えーころかげんな日記

「なんだ、くだらない駄洒落じゃないか。」

月と鏡はお似合いだから

この文章は雨にさらした水彩画のように曖昧で、あなたには少し分かりづらいかもしれない。しかし、あなたが問題解決のためのほんの少しの努力を惜しまなければ、きっとこの文章はあなたに理解されることを諦めるだろう。

微笑みを浮かべて

2001/05/01

じさまは他に話し相手もおらんので一人で猫をなでておった。すると猫がこういうのじゃ。
「じさま。じさま。おらに足をかじらしてくんろ。」
じさまはびっくりして言った。
「まあ、なんでそんなことを言うんだ。足をかじられてはたまらん。」
「いいからいいから。足をかじらせてくんろ。」
「いかんいかん。足をかじられてはたまらん。」
じさまはそう言うが、心の中ではもしかしたらこの猫はわしには考えもつかないえらいことをやろうとしているんじゃなかろうかと思っておった。そう思っているところへ、また猫が
「じさま。じさま。足をかじらせてくんろ。」
と言いよった。だからじさまはちょっとかじらせてやることにしたのかもしれん。今度は何も返事をしなかった。すると猫はとうとうじさまの足をがりがりとかじり始めた。
「いたいいたい。もうよしてくれ。」
じさまの言葉も聞かず猫は夢中でかじるものだからとうとうじさまのあしは片方がなくなってしもうた。とっぴんぱらりのぷう

2001/05/02

久々に小学校の歌集を見ていて驚くべき事実を発見した。なんと言うことだ。我々は当の昔からあの生物を知っていたのではないか。いかにその歌詞を引用する。

ハイアイアイ(ハイアイアイ)
ハイアイアイ(ハイアイアイ)
ハナアルキだよ

ハイアイアイ(ハイアイアイ)
ハイアイアイ(ハイアイアイ)
南の島の

ハイアイアイ(ハイアイアイ)
ハイアイアイ(ハイアイアイ)
鼻の長い

ハイアイアイ(ハイアイアイ)
ハイアイアイ(ハイアイアイ)
ハナアルキだよ

2001/05/03

精霊使いは種種雑多の植物をすりつぶして作った怪しげな液体を一気に飲み干すと、目を閉じ、大きく鼻から息を吸った。
「はぁああああああああぁあぁぁぁあぁぁぁ。」
静かにゆっくりと息を吐き出すと、今度はスーハースーハーと短く呼吸を繰り返した。荒い鼻息はしばらく続き、やがてゆっくりと元のスピードに戻っていった。

突然、精霊使いは天を仰ぎ、大きく目を見開いた。
「大いなる四つの精霊達よ。力を与えたまえ。」
精霊使いはまず水の精霊に語りかけた。すると不思議なことに井戸に水があふれた。次に精霊使いは光の精霊に語りかけた。すると突然太陽の光が雲を割って差し込んだ。その次に精霊使いは火の精霊に語りかけた。しかし、火の精霊はその力を見せなかった。精霊使いは「精霊も休みたいときがある。」と言った。村人が必要ないというので四大精霊の最後の一人はこれからも呼び出されることは無いだろう。

2001/05/04

その日、町にはトロルがやってきた。トロルは大きな目をぎょろりとこちらに向けて、無言のまま立ちつくしている。しかし、驚いたことに子ども達は嬉々としてこの巨大で恐ろしい肉食の魔物の腹の中へ入って行くではないか。大人達はそれを止めもしない。むしろ大人は子どもをトロルの腹の中へと進んで追い込んでいるようにすら見える。世も末だ。そう思いながら古き良き時代を懐かしみ、男は町をあとにした。

2001/05/06 01:18:45

水と盆と重力の関係は時に不可逆的な変異を起こす。また、コーンフレークと牛乳と時間の関係も不可逆的である。だから、そうだ。もうブエノスアイレスだとか、AA社がどうとか、ハバネラやダンスの話もやめておこう。取り返しのつかないことを取り返すのはあまりにも骨が折れる。

2001/05/06

単位がルピアだったらいいのに。少年は思った。カツアゲがうまくいくのはその拳が権力を握っているからだ。その拳に握らせた権力をこちらに取り返すのは困難がつきまとう。上納を拒めば平穏と安息の代わりに恐怖と苦痛を享受することができるだろう。しかし、それだけだ。

今、少年の心の中には不安といらだちが残っている。少年はいささか存在する事に疲れているのかもしれない。ここ数日は随分たくさん存在した。そろそろ存在するのを止めても良い頃かもしれない。少年は世界と時間が勝手に回ってくれればいいと思った。存在することを止めたいと願った。一ヶ月ぐらいの間だけ。

2001/05/07

某洗濯機の説明書より

(洗えないものの例)

ぬいぐるみぐらい良いじゃないか。スニーカーぐらい洗えるだろうと思うかも知れない。取ってきた昆布を洗いたくなるときもあるだろう。芋を洗うようとはよく言ったものだ。しかし、だけれども、だとしてもだ。

2001/05/10

今まで、それは意図的に記号化された芸術表現世界内のみに存在する構造体であると思われていた。しかし、それは間違いであった。ある絶対的と考えられていた理論を超越し、それを包括してしまうような理論が発見されるように。あるいは、デイビッド・ボーマンがヤペタスのモノリスから人間の認識を超えた世界に入り込んだように。

その長くとぐろを巻いたうす茶色の柔らかいものは確かにこの世界に存在した。しかも、陸蒸気の中にだ。

2001/05/11

問題

次のうちもっとも数が多いのはどれか

2001/05/12

「目を閉じればいくつもの辛い思い出がよみがえる。しかしそれがどれほどの物であるのか。その記憶を辛いと感じるのは自分一人ではないか。聞け、人間よ。悲劇役者になどなろうとしてはならない。泣けない悲劇は笑えない喜劇よりも手に負えないからだ。見よ。あの火箸で突き殺された男の顔のなんと愉快であることか。あの男は道化になることに成功したのだ。人間よ、お前達には理解し得ぬかも知れない。目の前にあるものを見つめてはいけないのだ。それに感じ入ってはならないのだ。その妙なこだわりを棄てるがよい。それだけでどれだけ世界は楽になることか。けれどもその世界は死にたいほど味気ない。人間よ。お前はもう分かっているはずだ。世界中にあるどんな科学も、理論も、思想も、哲学も、感情も、精神も、妄想も、全ては宗教に過ぎないのだ。」と、白衣を着た教祖様は右手を小刻みに震わせながら言った。

2001/05/14

この時間がいつまで続くのか、暗闇の中一人で取り残され、来るでもないものを待ち続けるのか、あるいはその先には何物も存在しないのではないか。

男は言った。
「もうじき悪魔がやってきて、俺のギターをチューニングしてくれるのさ。」

女は聞いた。
「だけども、あんたギターを持っていないじゃないか。」
「ああ、家に置いてきちまったからな。」

2001/05/15

夏が近づき、気温と湿度が上がってくると、革の靴はムレだす。どのように革靴がムレるかについて説明しよう。

まずよく知られているように普通つがいで暮らしている革靴が子孫を残すため繁殖をはじめる。しかし、革靴の子どもは辺りに住む凶暴な猛禽類の恰好の餌となるため、つがいだけでは子孫を守ることができない。

そこで革靴は隣近所のつがいを集めて群れを作るのである。群れのリーダーは普通群れの中で一番大きな靴が務める。群れは更に他の群れを探してさまよい他の群れと合流する。群れがある程度大きくなると安全で餌が十分に確保できる場所に定着し、そこで暮らしはじめる。

この時点ですでに新しい命が生まれており、個体の大きさはばらつきがあるが、子ども達が大きくなるとなかまは徐々に群れを離れていくのでやがて革靴の個体分布は元の状態に戻る。

2001/05/17

「一度自分で決めたことは最後までやり通さなければいけない。」
ドイツ人はそう言って机をたたいた。少年は尋ねた。
「僕はいつ、それをやるって決めたんだろう。僕はただ、それをやってみたいって思っただけだ。そしてそれはできた。だからやっていたんだ。違うかな。」
「いいや、お前がここに存在していて、それをやり始めたときから、お前はそれをやると決めていたのだ。それが嫌ならばやり始めるべきではなかった。あるいは存在すべきではなかったのだ。」

少年はまだドイツ人の言い分が理解できないでいる。
「例えばやろうとしていたことが何か不可抗力でできなくなることだってあるじゃないか。」
「不可抗力を避ける努力をせよ。そして少なくともお前の感情は不可抗力ではない。」

少年はだんだんだまされているような気持ちになった。暗闇の中で踊り狂う様な人達もこんな風な気分に襲われたのかも知れない。しかし、少年がドイツ人の前にひれ伏すまでにはもう数分の余裕があった。
「殺したいほど憎たらしい奴がいたとしても、そいつを殺さずに仲良くなった方がよっぽどいいじゃないか。『やらなければいけない』っていうのはどういうことだい?」
「そのときお前は相手を殺すべきだ。殺さなければお前は一生後悔することになるだろう。」
「殺してどうなるって言うのさ。」

少年の質問のあと、ドイツ人はしばらくの間目をつぶって押し黙ったまま考えていたようだ。あるいは過去に自分がしてきたことを振り返り、その中の経験から問いに対する的確な答えを見つけだそうとしているのかも知れない。

やがて、彼の頭はだんだんと下がりははじめた。思い記憶が甦ってきたのかも知れない。暗くなった表情が何かをこらえているように見えるのは気のせいだろうか。

いい加減しびれ切らした少年はもう一度同じ質問をした。
「殺してどうなるって言うのさ。」
ドイツ人は今の自分の立場をはっと思いだしてこういった。
「お前は……、お前は殺してしまったことを一生後悔して生きるのだ。」

2001/05/19の分

やあ、今日は前に言ったところてんをついに買ったよ。ところがそのところてんと来たら妙に重くてね。無闇に僕の腕を引っ張るもんだからとうとう根本から引っこ抜けちまったんだ。これじゃあ運べないってんで仕方なくもう一方の手でところてんを持って、もう一つの手で引っこ抜けた腕を持って歩いたんだ。でもやっぱりところてんは重いし、腕は一本少なくなってるんだからすぐにもう一方の手も引っこ抜けた。しょうがないからもう一つの手でところてんを持ってあとの手で引っこ抜けた腕を持って歩いたんだ。それでどうなるわけでもなくて、このまま続けても面白くないから結論を言うとね、夜は後ろ向きに歩かない方が良いって事さ。よく言うだろ?

2001/05/23

あふれ出す情報に身をもまれ、いつしか人は何かそこにあるべき重要なものを忘れてしまってはいないだろうか。

たとえば、夕食を食べ終わった後でふと気づくのだ。傍らに、あるべきなのにないものに。詳しく言わないでも解ってもらえるだろうか。これはそう、なければ大変につらい思いをするものだ。

しかしどうだ、昔はみんなそんなもの無しで暮らしていたはずなんだ。なのに今はもう、それなくしては生きていけないような感じさえする。なんてことだ!本当に!どうかしている!

備考:豚汁

2001/05/24

そんなに泣いていたってどうにもならないじゃないか。君がそんなに泣いていたら僕は洗濯物も干せやしない。そりゃあ僕だって小さい頃は泣いてさえいれば何とかなると思っていたけど、もう滅多なことでは泣いたりしないよ。だけども、君は僕よりずいぶん長生きしてるはずなんだぜ。情けないといいたくもなるだろ?ああ、そうかいそうかい。わかったわかった。パンツにキノコが生える前までには泣きやんでくれるとありがたいんだけどな。

備考:野菜炒め

2001/05/25

これはそんなに必要なものなのだろうか。本当はみんなそんな風に考えているんじゃないだろうか。けれども、そのうち見て見ぬ振りをしたり、あるいは積極的にそれを亡き者にしようと企んでいる。そんなところじゃないだろうか。

見ろ。君のすぐ近くに、ほとんど誰からも必要とされていない奴がいるじゃないか。生きる価値が無いモノなど無いだなんてとんでもない欺瞞だ。確かに、彼らの生は僕らの生とは違うように見えるかもしれない。でも僕らだって、いつ神という名の気まぐれ屋に刈り取られるか解ったもんじゃないんだ。解るか?わかんねえか。わかんねえな。そりゃそうだ。

備考:カツカレー

2001/05/27

「あーなんか腹痛いなぁ」
「ごくり。」
「あれ?何飲んでんの?」
「錠剤。」
「いぃいねぇ。どこで売ってんの?」
「地球。」
「いぃいねぇ。俺もほしいなぁ。」
「じゃあ地球寄ってく?」
「いぃいねぇ。」
以下略。

2001/05/28

あああ、今すぐあの子のところへ走っていってこの腕の中へ抱きしめてやりたいのに、あの子はここにいないんだ。なんてことだ。気が狂いそうだよ。それはさておきあの子はどんな顔をしていたんだっけ?

備考:残った餃子

2001/05/29

たとえば、あらゆる場面においてたった一つの論理で物事を判断してみよう。そのとき、君はそのたった一つの論理に縛られ、圧迫され、身動きがとれなくなり、硬直して、赤いよだれかけをして、傘を待つことになる。あるいは、君はひどく曖昧な論理を選んで、臨機応変にそれを読み分け、解釈し、「それは信念ではない。」といわれなければならない。

ならば、あらゆる場面においてそれぞれ別の論理を使用して物事を判断してみよう。想像力の豊かな君は、見事場面毎の論理を作り出し、「それとこれとは話が別だ。」と言い、時にはごまかし、時には自分をだまして、臨機応変に対応し、小さな友人たちから「君たちは卑怯だ。」と言われることだろう。

つまりは、簡単なことだ。それだけのことなんだよ。

備考:回鍋肉、炊き忘れた米

2001/05/30

青年は言った。
「干し椎茸よ。君はなんてすてきなんだ。僕は君と友達になりたい。」

干し椎茸は答えなかった。「食べられてばかりの人生なんてまっぴら。」そう思っていたかもしれない。

食べ物が我々に与えてくれる物はたくさんある。しかし、我々は食べ物に何を与えてやることができるだろうか。食べてやることが食べ物にとっての幸せであるなどとは私にはとうてい思えない。だからといって何もしてやらないわけにもいかない。ではいったい何をしてやれるだろう。

備考:麻婆豆腐丼

2001/05/31

ペンギンさんへ

どうして君が錠剤を素直に飲んでくれないのか不思議に思っている。必要な物はそろっているように見えるのに、どうして拒むのか僕には解らない。もしかして僕がだまされているのかもしれない。知り合ってからまだ日は浅いし君のことはよくわからない。でも君が必要だってんならソースを買ってくるからちょっと待っていてくれ。

備考:予定通り

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