5日目:爆走イングランド

5月27日(木)曇り時々晴れ 気温 摂氏18〜23

Part1:これぞ Good Morning


ソーリーハウスカントリーホテルの窓からの風景

始めての晴れた朝だった。鉄枠の両開き窓をパッと開けるとすがすがしい風と小鳥のさえずりといつもの羊のベーベーなく声がいっぺんに入ってきて、Good Morningという言葉はこんな朝に生まれたのだろうかと思うくらいのすがすがしいいい朝だった。  
朝食前に2人でEsthwaite湖畔まで散歩した。ホテルの庭の花畑の小道を下って湖畔に続く牧場沿いの道路を歩くと、石塀の向こう側は湖畔のあたりまでなだらかな丘陵の牧草地になっているのが見える。ほかとはまた違う顔つきのメルヘンチックな羊や、茶色の色艶のいい牛が何十匹、何十頭もあちこちに散らばっていていて、テレビや写真で見たことのあるようなすばらしいヨーロッパの牧場の朝を満喫できる最高の散歩コースである。湖までは20分くらい。このあたりはナショナルトラストの管理下で石塀、石橋や舗装道路などが最小限の開発にとどめられていて、自然や昔からあるものをほんとうに大切にしている。湖は少し澱んでいてあまりきれいとはいえないが、人が何も手をかけていない自然そのままの風景は心を癒される。
 

朝食はすばらしい景色を見ながらのフル・イングリッシュ・ブレックファースト。やはり乳製品とベーコン・ソーセージは絶品だった。それと、焼いたトマトは意外とおいしい。しかし何よりおいしいのは窓の外の景色。この景色があるなら、ご飯にふりかけだけでもいいやと思う。食にこだわらないイギリス人が少し分かった気がする。

湖水地方を離れるのはひじょうに名残惜しかった。これほど離れたくないと思った旅先はない。どうせなら7泊全部湖水地方にしておけばよかった。この日は天気が良かったので余計にそう思った。

ホテルをチェックアウトして出発する時、同じ日に泊まっていた日本人の3人家族と話す機会があった。エジンバラでレンタカーを借りて湖水地方、コッツウォルズ地方を周る途中らしく、この日からの日程は私たちとほぼ同じだった。その家族たちを先に見送って、私たちも出発した。その時、後の道中でその家族と2度も出会うとは知る由もなかった。

ソーリー村からウインダミアまではフェリーに乗り、A5074、A590を走りM6(高速道路)に入った。

Part2:MorterWay 160Km/h超の世界

結構急いでいた。せっかくイギリスにきているのだからのんびり行きたいところだったが、この日のスケジュールはかなり無理があった。

日本で高速道路を160Km/h以上のスピードで走ることなんて、正常な精神の人間ではありえないことだが、イギリスでは普通の大衆車で皆さん行儀良く150Km/hくらいで走っている。決して追い越し車線をノロノロ走っていたり、遅い車を危険にあおったりはしない。トラックなんか絶対追い越し車線になんか出てこないで左車線を適度な速度(周りのスピードに合わせて)走っている。さすが紳士の国だ。道路自体が見通しが良く走りやすいのでついついスピードが出てしまう。私はその状況につられて(周りの流れに逆らわず)、160Km/h超の猛スピードで走った。警察がいたら捕まっていたかもしれないのに、今思うとずいぶん無謀な運転をしていたものだ。しかし、車間距離を適度に保ち、無理な追い越しや、割り込みをしなければ事故は相当防げるはずで、イギリスのドライバーはそのへんはしっかり守っているらしい。事故は日本に比べて少ないのだろうか?たぶん少ないと思う。こうしてイギリスをドライブすると、いかに幼稚でごう慢なドライバーが日本に多いか良く分かる。


モーターウェイのサービスエリア

M6のBirminghamにさしかかった所で少々渋滞した以外は、非常にスムーズなストレスなしの走行が楽しめた。M6から途中M42に入り、しばらく走ってM40をロンドン方面に走った。

Part3:わーすごい。Warwick城

予定外の高速運転のため遅れを取り戻し約3時間で予定通りにWarwickの町に到着した。M40を下りるとすぐにWarwickの町が現れ、城の案内板もすぐ目に入った。当初のWarwick城のイメージは、「人の気のない田舎の村はずれに忽然と現れる苔むした古城」だったが、実際は町のすぐそばにあり、入り口にはきれいな看板があって、大駐車場完備でかなり整備されていて、苔むしたイメージとはほど遠かった。駐車場からはかなり歩いた(20分くらい)。

小中学生の団体が何十人と観光客も大勢いて、湖水地方からいきなり来ると賑やかすぎて疲れてしまうくらいに騒がしかった。この日は暑かったので余計に疲れた。城の入場料は1人10ポンド近く取られる。日本語のガイドブックを手に入れると2人で5000円以上の出費になるのでちょっと覚悟がいる。  


ウォ−リック城の外側


上から中庭を望む

入場券を買って入り口からしばらく歩くと、ドーンとWarwick城が姿をあらわす。城といえば信州の松本城、会津の鶴ヶ城と東京ディズニーランドのシンデレラ城しか見たことがなく、私にとっては衝撃的だった。城といっても戦闘用の要塞のような、華やかさのかけらもない重厚で威圧感のある建物だ。城の周りはきれーに刈り込まれた芝生と良く手入れされた庭があって余計に浮立つ。

高くて狭い門から城内に入るときれいな芝生の大きな中庭が現れる。この城の中は全体が博物館で、中世から18世紀までのWarwick城歴史がマダム・タッソーの生々しいロウ人形や展示物で紹介してある。 最初に入ってすぐ左にある地下に入られる狭い階段を下りてみると、いきなり血なまぐさい地下牢と拷問室だった。ほんとになんともいえない嗅いだ事のない不気味な異臭が漂う薄暗い部屋には拷問に使った道具や牢があり、残酷を極めた歴史を物語っている。変なのが写りそうでとても写真なんか撮れない。  

気持ち悪くなってすぐに地上に戻り、こんどは中世の戦乱に明け暮れた時代の展示が続く建物に入った。ここも子供が泣き出してしまいそうな薄暗く西洋独特の怖い感じの展示が続く。

約2時間ほど城内を見て回ったがなぜか18世紀ビクトリア時代の華麗で豪華な展示を見ていない。今思うとこの城で一番の見所で一番時間をかけて見るべきところだったのに惜しいことをした。

Part4:定番のStratford-apon-avon

Warwickを出て20分程でStratford-apon-avonに着いた。言わずと知れた劇作家シェークスピアゆかりの地である。ここはロンドンに近いこともあって若い人や外国の観光客も大勢(日本人のおばさん団体がたっぷり)で、湖水地方から来るとここはまるで別の国に来たような賑わいだった。この辺に来ると木造の白や茶の壁でできた建物が多く、シェークスピアの生家などもこのタイプの建物だ。とても半日では周れないくらいたくさんの見所があるまさに観光の街である。私たちは街からちょっと離れた大きな駐車場に車を置いて、インフォメーションでもらった地図を頼りに主な見所を歩いて周った。ここはあまり事前調査をしていなかった(じつはシェークスピアにはあまり興味がなかった)ためなかなか目的地にたどり着かない。

とりあえずシェークスピアの生家を見つけたが、どういうわけかその向かいのコーヒーハウスでジュースを飲んだだけで、博物館や生家の中には入らなかった。この時は暑さと疲れで歩くのが精一杯だった。おまけに記憶も薄れていてあまり書くことがない。
ロンドンからいきなりStratford-apon-avonに来ていれば有り余る感動を文章にしているのだろうが、湖水地方あたりの浮世離れした所から来るとこうなってしまうのか?
それにしてもStratford-apon-avonは観光の定番の町となるにふさわしい、美しくて見所たくさんのおすすめの場所である。

Stratford-apon-avonにはシェークスピアの妻の実家とか孫娘の旦那の家だとかシェークスピアにこじつけたゆかりの建物が多い。街外れにはシェークスピアの妻だったアン・ハサウェイの実家があるので訪ねてみた。茅葺屋根のなんともいえない曲線美の屋根をもつかわいらしい家だ。Stratford-apon-avonでいちばん楽しみの建物だったのに17:00を過ぎていたため中に入れなかったのはひじょうに残念だったが、庭や玄関先はたくさんのきれいな花が咲いていて、外見だけでもかなり満足できる。


シェークスピアの生家

Part5:はちみつ色の家並み

Stratford-apon-avonからはひたすら田舎の牧草地の中を走ることになる(B4632)。途中に明るい土色(はちみつ色というらしい)の石造りの村が時々現れる。ここが名所だといわれれば納得してしまいそうなくらいいい感じの村が散らばっている。

今日の目的地Chipping Campden(チッピング・カムデン)村に着いたことはマーケット・ホールというアーチ型の柱の目立つ建物を過ぎてから気づいた。

Part6:今宵の宿 Kettle House(B&B)

この日はChipping Campdenのハイストリートのちょっと外れに建つKettle HouseというB&Bに泊まることになっていた。ここはインターネットで見つけた写真の多いきれいなホームページを開設していて、予約フォームがあったのですぐに気に入って予約してしまった。ホームページアドレスは(http://www.kettlehouse.co.uk/)もちろん英文だが、詳しいことはここに書いてある。こんな小さな民宿の予約を個人で簡単にできてしまうとは、ずいぶん便利な世の中になったものだ。ホームページ上で見つけたものを数千キロ彼方のイギリスで実際見つけたときはかなり感動する。  

このB&Bの主人(チャールズ)と奥さん(スージー)はたいへん気の良い方でしたが、なにぶん英語がよく話せなかったので私の意思はあまり通じていなかったようで、ただの外人のお客さんとなってしまっていた。    

客室へは通りの裏から2Fの大きなやかんがぶら下がっている入り口から入る。建物は超古くて外観は軽く100年は経っていそうなライムストーン作り。中はここの主人が一生懸命壁を白く塗ったくってドアを付け替えて・・・・となんでも手作りの温かみのある内装が施してある。私たちの泊まった部屋は2Fの通りに面した場所で、広さは十分で、ここも他の宿と同じく布関係はすべて花柄模様で、白壁のかわいらしい部屋だ。

 


ケトル・ハウス(B&B)

Part7:ゆですぎスパゲティー  


この店で

今回の旅ではじめて夕食にありつけない状況だったので、適当においしそうなレストランを探し回った。英国家庭料理の店はあったが、口に合わない可能性大だったのでその近くのイタリアンレストランらしき店にちょっと期待して入った。まだ6時だったので客は1組しかいなく、店員も出てこなかったので適当に窓側に座ってメニューを選んだ。料理の値段はかなり高めで、結局2人とも一番安かったスパゲッティー・ナポリタンを注文した。(イギリスにまで来ていてそれはないだろうと後で思ったが・・・)客は1組しかいないのに20分も待たされやっと注文の品が登場!案の定大きな鉢に大山盛りのスパゲティーだった。後で知ったがイギリス人はコシのある麺類は食べないらしく、ここでも明らかに茹で置きしてあるようなコシのないフニャフニャの麺が出てきた。湯切りもいいかげんで鉢の底はヒタヒタお湯が入っていてトマトソースが薄まってしった。はっきり言っておいしくなかった。パルメザンチーズを大さじ10杯くらい入れて食べたらチーズスパゲッティになってしまった。入った店が悪いのか普通の店はこんなものか定かではないが、やはり日本のガイドブックに載っているレストランに入るのが無難かもしれない。まあこの味が文化だと割り切ればそれでも満足なのだが・・・。

2人で飲み物(コーラ)を入れて3000円以上の出費で一応お腹はいっぱいになった。 

Chipping Campdenの街並みをゆっくりと歩きながら宿に向かった。お店はほとんど閉まり地元の子供たちがサッカー遊びをしているくらいで人通りはほとんどなく、真昼のように明るいのに人通りは夕暮れだった。毎日聞かされていた羊の鳴き声がなく風もなく、たまに自動車が走り抜ける時以外は何も音がなく耳が痛くなるほどの静けさだった。

 

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