4日目:湖水地方北のはずれへ

5月26日(水)雨時々曇り時々晴れ 気温 摂氏10〜18くらい  

Part1:雨上りの寒い朝

夜中音をたてて降っていた雨も朝にはあがり、どんよりとした曇り空の中、妻はまだ寝ていたので1人でGrasmere湖の周りを散歩した。相変わらず羊のベーベー鳴く声と鳥の鳴き声がするだけの、のんびりとした朝だ。

この日は高原のさわやかさというよりは初春の朝の寒さで、吐く息は少し白くなり手はかじかんでしまった。ホテルの暖炉に火がはいっていなかったのはちょっと残念だった。

この日は胃袋の調子が意外と良かったので、朝食前にシリアルを食べてみた(これも朝食の一部)。一人分の小さい小箱が何種類かあって、私は普通の平べったくて甘いものにおいしい牛乳をたっぷりかけて食べてみた。15年前くらいに食べたのが最後なので、ずいぶん懐かしい味がした。朝食は昨日と同じ。たっぷり腹いっぱい食べた。

Part2:おしゃれな街Keswick  



ムートホール

ホテルを10:00ちょっと前にチェックアウト。A591をひたすら北に向かった。わりと広めの見通しのいい走りやすい道で、右手には草だけはえた荒っぽい急な傾斜の山。左手にはThirlmere湖(何と発音するのか?)を眺めながらの絶景ドライブが楽しめる。30分ほどでKeswickの街に到着。街の中心からちょっと離れた駐車場に車を置いて早速歩きはじめた。湖水地方の田舎にしては意外なほど購買意欲をそそられそうな少々カラフルでおしゃれな石造りのお店が建ち並び、若者は少ないが大勢の年配者か街を歩いていて活気がある。街の中心Market PlaceにはMoot Hallという教会のような石造りの建物がある。Keswickの街のシンボルだと思うが、何の目的で建てられたのかは分からない。今はツーリストインフォメーションになっていて、湖水地方の観光リーフレットや絵葉書がたくさんあった。

立ち寄る村や町で何枚も絵葉書を買いつづけ、この時点で20枚くらいになっていた。自分で下手な写真を撮るよりも絵葉書のほうがその地方らしい写り方だしきれいなので、旅先でよく買う。湖水地方はほんとにきれいな絵葉書が多い。ほんとにこの絵葉書と同じ所に行きたいと思ってしまう。


ケズウィックの街並

Part3:絵になる村

KeswickからB5289を右手にDerwent湖を見ながらしばらく走って、Derwent川の清流が見え始めた所にどこか見覚えのある風景が現れた。急停車してそこに寄ってみた。川には古い2連の石造りの橋がかかり、橋の向こうには小さな村がある。ひょっとして?と、さっき買った絵葉書を見るとまさに絵と同じ場所。偶然発見したこの村は地図で見るとBorrowdale Gatesと書いてある。これが村の名前なのか?とにかくこの村とそこに架かる橋は絵になるくらい美しい。私の中では湖水地方で一番のお気に入りの場所だ。


Borrowdale Gatesに架かる橋


ダーウェント川

KeswickからHonister峠までほとんど道の両脇は石積の塀になっていて、湖水地方らしいしっとりとした景観が続くお勧めドライブコースである。

Part4:天国の入り口、Honister峠

Buttermere湖に向かう途中こんな峠があるとは思っていなかった。昨日のWynoseよりも荒々しい岩山の大きな溝に吸い込まれそうな急な下り道が細い川沿いに続く。道の周りには山の上から降ってきたと思われる大きな岩がゴロゴロ転がっている。夢と現実の狭間をさまよっているような実に不思議な景観である。しばらく急な下り坂を下るとまた毛の長い野性的な羊たちがおでむかえ。ほんとに転がってきそうなくらい急な斜面の緑の岩山にポツポツと居る。時折曇り空から日がさして、山肌の草が新緑色に輝く。魂を抜かれそうな絶景が続く。ここは天国の入り口か?  


ホニスター峠の西側


峠からすぐの傾斜35%の坂


バタミア湖と羊

 

人里にまで下ってくるとすぐにバタミア湖が見えてくる。バタミア湖は湖水地方のなかでも割と小さめの湖で、湖畔は緑の林になっていてその周囲は壁のような小高い山に囲まれている。その山の頂上からは何本もの細い滝が100mくらいの長さでほぼ垂直に落ちていて、まさに氷河によって削られた地形といった感じである。このあたりの牧羊地は石造りの塀がほとんどなく、金網の柵がしてあるだけで、そのせいかやたらと羊が路上に出ている。車が近寄ってもまったく怖がる様子もなく、ただ黙々と草を食べている。  

Part5:Buttermere湖で散歩  


バタミア湖畔

バタミア村の駐車場は3ポンド。30ペンスの間違いだろうと何度も聞き返してしまった。周りはすべて牧羊地で、毛が半分抜けたヨボヨボの羊から、両手に乗っかるくらいの小さな子羊までいろんな種類、年齢の羊が何百匹も散らばっている。村にはちょっとしたティールーム兼売店?とFish Hotelという白壁の小さいホテルがある。バタミア湖畔までは、少々肥え臭くぬかるんだ牧羊地の間の道を30分ほど歩いた。この日観光客は少なく、たまにトレッキングルックで一生懸命歩いている人たちや、愛犬をつれてのんびり散歩している人がいた。やはり年配の人が多い。
湖畔に着くとナショナルトラストのお兄さんがキャンペーン用の車にパンフレットや絵葉書を用意して待ち構えていた。どうもナショナルトラストの会員になりませんか?と言ってたみたいで、会員になると、ナショナルトラストの運営する施設や場所の入場料が無料になるらしい。私は1ポンド募金に寄付して、ナショナルトラストのピンバッジをもらった。ほんとは半日くらい湖畔を歩き回りたいところだが、時間がかなり圧していたので近くの細い滝(岩山の天辺から勢いよく流れ落ちている)の滝壷をのぞいてから、今歩いてきた道を戻った。

Buttermereを出発するころには山の半分が雲に隠れてしまい雨がポツポツ降ってきた。予定時間がとっくに過ぎていたため大慌てで来た道を戻った。

Part6:羊の大群

Keswickに戻る途中、Rosthwaite村で羊の大移動に遭遇。5分ほど足止めされた。150匹以上はいただろう羊の大群は路上に小さな落し物をたくさん落としベーベー鳴きながらゆっくり行儀良く道路を横断していった。最後のほうになると小さくて黒い牧羊犬3匹が吠えまくって最後の羊を追い立てていた。両方向それぞれ7〜8台ほど車が待たされていたがだれひとり急かしてクラクションを鳴らすわけでもなく、怒った様子も無く、のんびりした穏やかな人たちである。まあ怒ったところで羊は慌てて走り出すわけでもないので、しょうがなく思っているのだろうか。それとも人間が羊の性格に似てしまったのだろうか?

Part7:はじめてのペトロール

Keswickの町に入ったところで始めてガソリンを入れた。イギリスではガソリンのことをペトロール、ガソリンスタンドはペトロール・ステーションと言う。ほとんどのペトロール・ステーションにはコンビニが併設されていて、ペトロールの支払いもそこで行う。(ペトロールの入れ方は別項で詳しく解説)値段の相場はだいたい1リットル110〜120円ぐらいで日本と同等かちょっと高めだ。満タンになるとノズルの握りがカッチンといって給油が止まるらしいのだが、臆病な私はガソリンガ溢れ出して何かに引火して爆発したらいやだなと思い、給油した容量の下に値段が表示されているので、切りのいい10ポンドで給油を止めた。満タンの半分ちょっとしか入らなかった。

給油はひじょうに簡単で慣れてくると大したことはなく、3度目の給油ではカチンといってからさらに超満タンクになるまで給油できるようになっていた。

Part8:迷った!

Keswickからは南へAmblisideへ目指して走っていたつもりだったのだが、何か行きと違う道かな?と思いつつも、大変走りやすい道だったので120Km/hくらいですっ飛ばしていたが、行き先表示で、聞いたことのある地名が出てこない。せめてWindermereとかは出てくるはずなのに…。厚い曇り空で太陽が見えず、方向感覚が無くなっていた。

どうやら迷ったらしく、30分程走ってようやく地図を出して見ると、全く反対の方角へ走っていることに気づいた。Cockermouthという町のはずれのペトロール・ステーションでUターンしてまたKeswickに向かうこととなってしまった。

ラウンドアバウトでくるくる回って方向が分からなくなってそのままつっぱして行ったのが迷った原因か?しかし、迷ったおかげで、私が到達した北限を更に更新したことになってしまった。余計に走った1時間は景色も良かったし無駄ではなかった。

Part9:にぎやかなAmbleside


ブリッジハウス

Amblesideに到着したのは17:00ちょっと過ぎ。半分くらいの店はあわただしく閉店準備をはじめていた。街じゅうの観光客が追い出されるかのようにドッと通りに出てきた感じでとても賑やかだったが、18:00近くになるとほとんどの店が閉まり、人の数もめっきり減ってきた。AmblisideにはBridge Houseという小さい石橋の上に建つ石造りの小さな家がある。現在ナショナルトラストのショップになっていたが、もう閉まっていて中に入ることはできなかった。車で通り過ぎると気付かないかもしれないほんとに小さい家だ。街のシンボル的な建物のはずなのだが、街行く人たちはほとんど無視。見慣れているのか、そんなに珍しい建物ではないのか?写真なんか撮っていたのは私たちだけだったのはなぜ?Bridge Houseは意外と地味な存在である。

Part10:今宵の宿 Sawryhouse Contry Hotel

Bownessから渡し船に乗ってNear Sawreyに向かった。同乗した車は4台くらい。人は5人くらいと、お客は少なめになっていた。Near Sawreyに向かう途中にFar Sawreyという村があった。Sawreyから遠いからFar Sawrey。近いからNear Sawrey。ではSawreyとはどこなのか・・・。2人でどーでもいい話をしているうちにすぐ、昨日予約したSawrey Country House Hotelに着いた。昨日会ったおじさんが「コンニチハ。コンニチハ。*@+#&$・・・」とへたな日本語を言いながら出てきた。先生みたいなおばさんも出てきた。ペンションのようなフレンドリーな対応が魅力である。このホテルは日本人が多く泊まりに来るのか、非常にゆっくり分かりやすい英語で話しかけてくれる。実際この日は1組の中年夫婦とその娘らしき3人が泊まっていた。ホテルに着いたのがもう19:00近かったので、荷物整理でゴタゴタしているうちにディナータイムになってしまった。

私たちの部屋(2号室)は1Fでダイニングとバーの間に挟まれたちょっと音が気になる部屋だが、窓の外はきれいな庭と木陰の向こうにEsthwaite湖を見ることができる。部屋の装飾はまたしてもバラの花の細かい模様が入った壁紙に、赤基調の花柄のベッドやカーテン。広いとはいえないが必要十分のかわいらしい部屋だった。

ここはおいしいフランス料理がでてくるので、ちょっと食事にこだわりたい方におすすめである。2日間英国風料理漬けだったせいもあるだろうが、味も見た目も良く量も適量で大満足。あの先生風のおばさんがメニューについて親切丁寧に教えてくれるのでだいたいどんな料理でてくるのか分かる。ダイニングにはピアノがあり(ヤマハの自動演奏ピアノ)生演奏なのでムードもばっちり。景色も最高。通りすがりで飛び込み予約したホテルにしてはかなり良い幸運な結果となった。

 

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