Movie Review 2004
◇Movie Index

スーパーサイズ・ミー('04アメリカ)-Dec 28.2004
[EXPLANATION]
ある時、スパーロックは、自分たちが肥満になってしまったのはファーストフードのせいだとマクドナルドを訴えた10代の女の子のニュースに注目する。企業側は商品と肥満は関係ないと否定し、裁判所も訴えを棄却した。スパーロックは企業が正しいのか、彼女たちが正しいのかを証明してみようと、“1ヶ月間、1日3食マクドナルドの商品しか食べない”を実行しようと決意する。
監督モーガン・スパーロック(初監督作)
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この映画を見た後に、果たして自分はマックを食べたくなってしまうのか?それとも食べたくなくなるのか?どっちに転ぶかそれが楽しみでもあった。結果は後者。実は映画を見る30分くらい前に食事を取って満腹の状態で映画を見てしまったのね。そのせいか見てる間からもう気持ちが悪くて、映画が終わってからは車酔いしたみたいに気分が悪かった。マックも当分食べたくないし、もっと野菜を取ろう!と誓いましたよ。もし空腹時に見てたら食べたくなったかな?

実験自体は、日本のお笑い芸人がやりそうなネタだなぁと思ってたけど、ちゃんと医師や栄養士の診断を受けながらやってたのね。実験なんだから当たり前だけど、もっとおバカ全開なチャレンジかと思ってたので。保険もたくさん掛けてたんだろうなぁ。それから、この監督が元々スゴイ健康体なことにビックリした。酒もタバコもやらないし、BMI値でも太ってないし、よく歩くし、恋人はベジタリアンのシェフだから普段の食事はヘルシー。どっかのドキュメンタリー監督とはエライ違いです。ただ彼女のベジタリアンぶりがちょっと恐くて、何でこう極端なんだろね?と苦笑してしまった。監督もそれを分かっててわざと彼女との会話を入れたんじゃないかと思った。

案の定、スパーロックは20日ほどで身体を壊すのだが、医者たちがストップをかけてもまだ続け見事完走する。医者たちは呆れたり怒ったりするのだが、 検査結果を見てるシーンはなぜか顔がほころんでいるのね(笑)そこが一番笑った。ファーストフードを食べ続けると酒を飲みすぎた人と 同じ症状が肝臓に出るという結果が出たんだけど、データが取れて良かった!みたいな。他に好んでこんな実験する人いないしね。このデータから 研究発表でもできれば監督も本望なんじゃないかしら。
また、ビッグマック大好きな男性がインタビューを受けるんだけど、彼はビッグマック以外は食べないようで太っていなかった。これも面白いデータだ。 やはりポテトと炭酸飲料がいけないようだ。でもハンバーガーを食べるならポテトも絶対に欲しいんだよね〜。ドリンクはブラックコーヒーかお茶しか 飲まないけど。アメリカのマックユーザもまずはスーパーサイズのウーロン茶から始めたらどうだろうか?(笑)

映画はスパーロックのチャレンジと同時に、肥満やダイエット、学校給食事情、そしてファーストフードの企業体質についてを説明していく。はっきり言って実験よりもこっちのほうが興味深いことが多くて(まぁ監督自身も本当に言いたいことはこっちだろう)特に学校給食にはビックリ。ファーストフード会社が給食もやってるのに驚いたし、あんなジャンクフードを学校に出してるのも驚いた。せめて給食くらいはバランスの取れたものを提供しなくちゃ。ファーストフードの会社だってそれができるはず。なのにそうしないところが本当に問題だと思った。そういうものしか食べられない舌を子供の時に作ってしまうのだから。たとえ朝と夜がごく普通の食事であっても、脂っこいものや味の濃いもののほうが食べやすいし(大人になると薄味のほうが良くなってくるんだけど(笑))ある種の洗脳みたいで怖ろしいと思った。この件と、マクドナルドへのアポはもう少し突っ込んだところが見たかった。本作だけでもじゅうぶん問題提起になってると思うけどね。現にマックではスーパーサイズをやめたわけだし(マックは映画とは関係ないと言ってるようだが)

私が次にマックを食べる日はいつになるのか?食べたらここに書こうと思う。
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巴里の恋愛協奏曲('03フランス)-Dec 25.2004
[STORY]
1925年パリ。実業家ジョルジュと結婚して幸せに暮らしているジルベルト(サビーヌ・アゼマ)は、友人のファラデルや若い芸術家のシャルレからも求愛されモテモテの毎日。しかしある時、夫の取引相手と紹介されたアメリカ人が、前の夫エリック(ランベール・ウィルソン)と分かって大慌て。夫は彼女がバツイチとは知らないのだ。それなのにエリックはまだジルベルトを忘れられず、彼女に復縁を迫る。一方、ジルベルトの友人ユゲット(オドレイ・トトゥ)はシャルレに恋していたが、彼は若い女には興味がないとユゲットを相手にしなかった。
監督アラン・レネ(『恋するシャンソン』
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本作は1925年に上演されたオペレッタを映画化。前作『恋するシャンソン』ではシャンソンやフレンチ・ポップスを役者が口パクで演じていたが、本作では役者本人が歌っている。

ジルベルトをめぐる男女の恋のドタバタを描くシンプルなストーリーで、前作よりも分かりやすくて面白い。それにやっぱり口パクよりちゃんと歌ってるほうが(別撮りだろうけど)しっくりくる。歌の中ではエリックが若い女性たちから「キスしてキスして」と迫られる歌が面白かった。メロディも印象的で頭の中でぐるぐる回りそう(笑)でも肝心のサビーヌ・アゼマが一番歌が上手くないんだなあ。声が出なくてキツそうだし、音程も不安定だし、顔はたまに黒柳徹子に見えるし(笑)なぜ彼女がこんなにモテるのよ〜?って、やっぱり思いました。年齢にしては綺麗なんだけど。今回オドレイ・トトゥはイっちゃってる役でなく、ごく普通の女の子でとても可愛いし、他の若い女性たちもみんな綺麗で、彼女たちの誰かがモテモテなら話は分かるんですけどね。そういう話なんだからしょうがないんだが(笑)

そんな中、実は私はジルベルトでもユゲットでもなく、ジルベルトの妹でオールドミスのアルレットばっかり見てました。演じていたのはオドレイ主演の『アメリ』で、神経質なカフェの店員ジョルジェットを演じていたイザベル・ナンティ。出演者の中では明らかにスタイルが悪いのだが(背が低くて顔が大きくてS字体型)表情が豊かでリアクションが面白いの。姉の秘密を唯一知っている人間ということで、彼女が狂言回しのようにちょこまかと動くのが楽しくて、この人も幸せになるといいなぁ〜なんて親しみを込めて見ていたら・・・最後に一番美味しいところを持って行った!(大爆笑)やったー!またこのシーンの撮り方が今までのシーンにはない撮り方で、そこだけ浮いてるようにも見えたが、すごくロマンチックだったのでまぁヨシとしよう。

そんなわけで主演であるはずのジルベルトがすっかり霞んでしまった。いや、これって日本ではオドレイ・トトゥが主役としてクレジットされてるんだけど、女性の中でも出番の数は3番目だし、男性も入れると5、6番になっちゃう。彼女目当てで見た人はガッカリするだろうなぁ。しかも、彼女が恋するシャルレはジルベルトのことが好きだったはずなのに、たった数分でいきなりユゲットを誘ってしまうのだ。このところがよく分からなくて(どこか見落とした?)なんかどうでもよくなってしまった(ヒドイ)しかもシャルレって若いってだけで全然カッコよくないの。もっさりしててヒゲの剃り跡が青々しくカバっぽい。なぜこんな男を?!をユゲットに聞いてみたくなりました(笑)
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ベルヴィル・ランデブー('02フランス=カナダ=ベルギー)-Dec 14.2004オススメ★
[STORY]
戦後まもなくのフランス。両親を亡くした内気な少年シャンピオンのため、おばあちゃんは彼に自転車をプレゼントした。それから数年後、シャンピオンは世界最高峰の自転車競技大会ツール・ド・フランスに出場するまでになる。しかし競技中に彼はマフィアに誘拐されてしまう。それを知ったおばあちゃんは彼がさらわれたベルヴィルという巨大都市へ向かう。そしてかつて“ベルヴィルのトリプレット”と呼ばれた三つ子の老婆たちに助けられ、マフィアたちを追跡する。
監督&脚本シルヴァン・ショメ(『老婦人とハト』)
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第76回アカデミー賞の長編アニメ映画賞と歌曲賞にノミネートされたほか、ニューヨークやロサンゼルスの映画批評家協会賞では最優秀アニメーション映画賞を受賞した。また本作のプロダクションであるレ・ザルマトゥールは、あの私が大変気に入った『キリクと魔女』や『白くまになりたかった子ども』も手がけたのだそうだ。今までフランスアニメって注目してこなかったけど、これからは要チェックだな。

可愛らしくて笑えて優しさがあって、でも淋しくもあり泣きそうにもなってしまうという、不思議な映画だった。これを見ないなんてもったいない!とオススメしたいのだけど、絵がデフォルメされすぎて気持悪いと拒否反応を示す人も多いだろう。特にシャンピオンはヤバイ(笑)恐ろしく高い鼻と落ち窪んだ目、痩せ細った上半身にパンパンの太ももと2つに割れたふくらはぎ、それだけ見れば子供は泣き出すかも。でも彼の少年時代の妙な可愛さをすでに見ているので、大人になった彼を見てもイヤだと思えないし、そのクセのある絵がだんだんクセになっていくのだ(笑)

おばあちゃんも二頭身で、メガネに目がくっついてるの?!っていう不思議なルックスなのだが、某映画の老婆よりも遥かにパワフルで魅力的だった。傾斜45度くらいある坂道を、表情1つ変えずに笛を吹きながら三輪車を漕ぎ、家に帰ればシャンピオンの自転車の修理をする。彼よりもおばあちゃんが競技に出たほうが優勝するんじゃないかっていうくらい、脚力も持久力もある(笑)でもそれは後に誘拐された孫を追いかけるのに大いに役立つのである。というか、まさかこれが伏線になっていたとは予想外だった。他にも伏線は随所に張ってあって、きちんと計算された作品なんだと感心。また、人物たちのバックグラウンドは詳しく描かないのに、飼い犬ブルーノが電車に対して酷いトラウマを持っているところを人間以上に詳しく描いていて、そこも面白いと思った。特にブルーノが見る夢はこっちまで病んでしまいそうな表現なのに、ブルーノの必死さがおかしくもあり可哀相でもあり、1つの描写でいろんな感情が湧き上がってくる。最初にも書いたが、ホントに不思議な作品だ。

こうしたストーリーや映像をさらに盛り上げるのが音楽。一度聞いたら忘れられず、何度も聞きたくなる(サントラ買いたいんだけどCCCDなのよねー)エンドクレジットの歌はメロディだけじゃなく歌詞も面白くて、そこも真剣に見ていたら最後の最後で大オチ映像が!ホント言うと、この直前までは面白いけど90点いくかいかないかくらいの映画だなぁと思ってたのだ。でもこのオチで見事満点。思わず拍手したくなった。なのでこれから見る人は最後までちゃんと見るように。
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