施設名称 白浜海中展望塔
施設愛称 コーラルプリンセス
所在地 和歌山県西牟婁郡白浜町
高さ 塔本体高18m 設置水深8m
竣工 竣工1987(昭和62)年 公開1988(昭和63)年
概要

日本初の海中展望塔は、多数の娯楽施設を有した白浜温泉屈指の大型ホテル「ハイ・プレーランド」(現・ホテルシーモア/関連記事)が同ホテルの沖合100mの地点に設置したもので、1970(昭和45)年の元日に営業を開始した。全高16.8mの塔体は日立造船桜島工場(大阪市)が建造し、海上輸送ののち設置箇所の海底の岩盤に固定された。陸上からのアプローチに時速8km・7人乗りの小型モノレールを採用したことも特筆すべき点で、海中展望塔は同ホテルの看板施設としてのみならず白浜を代表する観光スポットとして絶大な人気を博した。しかし1985(昭和60)年7月、東京からマレーシアへ帰航の途上、白浜沖で台風6号の通過を待っていた貨物船が強風と高波に押し流されて海中展望塔に衝突したのち座礁するという事故が発生。未明のできごとだったため幸いに人的被害はなかったものの、塔は根こそぎ薙ぎ倒され、モノレールの軌道も約20mにわたって吹き飛ばされた。
現在の海中展望塔は初代と同一地点に再建された二代目であり、事故から2年半後の1988(昭和63)年元日から営業を開始した。この際、新たにコーラルプリンセスという愛称が与えられている。塔体はサノヤス(現・サノヤス造船)が建造したもので、丸みを帯びたスマートな外観形状に生まれ変わった一方、モノレールは復活せず新たに架設された連絡橋でのアプローチとなった。国内に7ヶ所存在する海中展望塔のうち、鉄筋コンクリート造のオホーツクタワー(北海道紋別市)を除く6塔は造船技術を応用して建造された全鋼製の塔体を採用しているが、白浜海中展望塔はこのタイプとしては初代が国内初、二代目が国内最新の設置例ということになる。

初代の塔体高については資料によって記述がまちまちである。たとえば同じ紀伊民報の紙面でも塔体設置の記事(1969年11月9日)では16.8m、倒壊の記事(1985年7月3日付)では20mと異なり、建築系専門誌でも16.88m(「建設の機械化」1979年12月号)や19.990m(「日本の科学と技術」1970年7月号)などの記載が見られる。また、ほとんどの文献資料では初代の設置水深を6mと記述しているが、現在の塔は同一地点にもかかわらず公式サイトで水深8mと記載しており、これも一致しない。

TF式分類 亜種
訪問日 2012年8月4日
 2012年8月4日の訪問記録
白浜海中展望塔はホテルシーモアの付属施設ですが宿泊客でなくとも観覧できます。ただ入口の場所が沿道からだとややわかりにくく、ホテルの1階ピロティをくぐって建物裏に出て、駐車場を突っ切った先という位置にあるので初めて来るとちょっと迷うかも。レトロ感の漂う看板を頭上に掲げた立派なエントランスを構えているものの一歩踏み込めばそこはホテル内のおみやげ売場で、レジカウンターで海中展望塔のチケットも販売しているという按配。
先に言っておくと、展望塔関連のグッズは制作・販売されていません。
展望塔へ渡る連絡橋の中ほど、幅が広がっている部分の手すりには左に「珊瑚橋」という名称と、右に「昭和62年12月完成 株式会社サノヤス」と記した2枚の銘板が取り付けられています。観光客は誰も気に留めないだろうけど。
なぜ連絡橋の一部分だけ幅が広いのかはわかりませんが、そのおかげで塔体が見える角度からの撮影が可能です。
ところで公式サイトやチケットに掲載されているやや古い写真ではこの連絡橋に照明灯が設置されています。幅広の部分に2対、そこから展望塔側に1対、ホテル側にも少なくとも1対が認められるのですが、現在はすべて撤去されています。営業時間が夕方までなので照明をほとんど必要としないですし、日没の早い冬期でもホテル棟から漏れる光で充分事足りるのでしょう。
テーブルとイスが並べられた海上展望台の室内。直径が大きいぶんゆとりのあるスペースになっています。
その中央で口を開けている下り階段。塔体はデザイン性を優先したのかやけに細身なので階段も幅が狭く、上り客とすれ違うときはだいぶ窮屈です。初代展望塔の階段は二重螺旋構造を採用して下りと上りを分離させていたようですから、これは“退化”したと言うべきか。
海中展望室は国内の海中展望塔の中では最小規模で、窓は12ヶ所しかありません。初代が25ヶ所だったことを考えるとひとまわり縮小が図られたのかも?
初代の総工費が約2億円だったのに対し、二代目は4億円とのこと。その間18年の物価変動を考慮してもけっこうな高騰です。うち1億3000万円は貨物船衝突の補償金が充てられているものの、再建にあたってはでき得る限り低コストに抑える設計方針が採られたのでしょう。

階段裏には水温と透明度の表示板があるものの、数値がセットされていません。塔内には係員が常駐しておらず監視の目が届かないせいか大量の落書きが見苦しいことになっています。そのほとんどはカップルが自分たちの名前やイニシャルを残したもの。おまえら全員破局しろ。

中央の円柱に空けられた縦長の四角い穴は空調の吹き出し口です。

天候がいまいち良くないこともあり、海中の視界は数メートルといったところ。そのため今日はチケットが通常料金の半額で販売されていました。海中展望塔は総じて入場料が割高なのですが、私は建物を見るのが主目的なのでこういう柔軟な対応はありがたい。
展望塔からホテル側を見るとこんな感じ。初代展望塔へアクセスしていたモノレールの痕跡がどこかにないかとつぶさに観察してみましたが、それとわかるものは見つけられませんでした。
改めて展望塔の全景を、ホテルシーモアに隣接する南海白浜ヴィラの付近から望遠で狙います。
二代目展望塔のオープンを報じる紀伊民報の記事によれば、その外観から「マッシュルーム」というニックネームが付けられたそうなんですが、そもそもコーラルプリンセスという名が正式名称の一部なのか愛称なのか位置付けが曖昧なので、さらにマッシュルームなんて別名を決められても使い分けられませんわな。
白浜海中展望塔

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