<あ 行>
 ※赤文字の見出しは新たに追加した演題



青 菜
<おもな演者>5小さん/枝雀/他多数
夏の声を聞くと東西で毎日のように寄席などで演じられる、季節感あふれる噺。
縁側で植木屋がご馳走になるものや、サゲの演出が東西で違う。
放送オンエア、音源の市販ともに多数。

赤貝丁稚
<おもな演者>5小さん
バレ噺。「増補落語事典」には「上方のバレばなし」とある。
5小さんが小咄としてCD「スーパー落語1500 傑作小ばなし55話」(1994、ビクター)でやっている。

赤貝猫
<おもな演者> 五郎兵衛(五郎)
考えオチのバレ噺。1997年発売のCD「廓噺・艶噺集成」(クラウン)に収録。
5柳朝が小咄として演じた音源がCD「スーパー落語1500 傑作小ばなし55話」(1994、ビクター)に収録。

赤子茶屋
<おもな演者>1春団治
昔の幼児の葬儀方法に則った、かなりエグい展開がサゲに絡む。
1春団治の音源がCD「春団治三代 初代桂春団治」1巻(1999、クラウン)に収録されている。

あくび指南(欠伸指南/あくびの稽古)
<おもな演者>志ん生/10馬生/米朝/他多数
指南ネタとして東西で演じられる。上方のタイトルは『あくびの稽古』。
あくびを催すシチュエーションが東西でかなり違うので、聴き比べると楽しい。

明 烏
<おもな演者>8文楽/志ん朝/他多数
落語通の間ではおなじみ、吉原の遊びを克明に描いた廓噺。
ウブな若旦那・時次郎のキャラクターをどう誇張して演じるかは、演者それぞれの工夫のしどころ。
8文楽の代名詞的演目で、志ん朝も得意ネタにした。

朝 顔
<おもな演者>仁鶴
夏の小咄。笑福亭仁鶴が『壺算』(別項参照)のマクラで時々やっていた。

麻のれん
<おもな演者>志ん生
按摩の仕草がストーリーに大いに関係する仕方噺。
1994年にCD「古今亭志ん生名演集」30巻(ポニーキャニオン)が発売された後、
同社のラインナップから外れたので、これが最後の市販音源だったかも?
2004年8月の黒門亭で、入船亭扇治が口演していたのを聴いた。

足あがり(足上り)
<おもな演者>米朝
上方の芝居噺で、途中『四谷怪談』の一節が鳴物入りで出てくる。
CDでは「桂米朝上方落語大全集 第一期」9巻(2006、東芝EMI)に『足上り』の表記で収録。

愛宕山
<おもな演者>志ん朝/8文楽/5文枝/他多数
東西で演じられる人気の大ネタ。華麗な仕草が見せ所の噺。
愛宕山は本編中の呼び方は、東京で「あたごやま」、上方で「あたごさん」だが、
この「さん」は山ではなく、「天神さん」などと同じく寺社への敬称とのこと。
お囃子入りでのどかな上方の冒頭演出は、後半のスペクタクルな展開と対照的で面白い。

あたま山(さくらんぼう)
<おもな演者>彦六(8正蔵)/枝雀/雀々
落語のストーリーの突飛さを解説するのによく引用されるが、演者自体は少ない。
彦六のCD集「八代目林家正蔵十八番集」(2004、ビクター伝統文化振興財団)はスタジオ録音。
その他、2005年発売のCD「五代目古今亭志ん生 名演大全集」(2005、ポニーキャニオン)に収録された
『庚申待(宿屋の仇討ち)』のマクラに使われた音源もある。

穴子でからぬけ(からぬけ)
<おもな演者>彦六(8正蔵)/4柳好/他多数
与太郎噺のマクラに使われる小咄。寄席ではたまに一席物としても演じられる。
彦六の口演がCD集「古典落語の巨匠たち 第四期」(2000、セブンエイト)に収録されている。

穴どろ(穴 泥)
<おもな演者>5小さん/8文楽/彦六(8正蔵)/他多数
暮れが舞台の泥棒ネタ。昭和の名人たちの高座が数多くCD化されている。
泥棒に入ってから台所の穴に落ちるまでの経緯がそれぞれでかなり違う。
5小さんが演じる、助けに来た鳶頭が力こぶを見せびらかす場面は何度聴いても笑う。

天河屋儀平
<おもな演者>五郎兵衛(五郎)/米朝
「忠臣蔵」外伝の天河屋儀平が登場する艶笑パロディ落語。
五郎の口演はCD「落語仮名手本忠臣蔵」(1997、クラウン)所収。

網舟(新追加)
<おもな演者>6松喬
大阪・木津川で舟遊びをする上方落語。
2013年7月21日放送のNHK-Eテレ「日本の話芸」で6松喬が口演。
放送9日後の7月30日に逝去し、最期の放送出演となった。

阿弥陀ヶ池(新聞記事)
<おもな演者>1春団治/枝雀/4痴楽
上方では『阿弥陀ヶ池』、東京では『新聞記事』のダブルスタンダード。
大阪に実際に現存する池の名前は「阿弥陀池」だが、タイトルには間に「ヶ」が入る。
『新聞記事』としては4痴楽以外CDになっていないが、寄席や放送ではよくかかる。

有馬小便(有馬温泉)
<おもな演者>3春団治/2小南
兵庫の温泉地が舞台の、仕草で笑わせる艶笑落語。
3春団治の高座は「春団治三代 三代目桂春団治」7巻(1999、クラウン)他に収録。
2小南の音源は『有馬温泉』の題で、アポロンから1983年にテープで発売された。

鮑のし(祝のし)
<おもな演者> 3春団治/志ん生/他多数
寄席でおなじみ、お人好しの甚兵衛さんが主人公の噺。
上方ではそそっかくて頼りない喜六が主人公になる。
女房→地主(上方では家主)→鳶頭(上方では友達)と、
教わる口上がどんどん難しくなり、頭の弱い主人公を悩ませる所がミソ。

粟 餅(モレ追加)
<おもな演者>4志ん好
上方落語『けんげしゃ茶屋』の前半が独立したような噺。4古今亭志ん好が演じた。
エヌジーシーの通販テープ「特選・艶笑落語熱演集」(1986年、東宝音楽出版)所収。
同じ音源がCD-ROM「ご存じ古今東西噺家紳士録」(2005、エーピーピー)にも収録がある。
(注・更新前のコレクション一覧からモレていたので改めて追加)

安 産
<おもな演者>円生
あまり演じ手のいない長屋噺。円生の音源のみ市販されている。
CD「六代目三遊亭円生 落語名演集」6巻(2008、コロムビア)所収。

按 七(七の字)
<おもな演者> 3金馬
元は按摩が主人公の噺だったが、3金馬は無筆の男として演じていた。
1996年発売のCD「三代目三遊亭金馬落語傑作集」4巻(コロムビア)に『七の字』の題で収録。

按摩の炬燵(按摩炬燵)
<おもな演者>5小さん/1春団治/2春団治
酒好きな按摩が登場する冬の噺。演出次第で後味がよくも悪くもなる。
5小さんの口演はCD「昭和の名人 古典落語名演集 五代目柳家小さん」4巻(2009、キング)所収。



いいえ(尾上多見江)
<おもな演者>五郎兵衛(五郎)/米朝/鳳楽
旅役者が父母娘の三人をナニするという、なんかすごい展開のバレ噺。
五郎の口演はCD「廓噺・艶噺集成」(1997、クラウン)に収録がある。

言訳座頭
<おもな演者>5小さん
暮れの借金取り撃退噺の一つ。
1997年のCD「小さん落語」1巻(ワーナー)以降、このタイトルでの発売は無いようだが、
小さんの門弟の権太楼が『言訳屋』とタイトルを改め、2009年にソニーからCDリリースしている。

いが栗
<おもな演者>歌丸/10馬生
内容は上方落語『五光』(別項参照)とほぼ同じ。市販は歌丸のマイナーレーベルのみ。
10馬生は1988年発売の通販テープ「艶ばなし名人選」(キング)で『鈴振り』のマクラにしている。
同じキングから2009年に発売されたCD「昭和の名人 古典落語名演集 十代目金原亭馬生」にも
『鈴振り』は収録されているが、未確認のため同じ音源かどうかは不詳。

いかけ屋
<おもな演者>3春団治/2小南
大勢の子供たちが大人を翻弄する場面が笑いを誘う上方落語。
上方によくある商売人泣かせシリーズ(このあとたくさん出てくる)の一つといえそう。
西では3春団治、東では2小南が、それぞれ専売特許にした。

幾代餅
<おもな演者>志ん生/円菊/他多数
『紺屋高尾』(別項参照)と設定が違うだけでストーリー展開はほぼ同じ。
志ん生一門・さん喬・権太楼らがCDをリリースしている。
たまに「幾世餅」と表記されることもあるが、市販音源の表記は全て「幾代餅」。

居酒屋
<おもな演者>3金馬
3金馬の代名詞的演目。3金馬ならではの多くのフレーズを後世に残した。
とりわけ「~のようなもの」は映画の題名にもなっている。
立川藤志楼(高田文夫)も1997年にコロムビアからCDをリリースしている。

石返し
<おもな演者>5小さん/8可楽
落語界の立役者である与太郎が登場するネタとしては、比較的やり手が少ない噺。
上記演者の他、談志がCD集「談志百席 第二期」14巻(2005、コロムビア)に収録した。

意地くらべ(強 情)
<おもな演者>5小さん/2ざこば
強情な男ばかり出てくる喜劇ドラマのような噺。上方の題はそのものズバリ『強情』。
1983年頃にっかつから5小さんのVHSビデオが発売されたのち、
2006年に竹書房からDVDとして再発売された。

医者間男
<おもな演者>米朝
医者が登場する上方のバレ噺。
CD「桂米朝 艶笑上方落語 いろはにほへと」(1988、東芝EMI)所収。

磯の鮑
<おもな演者>彦六(8正蔵)/2枝太郎
与太郎が吉原へ女郎買いに行く噺といえば、『錦の袈裟』とこれ。
2006年発売のCD「八代目林家正蔵(彦六)名演集」9巻(ポニーキャニオン)に収録がある。

一 眼
<おもな演者>多数
ケチ噺のマクラ。節約のため片目を隠して生活して…という小咄。

一眼国
<おもな演者>志ん生/彦六(8正蔵)/小三治
香具師が六十六部から一眼国の存在を聞くという怪異譚。
放送局によって放送を憚るのは、一眼だからではなく、見世物小屋が出てくるためか。

市助酒
<おもな演者>6松鶴
笑福亭系の上方噺。ストーリーの半分近くが酒を飲むシーン。
6松鶴のCD集「六代目笑福亭松鶴 上方はなし」(2004、ビクター伝統文化振興財団)に収録がある。

一分茶番(権助芝居)
<おもな演者>4円遊/1馬の助
田舎者の権助が活躍する、素人芝居の滑稽噺。
権助がもらう小遣い金単位が「一分」の時は『一分茶番』の題で、
それ以外の金単位や、サゲまで演じない場合は『権助芝居』。近年はこちらの題がよく使われる。
CDは『一分茶番』『権助芝居』両タイトルともに市販されている。

一文惜しみ(五貫裁き)
<おもな演者>談志/円生/志の輔
落語としては『一文惜しみ』が元々のタイトルだったが、
談志が講談から『五貫裁き』を移植しオハコにして以降、『五貫裁き』の題が主流になった。
現在は談志一門以外にも演者多数。

井戸の茶碗
<おもな演者>志ん朝/志の輔/歌丸/他多数
元は講談の、善人しか出てこないハートフルな噺。
大御所から若手まで幅広く演じられ、CDも多数出ている。
一時期、若手落語家の必修科目かと思うくらい、多くの演者が手掛けていた覚えがある。
2020年2月のNHK-Eテレ「日本の話芸」で上方の桂文華が口演していて、
屑屋の清兵衛が風邪で休む場面をショートカットするなど、各所演出を改めて口演していた。

田舎芝居(1)(村芝居)
<おもな演者>五郎兵衛(五郎)
素人が「仮名手本忠臣蔵・大序」の芝居で巻き起こすドタバタ劇。
CD「落語仮名手本忠臣蔵」(1997、クラウン)には『村芝居』の題で収録されているが、
このシリーズには同題『村芝居』の別話(別項参照)も収録されていて、まぎらわしい。

稲 川(関取千両幟)
<おもな演者>円生
元は浄瑠璃(義太夫)や新内などで演じられた相撲噺。
それゆえ土俵がメインではなく、力士とタニマチのつながりがテーマ。
CD「円生百席」26巻(1997、ソニー)所収。

稲荷車(稲荷俥)
<おもな演者>米朝/3染丸
おもに米朝一門に伝わる上方噺。「増補落語事典」では『稲荷車』の表記。
『紋三郎稲荷』(別項参照)と似たストーリーだが、『稲荷車』の方は終盤に逆転がある。
3染丸の口演はCD「ビクター落語 上方篇」4巻(2002、ビクター伝統文化振興財団)に収録。

犬の目
<おもな演者>1三平/米朝
寄席では東西ともによく演じられる演目だが、市販音源は少ない。
1三平のCDが1995年「日本の伝統芸能シリーズ 落語」6巻(テイチク)に収録された。

居残り佐平次
<おもな演者>円生/談志/志ん朝/他多数
品川遊廓を舞台にした、江戸落語の代表作ともいえる落語。
日本映画史上有数の名画と称される『幕末太陽傳』(1957)のモチーフになったことでも有名。
古典落語の中でも佐平次は、唯一無二の不思議な魅力を有するキャラクターであろう。
ストーリー的にも聴かせ所が多く、サゲも演者ごとに工夫されているので、聴き比べがオススメ。

位牌屋
<おもな演者>円生
演者があまりいないケチ噺。円生もやったが「円生百席」(ソニー)には入っていない。
円生のCDとして発売されているのは、1992年の「花形落語特撰」(テイチク)だけ。

いびき駕籠
<おもな演者>多数
『蔵前駕籠』 (別項参照)など駕籠ネタでは定番のマクラ小咄。

今戸の狐
<おもな演者>志ん生/10馬生/志ん朝
話の食い違いを繰り返す、ややこしい噺。
さらに現代では仕込みを多く要するため、現在ではあまり演者がいない。
志ん生親子がそれぞれ高座をレコード・CDに残している。

今戸焼
<おもな演者>8可楽/9文治
8可楽が「楽だから」という理由でよく寄席で演じていたという。
2009年発売のCD「昭和の名人 古典落語名演集」(キング)他に収録がある。

芋 俵
<おもな演者>5小さん/談志
昔のポンチ絵風味漂う、軽めの泥棒ネタ。
主に柳家系が得意とする噺で、5小さんのCDは2社から出ている。

入れ眼(義 眼)
<おもな演者>志ん生/10文治
かつて志ん生が寄席でよくかけていたという軽めの廓ネタ。
志ん生の他、枝雀の口演がCD「枝雀落語大全」36巻(2001、東芝EMI)等に収録されている。



植木のお化け
<おもな演者>春風亭枝雀 /一朝
珍しい音曲噺。2016年にTBS「落語研究会」で一朝の高座がオンエアされた。
CDは「怪談噺・幽霊噺集成」(1997、クラウン)の春風亭枝雀(音曲師)の音源が市販されている。

植木屋娘(植木屋)
<おもな演者>5文枝/枝雀/2小南
上方落語。娘の妊娠にはしゃぐ植木屋のキャラクターが無邪気。
2011年に東京の三遊亭歌武蔵のCDがコロムビアから出ている。

魚の狂句
<おもな演者>米朝/3米紫
女性を様々な魚に例えた狂句が面白い上方落語。
米朝の高座がCD集「桂米朝上方落語大全集 第一期」1巻(2006、東芝EMI)に収録され、
2020年1月にはユニバーサルから単品発売された。

浮世床
<おもな演者>円生/4円遊/他多数
前半は床屋の遊び風景、後半はノロケからの夢オチと、二部構成で演じられる。
前半の中でキセルのいたずらのくだりが入るのは、東京では円生とその一門だけだったが、
1春団治のSP復刻CD「春団治三代 初代桂春団治」4巻(1999、クラウン)にもその一節がある。
その円生の映像は、以前は単品で販売されたが、現在は高価なセット売りになってしまった。

浮世根問
<おもな演者>5小さん/3金馬/五郎兵衛(五郎)
物知りの隠居vs八五郎による定番の根問物だが、市販音源は少ない。
CD集「談志ひとり会 第五期」42集(竹書房)に収録され、2013年にコロムビアから単品発売された。

浮世風呂
<おもな演者>円生/1福助/7小柳枝
明治時代の銭湯風景描写。
1雷門福助が東海ラジオ「なごやか寄席」で演じた高座が、2011年にユニバーサルからCD化された。

氏子中(御神燈)
<おもな演者>1春団治
『町内の若い衆』にも『氏子中』の題が使われることがあるが、こちらは少し神がかった内容の別話。
1春団治のCD「春団治三代 初代桂春団治」11巻(1999、クラウン)では『御神燈(ごじんとう)』のタイトル。

宇治大納言
<おもな演者>9文治
落語の故事来歴を語る地噺。4小せんは『お血脈』(別項参照)のマクラでやった。
9文治のCD「昭和の名人 古典落語名演集」1集(2010、キング)に収録されている。

牛の丸薬(牛の丸子)
<おもな演者>米朝/枝雀/仁鶴
二人の男がニセの薬で商売を企てる上方落語。読みはいずれも「うしのがんじ」。
田舎の村へ出かける道の中、のどかな風景描写に春を感じる。
枝雀の高座映像がDVD「枝雀落語大全」31巻(2003、東芝EMI)で発売された。

牛の子
<おもな演者>扇橋
6円生の速記が残っているが市販音源ナシ。手元にある扇橋の口演は放送音源(詳細不詳)。
ネット情報では、2015年8月の「浅草お茶の間寄席」(チバテレ)で三遊亭天どんが演じたという。

宇治の柴舟
<おもな演者>3春団治/2小南
掛け軸の女性に恋わずらいをしたことが発端となる、不思議な上方落語。
CD「春団治三代 三代目桂春団治」1巻(1999、クラウン)所収。
東京では2小南がやり、弟子の山遊亭金太郎が『柴舟』のタイトルで演じていた。

牛ほめ(池田の牛ほめ/普請ほめ)
<おもな演者>4柳好/5文枝/他多数
東西で演じられる前座噺。市販音源の種類も多い。
最後の牛の場面までやらず、家の普請をほめて終わる時は、タイトルも『普請ほめ』となる。
新作派の5春風亭柳昇が、古典でこのネタと『雑俳』だけは持ちネタにしていた。

うそつき村(鉄砲勇助)
<おもな演者>3金馬/枝雀/ざこば
『弥次郎』との区別は、後半うそつき村に出かけるくだりがあるか無いか(別項『弥次郎』参照)。
上方版のタイトルになっている鉄砲勇助とは、うそつき村に住むうその名人の名前。
従って「増補落語事典」も『鉄砲勇助』は『うそつき村』の別題としている。
市販される『鉄砲勇助』のCDのうち、いくつかはうそつき村のくだりをカットしているが、
フルサイズの『鉄砲勇助』はCD集「桂米朝上方落語大全集 第四期」37巻(2006、東芝EMI)で聴ける。
同音源は2020年にユニバーサルから単品発売された。

うどん屋(風邪うどん)
<おもな演者>5小さん/枝雀/8可楽/他多数
5小さんの十八番。上方では『風邪うどん』のタイトル。
やはりうどんをすする仕草と表情が最高の見せ場なので、映像で見たい演目。
客がうどんをすすっている途中、うどん屋と目が合って笑う場面が好き。

鰻の幇間
<おもな演者>志ん生/8文楽/小三治/他多数
東京で「昭和の名人」と呼ばれた落語家たちが軒並み音源を残している噺。
それぞれの演者のテーマが演出の差によって如実なので、格好の聴き比べ演題。
落語の演出について解説する文献では、『鰻の幇間』を引き合いに出していることが時々ある。

馬のす(馬の尾)
<おもな演者>8文楽/米朝/1福郎
短い時間でストンと落とす掌編。
8文楽のオハコで、CD集「桂文楽落語全集」(1998、小学館)に収録がある。
上方では『馬の尾』のタイトルで、米朝や1森乃福郎のCDが出ている。

馬の田楽
<おもな演者>1春団治/5今輔/他多数
田舎の風景が想像できるのどかな噺。元は上方落語だが、東京でも広く演じられる。
前半に子供が大勢出てくることから、子供ネタに類型されることもある。
田楽が豆腐に味噌をつけて焼いた料理であることを知らない客に向けて、
噺の途中で上手に仕込む演者もいる。

厩火事
<おもな演者>8文楽/志ん朝/歌丸/他多数
年上女房が働いて亭主を養う状況のことを指す慣用句、「髪結いの亭主」の語源のような噺。
落語で夫婦愛を語る際など、よく引き合いに出される。
当代の人気者から昭和の名人まで音源多数。

梅若礼三郎
<おもな演者>円生
「増補落語事典」に掲載されている長編人情噺。CD「円生百席」50巻(1998、ソニー)所収。

うらむき(裏向き丁稚)
<おもな演者>1春団治/6小勝
昔の生意気丁稚のレジスタンス。6小勝が演じた。
1春団治のSP復刻CD「春団治三代 初代桂春団治」6巻(1999、クラウン)にも収録がある。

売り声
<おもな演者>3金馬
「ふるい~ふるい~」でおなじみ小咄。3金馬が『孝行糖』(別項参照)のマクラで演じた。



永代橋
<おもな演者>円生/彦六(8正蔵)
江戸中期の永代橋落橋事故を落語化した、リアル『粗忽長屋』(別項参照)。
円生・彦六以外の演者を知らない。CD「円生百席」3巻(1997、ソニー)所収。

越後屋
<おもな演者>歌丸
長屋の熊さんの淡い恋話。
歌丸以外ほとんど演じ手がおらず、その歌丸も演じたのは前半だけだった。
その歌丸のCDは、当初CTAというマイナーレーベルからの発売で、その後発売元を転々としている。

絵手紙(1)
<おもな演者>1新左衛門
上方小咄。1曽呂利新左衛門が残したSP音源が、
1984年に復刻レコード「伝説高座シリーズ・名人落語篇Ⅱ」(コロムビア)に収録。
2008年には企画CD「SP盤復刻 芸能全集 明治・大正・昭和 寄席編」(コロムビア)にも入った。
ちなみに同題の(2)はバレ小咄(別項・補遺小咄参照)。

江戸荒物
<おもな演者>米朝/五郎兵衛(五郎)
明治期における東京と大阪のカルチャーギャップが、今聴くと新鮮。
CDでは「特選!!米朝落語全集」(1993、東芝EMI)のみの発売のようだ。

戎小判(恵比寿小判)
<おもな演者>1春団治
上方落語。1春団治のSP音源が「春団治三代 初代桂春団治」19巻(1999、クラウン)に収録。
東京では以前、柳家〆治が『看板のピン』のマクラに使っているのを聴いたことがある。



追いかけ盗人
<おもな演者>多数
泥棒噺のマクラに使われる、定番のナンセンス小咄。

追いだき(将 門)
<おもな演者>2円歌
芝居の真似事が入る珍しい噺。2円歌以降、誰も演じていない。
2001年にビクター伝統文化振興財団から『将門(相馬良門雪夜話)』の題で発売された。

応挙の幽霊
<おもな演者>2円歌/6馬楽
円山応挙の幽霊画が出てくる、夏の幽霊噺。
鑑定ブームの頃に、入船亭扇橋の口演を放送で何度か聴いた。
CDでは2010年に「なごやか寄席」(ユニバーサル)から6蝶花楼馬楽の口演が出ている。

王子の狐
<おもな演者>5小さん/8柳枝/他多数
メス狐が人をバカそうとして、逆に騙されてひどい目に遭う噺。
卵焼きの名店として登場する扇屋は、王子に今も実在するお店である。
元は『高倉狐』という上方噺だが、そちらは未聴。

王子の幇間
<おもな演者>8文楽/4小染
幇間の噺を多く持つ8文楽がたまに演じた、演じ手の少ない幇間ネタ。
市販はCDブック「桂文楽落語全集」(1998、小学館)収録の物のみ。
上方では『茶目八』の題で林家染丸代々が演じ、
CD&DVD集「四代目林家小染」(2009、よしもとアールアンドシー)に収録がある。

鶯宿梅
<おもな演者>小満ん
大家の養子に入った若旦那が主人公の噺。
エコーという記録用CDを製作頒布する会社が作った柳家小満んの音源の中にある。
2010年3月の収録で、現在は取り扱いを終了している模様(エコーの音源は以下同様)。

阿武松
<おもな演者>円生/5円楽
第六代横綱・阿武松緑之助の出世譚。講談や浪曲にもなっている。
1997年発売のCD「円生百席」4集(ソニー)所収。

近江八景
<おもな演者>3金馬/円生/米朝
近江八景の名が織り込まれた手紙を読む場面が聴き所。
ナマで聴く機会は少ないが、上記演者以外にも談志や6小勝など市販音源は意外と多い。

近江屋丁稚
<おもな演者>五郎兵衛(五郎)
小咄程度の短いネタ。1993年に露の五郎がNHKラジオ「上方演芸会」にて口演。
その音源が2002年に「ビクター落語 上方篇」(ビクター伝統文化振興財団)からCD化された。

大男の毛
<おもな演者>龍志(金魚)
マンガチックなバレ噺。1983年の企画落語会で立川龍志(前名・金魚家錦魚)が口演。
収録高座は同年通販テープ集「談志が選んだ艶噺し」(ワーナー)として発売。
2000年にはコロムビアからCDで再リリースされた。

狼講釈
<おもな演者>新治
珍しい上方落語。露の新治の十八番で、2003年1月ABCラジオ「なみはや亭」でも口演した。

大どこの犬(鴻池の犬)
<おもな演者>6松鶴/枝雀/彦六(8正蔵)
上方の大ネタ。擬人化された犬の会話が面白いが、東京では演者が少ない。
彦六(8正蔵)が『大どこの犬』のタイトルでテイチクから1993年にテープ発売後、
CD化はされていないようなので、現在東京での演者はいないのかもしれない。

大山詣り
<おもな演者>志ん生/志ん朝/小三治/他多数
初夏に演じられることが多い季節限定の旅噺。
中盤の熊公を坊主にするシーンや、後半の長屋中尼さんになっちゃうシーンなど、
ビジュアルを想像すると楽しい名場面がたくさんある。
上方では『百人坊主』の題で演じられるが、構成やサゲが異なるため、
「増補落語事典」では別話扱いになっている(別項・補遺参照)。

おかふい
<おもな演者>円生
現在放送には乗りにくいネタの一つ。
CD「円生百席」6巻(1997、ソニー)他、円生の口演音源が数種類出ている。

おかめ団子
<おもな演者>志ん生/志ん朝/たい平
孝行の徳がテーマになった、麻布・飯倉片町の団子屋が舞台の噺。
志ん生・志ん朝のCDがある他、2014年には林家たい平のCD「たい平落語」(コロムビア)が出た。

臆病源兵衛
<おもな演者>10馬生/雲助
臆病源兵衛と呼ばれる男が主人公の珍しい演目。
1979年にTBS「落語特選会」でオンエアされた10馬生の高座は、2010年にDVD化。
その後、門弟の五街道雲助が継承、雲助や孫弟子・桃月庵白酒のCDも出た。

お血脈(善光寺由来/善光寺骨寄せ)
<おもな演者>10文治/志の輔/他多数
善光寺でお血脈の御印が流行したおかげで地獄が衰微する、寄席でおなじみ地噺。
地獄会議と石川五右衛門が登場する前で切ると『善光寺由来』のタイトルになる。
10文治の十八番で、門弟の11文治も継承している。
上方の2桂歌之助は『善光寺骨寄せ』の題で演じ、高座で実際にガイコツの人形細工を組み立ててみせた。

おさん茂兵衛(1)
<おもな演者>円生
かつて円朝が演じ、円生が継承した人情噺。CD「円生百席」(1997、ソニー)所収。
(1)とあるのは、他に同題のバレ噺が「増補落語事典」の補遺にあるため。

お 七
<おもな演者>円生
『子ほめ』とは逆に、皮肉な性格の男が友達の子供をけなしに行く噺。
2008年に発売されたCD「六代目三遊亭円生 落語名演集」1巻(コロムビア)に収録。
他に、立川志らくが演じるのを聴いたことがある。

お七の十 (お七/八百屋お七)
<おもな演者>4痴楽
八百屋お七のエピソードが落語になっている。10文治もやった。
「落語名人集(五)柳亭痴楽ライブ」(2001、コロムビア)など、市販の音はすべて4痴楽のもの。

唖の釣(上野の釣/殺生禁断/昆陽の御池)
<おもな演者>5小さん/彦六(8正蔵)/談志/他多数
タイトルが公の場で憚る表現のため、稀に放送にかかる際は、カッコのような別題がつく。
上方の題は『昆陽の御池(こやのおいけ)』。桂吉朝の高座が動画サイトに上がっている。
1983年頃、VHSビデオ「にっぽんの伝統芸能 名人の十八番 人間文化財 高座の人々」(にっかつ)から
5小さんの映像(スタジオ収録)が発売された。
このシリーズはのちに竹書房からDVDで再発売されたが、『唖の釣』はラインナップから外れた。
その代わり、2008年に同社からリリースされた談志のDVD
「立川談志ひとり会 '92~'98 初蔵出しプレミアムベスト 第2夜」に収録されている。
その他、CD集「談志百席 第二期」16巻(2005、竹書房→2010年コロムビアから単品発売)にも収録した。

おすわどん
<おもな演者>歌丸/5円楽/喜多八
陰気だったストーリーを歌丸が明るく修正した。
2005年発売の「NHKCD 新落語名人選 桂歌丸」(ユニバーサル)他に収録。

おせつ徳三郎(前)(花見小僧)
おせつ徳三郎(後)(刀 屋)
<おもな演者>(前)5小さん/7正蔵 (後)志ん生/志ん朝
寄席などでは『花見小僧』『刀屋』と別々に演じられることが多い。
通し口演としては、さん喬のDVD「本格本寸法 ビクター落語会 柳家さん喬」4巻(2013、ビクター)がある。

お玉牛(堀越村のお玉牛)
<おもな演者>3春団治/2小南/ざこば
何といっても3桂春団治が絶品。夜這いの仕草が見所だけに、できれば映像で見たい。
東京の6三遊亭円雀が、前名・春馬時代に高座にかけたのを見たことがある。

お茶汲み(茶汲み)
<おもな演者>志ん朝/歌丸/小三治
うそ泣きをする狡猾な女郎を引っかける廓噺。
志ん朝のCDは1995年、小三治のCDは2007年にそれぞれソニーから発売されている。

お直し
<おもな演者>志ん生/志ん朝
廓の中でも最下層の「けころ」が舞台。それだけに人間心理を濃密に描いたストーリー。
志ん生はこのネタで1956年度の芸術祭賞を受賞した。

お化長屋(借家怪談)
<おもな演者>談志/円生/志ん朝/他多数
「増補落語事典」では『お化長屋』の表記だが、市販音源の表記はすべて『お化け長屋』。
これは「化ける」の昔の送り仮名表記が「化る」だったためと思われる。
寄席などでは時間の都合で前半でサゲにすることが多いが、
3金馬と志ん生がリレー口演したCD「NHK落語名人選」79巻(1994、ポリドール)もある。

帯 久
<おもな演者>米朝/円生
名奉行・大岡越前守が登場するお裁き物。
米朝がじっくり演じるCD「特選!!米朝落語全集」1巻(1989、東芝EMI)の口演は手に汗握る。
2020年1月にはユニバーサルからCD「桂米朝 昭和の名演 百噺」22巻が発売された。

お藤松五郎
<おもな演者>円生
円生がじっくり聴かせてみせた、さながら明治の寄席を感じさせる世話物の一つ。
残念ながら現在は映像の単品売りはされていないようだ。
1997年発売のCD「円生百席」7巻(ソニー)所収。

お文様(お文さん)
<おもな演者>5文枝/3染丸
大阪船場の商家が舞台の稀少ネタ。
CD「ビクター落語 上方篇」(ビクター伝統文化振興財団)シリーズから、
5文枝の高座は2006年、3染丸の高座は2002年にそれぞれリリースされている。

お祭佐七
<おもな演者>円生
江戸のモテ男・お祭佐七のエピソード噺。
佐七は『雪とん』という噺にも登場し(別項参照)、そちらは志ん生がやる。
CDでは「円生百席」6集(1997、ソニー)があるくらい。

お神酒徳利(占い八百屋)
<おもな演者>5小さん/円生/3三木助/他多数
とある事件と主人公のウソから始まる壮大な旅ドラマが、ちょっとしたロードムービー風。
5小さんと円生ではあらすじが違い、それぞれの個性がよく出ていて面白い。
上方では『占い八百屋』の題で演じられる。

お見立て
<おもな演者>志ん朝/6柳橋/他多数
花魁と客のやりとりがある廓噺としては最もポピュラー。
比較的短い噺ということもあり、寄席や放送でしょっちゅうかかる。
サゲ間際の墓間違いは誰で聞いてもよくウケている。

おもと違い
<おもな演者>志ん生
万年青(おもと)の鉢植えの育成が流行した明治期の噺か?
CD「五代目古今亭志ん生ベストコレクション」(1996、クラウン)の音源のみ世に出ている。

親子酒
<おもな演者>志ん生/10文治/5小さん/他多数
酒噺の中では最もスタンダードな演目。
演者の個性が一番よく出るのは、父親がお酒をねばってせびる場面ではなかろうか。
東西で演じられ、上方版では冒頭、倅がうどん屋に絡む『うどん屋』(別項参照)に似た場面がある。

お歴々
<おもな演者>円生
空耳による聞き違いの小咄。円生は『紀州』(別項参照)のマクラに用いた。

お若伊之助
<おもな演者>志ん生/円生/円菊
男女の恋愛話かと思いきや、途中から狐狸妖怪の怪談テイストになる。
古今亭円菊の高座はCD集「古今亭円菊落語選」(2011、コロムビア)に収録がある。

音曲質屋
<おもな演者>円窓
1984年に「NHK古典落語選集」という番組の企画で、三遊亭円窓が復活させた音曲噺。
その後、林家正雀や上方の4桂文我ら、多芸な落語家たちに受け継がれたが、
市販音源、動画サイトの公開ともに見当たらない。



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