普通シャワーといえば、お風呂の中にセットされていて、シャワーを
浴びる時には浴室の外に水が飛び散らないように、カーテンを引いて、
それから・・・と順番を踏む所だが、そこはホレッ!5ツ星ホテルのことだけ
あって、全面ガラス張りの洒落たシャワー室が別個に設けられていた。
うーん、なんて気持ちがいいの。
日中の、汗ばんだ身体はきれいサッパリ!
日中は活動しやすいように、ラフなジーンズスタイルだったが、
夜のお食事処は、どんな所か分らない。
一応、お色直しでお洒落をしようかな?
しかし、やしのみは慌てて用意をしたのが、いけなかった。
スーツケースの中には、シマッタ!こんなお洋服を持ってくるんじゃ
なかったわ!と後悔、しきり。
つづく
part6
母の思い出の地・・・台湾
忘れてもいいくだらない事をいつまでも後生大事に覚えていたり、
逆に大事なことをいとも簡単に失念してしまうこともあるのだから。
植物園へは、地理的にお食事処からは裏門の方が近く、裏から
廻ることになった。
母の歩く早さは、依然として変らない。
我ら娘より常に一歩先をスタコラサッサと歩いて行く母は、意気揚々としている。
広い池には、きれいなピンク色をした蓮の花が咲いており、しばらく佇む。
バナナの木を見た母は、「昔は、そういえばバナナの木が多かった
けれど、なんだか少なくなったわねえー」と目はバナナはどこどこ?と
キョロキョロキョロキョロ(笑)
自宅の庭にも、その当時は植えられていたらしい。
その話をすばやく耳にした徳○さんは、「そうですねえー、街中では
あまり見かけなくなりましたねえ。
でもね、田舎の方に行くと、まだまだたくさん植えられていますよ。」と
教えてくださった。
ぐるりと公園を一回りした母は、やはり、疲れが出てきたのか、はたまた
暑さも手伝ったのか、だんだん歩くテンポが遅くなってきた。
そんな母の様子を、勿論徳○さんが見逃すワケもなく、すばやく
「お母さん、ちょっとお疲れのようですねえ。
そろそろホテルに戻りましょうか?」とねぎらってくださった。
お日さまは、既に西に傾きつつある。
まさか、そんな様子を見られていただなんて、つゆ知らず・・・
たまりかねて、妹は駆け寄り、「お母さん、こうするのよ」と・・・
台湾へ来てからもうこれで何度目だろう?
母はどうもこういう方面は弱いようだ。
しかし、母の為に言い訳をしておくと、こんな一面もある。
母は俳句をもうかれこれ、15年くらいやっているが、以前お誕生日の
プレゼントに電子辞書をプレゼントした時のこと・・・
ローマ字や英語は若い頃、学んだ経験がある。
洋裁教室を80歳になるまで、やっていたのだが、あれは70歳くらいの頃
だったか、洋裁の本を見ながら、この頃はやたら英語が出てくるのよね、
困るわと言っていたかと思うと、いつの間にか近所の英語教室へと
通いだしていたのである。
自分に良いことは即実行には参った。
ほんの初期的な英語ではあるが、そういう経験が幸いしたのか、ローマ字
変換はすぐ覚え、最初の頃はgyaとかdu等の変換には戸惑ったものの、
今では、広辞苑や歳時記の季語を調べる時などススイノスイである。
そうだっ!あまりにも夢中で昼食のお話が抜けていました。
ふかひれに目がない妹は、ふかひれがおいしいお店へ連れて行ってもらうよう、
要望していたが、徳○さんがお勧めのそのお店は、取引先の中でも、特にVIP
のみ利用しているという高級なお店だった。
妹は、ふかひれが大好きなだけあって、舌が肥えている。
うーん、昨夜のお店のもおいしかったけれど、こちらはまた一味違うわー
私好みかもーと舌鼓。
ふかひれのみならず、日本ではとてもお値段が上等で手が出ない、ツバメの巣
のミルクスープが出てきたのには驚いた。
うん?ということは、私たちはVIPなの?
食事中、徳○さんは、ご自分のご両親のお話をされた。
優しそうなその話し振りに、如何に親御さんを大事になさっているのかが、言葉の
端々に表れ、私達の母のことにしても、まるで自分の親のように、気を遣って
頂きましたし、実の娘の方が恥ずかしくなるくらいだった。
でも、今更後のマツリ。
これらの中で選ぶしかないじゃないの。
これで、いいかっ!
あきらめて、着てみたものの、今度は靴の替えを持ってくるのを
忘れたわあー・・・どうしよう・・・
結局、妹の靴を借りることになり、治まった。
さあー、スッタモンダ、やっと着替えたと思ったら、もう待ち合わせの時間だ。
準備万端、オッケーねえと部屋から出てエレベーターの前まで行った
その時、「あらっ!お母さん、スリッパのままよ!」と妹のすっとんきょうな声。
大変!大変!
「ハイ、お母さん、このカードを差して入るのよ、もう自分で
出来るわよねえ。」妹はサッとバッグからカードを取り出し、母に渡した。
7/9(土)
1日自由行動
かねてより頼んでおいた徳○さんの
案内で、母の嫁ぎ先の住居跡に
訪れる。
そして、よく遊びに行ったという
植物園にも行くことが出来た。
NO.3
日程表
タクシーの昇り降り、段差のある道路、道路を歩く時のサポート振り等々、
自然な振る舞いに、頭が下がる思いだった。
おいしい、昼食を頂いて、それから、母が住んでいた跡地へと
向かったのだが、すっかり話が前後してしまって・・・
まあ、後でも先でも、おいしかったことには間違いないわけでして・・・
公会堂の話へ戻ってっと・・・
公会堂もかすかに覚えがあったようだ。
建て替えがなされているので、原形は留めてはいないが、なにせ、
60年振りに訪れるのだから、全てを覚えているわけではなかろう。
人間の記憶というものは、不思議なものである。