でもね、ところどころ聞こえたんだ。
「やはり失明です。鼻や脳も明日以降詳しく調べないと
分かりませんが、鼻血がまだ出ていますし、脳も場合によっては
２、３日後に悪化した場合死ぬことも有り得ます。」
・・・・・・僕は死ぬんだろうか？
いやだ、そんなことは絶対ないよ！
だって、僕頑張るんだから！
大丈夫なんだから！
とろとろしながらそんなことを思った。
５時頃僕が麻酔からまだ完全に醒めてはいなかったので
確かではないけれど、「どうなんでしょうか？」と
心配そうなパパとままの声がかすかに聞こえた。
僕は朦朧としていてうとうとしていたけれど、
一生懸命右の眼を開いた。
『あっ、やっぱりパパとままだっ♪』
僕はとても嬉しかった。
「ハッピー、大丈夫だった？」って、僕のことを触って
くれたんだ。そうしたら、僕はほっと安心してまた瞼を
閉じてしまった。
人間もそうだけど、僕らワンにも運命のいたずらってあるんだね。
まさかこんなことになるなんて思わなかった。
１２日には狂犬病の予防接種、１５日に美容院の予約、
そして、１８日には成田ゆめ牧場に行く予定だったのに
ぜ〜んぶ取りやめになっちゃった。
暖かい春の陽射しを思い切り楽しんで、いい思い出ができるなって思ってたのに・・・
まさに晴天の霹靂です、ってパパとままは悲しそうに話していた。
僕は障害犬になるけれど、頑張るよ。
生きていさえすればね。
きっとだいじょうぶ！
僕は何度も言い聞かせながら麻酔の後のけだるい
誘惑に負け、深い眠りの世界に入って行った。
あっ、だめ！だめ！
お礼を言うのを忘れてしまった。
ご心配頂いた皆様にお礼を言うのを忘れてしまった。
もう一度眼を開けてっと。
「僕のことを心配してくれて本当にありがとうございます。
そして、パパやままのことも心配してくれてありがとうございます」
では、またね。今度こそ寝るね。
早く元気になって、またお話しさせてね。
