購入後、初めて僕は自分からそっと乗ってみた。
それをいち早く見つけたままは
「ワアー、ハッピー、お利口さんね、待っててね」と言って、
なにやらお台所の方に消えた。
「待つってことは。。。なんて思っていると、
「ほーら、お利口さん、ハッピー、ここは気持いいでしょう、
いい子ねえ、はい、おやつですよ。待てっ!ヨシッ!」
ふーん、なんでかな、このボードに乗るとどうもいいことが
ありそうだな。
いつもなら、強制的にボードに乗せられた僕は5分も経たない
内にその場を離れるんだけれど、今回は自分から乗ったし
ままが誉めたりするんで、
「じゃあ、もう少しいようかな」って、15分くらいは、その場で
伏せをし、手を舐めたり、ボードの匂いを嗅いだりした。
でも、やっぱりなんだか落ち着かない。
パパやままは丁度サスペンスドラマを観ている
最中で「きっと、この人が犯人だと思うわよ、
ねえ、そう思わない?」なんて話に夢中になっている
隙に僕はいつもの定場所へと移動した。
しばらくして、「あらっ、いつの間にかハッピーがいなくなってる。
また、カーテンの後かな」なんて話しているのが聞こえたけど
僕はその場を身動き一つせず、じーっと話の展開を
見守った。
だけど、ままはそれっきりで
「まあ、いいかあ、其の内慣れて、良さが分ってくれば
いてくれるようになるでしょう。」と自分に言い聞かせるように
つぶやいていた。
僕の頭はカーテンの中
平成16年7月24日の土曜日。
この夏は特別に暑いからと、僕は1週間ほど前に、
クールボードを買ってもらった。
ショッピングから帰るなり、ままは嬉しそうに「さあ、ハッピー、
これはねえ、ヒンヤリして、とても気持がいいのよー」と言って、
僕を「それ」にお座りさせた。
「うん、確かに冷たくて気持がいいよ、まま、だけどねえ、
これって石だよね、すごくこれって固いんだね。」
最近はハウスにもベッドにもいることが少なく、フローリングの
床にそのままぺったんしたりはするけど、なんだか感触が違う。
「今すぐには無理だけど、また乗ってみるね、まま。」
そう言って、僕はすぐその場を離れた。
そうだね、僕もそう思うよ。
新しいモノに対しては、僕はいつも臆病になるんだ。
今は横目でチラーッと首を傾げてみては、離れているけど
其の内、きっと、まま大丈夫だよ。
ちょっと不安だけどね。
でも、あれって確かにヒンヤリして気持がいいんだもの。
きっと慣れるさ、僕だって。
自分を信じることって大事なんでしょう。
僕もままを真似て、自分に言い聞かせるようにして
つぶやいた。
ままは「あらー、ハッピー、もう降りちゃうのー」って、
とても残念そうだったけど、まま、僕だってそうそうハイ、そうですか
ってわけにはいかないんだ。
慣れるのに時間がかかることだってあるんだ。
僕はその後も首を真横に向けチラッと見ては、クールボードの
そばを通り抜け、ピアノの後に涼を求めた。
ここって、丁度風の通り道になっているんだ。
ほらね、カーテンがそよいでいるでしょう。
まま、ここは今の所とっても快適なんだよ。
夜は夜で灯りがここまで来ないし、安眠できるんだ。
でもねえ、せっかくままが買ってきてくれたんだから、今度
絶対乗ってみるからね。
僕はちょっと反省した。