3日目:山あり湖あり羊あり

5月25日(火)曇り時々雨時々晴れ 気温 摂氏15〜18くらい ところにより10くらい

Part1:至福の朝

鳥のさえずりで目がさめた。夜雨が降っていたようで外は濡れていた。時々日がさす曇り空のもと、朝食前にホテルの周りを散歩した。ホテルからGrasmere湖の間には100m×100mくらいの牧場があり、100匹近くの羊がべーべーと鳴いている。湖畔には行けなかったが、牧場越に離れて見えるGrasmere湖と対岸の小高い丘に建つ白っぽい家が、想像して描いた絵のようで、夢のなかのような光景を鑑賞することができた。

Part2:イングリッシュブレックファースト

8:15にダイニングに行った。昨晩と同じ紳士淑女たちが、同じ席でちょっとカジュアルな格好で、朝飯前のシリアル(コーンフレーク)をたっぷり食べていた。私達は昨晩の食べ過ぎがたたってあまり食欲がなく、そんなもの食べる余裕はなかった。

卵の焼き方や、パンの種類を聞かれて数分で、うわさに聞いたイングリッシュブレックファーストが登場。写真があれば説明しなくてもいいのだが、昨晩同様、写真をパシパシ撮る雰囲気ではなかった。まず注目なのはパン。日本だとここに小皿を立てて乾かす事に使いそうなものに、三角に切ってきつね色に焼いてあるパンが6枚ささっている。湿気ないように立てているのだと思うのだが、おかしな食器である。大きな皿の上には頼んだスクランブルエッグ、分厚いベーコン、太長いソーセージ、デカイマッシュルームが適当に盛られている。予想通りの内容だ。食べてみるとなるほど自慢するだけのことはある。特にバターやヨーグルトなどの乳製品とか、ソーセージのような加工肉はすごくおいしい。要するに料理はあまりうまくないけど、調理は得意ということか?

Part3:冬のWrynose Pass


ライノーズ・パスの東側

9:30にホテルを出てGrasmere湖畔を南下。細くて少し急な山道をしばらく走りA593に突き当たったところで西へ向かいWrynoseの看板を見つけ、細く曲がりくねった田舎道を30分ほど走ると、目前は木の生えていない荒涼とした風景に変わっていった。道にガードレールなどは無く、たまに石造りの壁があるくらいで、ハンドルを間違えれば転がっていきそうなくらい危険で、普通車がすれちがうには狭すぎる細い急な坂道が峠の天辺まで続いた。ここで大変な体力と神経を使った。
特にここがWrynose Passだという看板もなく、とにかく人の手がかかっているのは車道と、万里の長城のミニチュアのような、山の上から下まで黒い細い筋が何本も付いたように見える石積の壁だけ。居るのは羊だけ。  

おそらくここが峠かと思う所を越えると、ほんとに全く木の無い緩やかな曲線を描く山が曲がりくねった道の両側にあり、絵の中というか全く夢か幻か、死んであの世に来てしまったかと思うくらいの絶景が広がる。ゆっくりと傾斜が30%くらいもある急坂を下っていくとあちこちに野生のような茶色くて毛の長い羊があちこちにいた。岩か羊か良く分からないくらい同化している。  


寒風に耐える羊の群れ


逃げてしまった・・・・

車の外に出るとそこは冬!強風と霧雨が寒さに拍車をかけた。5分も外に居られない程の凍てつく寒さだった。峠の向こうとでは体感気温差が10℃はあったと思う。羊の毛が長くなるわけだ。

あまり天気が良く無くなってきたので途中でUターンしてConistonへむかった。

Part4:コニストンのおやじ

変な題目だが、実際コニストンの村の近くにある800mくらいの岩山(The OldMan Of Coniston)のことで、直訳するとコニストンのおやじになってしまう?コニストンとは何となくお間抜けでかわいらしい名前だが実際訪れると、湖水地方の普通の村といった感じで、特に見所はと聞かれたらConistonの優しい街並みとOldman Conistonの雄大な岩山の対照的な風景か、Coniston湖でクルージングだろうか。

私はこの村のスーパーでキットカットとプリングルスを買って昼飯代わりに食べたのと、郵便局と土産屋が一緒の店で(大体の観光地にある)絵葉書をたくさん買っただけだ。Wrynoseでディープ・インパクトをくらった後だったので、あまり記憶が残っていない所になってしまった。

Part5:有名なHill Top

Coniston湖から程無い距離にHawkshead村がある。ビアトリクス・ポターのギャラリーなどがある落ち着いた村で、見所だったのだが、疲れ(この時時差ぼけのピーク)のせいか素通りしてしまった。Esthwaite湖(エスウェイト湖)を右手に見ながら、しばらく走ると、Near Sawreyの村に着いた。ここはピーター・ラビットの作者ビアトリクス・ポターが半生をすごした村で、彼女が住んでいた家のある場所がHill Topというらしい。  

ちょっと横道にそれるが、村の駐車場に車を置いてまず目に付いたのが、隣にあるこじんまりした可愛らしいホテル。明日の宿をまだ決めていなかったので、ダメ元で部屋が空いているか交渉してみた。小学校のベテラン先生みたいな感じの50歳過ぎのおばさんと、私たちを見るなり「こんにちは、こんにちは」と下手な日本語を連呼するおじさんがいた。「明日泊まれるか?」と聞いたら「OK!」。クレジットカードの番号を教えてやった。ホテルの名はSawrey House Country Hotel。詳しくは次の日で。

村の家々の玄関先は、色鮮やかな花が程よい手のかけ方で自然な感じに植えてあって、英国ガーデニングのすばらしさを実感できる。Hill Topはそんな花に囲まれた美しい村の中にある。うっかりしてると見逃してしまうくらい地味で看板ひとつ立っていない建物が入場券売り場とギフトショップになっている。3.6ポンドの入場券を払い細くて狭い通路を入っていくと、花畑の向こうに古いグレーの家が見えてくる。観光客がけっこうたくさんいてなかなかのんびり見ていることができなかった。  


ヒル・トップ

建物の中はポターが住んでいた当時そのままで保存されているそうで、たしかに古い道具、食器、本や家具があまり広いとは言えない部屋の中にさりげなく展示されていた。日本の旧家を尋ねたみたいに天井が低く、間口が狭い。床は木製でギーギー音が出る。全てが少し小さめに出来ている。ナショナル・トラストの係りの人が数人中にいて質問すれば答えてくれるらしい。

Part6:Windamereの渡し船  

外国で始めて船に乗ることになった。とはいってもNear Sawrey からWindermere湖の対岸Bowness On Windermere約400mを渡るだけの渡し船(フェリー)だ。約20分おきぐらいに出ていて、片道2ポンド。車に乗ったまま船に乗っていける。ヨットや観光船が行き交う中、風に流されている感じのゆっくりとした速さで対岸に向かった。結局このフェリーのおかげでWindermere湖の南半分を見ることは無かったが、面白い体験になった。  


ソーリー村側のフェリー乗り場

Part7:あのウサギに会う


ご存知ピーターラビット

Bowness On Windermereの街は日本で言えば(全然似てないが)箱根の芦ノ湖の観光船乗り場のある街のようで、ボート乗り場や店が多くにぎやかだ。この街のお目当ては、ワールド・オブ ビアトリクス・ポターというポターの描いた世界を人形やジオラマで再現した展示館である。1Fはティールームと食器や工芸品のショップになっていて、その脇の細い廊下を通って階段を上がった2Fが展示室とギフトショップになっている。入場料は3ポンドくらいだったか?日本人のお姉さんが会計をやっていて、2日間英語漬けの私たちは日本語で会話できるありがたさを実感。会計のお姉さんは「よくそう思われていますよ」と言い、奥の映写室に案内してくれた。客は私たち2人だけ。約15分くらいビアトリクス・ポターの生涯や数々の作品の紹介が9つのモニターをくっつけたスクリーンに映され、日本語のヘッドホンを着けて解説を聞いた。

映写室の隣がポターの作品を再現した展示室で、まるで絵本の中に迷い込んだような不思議な感じになる。気のせいか木や草のにおいまで再現していたかもしれない。ピーターラビットがにんじんをかじっているシーンは私も良く知っている。  

これは思っていたより大きな人形で、今にも動きそうなくらい良くできている。

ほかは良く知らないがかわいらしくて楽しい展示だ。子供の頃に来たかった。

 

Part8:ふたたびGold Rill Hotel  


窓から見える絵のような風景

前日にもう1泊したいとお願いしておいたので、この日もGold Rill Hotelにお世話になった。前日にいきなりお願いしたためか、ホテルの本館には泊まれず歩いて2分くらいの近くにある別館(民家のような小さな建物)の屋根裏部屋に泊まることになっていた。この部屋は黄色が基調のかわいらしい部屋で、窓からの景色がまるで絵画のようだ。

1Fはオーナーの別荘なのか客室なのか分からなかったがたまに出入りがあるくらいで、私たちの泊まった2Fは貸しきり状態で、気を使うことなくのびのびと過ごせた。まるで貸し別荘を1日借りたようだった。

  

Part9:不思議な食べ物

夕方寝てしまい起きたのが20:00ころ。あわてて本館のダイニングに行った。昨日と同じ席で、紳士淑女たちを眺めながらのディナーとなった。かなり遅く行ったため、ほかの人たちはすでにデザートを頼んでいるくらいの頃だった。良く分からないメニューを適当に指差して注文。最初に出てきたのがパイ生地にトマト、チーズをのせて焼いたもので、とてもおいしかった。イギリスで始めておいしいものを食べた。スープもトマトとバジル風味のイタリアンに近いもので、あっという間にたいらげた。注文したのが運良く口に合うものだった。ここでもう腹8分目。この後のメイン料理が大変だった。皿いっぱいの料理に昨日と同じように別皿に温野菜がてんこ盛。とてもじゃないけど食べられない。半分以上残してしまった。今度英国でディナーをいただくときは、「少なめに盛ってちょうだい」とか言えるようにしておかなければ。

とどめはデザート。忘れがたい不思議な食べ物だった。丸い皿いっぱいに、下から解析すると、ネトネトした少し酸味のある甘い干しイモとジャムを練りこんだようなもの、ホットケーキの生焼きみたいな生地、クッキーを砕いた粉、それらの上に甘いコンデンスミルクを薄めたようなたれがかかっていて、それが結構生あたたかなのだ。一口食べてみた。笑いが止まらなくなってしまった。全部残すのも申し訳無いのでテイクアウトするか、半分を砂糖壺と花瓶の中に隠してしまいたいくらい食べたくない不思議な味だった。メニューに何と書いてあったのか確認しておけば良かった。たしかSticky(ねばねば、べたべたする)という単語が書いてあったのは確かだ。これを日本人はなるべく頼まないほうがいいと思う。Stickyという単語には要注意だ。がんばって5分の1食べで逃げるようにダイニングを出た。食べていたのは私逹2人だけ。すでに日も陰って21:30頃だった。

部屋に戻るとシャワーも浴びず明日の仕度と予定を考えて寝てしまった。

 

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