送球の基本                     トップページへ


 送球の基本は、野球技術の中でも、最も重要なものの一つです。この項では、順を追って、考え方や練習方法を紹介していきます。

チェックは足元から
 技術論の前に、いきなりチェック方法なので、驚いた方もいるでしょう。そもそも、初心者でもボールは投げられますので、問題は順番です。足元が変われば、それ以後も、当然、影響を受けますので、練習するのにも、効率の良い順番があると言う事です。ある程度の選手がスランプになった場合も同様で、修正する順番を間違えると大変な事になる場合が少なくありません。「チェックは足元から」これは、走・攻・守、全てに共通する大変重要な事です。

軸足と踏み出し
 送球では、特に上半身を気にする選手が多いですね。暴投した後に腕を振って首をかしげる場面を良く見かけます。しかし、暴投の原因が、「軸足と踏み出し」に有る選手も少なくありません。足元に原因がある場合は、いくら腕を振っても修正出来ません。具体的には、体に対して左右の足がどうなっているかが問題です。この項では、まず、体で体験してみましょう。

体験1)歩行送球
 前提として、送球練習する選手と捕球者(壁でも可)の距離は、15m前後の短めでOKです。送球自体は、歩いた方向にこだわらず、正しい方向に踏み込んで、通常の送球をして下さい。

 まず、直立状態で捕球者に向かって、ゆっくりと2〜3歩いてから、そのままのペースで軽く送球。不自然な送球姿勢は不要ですので、送球前の一歩で横を向いて構いません。ポイントは、一定の歩幅である事です。軽く送球するのに適した歩幅になるように、歩幅を変えてみて、一番違和感のない歩幅を覚えておきましょう。次に、捕球者に向かって直進ではなく、右と左も同じように試してみましょう。このあたりまでは、特に問題無いと思います。

 体験の準備として、前進・右・左と3方向の練習をしましたが、これをベースに変化を付けて行きます。まずは、歩く速度を早くしてみましょう。当然、投げやすい歩幅も変わります。次に、早く歩く状態で、姿勢を低くしてみましょう。ここでのポイントは、最初から送球が完了するまで、低い姿勢を維持する事です。(低い姿勢は、後に捕球姿勢に移行します)

 どうですか?低い姿勢での投げやすい歩幅は、以外に大きいですね。つまり、キャッチボール程度の姿勢と、捕球姿勢では、送球に適した歩幅はかなり違います。それから、歩幅を意識したので、多くの選手は、踏み込む方向も大体良かったと思います。しかし、実際の捕球から、正しい送球姿勢を作るとなると、簡単にはいきません。

体験2)ジャンプ後の送球
 その場でジャンプしてから送球してみましょう。まずは、ジャンプ後、腰の位置が高いままで送球を行い、次に、ジャンプ後、着地に合わせて歩幅を大きくし、腰を低くしてから送球してみましょう。説明するまでもなく、腰が低い方が、しっかり腕を振れます。

 常に、歩幅と送球方向への踏み込みが適切であれば、送球は自然に安定しますので、逆に言えば、送球を安定させるためには、歩幅と送球方向への踏み込みを、常に適切にすれば良いと言う事です。歩幅と送球方向への踏み込みを適切にするためのコツは次の通りです。

1) 送球方向には、グラブを持っている方の肩で狙いをつける
 どんな捕球姿勢からでも、グラブを持っている方の肩を送球方向に向ければ、しっかり腕を振る事が出来ます。この時、肩に合わせて足の方向も修正しましょう。状況にもよりますが、足だけで軽く跳ねるようにリズムを取ると、方向修正と同時に、送球準備の時間が作れます。(跳ねるのは足だけです。上体も一緒になってしまうと、動作が大きくなりすぎて、良くありません。

2) 軸足は、狙いをつけた肩の方向(送球方向)に体を押し出せる位置に移動する。
 これは、1)と同時進行です。腰が高いと、軸足で体を押し出す事は出来ませんので、捕球姿勢が低い時は、低いままで歩幅を大きめにすると腕が振りやすくなります。注意が必要なのは、捕球姿勢が高い時です。捕球姿勢が高いと、腰の位置も高くなりやすいので、軸足の蹴りが十分に使えず、腕の振りも不十分になりがちです。これでは、送球がどこに行くか分かりませんので、高い位置で捕球しても、送球前にしっかり腰を落とす事が大切です。(腰を落とすための時間は一瞬で済みます。どんなに急いでいても、暴投では意味がありませんので、慌てずにプレイする習慣を付けましょう)

肩の反転
 次は、いよいよ上体ですが、上体の練習をしていると、下半身が疎かになりがちですので、毎回、下半身がしっかり使えているか、確認しながら上体の練習をしましょう。前項の、軸足と踏み出しがしっかりしていれば、体全体を効率良く使う事ができます。この項の、肩の反転もしかりです。選手によっては、時間の掛かる部分ですが、ここが、正念場です。凡才先生は、この部分に最も時間を掛けます。

 肩の反転は、テイクバック(グラブからボール持ち替えて、グラブとボールの距離が一番広がった状態)後に、最初に行います。わざわざ「最初に」と強調した訳は、「球威がない」、「制球が悪い」といった選手の多くが、腕を動かし始めるタイミングが早過ぎるからです。

 肩が出れば自然に肘が出ます。肩が出でから腕を振れば、エネルギーは相乗効果となり、加速的に作用しますが、肩が十分に出ない状態で腕が動き始めると、エネルギーの相殺が発生しますので、力いっぱい投げても、飛ばない・切れない・速度が出ない、と言った事になってしまいます。

 こうならないようにするためには、一日の最初のキャッチボール、アップのやり方が大切です。意識しなくても出来てしまうのが天才秀才ですが、凡才でも、やり方が分かれば、かなりやれるようになります。アップのやり方は大変重要なので、別項目で紹介しています。詳しくは、アップを参考にして下さい。

肘はバネにする
 前項でも触れましたが、力は、加速的に作用させる事で威力を発揮します。無駄に力が入ると、肘が下がったり、角度が小さくなって、ホーム全体がバランスを欠いた状態になりやすいものです。肘の高さや角度を、細かく指導して、うまく行く選手もいますが、少数派です。その他、多数を指導するために用いているのが、「肘はバネにする」です。

練習方法
 「肘はバネにする」と言っただけで出来る選手もいますが、この方法は、出来る選手にもプラスの効果が期待できますので、一度試してみましょう。
 この練習は、立膝で行います。距離は塁間程度が良いでしょう。下半身は殆ど使えないので、膝の位置は自由で構いません。つまり、肩の反転と肘のバネで、結果は大きく違ってきます。最初は、山なりで構わないので、制球を第一としましょう。肘がバネになっていないとコントロール出来ませんので、ここは、丁寧に練習します。ポイントは、腕を大きく使って、肘のバネを利かせる事です。

 制球が良くなってきたら、「肘のバネだけを強めにして良い」と言う条件付きで、少しだけ球速を上げます。必然的に肩の反転も早くなりますが、隠れた目的でもありますので、これの指摘は不要です。少し球速を上げただけでも、かなり制球が不安定になりますので、更に、次のステップに入ります。
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腕振りとリスト
 上記の、少し球速を上げた状態でのポイントは、肘から先は、指先に至るまで、狙った方向に直線的に使う事です。更に、手首を使い、指先で狙った方向に、しっかり弾く事も加えて行きましょう。特に、指先はカーブ回転にならないように、中指をしっかり使いましょう。カーブ回転は、肩がしっかり出ていない選手に多い症状ですので、ここで、しっかり修正しておくと良いでしょう。

 基本は、一度出来ても、練習を怠ると中々維持出来ませんので、定期的に行う事をお勧めします。今回は修正が目的でしたが、維持するだけなら、立ち膝でなくても構いませんし、短時間で十分です。ただし、選手の意識次第ですので、目的を明確にして行う必要があります。


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