工房手帖


手打ち仕上げ本麻調べとは
従来の調べ製造では、調べの原材料である麻を打つ作業で、ハンマー式の藁打ち機械を使用してきました。しかし、これではあまりにも打撃が強く、作業時間は短縮されるものの麻の強靭性が著しく損なわれるおそれがありました。
そこで、宮鼓工房では機械を横づち式に代え、麻の繊維の柔軟性と強靭性の理想的なバランスに近づける努力をいたしております。さらに、麻を打つ最終作業として、昔ながらの横づちを用いてむらなく丹念に仕上げる工法を採用いたしております。時間はかかりますが、これにより麻の純朴な風合いと麻特有のこしを活かすことに成功いたしました。



精麻


清水と調べ
調べの原材料は麻の表皮。表皮を水に浸け発酵させ硫黄で薫じたものを精麻といいますが、精麻を調べの材料にするには、これを長い期間水に浸け硫黄などの不純物を完全に取り除く必要があり、これが不十分であると、出来上がった調べは、はじめは良くても時間がたつにつれて風化しやすくなります。ここで重要なのが水です。滋賀県高島市は清水の郷。特に宮鼓工房から車で5分の新旭町針江地区の生水(しょうず)は「平成の名水100選」にも選ばれています。宮鼓工房ではこの高島の清水を大量に使い、徹底して不純物を取り除いています。従来の工房では小さな水槽しか設置できず、麻を水に浸けると上の麻はほとんど水の表面となり、十分なあく抜きができませんでしたが、現在は水深30cm以下であく抜きし、使用する水量も旧来の約3倍にもなります。調べを少しでも長くお使いいただくための工夫は、まさに調べ製造の第1段階から始まっているのです。



麻浸け







染色