
1971年発売のレコード「上方落語大全集」(テイチク)に6松鶴の高座が収録された。
NHKラジオ「ラジオ名人寄席」では、『狸茶屋』の題でオンエアされた(放送時期不詳)。
金の大黒(黄金の大黒/祝い大黒)
<おもな演者>1春団治/談志/他多数
大勢のワチャワチャ感が楽しい長屋ネタ。東西で演じられる。
上方ではお囃子が入る演出て、一層賑やか。
CDタイトルでは『金』を『黄金(読みは「きん」)』と表記するケースが多い。
金明竹
<おもな演者>円生/円丈/小三治/他多数
早口の大阪弁の口上がおなじみの前座噺。
三遊亭円丈の名古屋弁、立川談笑の東北弁など、他地域の方言を使う演者もいる。
上記の他、21世紀の落語ブームの主要人物が軒並みCDリリースしているのが興味深い。
杭盗人
<おもな演者>8円蔵
8円蔵が『反対車(反対俥)』のギャグの仕込みとしてマクラに使った小咄。
くしゃみ講釈(くっしゃみ講釈/くしゃみ義太夫)
<おもな演者>米朝/6松鶴/他多数
講釈『難波戦記』以外にも、覗きカラクリや虫の歌など、入れ事の多い噺。
上方落語で、東京の2円歌は『くしゃみ義太夫』と改作してやった。
CD「ビクター落語 二代目三遊亭円歌」3巻(2001、ビクター伝統文化振興財団)所収。
薬違い
<おもな演者>小満ん
『いもりの黒焼』の別題があるが、『いもりの黒焼』には別の噺がある(別項・補遺参照)。
小満んの口演は2010年にエコーが記録用CDを製作頒布した。
ネット情報によれば、三遊亭遊雀らも持ちネタにしているとのこと。
九段目
<おもな演者>円生
素人芝居で「忠臣蔵」九段目をやる噺。円生の他、彦六も持ちネタにしている。
CD「円生百席」13巻(1997、ソニー)所収。
九年母
<おもな演者>3三木助
読みは「くねんぼ」。柑橘系の果物の一種。
3三木助がCD「NHK落語名人選34」(1993、ポリドール)収録の『道具屋』のマクラでやっている。
首提灯(1)
<おもな演者>5小さん/円生/彦六
東京版の演出では終盤の仕草が見せ場だが、DVDはいずれもセット販売のため単品発売が無い。
上方版の『首提灯』は東京版とほとんど共通点が無い別話(別項・補遺参照)。
首ったけ
<おもな演者>志ん生/2円歌/10馬生
演じ手が少ない廓噺だが、志ん生のCDが数種類出ている。
立川藤志楼(高田文夫)のCDもかつてコロムビアから発売された。
首 屋(試し斬り)
<おもな演者>彦六(8正蔵)/1春団治/川柳
現在ではあまり寄席などで聴けない噺。
円生がかつて1979年の歌舞伎座独演会でかけたが、その高座音源は市販されていない。
その元門弟だった川柳川柳は、特別な会などでたまに演じ、自主制作盤ながらCDにも収録している。
それ以外では、2000年発売のCD集「古典落語の巨匠たち 第四期」(セブンエイト)に彦六の音源がある。
1桂春団治のCD「春団治三代 初代桂春団治」19巻(1999、クラウン)には
『試し斬り』の題で収録されているが、ライナーの解説には別の『試し斬り』(別項参照)の解説が載っている。
熊の皮
<おもな演者>6小勝/8柳枝
ノンキな亭主が女房の使いで医者を訪ねる長屋噺。
のんきな亭主が笑いを誘う。また一部にはバレオチ演出でやる人もいる。
最近は三遊亭遊雀の十八番で、高座や放送でよくかけている。
熊 坂(牛若丸)
<おもな演者>7正蔵
地噺『源平(源平盛衰記)』の一部。
7正蔵の音源がCD集「昭和戦前面白落語集 東京篇」(2006、日本音声保存)に、『牛若丸』の題で収録された。
『熊坂』と『牛若丸』はそれぞれ『源平』の一部だが、サゲが『熊坂』なのでここでは『熊坂』と合わせた。
熊野の牛王(権助魚)
<おもな演者>9小柳枝/昇太
寄席などでは『権助魚』のタイトルでおなじみの噺。本来のサゲまで演じられることは無い。
春風亭昇太が古典演目として最初にCDリリースした(2005、ソニー)。
汲みたて
<おもな演者>円生/雲助/小遊三
町内の若い男たちがモテ男に嫉妬する、明るい仕返し噺。
CD「円生百席」13巻(1997、ソニー)ではドガドガ騒ぐ場面で、実際にお囃子の楽器を鳴らしている。
蜘蛛駕籠(住吉駕籠)
<おもな演者>5小さん/米朝/他多数
東京では『蜘蛛駕籠』、上方では『住吉駕籠』の題で、ともに大ネタのダブルスタンダード。
東西ともに演者が多いが、東京では5小さんの型が広く伝わっている。
くやみ(モレ追加)
<おもな演者>円生/枝雀
葬式の受付を舞台とした、人間ウォッチングネタ。
CD「円生百席」(ソニー)発売時の購入者特典として、
レコード製作時に録音しながらも収録を見送った『くやみ』の口演音源が、改めてCD化された。
(注・更新前のコレクション一覧からモレていたので改めて追加)
廓の穴(吉原一口噺)
<おもな演者>4円蔵/円生/彦六(8正蔵)
『芝居の穴』(別項参照)と並び、落語界に昔から存在する「あるあるネタ」。
4円蔵の音源は『吉原一口噺』の題で、SP復刻CD「明治大正 夢の名人寄席」(1987、コロムビア)所収。
鍬 潟(鍬 形)
<おもな演者>5文枝/彦六(8正蔵)
数ある相撲ネタの中では、高座にかかる頻度があまり多くない。
5文枝のCDが「ビクター落語 上方篇 五代目桂文枝」(2006、ビクター伝統文化振興財団)から出た。
東京では彦六が演じた。2000年6月発売「古典落語の巨匠たち」第四期(セブンエイト)所収。
桑名舟(兵庫舟/鮫講釈)
<おもな演者>談志/2小南/米朝
演者の多い旅ネタだが、主なタイトルは『兵庫舟』。
『桑名舟』は主に東京で演じられる際のタイトルで、上方ではまず使われない。
東京では講釈好きの談志が『鮫講釈』の題で広めた。ちなみに上方版は講釈の場面が無い。
稽古屋(1)
<おもな演者>小朝/1春団治/5文枝
稽古屋を舞台に、華やかなお囃子とともに賑やかに演じる上方落語。
春風亭小朝の出世作の一つで、ビクターから1980年にレコード、1985年にCDが発売された。
稽古屋(2)(3)
<おもな演者>志ん生/1小文治
こちらは(1)ほど登場人物が明確でなく、稽古屋風景の落語。
「増補落語事典」に掲載された『稽古屋』は3パターンあり、
(2)はサゲ部分のみ、(3)は中盤のクスグリのみを解説した別項になっているが、
市販音源では(2+3)になっていることが多く、ここではまとめた。
傾城瀬川(松葉屋瀬川/雪の瀬川)
<おもな演者>円生/さん喬
うぶな若旦那が吉原にはまり勘当される、長編人情噺。
かつては円生の独壇場で、その後さん喬が『雪の瀬川』の題で演じる。
円生の口演はCD「円生百席」51集(1998、ソニー)に、
さん喬の口演はCD「朝日名人会ライヴシリーズ85 柳家さん喬」10巻(2013、ソニー)他に所収。
袈裟御前
<おもな演者>7円蔵/鶴光/文紅
寄席などでたまに聴ける地噺。
笑福亭鶴光の著書「つるこうでおま!」(2008、白夜書房)では、
この噺を収録したCDが付録になっていた。
月宮殿星の都(月宮殿)
<おもな演者>6松鶴/2小南/4文我
数多い上方の奇想天外な旅噺の中でも、とりわけSF要素の強い噺。
6松鶴のCD集「六代目笑福亭松鶴 上方はなし」(2004、ビクター伝統文化振興財団)他に収録がある。
けつね
<おもな演者>円都
森暁紅の原作をもとに作られた狐狸妖怪噺。橘ノ円都以外演じ手が無い。
市販音源もCD「ビクター落語 上方篇 初代橘ノ円都」(2004、ビクター伝統文化振興財団)のみ。
喧嘩長屋
<おもな演者>金語楼/5文枝/白酒
噺が進むにつれて盛り上がっていく長屋噺。演者はあまり多くない。
5文枝がやり、新作に専念する前の6文枝(三枝)の高座もCDリリースされている。
最近では桃月庵白酒らがよく演じる。
源 平(源平盛衰記)
<おもな演者>談志/10文治/1三平
地噺の代表格。かつて談志は二ツ目の頃から売り物にしたという。
CD集「立川談志ひとり会 第一期」10巻(1996、竹書房)では32歳当時の高座が収録され、
その後2006年にコロムビアから単品発売された。
こいがめ(祝い瓶/家見舞)
<おもな演者>5小さん/円菊/他多数
内容は汚いが『家見舞』の題でたまに放送にかかる落語。
5小さん・権太楼ら柳家系の音源が何点かリリースされている。
上方の『雪隠壷(せんちつぼ)』は途中まで同じ内容(別項)。
鯉どろ(鯉 泥)
<おもな演者>8文楽
8文楽が『やかん泥』(別項参照)のマクラとしてやった小咄。
鯉 舟(鯉 網)
<おもな演者>1春団治/米朝/雀々
演じ手の少ない上方落語の短編。米朝から雀々が継承し、持ちネタにしている。
1春団治は『鯉網』の題でSP音源を残した。
CD「春団治三代 初代桂春団治」17巻(1999、クラウン)所収。
御印文
<おもな演者>円生
庶民が信仰を娯楽の一環にしていた時代の空気が感じ取れる、短いネタ。
円生は『開帳の雪隠』(別項参照)のマクラに使った。
孝行糖
<おもな演者>3金馬/5文枝
「こーこーとー、こーこーとー」の売り声でお馴染み、与太郎噺の代表的演目。
3金馬が戦前から十八番にしていて、現在でもSP復刻からマイナーレーベルまで市販音源多数。
上方では2006年に5文枝のCDが出ている。
強情灸
<おもな演者>志ん生/5小さん/他多数
寄席でよく演じられるしCDも多いが、基本は見せる落語。
5小さんのクライマックスで顔をみるみる赤くさせる演技が印象に残る。
その小さんのスタジオ収録映像が、2006年に竹書房からDVDとしてリリースされた。
甲府い
<おもな演者>8可楽/志ん朝/他多数
善人しか登場しない、人情味あふれる落語。現役落語家のCD発売も数多い。
高野違い
<おもな演者>3金馬/2円歌
百人一首から時代蘊蓄を連ねてダジャレでサゲる、現代では難しい噺。
「増補落語事典」によると、噺の中に出る「○○式部」という呼称が、明治期の女学生の間で流行したそうな。
現在単品で市販されている音源は3金馬のCD2種類のみ。
公冶長
<おもな演者>志ん朝
カラスがしゃべる小咄ということで、志ん朝は同じくカラスが出てくる『駒長』(別項参照)のマクラにしている。
CDは1995年発売「落語名人会 志ん朝」8巻(ソニー)所収。
肥 舟
<おもな演者>円生
廓の小咄。東京では『四宿の屁』(別項参照)の一部になっている。
五月幟
<おもな演者>8柳枝/木久扇(1木久蔵)
端午の節句の時期に演じられる季節限定落語。
8柳枝のSP音源が1981年にレコード集「落語名高座全集」(コロムビア)に収録されたが、
その後CD化はされていないようだ。
1999年に東海ラジオ「なごやか寄席」で、木久扇(1木久蔵時代)の口演を聴いたことがある。
黄金餅
<おもな演者>志ん生/志ん朝/談志
志ん生を崇拝した談志が独自演出を加え、十八番を受け継いだ。CD・DVD多数。
焼き場人足を表す「隠亡(おんぼう)」の呼称は放送上カットされることがある。
小烏丸
<おもな演者>歌丸/談志
昔の世話物芝居の雰囲気漂う、古風な珍品噺。
2005年に歌丸がCD「朝日名人会ライヴシリーズ30 桂歌丸」6巻(ソニー)をリリースした。
また2006年には談志のCD集「談志百席 第五期」45巻(竹書房)にも収録され、
2013年にはコロムビアから単品発売されている。
故郷へ錦(1)
<おもな演者>米朝
母子近親相姦を扱った珍しいバレ噺。
1988年発売のCD「桂米朝 艶笑上方落語 いろはにほへと」(東芝EMI)所収。
小倉舟(龍宮界龍の都/龍宮)
<おもな演者>5文枝/米朝/2円歌
上方の旅噺・海底版。全編お囃子と芝居がかりで賑やか。
CD集「五代目桂文枝上方噺集成」(ソニー)は1984年リリース。落語CDとしてはかなり早い。
東京では2円歌が演じたが、継承者はいないようだ。
後家殺し
<おもな演者>円生
義太夫を織り込んだ因果物。
「増補落語事典」によれば、円生自身が若い頃、上方から移植したとのこと。
CD「円生百席」14巻(1997、ソニー)に収録がある。
後家馬子
<おもな演者>5文枝(3小文枝)
5文枝が小文枝時代に演じた珍しい艶笑落語。
エヌジーシーの通販テープ「秘蔵版・上方艶笑落語」(1987)に収録された後、
2013年に同タイトルでCD化された(発売はケイエスクリエイト)。
門弟の文三が前名・つく枝時代に演じたのを聴いたことがある。
五 光
<おもな演者>米朝
上方落語の怪異譚。
『いが栗』(別項参照)とクライマックスまで同じだが、サゲで一気にバカバカしくなる。
CDは1989年12月のほぼ同じ時期、東芝EMIから
「米朝珍品集」4巻と「特選!!米朝落語全集」4巻の2種類が出た。
小言幸兵衛(搗屋幸兵衛)
<おもな演者>円生/志ん生/6柳橋/他多数
落語界で小言の多い人のことを「小言幸兵衛」と呼ぶ、その元ネタ的落語。
志ん生系のみ、搗き米屋の登場する『搗屋幸兵衛』としてやるが、志ん朝は両方ともやったそうだ。
小言念仏(所帯念仏)
<おもな演者>小三治/3金馬
朝のお勤め(仏壇に向かって念仏を唱える)における落語的ひとコマ。
小三治が若い頃からよくかけていて、持ち時間の少ない時などに演じる。
CDは1996年発売「落語名人会38 柳家小三治」14巻(ソニー)に収録がある。
後生鰻
<おもな演者>志ん生/文珍/歌丸
従来のサゲは後味が悪かったが、歌丸が展開を改良し、以降そのバージョンが広まった。
3小円朝のマイナーレーベルを転々とする例の無許可音源があるため、CD点数は多い。
胡椒のくやみ(エエ気味/笑い男)
<おもな演者>談志/2花橘
葬式にありがちな失敗を膨らませて落語にしたような内容。
談志は内容が真逆な『笑い茸』(別項参照)から続けて演じた。
その高座はCD集「立川談志プレミアムベスト」(2002、竹書房)所収。
SPレコードを数多く吹き込んだことで知られる上方の2立花家花橘は『エエ気味』の題で演じ、
CD集「昭和戦前面白落語集 上方篇」(2006、日本音声保存)に復刻盤が収録されている。
他にも3金馬は『笑い男』の題で演じた。
五段目
<おもな演者>円生
「忠臣蔵」五段目を題材とした素人芝居ネタの一つ。
1997年発売のCD「落語 仮名手本忠臣蔵」(クラウン)他に円生の高座が収録されている。
上方では4染丸が演じ、東海ラジオ「なごやか寄席」で口演していた(放送時期不詳)。
滑稽清水(杢の市)
<おもな演者>1福郎
按摩が開眼祈願のお参りをする『景清』に似た落語。
上方らしく、ちょっと滑稽味を盛り込んでいるのが特徴。
1森乃福郎の口演がNHKラジオ「ラジオ名人寄席」で、『杢の市』の題でオンエアされた(詳細不詳)。
同番組で福郎が演じた珍しい演目はほとんど
CD「ビクター落語 上方篇」(ビクター伝統文化振興財団)に収録しているが、これは収録から外された。
小 粒
<おもな演者>9文治
背が低くて馬鹿にされる小柄な男の噺。
口論のくだりは上方落語『野崎詣り』(別項参照)と、サゲは『鍬潟』(別項参照)と、それぞれ一緒。
9文治がやったネタで、2009年発売のCD「なごやか寄席」(ユニバーサル)他に収録されている。
碁どろ(碁 泥)
<おもな演者>5小さん/6柳橋/志ん朝
数ある泥棒ネタの中ではややシュール寄りなコミカルさがある。ただし市販音源は少なめ。
2002年発売の志ん朝のCDシリーズ「志ん朝復活」(ソニー)に収録がある。
五人廻し
<おもな演者>志ん生/彦六(8正蔵)/円生/他多数
昭和の名人や人気者たちが競って演じた、廓噺の大作。
従来のサゲをそのまま使うか、新たに考案するか、それもまた演者それぞれの個性となっている。
子 猫(仔 猫)
<おもな演者>米朝/枝雀/吉朝
上方落語の大ネタの一つ。田舎出の女中おなべが主役で、徐々に怪談風味が増す。
おなべが広島弁で訛ってしゃべるのはサゲにつながるためだったが、
近年はサゲが変更されているため、おなべが訛る理由はあまり無くなった。
米朝一門の他、東京では9正蔵らが演じる。
こび茶(鯉津栄之助)
<おもな演者>五郎兵衛(五郎)
上方では『鯉津栄之助』の題で、『東の旅』シリーズでは『軽業』の次に来る。
「こいつぁいい」という言葉が流行した時代が舞台の噺。
1974年に兵庫・サンテレビで制作された「上方落語大全集」という番組で、
五郎兵衛(五郎時代)が口演した際の音源が手元にある。
現在は4文我が受け継ぎ、高座にかけている。
瘤弁慶(こぶ弁慶)
<おもな演者>米朝/枝雀
上方落語の大ネタで、『東の旅』シリーズの一つ。
旅人が宿に逗留するまでは『宿屋町』(別項参照)というタイトルの別話で、
中盤から別エピソードになり、さらにクライマックスではお囃子入りの芝居掛かりになる。
米朝・枝雀師弟のCDが東芝EMIからそれぞれリリースされている。
子ほめ
<おもな演者>8柳枝/3春団治/5小さん/他多数
寄席では最もスタンダードな前座噺。
意外にも、東西の大看板のCDやDVDがたくさんリリースされている。
小 町
<おもな演者>1馬の助
前座噺『道灌』の一部。短いため単独で発売されているのは見かけない。
企画レコード「真打による東西前座ばなし」(1975、キャニオン)の第1集で
1金原亭馬の助が口演した『道灌』の一節に、『小町』が使われている。
駒 長
<おもな演者>志ん生/志ん朝
金に困った男が美人局をたくらむ噺。
志ん生・志ん朝親子のCDが出ている。
大阪弁が全国的になった今、従来のサゲはいかにも弱い。
小間物屋政談
<おもな演者>円生/志ん生/志の輔
ストーリー展開の起伏が激しく、初めて聴くとかなりドキドキする。
現代ではありえない形で決着するが、そこを納得できるかどうか。
CD「円生百席」18巻(1997、ソニー)所収。
志ん生は『小間物屋小四郎』のタイトルでやっているが、内容は同じ。
五目講釈
<おもな演者>吉窓/三三
居候の若旦那がちゃんぽん講釈を読み上げる噺。
有線「演芸かわら版」で2001年2月に放送された三遊亭吉窓の口演をエアチェックした。
最近は柳家三三がよく高座にかけている。
5円楽の市販音源にも『五目講釈』があるが、こちらは同じ講釈ネタでも『鮫講釈(桑名舟)』だった。
これでも古いか(堺飛脚)
<おもな演者>米朝
上方の短い化け物噺。米朝が登場人物やあらすじを改めた。
CD「特選!!米朝落語全集」28巻(1992、東芝EMI)に『堺飛脚』の題で収録された。
子別れ (上)(強飯の女郎買い)
子別れ (中)
子別れ (下)(子は鎹)
<おもな演者>(上)6柳橋(中)5小さん(下)志ん朝/ざこば(通し)円生/志ん生/8可楽
広く演じられる人情味あふれる大ネタ。
演出方法の差を確認するためにも、聴き比べをオススメ。
「上・中・下」を通しで演じたCDは、上記以外にも10馬生・談志・小三治・権太楼ら多数。
権助提灯
<おもな演者>談志/4円遊/他多数
本妻とお妾さんの間にはさまる亭主と卓見する権助の心理戦が笑いになる。
談志は二人の女性心理を独自の見解で解釈していて面白かった。
紺田屋
<おもな演者>2円歌/3円歌
中編ながらもストーリーに起伏の多い人情噺。
2円歌が持ちネタにし、新作の3円歌も引き継いだ。
2017年にユーキャンから出た2枚組CD「東宝名人会 三代目三遊亭円歌」他に収録がある。
蒟蒻問答(餅屋問答)
<おもな演者>5小さん/円生/志ん生/他多数
演じ手の多い大ネタ。上方では『餅屋問答』のタイトル。
5小さんは前半の八五郎と権助のトロトロとしたやりとりに何とも言えぬ滋味があった。
クライマックスが仕草なので、やはり映像で見てみたい。
単品発売のDVDでは、2009年に小遊三、2013年に鯉昇の映像が発売されている。
権兵衛狸
<おもな演者>談志/志ん生/彦六(8正蔵)/他多数
狸が登場する落語の中では珍しく、山村の叙景感が盛り込まれている。
昭和30年代「鬼」と仇名された鈴々舎馬風や、上方の枝雀の音源もCDに残っている。
昆布巻芝居
<おもな演者>4文我/4染丸
読み方は「こんまきしばい」。珍しい上方の音曲芝居噺で、4染丸で聴いたことがある。
4文我はサゲを変え、CD「桂文我上方落語選」1巻(1997、東芝EMI)に収録した。
紺屋高尾
<おもな演者>談志/円生/他多数
花魁と紺屋職人の恋愛模様をドラマチックに描いた廓噺。
『幾代餅』(別項参照)と設定以外ほぼ同じ内容だが、
談志が作った「久さん、元気?」のキラーワードの影響からか、
落語ファンへの浸透度的には『紺屋高尾』の方が微妙にまさっている印象である。