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インドネシアの話題一般(2007年以降

インドネシアの経済(05年以前


インドネシアの経済(06年以降)


E10-03インドネシアの2010/1Qの成長率は5.7%(2010-5-11)


E10-02 インドネシアの09年成長率は4.5%、不況どこ吹く風??(10-02-19).

E10-01.インドネシア対中国自由貿易の修正を要望(10.01.13)


⇒インドネシア労組、中国との自由貿易協定廃止要求(10・2・2)

E09-22.インドネシアの09/3Qの成長率は4.2%(09年11月11日)

E09-21.インドネシア人出稼ぎ労働者が82.4億ドル送金(09年9月16日)


E09-20.インドネシアの09/2Qの成長率は「活発な個人消費」のおかげで4%(09年8月11日)

E09-19.インドネシア金利を0.25%引き下げ6.75%に(09年7月3日)

E09-18.インドネシアの09/1Qの成長率は4.4%(09年5月19日)

E09-16.⇒インドネシア、公務員の靴問題で工業相と商業相がイガミ合い(09年2月19日)

E09-17.インドネシアの08/4Qの成長率は5.2%,通年で6.1%と好調?(09年2月17日)


E09-16.インドネシア靴市場は中国製が氾濫、鋼材輸入規制も(09年2月12日)

E09−15.インドネシアも08年10月から輸出は下降線、12月は-20%(09年2月4日)

E09-14.インドネシア、バンク・センチュリィが短期資金不足で国営預金保護機構の傘下に(08年11月22日)

E09-10.⇒バクリー・グループ株は総崩れ(08年11月19日)

E09-13.インドネシアの08/3Qの成長率は6.1%と好調維持?(08年11月18日)

E09-10.⇒バクリー市場からブミ株を8兆ルピア分買い戻すことを表明(08年11月16日)

E09-10.⇒バクリーのブミ・リゾース株、取引再開後に急落(08年11月8日、11日追記

E09-12.インドネシア政府、金融機関などの危機対策10項目発表(08年10月29日)

E09-11.インドネシア国内産業保護策を検討(08年10月16日)

E09-10..ジャカルタ株式市場再開、バクリー株の暴落が先行(08年10月13日)

E09-9.インドネシア金利を0.25引き上げ9.5%に、株暴落で午前中で取引停止(08年10月8日)

E09−8,インドネシアの08年2QのGDPは6.4%成長?(08年9月10日)

E09-7.インドネシア金利引き上げ9.0%に(08年8月6日)

E09-6.インドネシアの08年上期の成長率は6.2%(推定)(08年7月11日)

E09-5.インドネシアの08年上期のモーター・サイクル販売44%増(08年7月10日)

E09-4.インドネシア金利引き上げ8.5%に(08年6月7日

E09-3.インドネシアの08年1Qの成長率は6.3%(08年6月6日


E09-2..インドネシア6月に石油製品値上げで年末には2桁インフレ(08年5月8日)

E09-1.インドネシアのインフレ率3月には8%を越す(08年4月2日)

      ⇒ジャカルタ株式市場大幅下げ(08年4月4日)

E09. 2008年のインドネシア経済

E08-7.インドネシアの07年4Qの成長率は6.3%、通年でも6.3%と好調?(08年2月16日)

E08-6.インドネシアの07年3Qの成長率は6.5%(07年11月15日)

E08-5. インドネシアの07年2Qの成長率は6.3%と好調、株式は暴落(07年8月16日)

E08-4.インドネシアの新外資法、主要分野で外資の持ち株比率拡大(07年7月5日)

E08-3.インドネシアの07年1Qの成長率は6.0%(07年5月15日)

E08-2.インドネシア、金利を8.75%に切り下げ(07年5月9日)

E08-1. インドネシアの07年の経済は好調に推移(07年4月14日)

E07-15.インドネシアの06年4Qの成長率は6.1%、通年で5.5%(07年2月17日)

E07-14.インドネシア株式市場、最高値を更新(06年12月28日)

E07-13.インドネシア銀行基準金利を0.5%引き下げ9.75%に(06年12月7日)

E07-12. インドネシアへの外資(FDI)は急落(06年12月7日)

E07-11. インドネシアの06年3Qの成長率は5.52%とまずまず(06年11月16日)

E07-10.ジャカルタの最低賃金、07年から10%増の月90万ルピアに(06年11月7日)

E07-9.06年10月の消費者物価6.29%にまで下落(06年11月2日)

E07-8.インドネシアの06年2Qの成長率は5.22%と改善(06年8月15日)

E07-7. インドネシア銀行、基準金利を11.75%に引き下げ(06年8月9日)

E07-6. インドネシアの国産品は輸入品の急増にやられている(06年8月8日)

E07-5. インドネシアの06年上期の自動車販売は半減(06年7月15日)

E07-4. インドネシアの5月の輸出は過去最高(06年7月4日)

E07-3. 中央銀行、利率引下げ検討(06年6月4日)

E07-2.インドネシアの自動車販売は06年は34%減の見通し(06年5月26日)

E07-1.インドネシアの06年1Qの実質GDP成長率は4.59%(06年5月15日)

E06-4.インドネシアの05年4Qの成長率は4.9%、通年では5.6%(06年2月15日)

E06-3.インドネシアの06年1月の自動車販売−41%(06年2月14日)

E06-2.インドネシアの05年末対外債務は610億ドルに(06年2月7日)

E06-1.2005年の外国直接投資は94%増(06年1月25日)

 

E06-1.2005年の外国直接投資は94%増(06年1月25日)

BKPM(投資調整委員会)によると、2005年のFDI(海外からの直接投資)は909件、89億1000万ドル(承認ベース)に達した。これは2004年の544件、46億ドルに比べ、94%の増加である。これには石油・天然ガスと銀行部門の投資は含まれていない。

投資の内容としては「通信部門」が最も多く、輸出や雇用の増加に直結するような製造業の分野はさほどでもないようである(数字は未公表)。

ユドヨノ大統領は今後5年間に道路や発電などのインフラ部門を含めて4,260億ドルのFDIを期待していると述べている。

また、国内資本の投資はBKPMに申請し、特典を受けたものは2005年は214件、30兆6,700億ルピア(約32億3千万ドル)と2004年の129件、15兆2600億ルピアに比べ、112%の増加となった。

いずれにせよ、海外からの製造部門への投資が、インドネシア経済の発展のカギであることは間違いなく、今後この部門の投資を呼び込むには「汚職体質」の大幅な改善など「投資環境」の整備が急務である。

 

E06-2.インドネシアの05年末対外債務は610億ドルに(06年2月7日)

スリ・ムルヤニ(Sri Muluyani)財務相が語ったところによると、インドネシアの20005年末の対外債務残高は610.4億ドルに達していることが判明した。これはインドネシアのGDPの22.7%に 相当する。2004年末の数字は明らかにされていない。

2005年のインドネシアの対外借入は22億ドルであり、当初予定していた36億ドルを大きく下回った。これはメガワティ政権から継続している、対外債務借り入れ削減策が具体的効果を見せていることと解釈できる。

610億ドルの内訳は43%が日本円による債務であり、米ドル建て債務が22%、ユーロ債務が15%となっており、日本がインドネシアに対する最大の債権国であることを物語っている。これは今に始まったことではなく、スハルト独裁政権32年間の実績が基礎となっている。

これとは別に国内からの借り入れが700億ドル相当は存在する(インドネシア銀行債を含む)。

2006年の借り入れ計画は世界銀行を事務局とするCGI(Consultative Groupe on Indonesia=インドネシア支援国グループ)からの15億ドルを含め、35億ドルを予定している。

また、スリ・ムルヤニ財務相は2005年のインドネシアの石油生産は95万5000バーレル/日にとどまったことも明らかにした。これは104万5000バーレル/日を8.6%も下回る。その最大の理由は近年のインドネシアにおける石油開発投資の遅れにある。

 

E06-3.インドネシアの06年1月の自動車販売−41%(06年2月14日)

06年1月の自動車販売台数は26,612台にとどまり05年1月の45,480台に比べ-41.5%という大きな落ち込みになった。これはインドネシアの高金利が響いたのと、05年10月からのガソリンの大幅値上げによる影響と見られる。

インドネシア中央銀行はインフレ阻止を狙って昨年12月に基準金利を12.5%に引き上げた(05年7月は8.5%であった)が、明らかに薬の利きすぎであり、この自動車販売の落ち込みはインドネシア経済の実態を反映したものではない。

高金利の影響もあって、このところ通貨のルピアは高めに推移しており、2月13日は1ドル=9,235ルピアであった。株価は高めに推移している。

表、E06-3 05年12月初めからの為替と株価

ルピア/米$  

株価指数

05年12月1日 10,032 1096.37
05年12月30日 9,830 1162.64
06年1月16日 9,475 1235.26
05年1月31日 9,365 1132.32
05年2月13日 9,235 1252.40

 

E06-4.インドネシアの05年4Qの成長率は4.9%、通年では5.6%(06年2月15日)

インドネシア中央統計局(http://www.bsp.go.id/)の発表によれば、05年4Q(10〜12月)の実質GDPの伸び率は4.90%と3Qの5.34%と2Qの5.54%と 比べると若干落ち込んでいる。これは05年10月1日からの石油製品価格の大幅値上げが最も大きく影響した現れであろうと見られる。

05年通年では5.6%の成長となった(04年は5.1%)。

部門別では携帯電話の伸びを反映して運輸・通信部門が10.78%と以前好調な伸びをつづけてういる。建設も6.86%とまずまずである。しかし、インドネシア経済を引っ張っていくべき製造業の伸びが2.91%とかなり鈍化している。

やはり、石油製品の値上げによって製造業は打撃を受けたものと思われる。10月1日からの石油製品の大幅値上げと、ルピア防衛のための高金利政策(05年12月には12.5%)、金融引き締め政策がモロに利いてきている。

高金利政策によるルピア高も輸出産業の足を引っ張っていることは間違いない。輸出は一応7.41%伸びたことになっているがインドネシアとしては2桁の伸びが望まれる部門である。

インフレとの兼ね合いは大事だが、石油製品値上げの影響も一巡したので、金利を下げる方向に転換する時期は比較的早いのではないだろうか?

ユドヨノ政権にとっては「汚職追放」と同時に「雇用拡大」も重要政策の柱である。そのために政府支出の伸びを増やしているようだが、もともと「小さな政府」のインドネシアはこんなところで長期間ムリを続けるわけには行かない。

内需では個人消費が4.418と比較的好調を維持している(3Qは4.43%)。

しかし、固定資産形成は1.785と極端に鈍化(3Qは9.18%)してしまった。これも高金利の所為であろう。ただし、05年通年では9.93%伸びているのでインドネシア経済全体への企業家の不信感があるわけではない。

全体としての基調は「楽観」的にみて良いであろう。それは最近の株高傾向にも現れている。(上のE06-3表参照)

表E06-4-1、インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDP伸び率(単位;%)

 05年1Q  05年2Q  05年3Q  05年4Q 05年通年
農林水産業 1.63 -0.33 1.64 5.46 2.50
鉱業 1.04 -2.87 -2.54 1.92 1.56
製造業 7.05 6.65 5.59 2.91 4.62
電気・ガス・水道 7.81 7.59 9.78 6.13 6.42
建設 7.32 7.44 6.31 6.86 7.37
商業・ホテル・レストラン 9.96 9.48 7.88 6.01 8.59
運輸・通信 13.12 13.91 12.87 10.78 12.90
金融 6.51 9.97 9.07 5.21 7.14
その他 4.90 4.36 5.36 5.97 5.19
実質GDP 6.19 5.54 5.34 4.90 5.60
石油・天然ガスを除く 7.29 6.75 6.27 5.70 6.48

表E06-4-2 インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDE伸び率(単位;%)

  ’04/1Q 04/2Q 04/3Q 04/4Q 05/1Q 05/2Q 05/3Q 05/4Q 05年通年
民間消費 5.7 5.3 5.0 3.8 3.2 3.46 4.43 4.18 3.95
政府消費 10.1 4.7 -3.8 -1.3 -8.5 -5.61 16.15 29.98 8.08
総資本形成 2.5 14.7 20.5 25.4 15.0 13.21 9.18 1.78 9.93
輸出 1.2 2.0 17.1 13.7 13.4 7.29 3.39 7.41 8.60
輸入 15.3 25.2 32.0 27.1 15.4 10.08 9.29 3.74 12.3
実質GDP 4.4 4.4 5.1 6.7 6.3 5.54 5.35 4.90 5.60
除く・ミガス 5.1 5.4 6.2 8.0 7.3 6.75 6.27 5.70 6.48

04/1Q〜05/3Qの数字は未修正です。

 

E07-1.インドネシアの06年1Qの実質GDP成長率は4.59%(06年5月15日)

インドネシア中央統計局(http://www.bsp.go.id/)の発表によれば、06年1Q(1〜3月)の実質GDPの伸び率は4.59%と05年4Qの4.90%と 比べると若干落ち込んでいる。。

部門別では携帯電話の伸びを反映して運輸・通信部門が10.99%と依然として好調な伸びをつづけてういる。建設も7.18%とまずまずである。しかし、インドネシア経済を引っ張っていくべき肝心の製造業の伸びが わずかに2.01%とかなり低い伸び率にとどまっている。

昨年10月の石油製品の値上げによって製造業は打撃を受けた という説明であるが、製造業に対する国内外の設備投資は低迷しており、それが製造業の不振の原因ともなっている。インフレ対策の高金利政策だけでなく、同国の投資環境の改善がさほど見られないことにも問題がある。

また、中国製品の輸入拡大により、インドネシアの繊維産業はかなり打撃を蒙っているようである。対中国との貿易関係は工業製品に関する限りインドネシアは決定的に劣位にあることに政府は関心を持つべきである。

ASEAN諸国は中国の輸出工業品と競合関係にあり、ASEAN中国のFTAなどという発想自体がムリなのである。ASEANのなかの華人枢軸とも言うべきタイのタクシン首相とシンガポール政府にうまうまと乗せられてしまったのである。時間をかけて「ゆっくり後悔する」ことになるであろう。

輸出は一応10.75%伸びたことになっているが 、これは輸出の実態を正しく反映しているかどうか不明である。原燃料といった1次産品は確かに伸びているが、それは国内の雇用とはあまり結びつかない。問題は工業製品の輸出が増加したかどうかということである。

ユドヨノ政権にとっては「汚職追放」と同時に「雇用拡大」も重要政策の柱である。そのために政府支出の伸びを懸命に増やしているようだ 。06年1Qには14.19%とかなり頑張ってはいる。しかし、財政規模の小さいインドネシア政府にとってはこの辺が限界であろう。

そういうなかでもインドネシア政府は今年は3兆ルピア(約360億円)のインフラ投資を実行するという。しかし、これは「民間と組んでやる」という前提になっており、外資を含めた民間がその気にならなければ話は進まない。

インドネシア政府の役人と組んでプロジェクトをやるなどという「物好き」が果たしてどれくらいいるであろうか?

内需では個人消費が3.24%と05年4Qの4.418%にくらべ目だって落ちてきている。やはり、雇用が不安定で、物価高が影響している。

固定資産形成は2.89%と05年4Qの1.78%に引き続き鈍化している。これも高金利の所為であろう が、建設投資(不動産)以外きわめて不振であることを意味している。

株式市場やルピアの動向を見る限り,インドネシアの経済界には「楽観論」が支配的なのかもしれない。しかし、最近の労働法改正問題やスハルト大統領免責問題などで徐々に大衆レベルのユドヨノ政権批判が出てきていることに注意を要する。

 

表E07-1-1、インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDP伸び率(単位;%)

 05年1Q  05年2Q  05年3Q  05年4Q 05年通年 06年1Q
農林水産業 1.63 -0.33 1.64 5.46 2.50 3.92
鉱業 1.04 -2.87 -2.54 1.92 1.56 7.02
製造業 7.05 6.65 5.59 2.91 4.62 2.01
電気・ガス・水道 7.81 7.59 9.78 6.13 6.42 5.21
建設 7.32 7.44 6.31 6.86 7.37 7.18
商業・ホテル・レストラン 9.96 9.48 7.88 6.01 8.59 4.19
運輸・通信 13.12 13.91 12.87 10.78 12.90 10.99
金融 6.51 9.97 9.07 5.21 7.14 5.11
その他 4.90 4.36 5.36 5.97 5.19 5.44
実質GDP 6.19 5.54 5.34 4.90 5.60 4.59
石油・天然ガスを除く 7.29 6.75 6.27 5.70 6.48 5.22

表E07-1-2 インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDE伸び率(単位;%)

  05/1Q 05/2Q 05/3Q 05/4Q 05年通年 06年1Q
民間消費 3.2 3.46 4.43 4.18 3.95 3.24
政府消費 -8.5 -5.61 16.15 29.98 8.08 14.19
総資本形成 15.0 13.21 9.18 1.78 9.93 2.89
輸出 13.4 7.29 3.39 7.41 8.60 10.75
輸入 15.4 10.08 9.29 3.74 12.3 5.01
実質GDP 6.3 5.54 5.35 4.90 5.60 4.59
除く・ミガス 7.3 6.75 6.27 5.70 6.48 5.22

 

E07-2.インドネシアの自動車販売は06年は34%減の見通し(06年5月26日)

インドネシア最大の自動車メーカーであり販売会社でもあるアストラ・インターナショナル(PT. Astra International)社の最近の見通しによれば、06年のインドネシアの自動車販売は05年の533,910台から34%程度落ち込み350,000台程度になるという。

アストラ社のプリヨノ・スギアルト(Puriyono Sugiarto)取締役は06年1〜4月のインドネシア全国の販売実績は102,245台(うちアストラ社は59,339台、シエア58.0%)にとどまったと語った。

プリヨノ氏は今年の下期には金利が下がり始めるので自動車販売は上向きに転じるであろうという見方をしているが、年初の見通しの40万台〜50万台には到底及ばないとの認識を示したという。

昨年10月以降の石油製品の大幅値上げと、高金利が自動車の販売を直撃していることは間違いないが、インドネシア経済全体の不振(といっても06年1Qの成長率は4.59%)やジャカルタ市内の交通混雑が新車の販売意欲を鈍らせている。

オートバイの生産・販売も同様な不振が伝えられる。

こと経済に関する限りSBY(スシロ・バンバン・ユドヨノ)大統領の就任以来、「良い話」は何もない。GDPの数字も毎Q下がり続けている。もちろんこれはSBY大統領の個人的責任とはいえないが。

(http://www.thejakartapost.com/ 06年5月26日記事参照)

 

E07-3. 中央銀行、利率引下げ検討(06年6月4日)

インドネシア銀行(中央銀行)のブルハヌディン(Burhanuddin Abdullah)総裁は「金利を引下げようという意見が関係者のあいだで強まってきており、来週、その是非について検討したい」と国営アンタラ通信の記者に語ったという。

その背景はユドヨノ政権が発足してから連続してGDPの成長率が低下しており、06年1Qには4.59%にまで低下し、失業率も10%を超えるまでにいたったことにある。

インフレ抑制という意味合いから05年7月に基準金利を12.75%に引き上げ、インフレ率は06年4月には15.4%であったが、石油製品価格引き上げに伴うインフレは「峠を越えた」として06年5月には基準金利を12.50%にまで若干引き下げた。

5月のインフレ率は15.6%と依然高水準にあるが、このままでは消費も投資も停滞しインドネシア経済全体が沈下を続けるのではないかという危機感から思い切ってさらに金利引下げの検討に入った物と思われる。

今回のインドネシアのインフレは石油製品価格の値上げによるものであり、金利を引きあげて「投資や消費を過度に抑制」下ところでインフレが止まるわけではない。むしろ不況を加速するだけである。

高金利がインフレを促進する効果もあり、逆にゼロ金利が消費を抑制鶴効果をもたらす(日本の例)ことがありうる。異常事態下での金利については「安っぽい経済学の教科書」の教えが正しいとは限らない。

ルピアが多少安くなるかもしれないが、インドネシア経済は不況局面にあり(上の自動車販売の例)、金利引下げは妥当なものと考えざるを得ない。

(http://www.thejakartapost.com/ 06年6月3日記事参照)

 

E07-4. インドネシアの5月の輸出は過去最高(06年7月4日)

インドネシアの06年5月の輸出は前年同月比16.1%の83億4000万ドルに達した。これは史上最高の数字である。06年1〜5月の輸出総額は383億9000万ドルと、前年同期比13.4%の伸びとなった。

輸出が伸びたのは、ミガス(石油・天然ガス)が大きく貢献しており、1〜5月のミガスの輸出額は86億ドルと前年同期比17.7%の伸びとなった。

また、ノン・ミガス(石油・天然ガス以外)では鉄鋼、木材、鉱物資源(石炭、非鉄金属など)を中心に12.2%伸び、298億ドルに達した。肝心のエレクトロニクス製品や、機械類の輸出の数字は明らかにされていない。要するに「一次産品系」の輸出が大きく伸びたと言うことである。

中央統計局のルスマン(Rusuman Heriawan)局長によれば、5月の好調が維持されれば、06年通年のインドネシアの輸出は1,000億ドルに達するであろうとのことである。ご同慶の至りである。

一方、輸入は06年1〜5月は総額231億4000万ドルと前年同期比マイナス2.12%であった。そのため、貿易収支の黒字は152億5000万ドルに達した。輸入が少なかったのは、設備投資が不活発で、機械類の輸入が少なかったことの裏返しでもあり、必ずしも喜ばしいことではない。

しかし、これらの数字を受けて、通貨のルピアは高めに推移しており、7月4日の対ドルレートは9,064ルピアであり、6月29日にの9,366ルピア(直近の裁定値)に比べ大幅に上昇している。

また、インフレ率も5月15.6%(前年比)、6月15.5%と比較的安定傾向にあり、このまま行けば年末には8%を切ることはほぼ確実であるとのことである。そうなれば、近いうちに金利引下げも 可能うとなり、インドネシアの経済はかなりマトモな姿になっていく可能性がある。

(中央銀行基準金利は7月6日に12.5%から12.25%に引き下げられた)

問題は外国からの設備投資動向如何である。1次産品に頼った輸出は長期的には不安定であり、国内の雇用の拡大にもさほど貢献しない。

 

E07-5. インドネシアの06年上期の自動車販売は半減(06年7月15日)

インドネシア自動車工業会(GAIKINDO)の発表によれば、06年1〜6月期の自動車販売台数は149,634台と前年同期の295,779台に比べ-49.4%とほぼ半減した。

その理由は05年10月のガソリン価格の大幅アップと高金利によるものであることは明らかである。インドネシアでは自動車販売の80%が分割払いによるものであるという。

最近は、拡販のために金利面でのディスカウントがはやり始め、インドネシア銀行の基準金利が12.25%であり、市中金利は安いものでもそれを数パーセントは上回っているが、あえて10%以下のローン金利を打ち出すディーラーも出てきていると言う。

それにしてもインドネシアの自動車販売の落ち込みは異常であり、タイでは06年上期の自動車販売は-3.5%にとどまっている。

インドネシアの経済全体としては4〜5%の成長を辞しており、自動車以外ではさほど大きな落ち込みはないと見られる。

 

E07-6. インドネシアの国産品は輸入品の急増にやられている(06年8月8日)

KADIN(インドネシア商業会議所)のヒダヤト(M.S.Hydayat)会長によれば、インドネシアの国産品は消費財を中心に、05年10月から今まで、30%もシェアを落とし、輸入品に完全に負けている。それは国産品が輸入品にくらべ競争力がないからであるという。

ヒダヤト会長はクマヨランで開催されているジャカルタ・フェアーのインドネシア物産展のオープン・セレモニーのあとでこのように語った。

繊維市場で有名なジャカルタのタナ・アバン(Tanah Abang)市場においては売られている繊維製品の半分は外国製品(主に中国製)であると言う。

ヒダヤト会長の発言が国内業者へのハッパなのか,安値の輸入品に対する抗議なのかは定かでないが、輸入品の急増についてはインドネシア産業界が強い危機意識を持っていることの表れであろう。

このような経済人の発言の背景にはユドヨノ大統領への批判である可能性もある。ユドヨノ政権になってから、汚職退治やASEANへのコミット(特に中国との自由貿易)には熱心だが、インドネシアの国内景気は一向に良くならないという苛立ちが出てきている。

もっと、シンガポール(華人)の助けを借りないといけないなどというマリ・パンゲツ商業相(華人)の言い分にユドヨノ大統領が耳を貸していることもプリブミ資本家にとっては癪の種になっているようである。

(http://www.tempointeraktif.com 8月8日付け参照)

 

E07-7. インドネシア銀行、基準金利を11.75%に引き下げ(06年8月9日)

インドネシア銀行(中央銀行)は8月8日(火)に基準金利を12.25%から11.75%に引きさげた。その背景にはコアー・インフレ率が年率7〜8%にまで低下してきたことがある。

昨年10月の石油製品大幅値上げ以来、インフレ率は昨年11月には18.38%にまで急上昇していたが、最近は急速に沈静化の方向にむかいつつある。

このまま行けば年末にはインフレ率は7〜8%にまで低下するものと見られている。そうなれば、さらに金利は11%程度にまで引き下げられるという見方が出てきている。通貨のルピアは最近1ドル=9100ルピア前後で安定しており、金利の引き下げはほとんど問題はない。

インドネシアの高金利は自動車の国内販売に最も悪影響をあたえ、06年上期には前年同期に比べ販売が半減した(E07-5参照)

 

E07-8.インドネシアの06年2Qの成長率は5.22%と改善(06年8月15日)

インドネシア中央統計局(http://www.bsp.go.id/)の発表によれば、06年2Q(4〜6月)の実質GDPの伸び率は5.22%と 前期の4.70%と 比べるとやや改善している。

部門別では携帯電話の伸びを反映して運輸・通信部門が13.29%と依然として好調な伸びをつづけてういる。建設も8.26%とまずまずである。しかし、インドネシア経済を引っ張っていくべき肝心の製造業の伸びが わずかに3.05%とかなり低い伸び率にとどまっている。

内需では個人消費が2.99%と06年1Qの3.248%(改定前)にくらべやや落ちてきている。やはり、雇用が不安定で、物価高が影響している。

固定資産形成は-0.98%とマイナスである。これは設備投資の不振が続いている事を意味する。高金利の 影響もあるであろうが、インドネシアの全体的な投資環境がよくないせいである。ユドヨノ政権になってもこの点はほとんど改善されてない観がある。

ただし、不動産投資は比較的活発のようである。建設業の伸びが8.26%と比較的高い。

輸出が11.3%も伸びたことになっているが、内容が未公表のため理由は良く分からない。工業製品よりも1次産品の伸びが大きかったはずである。タイやマレーシアと比べると、スハルト時代の悪政の影響と、その後の経済危機のおかげでインドネシアはエレクトロニクス関連の外資が少ない。

一説によると、中国からの繊維製品がインドネシア経由で「再輸出」されていくケースが多いという。中国は衣類の輸出について米国やEUから数量的な規制をうけているため、インドネシア華僑を使って「インドネシア製品」として輸出していると言う。いずれ真相は明らかになるであろう。

 

⇒ インドネシア銀行基準金利を0.5%引き下げ、10.75%に(06年10月5日)

 

表E07-8-1、インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDP伸び率(単位;%)

表E07-8-2 インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDE伸び率(単位;%)

E07-15に移動しました。

 

E07-9.06年10月の消費者物価6.29%にまで下落(06年11月2日)

インドネシア中央統計局の発表によれば06年10月の消費者物価指数は前年同月比6.39%にまで下落した。9月は14.55%であったから劇的に下がった形である。

しかし、これは05年10月に石油製品価格の大幅引き上げによる影響を受けた数字であり、消費者物価水準そのものは依然として高水準であることには変わりはない。

また、政府が価格規制をしている石油製品などを除いた「コア・インフレーション」指数も9月の+9.13%から10月は6.86%へと大幅に下がってきている。

インドネシア銀行の基準レートは06年5月以来2.5%ほど引き下げられて10月に10.25%にまで数次に亘って下げられてきた。これが年内に1桁にまで引き下げられる可能性は大いに高まった。

ルピアはこのところ1ドル=9100ルピア強で安定しており、多少金利が下がっても大幅に安くなることはないであろう。9月の経常収支は31.2億ドルと安定している。

 

E07-10.ジャカルタの最低賃金、07年から10%増の月90万ルピアに(06年11月7日)

労働および移住省は2007年からのジャカルタ地区の最低賃金は現行の月額819,100ルピアから9.9%アップの900,000ルピア(約1万1600円)にすると発表した。これは労使および政府の3者協議で決められたものである。

しかし、労組側によってはこれでは低所得層の生活条件は改善されないとして3者協議から退席したところもあったという(インドネシア繁栄労組同盟=Confederation of Indonesian Prosperous Labor Unions)。

また、西ジャワでは月447,000ルピアから13%アップの504,000ルピアとなる。

その他の地域は目下交渉中である。

化学・鉱山労組の代表ははこれではとてもやっていけないので、産業別の最低賃金を要求していかなければならないと述べている。

一方で、衣類産業や製靴産業などでは現行の最低賃金を支払えずに脱落していく企業が続出しているところもある。

 

E07-11. インドネシアの06年3Qの成長率は5.52%とまずまず(06年11月16日)

インドネシア中央統計局(http://www.bsp.go.id/)の発表によれば、06年3Q(7〜9月)の実質GDPの伸び率は5.52%と 1Qの4.5%、2Qの5.2%に引き続き徐々に上向いている。06年1〜9月通算では5.14%ととなり、通年で5%台は維持できそうである。

部門別では携帯電話の伸びを反映して運輸・通信部門が13.50%と依然として好調な伸びをつづけてういる。建設も8.36%と2Qの8.26に引き続きまずまずである。 若干不動産投資が過熱気味である。

インドネシア経済 の中心となるべき製造業の伸びが5.26%と1Qの3.05%からみるとやや改善された。しかし、繊維産業や靴が中国などに押されて、工場閉鎖が目立つなど不安要因が多い。電器や自動車などもっと伸びないとダメである。

自動車については新規投資の話しが出てきているという。しかし、インドネシアは汚職が依然多いことやデタラメな裁判官の存在など、まともな外資企業を尻込みさせるようなことが多すぎるのである。

ユスフ・カラは副大統領に立候補したとき、「経済はオレにまかせろ」とユドヨノにいったらしい。とんでもない話である。カラやバクリーに任せておいたらとんでもないことになる。遅ればせながらユドヨノ大統領は問題の重大さに気づき、「改革促進チーム」を発足させた。

内需では個人消費が2.99%と06年2Qの数字と同じであるが、悪いことには変わりはない。雇用が不安定で、下層階級へのしわ寄せがひどすぎる。下層階級の所得レベルが向上しなければ健全な国民経済の発展はないというのはアダム・スミス当時からの「常識」である。

政府消費の伸び李が2Qの31.38%から3Qは172%(下の8-2表)へと以上に低下している。その理由は一言で言えば政府にカネがないからである。2006年度は税収が3兆ルピア(3,870億円)も予算割れになるという(Bisnis Indonesia)。

税収不足の原因は税務署員が集めた税金をネコババした部分もあるだろうが、企業業績が以外に悪いと見なければならない。逆に言えばインドネシアは実際は景気が悪いのである。だから、5.52%の成長が本当かどうかもマユツバではないかと私は思う。

固定資産形成は-0.75%と2Qに引き続きマイナスである。これは設備投資の不振がつづいていることを意味する。 金利が下がったとはいえ、まだ10%台である。インフレも怖いだろうがもっと下げないと設備投資は増えない。

輸出が12.05%も伸び 、2Qの11.30%に引き続き好調である。輸出が経済を引っ張っているという現象は日本を始めアジア全体に共通した現象である。輸入してくれる国はいうまでもなく米国やEU諸国である。

世界の自由貿易体制のおかげである。東アジアだけで固まろうなどという了見はどうかしている。いまヴェトナムで開かれているAPECでも東南アジア諸国はデッドロックに乗り上げているWTOの自由貿易交渉をまとめようと提言している。彼らのほうがどうもわれわれより分かっているようだ。

 

E07-12. インドネシアへの外資(FDI)は急落(06年12月7日)

06年1月〜11月の間の外国資本の直接投資(FDI=Foreign Direct Investment)は承認ベースで46億9千万ドルと昨年の同じ時期に比べ45.9%も落ち込んだと投資調整委員会(BKPM)が明らかにした。

また、国内投資も16兆9千万ルピア(約2,110億円)と37.1%マイナスとなった。

BKPMのモハマド・ルスフィ(Mohammad Luthfi)委員長によれば、投資の減少の理由は05年10月の石油製品の大幅な値上げが影響しているということである。この値上げによって製造コストが上昇したからであるという。

また、それ以外の要因としてモハマド委員長はつぎのような点を指摘している。

スマトラ、カリマンタン、スラウェシ、パプアなど10地域における電力不足や西ジャワ、東ジャワにおけるガス供給不足も投資減の要因であった。労働問題や税金問題もあった。各種のインフラ不足問題や司法問題(裁判所の不当判決)も問題であった。

これらの問題点の改善が見られなければ2007年にはさらに投資が落ち込む可能性があるとも述べている。

現在、投資問題で現地の華僑資本家や日本企業を先頭にしてインドネシア政府に圧力をかけている問題は2003年労働法の改正(労働者にとっては改悪)である。

インドネシアは労働者保護にために、資本家が簡単に労働者の首を切れないように、解雇時にはある程度の退職金を支払うように規定している。

世銀の調査ではインドネシアの場合は解雇するときには雇用主は20年間勤務した労働者には108週間分の賃金を退職金として支払う義務があるということである。中国ではそれが91週間であり、先進国のドイツでは69.3週間、日本では8.6週間、米国ではゼロだということである。

これを見る限り、インドネシアと中国とは大差はない。また、インドネシアでは賃金が極端に安いので(最低賃金がジャカルタで1ヶ月90万ルピア≒100ドル)2年分の退職金を支給したとしても2,400ドルである。

また、インドネシアでは最低賃金制度があり、それは労働生産性を無視して決められるというのが資本家側の言い分である。しかし、月100ドルで一家を養っていけるのかという問題については議論がされていない。(WSJ,12月6日付け参照)

労賃というのはそれで何とか生活していけなければ労賃の意味をなさないのは当然ではないか?安ければ安いほどいいなどという議論は労賃の場合当てはまらない。

また、副大統領のユスフ・カラはインドネシアの投資環境の悪さを汚職の蔓延にありとする議論は間違いであるというとんでもないご意見を開陳している。

カラは最近のKPK(汚職追放委員会)の活動が活発なので、役人がビビッてしまい、経済活動を阻害しているというのである。要するに、汚職にはある程度目をつぶったほうが経済はスムーズに行くというお考えをインドネシア共和国副大統領殿はお持ちなのである。

江戸時代の田村意次は「ワイロを沢山持ってくる奴のほうが誠意がある」と公言していたそうであるが、インドネシアの政治リーダーも同じご意見をお持ちの方がおられるようである。日本の社会はどうかといえば、答えは読者の皆様のほうがお詳しいであろうと思われるので省略する。

また、発電所の例を引いて、部品の手当てをテンダー(入札)でやっていたら納入されるまでい6ヶ月も掛かる。だから、テンダーなどやらないで特命発注にしてやれば納期は短縮でき合理的であるとも語っている。

簡単に手当てできない重要部品は発電所が計画的に予備品を持っておくのが普通であるが、それすら特命でやれ(スペックが特殊なものは仕方がないが)というのだからすごい。こういう副大統領が政府のトップに鎮座している限りインドネシアの汚職はなくならないであろう。

(カラの項はTempo,06年12月6日、電子版参照)

なお、世界銀行はインドネシアの人口(総人口は約2億2000万人)の1億人以上が1日2ドル以下で暮らしているという調査結果を発表した。教育を受けられない子供の数も増加しているという。

失業率は10%を超えている。

 

 

 

E07-13.インドネシア銀行、基準金利を0.5%引き下げ9.75%に(06年12月7日)

インドネシア銀行(中央銀行)は基準金利を0.5%引き下げ9.75%にすると発表した。これは14ヶ月前の水準である。06年11月の消費者物価指数は前年同月比5.3%高にまで落ち着いてきており、金利引下げは時間の問題と考えられてきた。

ルピアも安定的に推移しており、12月7日は1ドル=9072.5ルピアであり、12月6日の9110ルピアとほぼ同水準である。

金利を下げる余地はまだ十分に残されており、さらに下げることによって自動車などの耐久消費財の06年における落ち込みが07年にはかなり挽回される可能性が出てきた。当然、設備投資もある程度回復に向かうであろう。

 

E07-14.インドネシア株式市場、最高値を更新(06年12月28日)

12月27日(木)のジャカルタ証券取引所は終日活発な取引が続き、終値は前日比19.285ポイント高の1,803.264ポイントで引けた。これは同市場の史上最高値である。値上がりした銘柄は通信、自動車、銀行の一部が目立った。

主な値上がりした銘柄は通信大手のインドサット(Indosat=携帯電話では第2位)が4.8%上げ、6600ルピア、携帯電話第1位のTelcomも1%上げ10,000ルピアで引けた。

自動車ディーラーのアストラ(Astra)は1.5%上げ15,800ルピア、マンディリ銀行(Bank Mandiri=国有最大手)は1.7%上げ、2,925ルピアでひけた。いずれも業績好調を好感しての上げであったという。

通貨のルピアも強めに推移しており、12月27日は9,036と前日の9,074を上回った。

10,000ルピア=131円という相場であり、インドネシアの株価が異常に安いことが注目される。なぜ安いかということは一概には言えないが、全体の傾向として経営に透明性が必ずしもないことや、発行株式数が多いこと、外国から見た場合ルピアの安定性がなかったことがあげられる。

また、金利が2桁というのが普通の状態であり、株式投資への魅力が必ずしもなかったためではないかとも考えられる。しかし、年初来の値上がりは52.2%にのぼり、通貨さえ安定すれば(実際は17%ものルピア高になった)外国の投資家にとっても魅力が大きかったといえる。

WSJ(06年12月28日、Internet)は2007年にはジャカルタ証券取引所の主要指標は15%は上昇するというアナリストの予想を報じている。理由は順調な経済成長と政治的安定であるという。

経済的成長の方はやや怪しい面があるが、ユドヨノ政権は安定していることは間違いない。しかし、ユドヨノ大統領はやるべきことをあまりやっていないという悪評が最近目立ってきている。軍改革も頓挫し、司法改革にいたってはまるで手がついていない。

汚職退治はアヌワール・ナスチオン会計検査院長の健闘もあり多少は進んできている。しかし、ユスフ・カラ副大統領は汚職退治をあまり熱心にやると役人がヤル気をなくして逆効果であるというようなすっ呆けた発言をしている。いぜんヒドイ国であることには変わりはない。

そうなると外国企業の進出が増加しないということが予想される。最近、ベトナムへのFDI(外資直接投資)が急増しており、このままではインドネシアはフィリピンとともにおいていかれる危険をはらんでいる。

表、E07-14、インドネシアの為替と株価

ルピア/米$  

株価指数

97年06月30日 2,431 724.56
98年01月21日 11,575 466.00
98年07月14日 15,200 420.33
99年07月08日 6,615 660.25
01年04月26日 12,000 351.34
03年03月04日 8,820 395.37
03年06月04日 8,140 504.53
05年08月29日 10,840 994.77
06年01月03日 9,723 1184.69
06年12月26日 9,074 1783.98
06年12月27日 9,036 1803.26

 

E07-15.インドネシアの06年4Qの成長率は6.1%、通年で5.5%(07年2月17日)

インドネシアの06年4Qの実質GDPの伸び率は6.1%と05年1Qの6.3%以来、2年ぶりで6%台に達した。2006年通年では5.5%の伸びで、05年の5.6%とほぼ同じである。大した進歩が見られない1年間であった。

06年4Qの民間消費3.8%は06年では最も高かった。固定資本形成が8.2%と好調だったが、これは製造業の能力増強につながる機械設備などの投資ではなく、商業ビルなどの不動産投資が多かったのではないかと思われる。というのは「建設部門」の伸び率が10.4%と高いからである。

製造業の伸びは5.9%とと前のQに比べて高くなってきてはいるが、傑出した高さとはいえない。

運輸・通信部門は05年から一貫して2桁成長を続けている。これはいうまでもなく携帯電話ブームが続いているためである。

輸出の伸びがGDPベースでは6.1%に鈍化してしまった。06/1Q〜3Qまでは11.0%以上の伸びであった。これは1次産品の伸びが鈍ってきたためと、エレクトロニクス関連製品の輸出がもともと少ないことが影響している。

一方、実際の輸出金額(表E07-8-3)で見ると、輸出全体で1,006億9000万ドルとインドネシアの歴史始まって以来初めて1,000億ドルの大台を突破した。2005年にくらべ17.5%ものプラスとなった。

ノンミガス(非石油・天然ガス)のみを見てみると795億200万ドルとなり、前年比+19.7%という高い伸び率を記録した。

しかし、その内容を見ると、伸びが大きいのは石炭(+44.2%)、パーム油(+21.3%)、ゴム(+54.7%)、金属鉱石(+40.2%)、銅(+51.4%)などの天然資源・1次産品といわれるもので、タイ、マレーシアなどのようにエレクトロニクス関連などは全く伸びていない。

工業製品の代表格の電気機器(-0.4%)、機械(-3.7)という有様で2005年に比べむしろマイナスになっている。

これではインドネシア経済の将来は暗いといわざるを得ない。1次産品の輸出は山谷が大きく、やがて枯渇していくものもある。パーム油やゴムは既に耕地面積の拡大余地が少なくなっている。

いかに製造業の外資を呼び込むかがインドネシア経済の将来にとっては最重要課題である。

 

表E07-8-1、インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDP伸び率(単位;%)

05/1Q 05/2Q 05/3Q 05/4Q 2005年 06/1Q 06/2Q 06/3Q 06/4Q 2006年
農林水産業 1.63 -0.33 1.64 5.46 2.50 3.93 5.00 2.27 1.8 3.0
鉱業 1.04 -2.87 -2.54 1.92 1.56 3.65 5.43 1.03 0.7 2.2
製造業 7.05 6.65 5.59 2.91 4.62 3.09 3.05 5.26 5.9 4.6
電気・ガス・水道 7.81 7.59 9.78 6.13 6.42 5.77 5.69 6.46 8.1 5.9
建設 7.32 7.44 6.31 6.86 7.37 7.15 8.26 8.36 10.4 9.0
商業・ホテル等 9.96 9.48 7.88 6.01 8.59 4.72 4.64 7.16 7.0 6.1
運輸・通信 13.12 13.91 12.87 10.78 12.90 11.03 13.29 13.50 15.9 13.6
金融 6.51 9.97 9.07 5.21 7.14 5.39 5.07 4.60 2.2 5.7
その他 4.90 4.36 5.36 5.97 5.19 5.44 5.86 6.96 6.0 6.2
実質GDP 6.19 5.54 5.34 4.90 5.60 4.60 5.22 5.52 6.1 5.5
非石油・天然ガス 7.29 6.75 6.27 5.70 6.48 5.36 5.66 6.06 6.6 6.1

注:部門別の06年2Q以前の伸び率は改定された数字ではありません。

 

表E07-8-2 インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDE伸び率(単位;%)

05/1Q 05/2Q 05/3Q 05/4Q 2005年 06/1Q 06/2Q 06/3Q 06/4Q 2006年
民間消費 3.4 3.8 4.4 4.2 4.0 2.9 3.0 3.0 3.8 3.2
政府消費 -9.6 -6.7 14.7 30.0 8.1 12.8 28.8 1.6 2.2 9.6
総資本形成 14.7 19.6 19.3 4.2 9.9 -0.3 6.0 3.0 8.2 2.9
輸出 11.8 11.2 4.8 7.4 8.6 11.0 11.7 12.0 6.1 9.2
輸入 18.8 17.9 10.6 3.7 12.3 3.7 8.4 9.7 9.7 7.6
実質GDP 6.3 5.6 5.6 4.9 5.6 4.8 5.1 5.5 6.1 5.5

 

表E07-8-3 インドネシア輸出(100万ドル、%)

2005年

2006年

伸び率

電気機械

7,328

7,302

-0.4

石炭など

4,486

6,470

44.2

動植物性油脂

4,951

6,007

21.3

ゴム

3,581

5,540

54.7

金属鉱石など

3,500

4,906

40.2

機械

4,560

4,391

-3.7

繊維

3,074

3,382

10.0

木製品

3,111

3,329

7.0

1,258

1,904

51.4

有機化学製品

1,531

1,825

19.2

10品目計

37,378

45,055

20.5

その他

29,051

34,447

18.6

ノンミガス合計

66,428

79,502

19.7

原油

8,146

8,169

0.3

石油製品

1,932

2,837

46.8

天然ガス

9,154

10,183

11.2

ミガス合計

19,232

21,188

10.2

輸出金額合計

85,660

100,690

17.5

資料出所;インドネシア統計局

 

E08 2007年のインドネシアの経済

E08-1. インドネシアの07年の経済は好調に推移(07年4月14日)

インドネシアの経済は2007年に入り、好調に推移している模様である。株価は高値を更新し、設備投資も順調である。

投資調整庁(BKPM)によれば海外直接投資(FDI)は07年1Qは29億9000万ドルと前年同期比15%の増加となった。また、国内資本の投資も実現ベースで60%増加し、13兆6800億ルピア(≒1,820億円)に達した。

海外・国内の合計では40兆5900億ルピア(≒5,400億円)に達し、これは前年同期比27%である。また、2007年の政府目標値の83兆800億ルピアの半分近くが既に実現されたことになる。この投資が実現されれば75,251人分の雇用が増加するとBKPMでは見ている。

また、財務省の財政政策委員会のアンギット(Anggito Abimanyu)委員長によれば07年1Qの経済成長は5.7〜5.9%に達するであろうという見通しである。これは06年1Qの4.8%を大きく上回る数値である。

その理由は輸出が好調であり14.8%程度伸びが見込まれるためである。一方輸入は11.4%にとどまる見通しである。

 

E08-2.インドネシア、金利を8.75%に切り下げ(07年5月9日)

インドネシア中央銀行はインフレ懸念が遠のいたとして5月8日(火)に基準金利を0.25%引き下げ8.75%とすると発表した。07年3月のインフレ率は前年同月比6.52%であったという。

国際的な金利水準から見るとまだ飛びぬけて高いがインドネシアでは1ケタ台の金利そのものが稀である。

これによって通貨ルピアはどうなったかというと1ドル=8,812ルピア(5月9日)と前日の8,885ルピアより高くなっている。5月1日は9,077.5ルピアであった。インドネシア経済は輸出に支えられて(主に1次産品)今のところ比較的平穏に推移している。

政府の経済見通しは06年の5.5%に対し、07年は6.3%と強気である。問題は外国資本、特に製造業の投資がどうなるかである。有り余る過剰人口が失業者の大群になってしまっているのは政府の責任である。

最近の内閣改造は「汚職退治」にポイントを置いたといわれるが、汚職退治に消極発言を繰り返すユスフ・カラが副大統領が何かというとシャシャリ出てくる。また、ラピンド事件(熱泥噴出事件)を起こしたバクリー・グループの総帥が「社会福祉調整相」に居座り、被疑者への損害賠償も遅々として進んでいないような国が外国資本家の信頼を獲得するのは容易でない。

その辺をさして気にしない中国やインドやマレーシアが最近インフラ関係の投資(火力発電など)を熱心におこなっているようである。

 

E08-3.インドネシアの07年1Qの成長率は6.0%(07年5月15日)

インドネシア中央統計局の発表によれば、07年1Q(1〜3月)の実質経済成長率は5.97%と06年4Qの6.1%並みの伸びとなった。農業部門は-0.5%と振るわなかったが、他の部門は概して好調でる。

鉱業(石油・ガス・非鉄金属など)は世界市場の高騰を受けて5.6%と製造業の伸び5.4%を上回った。

建設業が9.3%と高い伸びを続けており、不動産バブルを懸念する政府部内から声が上がっている。

短期資金も海外からの流入が増加しており、金利を下げつつあるが、なおルピア高に動いていう。株式市場も銀行、通信、商業などなべて好調である。

個人消費は4.5%とやや上向いているが、固定資本形成(設備投資、ビル建設など)が7.5%と好調である。

輸出も順調に伸びているが1次産品の伸びが中心であるとみられる(エレクトロニクスの伸びは相変わらず低いものと推定される)。

(表は下に移動)

 

E08-4.インドネシアの新外資法、主要分野で外資の持ち株比率拡大(07年7月5日)

インドネシア政府は外資と国内資本のスミワケをより明確にし、外資が重点部門でより積極的に投資が出来るようにネガティブ・リスト(投資制限リスト)を改定した。 (大統領令76/2007および77/2007)

マリ・パンゲツ(Mari Elka Pangestu)通商産業相によれば338の投資分野につき68分野は外資に対しより開放的になり、11分野はより制限的(インドネシア資本家保護)になったとしている。

11の保護分野とはインドネシアの伝統的分野や国民的な利益に直結するもので「保健、環境、文化、自然の生物的遺伝子」などにかかわる分野だという。

外資への門戸開放が進むのは銀行(99%)、電力、石油・天然ガス、有料道路、水道事業、農業・プランテーション部門(95%)、保険業(80%)、医薬品(75%)、健康サービス(65%)、建設(55%)である。

通信分野では携帯電話は65%まで外資が許容されるが、固定電話は49%までとする。運輸や教育は49%までの制限がある。

これらの制限比率は「過去にさかのぼらない」ということである。

ブディオノ(Boediono)経済調整相(経済部門の責任閣僚)はこれらのリストは状況に応じて改定できるように常設のチーム(PEPI=the National Team for Export and Investment Growth=4年前に設立)を活用して対処していくとしている。

また、これらのリストは今後3年かけて2010年中には順次実行していくという。

このような改定案は即時実施とならないのがインドネシア的なところで、地元資本家がアレコレ口出しする余地を残しているところに問題がある。 また、担当の役人の「裁量の余地(しばしば汚職の源泉となる)」がある。

また、肝心の製造業については、地元中小企業保護というスタンスを崩しておらず、問題を先送りしている感を否めない。全体としては一歩前進といったところであろう。 ユドヨノ大統領やブディオノはヤル気だがユスフ・カラ副大統領はどうであろうか?

(ジャカルタ・ポスト、7月5日付け、インターネット版)

 

E08-5. インドネシアの07年2Qの成長率は6.3%と好調、株式は暴落(07年8月16日)

インドネシア中央統計局の発表によれば、07年2Q(4〜6月)の実質経済成長率は6.3%と07年1Qの6.0% をやや上回る伸びとなった。農林水産部門は2.4%、鉱業部門は3.4%、製造業は5.5%と低調であったが、通信・運輸部門が11.9%、電機・ガス・水道の公益部門が10.5%と高い伸びを示した。

建設業が7.8%と前Qの9.4%よりはやや鈍化したものの比較的高い伸びを続けており、ミニ不動産バブルが続いていることが懸念 される。

8月に入り、海外の 短期資金もやや腰が引けてきており、インドネシア銀行も金利の下げを見送っている。ルピアは若干下げ気味に推移している。

8月15日は株式市場 が暴落した。これは米国のサブ・プライムのトラブルを受けての世界的な動きであるが、ジャカルタ市場では1日に6.4%も下げるという最近では珍しい大幅下げをとなった。

個人消費は4.7%とやや上向いているが、固定資本形成(設備投資、ビル建設など)が6.9%と引き続き好調である。 輸出の伸びが9.8%と好調だが1次産品の伸びが中心である。

インドネシア経済の弱点は製造業の国際競争力が歴史的に弱いことで、これに対する有効な政策は余りとられていない。投資環境の改善という大きな課題に対し、政治家の関心が低いとしか言いようが無い。

 

E08-6.インドネシアの07年3Qの成長率は6.5%(07年11月15日)

インドネシア中央統計局の発表によれば、07年3Q(7〜9月)の実質経済成長率は6.5%と2Qの6.34% をやや上回る伸びとなった。農林水産部門は8.94%という異常に高い伸びを示した。これはパーム油などの好調を反映したものであろう。

鉱業の伸びは1.4%ともっとも低い。これは石油・天然ガスの生産が不振なためである。製造業の伸びも4.5%と低い。輸出競争力のある工業製品が少ないためである。電気・ガスとウン祐・通信の伸びが2桁と高い。

運輸・通信では携帯電話の普及がさらにブームを続けているためであろう。建設は7.5%と好調である。

GDEでみると、個人消費は5.3%と 好調である。国民の大多数は貧困にあえいでいるが、平均で5.3%伸びたということは金持階級が相当豪華な消費生活を送っているに相違ない。

固定資本形成(設備投資、ビル建設など)が8.8%と引き続き好調である。ミニ・バブルとも言うべき現象であろう。 輸出の伸びが7.8%とまずまずであるが1次産品の伸びが中心である。

インドネシア政府は2007年平均で6.4%は行きそうだといって有頂天になっているような雰囲気である。おめでたい限りだが、製造業対策にきちんと取り組まないとやがて中国の植民地になる運命が待っている。中国とのFTAはそれを加速させるであろう。

 

E08-7.インドネシアの07年4Qの成長率は6.3%、通年でも6.3%と好調?(08年2月16日)

インドネシア中央統計局の発表によれば、07年4Q(10〜12月)の実質経済成長率は6.3%と3Qの6.5% をやや下回る伸びとなった。農林水産部門は3.1%と3Qの8.9%という異常に高い伸びに比べればやや鈍化した。

鉱業の伸びは-2.1%とマイナスになった。これは石油・天然ガスの生産能力そのものがが減少しているためである。石炭はまだ増産余力がある。

製造業の伸びは3.8%と3Qの4.5%をさらに下回った。輸出競争力のある工業製品が少ないためである。電気・ガスと運輸・通信の伸びが2桁と高い。

運輸・通信では携帯電話の普及がさらにブームを続けているためであろう。建設は9.9%と好調である。 この分野に関してはややバブル気味である。

GDEでみると、個人消費は5.6%と 好調である。国民の大多数は貧困にあえいでいるが、平均で5.6%伸びたということは金持階級の消費ののびがカナリ高かったとしか考えられない。

2007年の自動車の販売は434千台と前年の319千台を31.6%も上回った。

固定資本形成(設備投資、ビル建設など)が12.1%となり3Qの8.8%と引き続き好調である。ミニ・バブルとも言うべき現象であろう。

 輸出の伸びが7.8%とまずまずであるが1次産品の伸びが中心である。表3-3は中国がインドネシアから輸入した数字であるが、パーム油、鉱物の輸入が急増しているが、工業製品の機械・電機の伸びは07年合計で3.9%にしか過ぎない。製造業が5%以下の成長というのは過剰人口に悩むインドネシアとしては最大の問題である。

インドネシア政府は2007年平均で6.3%となり10年来の伸びだなどといって喜んでいるような雰囲気である。おめでたい限りだが、製造業対策にきちんと取り組まないとやがて中国の 経済的植民地になる運命が待っている。中国とのFTAはそれを加速させるであろう。

中国とインドネシアの貿易についてはホーム・ページPartIIの中国貿易2007年版をご参照ください。

 

表E08-3-1、インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDP伸び率(単位;%)

2005年 2006年 2007年 06/3Q 06/4Q 07/1Q 07/2Q 07/3Q 07/4Q
農林水産業 2.50 3.0 3.5 2.27 1.8 -1.1 2.4 8.9 3.1
鉱業 1.56 2.2 2.0 1.03 0.7 6.5 3.4 1.8 -2.1
製造業 4.62 4.6 4.7 5.26 5.9 5.3 5.5 4.5 3.8
電気・ガス・水道 6.42 5.9 10.4 6.46 8.1 8.5 10.5 11.7 11.8
建設 7.37 9.0 8.6 8.36 10.4 9.4 7.8 7.5 9.9
商業・ホテル等 8.59 6.1 8.5 7.16 7.0 8.1 8.3 6.9 9.1
運輸・通信 12.90 13.6 14.4
13.50 15.9 11.3 11.9 12.5 17.4
金融 7.14 5.7 8.0
4.60 2.2 7.9 7.7 8.0 8.6
その他サービス 5.19 6.2 6.6 6.96 6.0 6.8 7.1 5.7 7.2
実質GDP 5.60 5.5 6.3 5.52 6.1 6.0 6.3 6.5 6.3
非石油・天然ガス 6.48 6.1 6.9 6.06 6.6 6.9 6.7 6.9 7.0

注:部門別の07年3Q以前の伸び率は改定された数字ではありません。

 

表E08-3-2 インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDE伸び率(単位;%)

2005年 2006年 2007年 06/3Q 06/4Q 07/1Q 07/2Q 07/3Q 07/4Q
民間消費 4.0 3.2 5.0 3.0 3.8 4.5 4.7 5.3 5.6
政府消費 8.1 9.6 3.9 1.6 2.2 4.3 3.8 6.5 2.0
総資本形成 9.9 2.9 9.2 3.0 8.2 7.5 6.9 8.8 12.1
輸出 8.6 9.2 9.2 12.0 6.1 8.9 9.8 7.8 7.8
輸入 12.3 7.6 8.9 9.7 9.7 8.4 7.2 8.1 7.3
実質GDP 5.6 5.5 6.3 5.5 6.1 6.0 6.3 6.5 13.6

資料出所;インドネシア統計局

 

表E08-3-3 中国のインドネシアからの輸入(単位;構成比と伸び率、100万ドル、%)

  2005年 2006年 2007年 ’05/04 ’06/05 ’07/06
III動植物油 749 8.9 1,070 11.1 1,597 12.9 2.0 42.8 49.3
V.鉱物製品・石油 2,283 27.1 2,263 23.6 4,530 36.5 58.7 -0.0 100.2
 内#26.鉱石等 258 3.1 587 6.1 2,097 16.9 140.3 127.3 257.5
 内#27.石油・石炭類 2,000 23.7 1,649 17.2 2,406 19.4 53.3 -17.6 46.0
XVI.機械・電機 1,614 19.1 2,080 21.4 2,140 17.3 13.5 27.7 3.9
 内#84.機械&部品 945 11.2 1,215 12.6 1,003 8.1 15.5 28.5 -17.4
 内#85.電機&部品 668 7.9 845 8.8 1,138 9.2 10.5 26.5 34.6
輸入合計 8,437 100.0 9,607 100.0 12,398 100.0 16.8 13.9 29.1

資料出所;中国海関統計より作成

 

E09. 2008年のインドネシア経済

E09-1.インドネシアのインフレ率3月には8%を越す(08年4月2日)

インドネシア経済の慢性病というべきインフレは位置時期沈静化していたが、08年3月は前月比0.95%上昇し、前年同月比では8.17%となった。また、貿易収支の黒字は08年2月は9億ドルにとどまり、08年1月の36.5億ドルから大幅に減少した。07年2月には36.5億ドルの黒字であった。

その原因は輸入の増加と輸出の減少であるが、産油国でありながら実質的には石油輸入国であることが響いている。輸出も工業製品がさっぱりで、最近は1次産品(パーム油や石炭など)への依存が高まっている。

2月の輸入が96.3億ドルと1月に比べ27%増えたのに反し、輸出は105.3億ドルと5%のマイナスになった。

このままいけば、08年後半には2桁インフレは不可避の情勢であると見られている。

そのためか、4月2日の株価は2342.19と前日比マイナス51.06と落ち込んだ。

 

⇒ジャカルタ株式市場大幅下げ(08年4月4日)

東アジアの株式市場が4月にはいってから東京始めほとんどが値上がりしているで、インドネシア株が目立って下がっている(マレーシアもやや下げている)。

事態を重く見たスリ・ムルヤニ・インドラワティ(Sri Mulyani Inddrawati)財務相は緊急記者会見を開き「経済情勢は健全であり、政府としても株式史上の動きを注意深く見守っている。緊急事態が発生すれば、政府として直ちに行動する 用意がある」と述べたという。(FT,4月4日)

確かに、4月2日、3日とインドネシアの株式市場の下げは目立った。これは上に述べたインドネシアの宿病の高インフレ(8.2%)と高金利(8%)という重病の再発により、ともに2桁に上昇すると言うような犬猿に基ずくものだと思われる。

しかし、これは下げすぎだとみる市場関係者が多い。

インドネシア経済が株価ともども一気に崩落に向かうとは考えにくいが、工業部門への投資(特に外国からの)が少ないことは依然大きな問題である。

インドネシア政府の対応は株価の急落を受けて政府の経済担当閣僚が、早速記者会見を開き、事態の沈静に努めているが、日本は余裕綽々というか、女性の経済担当閣僚は「日本の経済はダメだ」とヘタなシンク・タンクの主任研究員みたいなことをいっているし、穴グラから時々首だけ出しているらしい財務相は誰だったかな?と言った感じである。

これではさすがの福田さんもさぞ参っていることだろう。無神経にも日経新聞は加藤寛などというウルトラに「小泉流改革を止めるな」などといういまさら聞き飽きた陳腐な論文を書かせている(4月4日経済教室)。こういう手合いは真っ平ご免蒙りたい。日経新聞というのは経済のことが本当にわかっているのだろうか?

こういうメディアや御用学者(あまり役には立っていないが)が未だにのさばっているところが日本の一番ダメなところである。「改革」はもちろん必要だが「小泉流」ではダメだったのである。今起こっている問題は全て小泉政権が5年以上も「改革改革」と御題目を唱えながらやり残したり、問題を悪化させたことばかりではないか。

 

表、E09-1、インドネシアの為替と株価

ルピア/米$  

株価指数

日経平均
97年06月30日 2,431 724.56
98年01月21日 11,575 466.00
98年07月14日 15,200 420.33
99年07月08日 6,615 660.25
01年04月26日 12,000 351.34
03年03月04日 8,820 395.37
03年06月04日 8,140 504.53
05年08月29日 10,840 994.77
06年01月03日 9,723 1184.69
06年12月27日 9,036 1803.26
06年12月27日 9,036 1803.26
07年04月26日 9,075 2016.03
07年12月11日 9,270 2810.96 16,044.72
08年01月09日 9,440 2830.26 14,599.16
08年02月29日 9,065 2721.94 13,630.02
08年03月31日 9,220 2447.59 12,525.40
08年04月02日 9,215 2342.19 13,189.36
08年04月03日 9,215 2237.97 13,389.90
対3月31日比 0 -8.6% +6.9%

 

E09-2..インドネシア6月に石油製品値上げで年末には2桁インフレ(08年5月8日)

インドネシア政府は国際的石油価格の急騰を受けて08年6月から最大30%の石油製品値上げを発表した。プレミアム・ガソリンは1リットル当たり4,700ルピア⇒6,000ルピア(≒68円)+28%、ディーゼル油は4,300ルピア⇒5,500ルピア+28%、ケロシン油(軽油)は2,000ルピア⇒2,500ルピア+25%となる。

これらはいわば卸売価格で、実際のガソリンスタンドの価格は5月1日からPertamax(レギュラー・クラス)が8,300ルピア⇒8,750ルピア(≒99円)、Pertamax Plus(ハイオク)が8,600ルピア⇒9,000ルピアへと既に値上がりしている。

インドネシアのインフレ率は08年4月の段階で前年同月比8.96%上昇しており、石油製品の30%の値上げだけでインフレ率を1%は押し上げるといわれている。それ以外に穀物の価格上昇もあり(インドネシアは今年はコメの輸入はゼロで済むといわれている)どう考えても年末には10%以上のインフレは避けられないであろう。

また、 インドネシア政府は2008年度の財政赤字がGDPの3.1%に相当する103億ドルに達する見込みであり、外国からの借り入れ29億ドルを見込んでおり、世銀には12億ドル、アジア開銀には11億ドル、日本のJBICに9億ドルの借り入れを要請することにしたという。

インドネシアの目下の救いはパーム油、石炭などの1次産品の国際価格の上昇と需要増加で貿易収支面の黒字幅が拡大するため、ルピアが安定しており、輸入インフレがさほど大きな要素とはならない点である。

08年1〜3月の輸出は336億ドルと前年同期の255億ドルを31.8%も上回った。そのうち、石油・天然ガス(ミガス)が73億ドルと61.8%の増加であった。ノン・ミガス(非石油天然ガス)は262億ドルと24.83%像であった。

輸入も294億ドルと前年同期比で88%もあがっている。輸入品のうち石油関係の価格増が響いている。ただし、貿易黒字は42億ドルある。

インフレ率の2桁上昇はインフォーマル・セクターで働く低所得層の生活を直撃し、社会的・政治的不安定の原因となることは事実で、これが経済全体に悪影響を及ぼすことは間違いない。

ジャカルタの一般市民の生活を直撃してる問題として、交通事情の悪化や、水問題も深刻さを増しており、要注意である。生活が困窮している人々は着実に増えており、彼らの不満 は火山のマグマのように地下にエネルギーを蓄えており、どういう形で爆発するか予断を許さない。


E09-3.インドネシアの08年1Qの成長率は6.3%(08年6月6日

インドネシア中央統計局の発表によれば、08年1Q(1〜3月)の実質経済成長率は6.3%と07年4Qの6.3% 並みであった。農林水産部門は6.0%と07/4Qの3.1%に比べれば倍の伸び率だった。これはパーム油やコメの生産が比較的順調なためである。今年はインドネシアはコメの輸入なしで済ますことができる。フィリピン(200万トン今日輸入が必要)とは大違いである。

鉱業の伸びは-2.3%とマイナスになった。これは石油・天然ガスの生産能力そのものがが減少しているためである。石炭はまだ増産余力がある。石油の純輸入国に転じたインドネシアはOPECからの年内脱退を表明している。

製造業の伸びは4.3%と前Qの3.8%よりはやや回復したがさほど高い数字ではない。輸出競争力のある工業製品が少ないためである。電気・ガスと運輸・通信の伸びは12.1%と高いことになってはいるが、実際には停電あり、飲み水不足ありで、生活実感とはおよそかけ離れた数字である。。

運輸・通信では携帯電話の普及がさらにブームを続けているため19.7%と異常に高い伸びを記録している(前Q=17.4%)。建設は8.3%(前Q=9.9%)と比較的好調である。ジャカルタには高いびるやマンションが建設されているが水は大丈夫なのだろうか?不動産建設はバブル気味である。

GDEでみると、個人消費は5.5%(前Q=5.6%)と 好調である。貧困沿うが増えている現状で、平均で5.5%伸びたということは考えられない。不思議な国である。

固定資本形成(設備投資、ビル建設など)が13.3%(前Q=12.1%)となり引き続き好調である。これは機械設備ではなく、主に不動産投資による成長である。問題含みである。

 輸出の伸びが16.8%(前Q=7.8%)と絶好調である。これはパーム油、ゴム、石炭などの1次産品の伸びが中心である。

 表はE09-8.に改定・移動しました。


E09-4.インドネシア金利引き上げ8.5%に(08年6月7日


インドネシア銀行(中央銀行)はインフレ対策として基準金利を8.25%から8.5%に引き上げた(08年6月5日)。

大方の予想では0.5%は引き上げられると見られていたが、インドネシア銀行のハルタディ・サルウォノ(Hartadi Sarwono)副頭取は「今回の0.25%引き上げは市場へのメッセージであり、インフレ対策としてはほかの手段も併用していく」と語った。

インドネシア銀行は「基準金利」を「1ヶ月金利」から「オーバー・ナイト」に切り替えた(6月2日)。このほうが中央銀行として「迅速かつ直接的に」金利政策を反映させられるという理由からだという。

08年5月のインドネシアのインフレ率は10.38%に達した。4月は8.96%であった。

E09-5.インドネシアの08年上期のモーター・サイクル販売44%増(08年7月10日)

インドネシアモーター.サイクル産業協会(AISI)のグナディ・シンドゥ・ウィナタ会長(インドモビル・グループCEO)によると08年上期(1〜6月)のモーター.サイクルの販売台数は300万台に達し、昨年の上期の210万台に対し44%も増加した。

この調子でいけば2008年の販売目標520万台は突破するであろうという見通しを語った。

原材料費の高騰から7月末には値上げせざるを得ないが、それでもインドネシアの金利はさほど急上昇せず12%にとどまるであろうし、自動2輪車の利便性から行って今後も需要は増加していくとみられている。

日系のホンダ(シェアー45.6%)、ヤマハ(39.9%)、スズキ(13.2%)の3社でシェアー98.7%を占めている。その中でも昨年上期はホンダとヤマハの差は少なかったが、08年に入りホンダがリードを広げた。

インドネシア国内メーカーの販売台数

07年上期 08年上期 伸率(%)
ホンダ 919,432 1,404,503 52.8
ヤマハ 892,818 1,229,351 37.7
スズキ 286,364 405,339 41.5
カワサキ 20,305 19,364 -4.4
Kanzen 15,056 19,221 27.7
Kymuco 5,458 3,403 -37.6
合計(含その他) 2,139,461 3,081,240 44.0

資料出所;AISI(ジャカルタポスト、08年7月9日より)

E09-6.インドネシアの08年上期の成長率は6.2%(推定)(08年7月11日)

スリ・ムルヤニ・インドラワティ財務相はインドネシア経済はきわめて順調に伸びており、速報値だが08年上期の成長率は6.2%(08年1Q=6.3%、2Q=6.1%)はいくであろうと語った。

08年2Qは個人消費が5.3%、投資が10.5%、輸出が10%程度は伸びるであろう。また、08年上期は前年同期に比べ自動車とモーター・サイクルは約40%、銀行貸付は32%、税収は50.3%伸びる。

国税局は307.5兆ルピア(≒3兆6000億円)の税収を上げており、非石油天然ガス分野(+39.4%)と付加価値税(+48.9%の税収が大きく貢献している。

製造業(食品、飲料、化学、エレクトロニクス産業)からの税収が37.5%、ホテル・商業部門からの税収が24.4%増加した。

E09-7.インドネシア金利引き上げ9.0%に(08年8月6日)

インドネシア銀行(中央銀行)はインフレ対策として基準金利を8.5%から9.0%に引き上げた。前回の引き上げは6月5日であった。

インドネシア銀行総裁ブディオノ氏によれば08年7月のインフレ率は11.9%であり、これは22ヶ月ぶりの高さであった。2008年末には11.5〜12.5%の間になると見ている。

資金需要はきわめて旺盛で08年6月末の金融機関の貸付増は31.6%に達し、目標の22〜26%を大きく上回っているという。

不良債権の比率は4.08%で中央銀行が最大限と考えている5.0%を目下のところ下回っているという。

大方の予想では0.5%の引き上げらは折込済みであり、すぐには大きな影響はないが銀行の利益率は徐々に低下していくと見られている。


⇒インドネシア金利引き上げ9.25%に(08年9月5日)


インドネシアのインフレ率は08年8月は11.85%となった。7月は11.9%であり、8月は7月よりもやや下がった形であったがインフレ圧力は依然強いとして0.25%の基準金利引き上げに踏みきった。



E09−8,インドネシアの08年2QのGDPは6.4%成長?(08年9月10日)

インドネシア中央統計局が発表した(08年8月15日)08年2Q(4〜6月)の実質経済成長率は6.4%と1Qの6.3% 並みであった。

農林水産部門は4.6%と1Qの6.1%に比べればやや鈍化したが、パーム油、ゴムなどの世界市場の好調に支えられた。コメの生産も好調で08年は輸入せずにすみそうだという。

鉱業の伸びは-0.9%と1Qの-1.9%に引き続き不振である。これは石炭の生産・輸出は好調であるが、石油・天然ガスの生産能力そのものがが減少しているためである。

製造業の伸びは4.1%と前Qの4.2%並である。輸出競争力のある工業製品が少ないためナニを作っているのか良くわからない。

電気・ガスと水道の伸びは11.2%と1Qの12.6%に引き続き好調だが、実際には停電あり、飲み水は慢性的に不足であり、実態とおよそかけ離れた数字である。

運輸・通信では携帯電話の普及がさらにブームを続けているため19.6%(1Q=20.3%)と異常に高い伸びを記録している。村内何時までもブームが続くものなのであろうか?

建設は8.0%(1Q=7.9%)と比較的好調である。ジャカルタの不動産建設はバブル気味である。

GDEでみると、個人消費は5.3%(1Q=5.7%)と 好調である。貧困層がコンスタントに増えている現状で、平均で5.3%伸びたということは考えられない。

固定資本形成(設備投資、ビル建設など)が12.8%(1Q=15.4%)となり引き続き好調である。この数字が正しいとすれば機械設備ではなく、主に不動産投資による成長である。

 輸出の伸びが16.1%(1Q=15.5%)と絶好調である。これはパーム油、ゴム、石炭などの1次産品の伸びが中心である。

インドネシアのGDPの数字はハッキリ言って不可解な点が多い。市場の関係者は当然気付いているであろう。インドネシア政府債は売れ残り、最近株価も低迷しており9月10日には1885.04と前日比-73.73と大幅に下げた。

ルピアも9月4日の1ドル=9253.5から9月5日は9375.0にまで下げ、そのままの状態が続いている。フィリピン同様、要注意である。

 

表E09-8-1、インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDP伸び率(単位;%)

2005年 2006年 2007年 07/2Q 07/3Q 07/4Q  08/1Q 08/2Q
農林水産業 2.50 3.0 3.5 2.4 8.9 3.1 6.1  4.6
鉱業 1.56 2.2 2.0 3.4 1.8 -2.1 -1.9
-0.9
製造業 4.62 4.6 4.7 5.5 4.5 3.8 4.2
4.1
電気・ガス・水道 6.42 5.9 10.4 10.5 11.7 11.8 12.6 112.
建設 7.37 9.0 8.6 7.8 7.5 9.9 7.9 8.0
商業・ホテル等 8.59 6.1 8.5 8.3 6.9 9.1 7.1
7.9
運輸・通信 12.90 13.6 14.4
11.9 12.5 17.4 20.3 19.6
金融 7.14 5.7 8.0
7.7 8.0 8.6  8.2 8.7
その他サービス 5.19 6.2 6.6 7.1 5.7 7.2  5.6
6.5
実質GDP 5.60 5.5 6.3 6.3 6.5 6.3  6.3 6.4
除石油・天然ガス 6.48 6.1 6.9 6.7 6.9 7.0  6.8 6.9

注:部門別の07年3Q以前の伸び率は改定された数字ではありません。

 

表E09-8-2 インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDE伸び率(単位;%)

2005年 2006年 2007年 07/2Q 07/3Q 07/4Q  08/1Q 08/2Q
民間消費 4.0 3.2 5.0 4.7 5.3 5.6 5.7  5.3
政府消費 8.1 9.6 3.9 3.8 6.5 2.0 4.7  2.2
総資本形成 9.9 2.9 9.2 6.9 8.8 12.1 15.4  12.8
輸出 8.6 9.2 9.2 9.8 7.8 7.8 15.5  16.1
輸入 12.3 7.6 8.9 7.2 8.1 7.3 17.6  16.7
実質GDP 5.6 5.5 6.3 6.3 6.5 6.3 6.3  6.4

資料出所;インドネシア統計局(08年8月15日発表)


E09-9.インドネシア金利を0.25引き上げ9.5%に、株暴落で午前中で取引停止(08年10月8日)

インドネシア銀行は10月7日(火)に基準金利を9月に引き続き0.25%引き上げ9.50%としたがルピア下落の動きは止まらず、株式市場も8日の午前中に10.36%暴落したため証券取引所は午前中で取引を停止するという緊急事態に立ち至った。

インドネシア政府は3Q(7〜9月)の成長率は6%以上の伸びを示し、引き続き好調であるなどと財務省のアンギト(Anggito Abimanyu)財政政策局長が10月3日(金)に発表したばかりであった。

彼の説明によれば「個人消費と輸出が好調を維持している」ということである。それはマユツバであることは私が上(2QのGDPの解説)で論じたとおりである。

オートバイの売り上げは確かに増えているが雇用情勢の改善などは見られず、個人消費など増やしたくても増やせないのがインドネシア国民の生活実態である。

アンギトもこの界隈では名前の知られたエコノミストである。こういうノーテンキなお説を唱えていては日本の御用エコノミストと同格に見られてしまうおそれがある。

投資家の方がはるかにインドネシア経済の危うさを見抜いており、株式市場からの脱出が9月初には始まり、ここに来て急速に動いたと見るべきであろう。

このような「危うさ」はフィリピンも同じである。いやフィリピンのほうがインドネシアよりもヒドイはずである。これに比べればタイははるかにマシであるが、タイの場合は政治情勢が悪いことが影響している。

表、E09-9、インドネシアの為替と株価

ルピア/$

株価指数

97年06月30日 2,431 724.56
98年01月21日 11,575 466.00
98年07月14日 15,200 420.33
99年07月08日 6,615 660.25
01年04月26日 12,000 351.34
03年03月04日 8,820 395.37
05年08月29日 10,840 994.77
06年01月03日 9,723 1184.69
06年12月27日 9,036 1803.26
07年04月26日 9,075 2016.03
08年01月09日 9,440 2830.26
08年03月31日 9,220 2447.59
08年09月01日 9,165 2159.05
08年09月15日 9,450 1719.25
08年10月03日 9,430 1832.51
08年10月06日 9,575 1648.74
08年10月07日 9,565 1619.72
08年10月08日 9,657 1451.67
前日比 -1.0% -10.4%

 

E09-10..ジャカルタ株式市場再開、バクリー株の暴落が先行(08年10月13日)

ジャカルタ株式市場は先週10月9日(木)に10%以上暴落したため、午前中で取引を打ち切り、13日(月)に再開した。13日の終値は10.20上がって1461.87で引け一応平静にもどった観がある。

ジャカルタ株式市場は世界的な金融不安に伴う株式の下落以外に、バクリ・ブラザーズ(Bakrie & Brothers)社の経営危機(資金ショート)問題があり、同社関連株が急落したというのである。

バクリー社はいうまでもなくユドヨノ内閣のバクリー社会福祉調整相のファミリー企業である。そのバクリー社が短期債務14.3億ドル(WSJは12億ドルとしている)の支払い不能という噂が立った。

バクリー社は傘下の子会社の株式を売却して短期資金の返済に充てるからデフォールト(支払不能)のオソレは全く無いとしている。

子会社の持株比率は、@PT Bumi Resources(インドネシア最大の石炭会社)35%、APT Bakrieland Development(不動産)40%、BPT Energi Mega Persada(石油・天然ガス開発)54%、C PT Sumatra Plantation 54%,DPT Bakrie Telelcomunications 55%, EPT Bakrie Infrastructure 100% である。

バクリー社としては08年末に2億ドルの支払いがあるが、それは手持ちの現金で当て、10億ドルの支払いが2009年4月に予定されており、その資金を上記子会社の株式を一部売却して手当てするとしている。しかし、最近になって株式市場の全面的崩落にあい、バクリー・グループの株式が市場で売られ暴落したため先週の10月7日(火)からバクリー・グループ株の取引が停止されている。

バクリー社はいずれの企業も健全経営で利益を上げており、デフォールトの心配はないと説明している。

しかし、バクリー社の指示で市場から@PT Bumi Resourcesの株式を買い戻していた、PT Danatama Makmur証券が、買い戻した株の代金を支払えなかったことからバクリー社に対する「懸念売り」が一挙に増大したという。

バクリー・グループはもともと自己資金が豊富ではなく、多額の借入金と株式の公開で資金調達を繰り返してきたため、資金問題が経営のアキレス腱となっており、株式市場の下落は常に同社にとっては危険要因なのである。


⇒バクリーのブミ・リゾース株、取引再開後に急落(08年11月8日、12日追記


バクリー・グループは資金調達のためグループの株式の売却を急いでいるが、その目玉ともいうべきブミ・リゾース(PT. Bumi Resource=石炭会社)の持株の35%を全て売却すべく交渉している。

しかし、売却が成立するまで、株式市場での取引を「停止」するよう取引所に要請し、約1ヶ月間取引は停止されてきた。

ムルヤニ財務相はあまりに長期の株式売買停止は一般株主にも損害を与える可能性があるとして、11月6日(木)からブミ・リソース社株の取引を再開させた。(4週間取引停止であり、買い持ちしている投資家は大損する可能性がある)

ところが、案の定、同社の株は急落し、11月6日は9.2%下げ、1,975ルピア/株となり、翌7日は9.87%下げ、1,780ルピアにま急落してしまった。この段階でストップ安になり、自動的に取引は停止となった。

11月10日(月)はどうなるかが注目されていたが、Bapepam−LK(資本市場および金融機関監視委員会)は取引継続を決定した。当日のブミ・リゾース(PT. Bumi Resource)は9.55%下げ、1,610ルピアとなったところで取引ストップとなった。08年3月頃は1株7,400ルピアであったから、バクリーの持株は2割強にまで下がってしまった。大打撃である。

(11月11日(火)は9.94%下がって、1,460ルピアでストップ安。なお、売り越し残が6億株あるという。)

同社株の取引再開に当たっては、バクリーの持株35%の売却が完了するまで、取引を停止したままにすべきであると考えるユドヨノ大統領、ユスフ・カラ副大統領、ソフヤン・ジャリル国有企業担当相と早期に再開すべきであると主張するスリ・ムルヤニ財務相と鋭い対立があったと取り沙汰されている。

ユスフ・カラはそのような対立はないと公式に否定しているが、2004年の大統領選挙のときにバクリーが選挙資金の面倒を見たといわれることから、ユドヨノ大統領は「バクリーに甘い」という見方がされている。

それは「ラピンド事件(東ジャワのシドアルジョ地区でバクリーの会社が天然ガス掘削中に熱泥が噴出し、周辺に大被害を及ぼしている事件)」の処理についても、ユドヨノはメリハリの利いた処置をしていないことにも表れているというのだ。

一方、このブミ・リゾース社株については11月はじめに有力な買い手として米国のテキサス・パシフィック・グループ(TPG=Texas Pacific Group)が登場し、TPGのインドネシア法人ノーススター(Northstar)社がチャンピオンになってコンソーシアムが組織され、それにインドネシアの国営企業も参加するということになっている。売却価格も13億ドルで話しがついているという。

しかし、その交渉が決着する前ではあっても、ムルヤニ財務相が「停止期間が長過ぎるとして取引再開」をユドヨノ大統領に膝詰め談判をして決行したというのが、実態のようである。

ムルヤニとしては「特殊インドネシア的なグズグズした政治的取引の慣行から脱却しなければならない」という信念から、いわば「国際社会で通用するインドネシアのビジネス慣行の確立」を目指していることは明らかである。

肝心のムルヤニ財務相はG20の財務相会議などに出席するため、後事をソフヤン国営企業担当相に託して11月6日に12日間の予定でブラジルと米国に向けて出張してしまった。

ブミ・リゾース社の一般株主としては石油価格の最近の値下がりは石炭価格の値下がりに連動するという見方から、同社株を売り急いでいるものと見られる。

⇒バクリー市場からブミ株を8兆ルピア分買い戻すことを表明(08年11月16日)


バクリー・グループはブミ・リゾース株の暴落を阻止するため、いずれ1株2,500億ルピアで33億株買い戻すと宣言したのち、暴落を続けていた同株も下げ止まり11月14日(金)終値で1,160ルピアで引けた。

買い戻し金額は8.25兆ルピア(約7億ドル)であり、その資金をどう調達するかが問題である。バクリーとしては買い戻した株(全体の17%)を担保に社債(1年もの利回り25%程度)を発行してしのぐようである。

バクリー・グループの真意は今の段階ではよくわからない。

11月6日(月)の段階で終値が1,960ルピアであったものが週末にはほぼ半値に近いところまで下げてしまった。背景には石炭価格の下落もあるが、バクリーに対する不信感もあったに相違ない。

高利回りの社債を発行してまで一旦売った株式35%(現段階では交渉中だが)の約半分を買い戻すということであるが、そもそもが12億ドルの借入金返済が目的であり、バクリーの資金力は脆弱であったはずである。

1年そこそこの短期間のうちに本当に社債が償還できるのであろうか?そのときはまた、別のウルトラC(表現が古い?)を考えるとでもいうのであろうか。

バクリーのもう1つの得意分野の「不動産業」もいまや暗雲がたちこめ、前途は暗い。

⇒バクリー・グループ株は総崩れ(08年11月19日)

ブミ・リゾーシスの株はバクリーの買い戻し宣言(上記参照)にも関わらず、下げ止まらず、11月18日(火)には9.5%下げ、950ルピアで引けた。

10月7日から取引停止になっていた親会社のバクリー・ブラザーズ(Bakrie & Brothers)株も11月18日に取引が再開されたが、9.66%安の131ルピア、同じくエネルギ・メガ(Enerugi Mega)社株も10%安の315ルピアとなり、同日のストップ安となった(自動的取引停止)。どこまで下がるの見当もつかない状態になってしまった。

因みに、11月19日現在の為替相場は1万ルピア=80円である。1ドル=12,100ルピアというのは1998年8月18日の12,400ルピア以来の数字である。インドネシア銀行はルピアの買い支えをおこなているのであろうが、それにしても異常なルピア安である。金・外貨準備も600億ドル近くあるはずである(08年6月末で595億ドル)。

バクリー・グループはジャカルタ証券取引所(IDX)の要請に応える形で「経営状況」の開示を11月17日(月)におこなったが、不透明感がぬぐえないとして、売りが続いているという。

一方、アブリザル・バクリー社会福祉調整相は週刊誌テンポが最近号で「2004年の大統領選挙でユドヨノーユスフ・カラのコンビを支援する資金を提供したがゆえに、ユドヨノ大統領はバクリーを閣僚としてとどめている」といった内容の記事を掲載したとして、名誉毀損の「刑事告発」を行うという。

確かにユドヨノ大統領の「ラピンド事件」についてのバクリーへの対応は歯切れが悪いように見受けられる。

この話しはインドネシアではいろりろなメディアが書き立てていることであり、なぜテンポだけが槍玉に上がったのか疑問視されている。テンポがスハルト政権時代から「反政府的」記事を書き続けてきたためであろう。そういう意味では日本の朝日新聞に似ている(私は必ずしもそうは思わないが)のかもしれない。

そもそもこれは「出版法違反」で争うべき問題ではないかという批判を受けている。

(ジャカルタ・ポスト、08年11月19日電子版参照)


E09-11.インドネシア国内産業保護策を検討(08年10月16日)

インドネシア政府は最近の輸出環境の悪化にともない、安い価格での輸入品から国内産業を守るために、「非関税障壁」を設ける計画を明らかにした。

ディア・マウリダ(Diah Maulida)商務省貿易局長は輸入品に対してSNI(Indonesian National Standard=インドネシア標準規格)という規定を厳格に適用することを先ずやりたいと述べている。

もともと、このSNIを制定した目的(JIS規格同様}は国内産製品の品質向上を目的にして制定されたものだが、これにあわない輸入品をシャット・アウトしようという狙いである。

ディア局長は特にいくつかの食品と飲食物に対し、SNIの拡大を考えている。また、SNIは鉄鋼、省エネ電灯、タイヤ、小麦、塩、ビン・缶入り飲料などが規定されている。

逆に政府としては設備投資に必要な製造用の機械などの輸入は促進したいとしている。

また、工業省のブディ・ダルマディ(Budi Darmadi)自動車・通信・情報産業局長はエレクトロニクス製品(省エネランプを含む)にもSNIを適用すべきだと語った。省エネランプのインドネシア国内生産は1億9500万個に達しており、国内需要は1億個であるが、なおかつこれが輸入されているという。

インドネシア商工会議所(KADIN)の貿易と流通副部会長のケトゥト(Ketut Suardana Linggih)氏は不必要な輸入品を減らしていくには何らかの障壁を設けるのは当然であるとしたうえで、「反ダンピング法」などほかの手段も積極的に活用し、またインドネシア製部品の組み付け(ローカル・コンテンツ)を義務付けるべきだと述べた。

このようなインドネシアの「保護主義」はスハルト政権崩壊以降の「自由化」ムードのなかでしばらく鳴りをひそめていたが、最近の中国からの集中豪雨的な輸入増加で、国内中小企業が急速に弱体化しつつあり、また外資も国外移転をおこなう企業が増えてきたなどの状況を反映したものであろう。

この中の議論で、繊維産業や家電製品が議論の対象になっていないように見受けられるのは中国への配慮かもしれない。中国ーASEAN自由貿易協定はASEAN側に非常に不利な形で作用しつつある。

(ジャカルタ・ポスト、インターネット版、08年10月17日参照)


E09-12.インドネシア政府、金融機関などの危機対策10項目発表(08年10月29日)

インドネシア政府と中央銀行は今回の世界的な金融危機と不況に対処するために10項目からなる「緊急政策パッケージ」を作成し、10月28日(火)に公表した。

スリ・ムルヤニ財務相はその具体的内容として下記の例を挙げた。
@政府とインドネシア銀行は10月29日(水)より国債の買戻しを実施する。
A国営企業は手持ちの外貨をインドネシアの国内の銀行に預けること。また、外貨の必要額を定期的に報告すること。
B輸出業者は政府資金の借り入れができる。また、出荷済みの代金相当額(L/Cで)の借り入れができる。輸出税(パーム油などにかけられている)は現行の2.5%をゼロにする。
C衣類、エレクトロニクス製品、食品、飲料、玩具、靴の輸入制限を行い、不正輸入を防止する(主に中国から関税を誤魔化したりして輸入している悪徳華人資本家に対する牽制である)。
D外貨借り入れの着いた建設プロジェクトを促進する。

これによって、一旦は暴落しかったルピアも下げ止まった観がある。(下の表参照)
しかし、外貨準備高が7月末の606億ドルから最近は520億ドルへと急減している。その対策として「輸入規制」に今回かなりの力点が置かれている。

なお、インドネシア株式市場の急落はバクリー・ブラザーズの資金繰りをめぐって暴落をはじめ、現在バクリー関係株はPT.Bumi Resources(最大の石炭会社)をはじめ数社が.10.月9日(木)から3週間以上も取引停止状態にある。国営企業による買収(救済策)案も浮上しているが、スリ・ムルヤニ財務相は「政府と民間企業は別だ」といって安易な救済策は頑として認めていないという。

アリザバル・バクリー社会福祉調整相
(副大統領ユスフ・カラに次ぐ政権ナンバー・スリー)の保有する会社であり、スハルト時代なら一も二もなく「政府の救済」が得られたとこころかもしれない。バクリー側の言い分も甘えの構造を反映してか「一旦は株は売り渡すが、時期をみて買い戻すことができる条件にしてくれ」などと虫のいいことをいっている。

こんな自分勝手な言い分に耳を貸さないスリ・ムルヤニ財務相は「アッパレ」という評価がある一方で、悪徳資本家・政治家グループからは「彼女を辞めさせろ」という声が出ているという。インドネシアというのはそういう社会である。しかし、それに敢然と立ち向かうスリ・ムルヤニ財務相に私も日本の一老いぼれエコノミストとして敬意の念を表したい。

1998年の経済危機の時にスハルトのツルの一声で天文学的な融資(流動性支援)をインドネシア銀行から民間銀行に垂れ流した際の「バークレー・マフィア」といって日本ではもてはやされたエリート諸君の醜態ぶりとは大変な違いである。

市場関係者は今回のインドネシア政府の措置を前向きなものとして好意的に受け止めている。良くわかっているエコノミストが政府や中央銀行にいるために比較的すばやい対応ができたと評価してよいであろう。
これに比べると日本人のエリート様はかなりグズグズしているように見えてならない。ヘッジファンドが株を好き勝手に操作して銀行株など過剰な売りを浴びて、大暴落しているのを見ながら、「カラ売り規制」と称して「監視を続ける」などと間延びをしたことを言っていた。ようするに「何もしませんよ」ということを天下に公言したに等しいのである。

その声を聞いてヘッジ・ファンドはここぞとばかり売りまくり、某大手銀行株は2日連続でストップ安になるというミットモナイ有様になった。その後、ようやくナニかやり始めたらしい(10月29日に少し効果が出てきた)と思ったら、東証の親分が出てきて、「カラ売り規制をすると株式市場が非活性化する」などというコメントを発表している。

この緊急時にこの人物はどこに価値観を置いて仕事をやっているのかといいたくなる。安っぽい大学の教授みたいに原理原則など振り回している場合ではないことぐらいわからないのであろうか。東証の営業成績よりもこの際優先させるべき課題があるのは当然ではないか。

落ち着いてから「カラ売り問題」をどう取り扱うべきかをジックリ検討すればよいことである。金融資本(特にヘッジファンド)に好き勝手させておくのが「自由市場の原則だ」などという馬鹿げた話しはない。無原則な自由競争などはおよそありえないのだ。これは最近グリーンスパン氏も正直に述懐しているではないか。

最近のインドネシアの株価と為替

株価 ルピア/ドル
9月24日 1883.55 9335.0
10月14日 1555.97 9770.0
10月24日 1244.86 10225.0
10月27日 1166.41 11250.0
10月28日 1111.39 10900.0
10月29日 1113.62 10900.0



E09-13.インドネシアの08/3Qの成長率は6.1%と好調維持?(08年11月18日)

インドネシア中央統計局が発表した08年3Q(7〜9月)の実質経済成長率は6.1%と2Qの6.4%と1Qの6.3%に比べやや鈍化したとはいえ以前好調を維持している。

農林水産部門は2.4%と2Qの4.6%と1Qの6.1%に比べればやや鈍化したが、パーム油、ゴムなどの世界市場の好調に支えられた。両者とも今後の輸出はあまり期待できない。

鉱業の伸びは1.6%と2Qの-0.9%と1Qの-1.9%に引き続き不振である。これは石炭の生産・輸出は好調であったが、石油・天然ガスの生産能力そのものがが減少しているためである。

製造業の伸びは4.3%と2Qの4.1%と1Qの4.2%並である。輸出競争力のある工業製品が少なく、これほどの伸びを示している根拠は不明である。肝心の衣類などは不振である。

電気・ガスと水道の伸びは11.2%と1Qの12.6%に引き続き好調だが、実際には停電あり、飲み水は慢性的に不足であり、実態とおよそかけ離れた数字である。

運輸・通信では携帯電話の普及がさらにブームを続けているため17.1%と異常に高い伸びを続けている。2Qは19.6%、1Q=20.3%であった。

建設は7.5%と好調である。2Qは8.0%、1Q=7.9%であったが、インドネシアは不動産バブルの崩壊が取りざたされている。

GDEでみると、個人消費は5.3%と2Qの5.3%、1Q=5.5%と 好調である。失業者や貧困層がコンスタントに増えている現状で、平均で5.3%伸びたということは考えられない。

固定資本形成(設備投資、ビル建設など)が12.0%と2Q=12.8%、1Q=13.3%となり引き続き好調である。インドネシアが設備投資ブームであるというニュースは聞こえてこない。不可解な数字である。

 輸出の伸びが14.3%と2Qの16.1%、1Q=15.0%と絶好調である。これはパーム油、ゴム、石炭などの1次産品の伸びが中心である。しかし、これらはいずれも減少に向かいつつある。

インドネシアのGDPの数字はハッキリ言って不可解な点が多い。市場の関係者は当然気付いているであろう。インドネシアの経済成長率についてあまり新聞にも取り上げられなくなった。 

表E09-13-1、インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDP伸び率(単位;%)

2005年 2006年 2007年 07/3Q 07/4Q  08/1Q 08/2Q 08/3Q
農林水産業 2.50 3.0 3.5 8.9 3.1 6.1  4.6 2.4
鉱業 1.56 2.2 2.0 1.8 -2.1 -1.9
-0.9 1.6.
製造業 4.62 4.6 4.7 4.5 3.8 4.2
4.1 4.3
電気・ガス・水道 6.42 5.9 10.4 11.7 11.8 12.6 112. 10.6
建設 7.37 9.0 8.6 7.5 9.9 7.9 8.0 7.5
商業・ホテル等 8.59 6.1 8.5 6.9 9.1 7.1
7.9 7.6
運輸・通信 12.90 13.6 14.4
12.5 17.4 20.3 19.6 17.1
金融 7.14 5.7 8.0 8.0 8.6  8.2 8.7 8.5
その他サービス 5.19 6.2 6.6 5.7 7.2  5.6
6.5 6.7
実質GDP 5.70 5.5 6.3 6.5 6.3  6.3 6.4 6.1
除石油・天然ガス 6.48 6.1 6.9 6.9 7.0  6.8 6.9 6.6

注:部門別の伸び率は改定された数字ではありませんのでご注意ください。

 

表E09-13-2 インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDE伸び率(単位;%)

2005年 2006年 2007年 07/3Q 07/4Q  08/1Q 08/2Q 08/3Q
民間消費 4.0 3.2 5.0 5.1
5.6 5.5  5.3 5.3
政府消費 6.6
9.6 3.9 6.5 2.0 3.6  2.2 16..9
総資本形成 10.9
2.5
9.2 10.4
12.1 13.3  12.8 12.0
輸出 16.6 9.4
8.0
6.9
7.3
15.0  16.1 14.3
輸入 17.8
8.6
8.9 7.0
13.6
16.8  16.7 11.9
実質GDP 5.7
5.5 6.3 6.5 6.3 6.3  6.4 6.1

注;08/1Qまでは改定された数字です。

資料出所;インドネシア統計局
(08年11月16日発表)


E09-14.インドネシア、バンク・センチュリィが短期資金不足で国営預金保護機構の傘下に(08年11月22日)

インドネシアの上場銀行のバンク・センチュリー(Bank Century=資産13億ドル、第13位)が資金ショートをきたしたことから、国営預金保護機構のLPS(Deposit Insurance Corporation)によって買収された。

新しい社長にはバンク・マンディリからマルヨノ(Maryono)氏が派遣される。

Bank Centuryは短期資金が不足するとして1兆ルピア(約80億円)の緊急融資をインドネシア銀行(中央銀行)に申し入れていたという。

インドネシア銀行はLPSの傘下にBank Centuryを置き、その後買い手がつけば売却する方針であるという。

Bank Century は2004年にBank CIC, Bank Pikko, Bank Danapacの3行が合併してできたものである。

シナル・マス・グループが同行の買収については「関心をしめしていた」といわれている。

Bank Centuryは現在First Gulf Asia Holdings であるが、株主構成等は詳しくはわからない。

現在インドネシアには126の銀行があり、そのうちの上位20行で、資産の90%を占めているという。群小銀行の多くは華人系財閥グループが所有しており、財務内容については依然として不透明のところが多いといわれ、何時ナニが飛び出すかわからない「危険水域」に突入したといえよう。

そのためさまざまな噂が株式市場に飛び交い、悪質な噂をばら撒いた人物がすでに警察の取調べを受けている。
(Funancial Times 08年11月21日、ほか)

E09−15.インドネシアも08年10月から輸出は下降線、12月は-20%(09年2月4日)

インドネシアの輸出は2008年合計では1376.6億ドルと前年(1141億ドル)比+20.7%と順調な伸びを示したとはいうものの、08年10月から世界経済の混乱が響いて輸出が下降しはじめ、08年12月は87億ドルと、11月の96億ドルに比べ9.6%も落ち込み、07年12月比では-20%と大きくマイナスになった。

石油・天然ガスを除いた、いわゆる「ノン・ミガス」の輸出は12月は74.5億ドルで11月比-8.8%、前年同月比-11.6%であった。11月は-9%であった。

中央統計局の発表したこの数字にインドネシア政府は、さらに落ち込みが続くとみて、急遽国内需要の喚起策をとる必要に迫られている。

さしあたり中央銀行は現行の基準金利8.75%をさらに切り下げるであろうが、財政基盤の弱いインドネシアとしては打つ手が限られており、ずるずると景気が後退していくことが予想される。

財務相のスリ・ムルヤニ・インドラワティ(Sri Muruyani Indrawati)j女史は「これで2009年の5%成長は苦しくなった」などと、うそぶいて落ち着き払っているという。これぐらいのことはインドネシアは過去何度も経験しているということで「100年来の大ピンチだ」などとわめき散らしてはいない。たいしたものである。


E09-16.インドネシア靴市場は中国製が氾濫、鋼材輸入規制も(09年2月12日)

インドネシア靴生産者協会のエディー・ウィジャナルコ(Eddy Widjanarko)会長によれば、インドネシアの製靴業界は輸入品特に中国からの安価な靴の大量輸入により、国内生産は圧迫されているという。


国内市場の60%は輸入の靴で占められており、その大部分が中国製であるという。通関実績を見る限りはそれほど大きなシェアになるはずはないが、密輸(通関コードや輸入価格ののごまかしを含め)が相当な部分を占めているという。

また、中国政府も靴の輸出(他の品目もそうだが)の増値税(付加価値税)の減免がおこなわれており、靴については17%が還付されているという。

もともと靴はインドネシアにとっても重要輸出品目であったが、業界自体が持ちこたえられなくなりつつあると危機感をアピールしている。

また、鉄鋼製品についても同様な問題が起こっており、もともと国際競争力の弱いインドネシアの鉄鋼業界は安値の輸入品輸入品におしまくられて、ガタガタになっているという。

インドネシア政府は「特定品目」については関税を高くするなどとして一定の保護策を打ち出しているが、輸出国は「関税コード」を誤魔化して輸出してきているという。

ASEANと中国の「自由貿易協定」は双方にとってハッピーな「Win-win solution=双方が勝者)などと喧伝されていたが、靴や鉄に限らずインドネシアの工業品は「全敗」の危機に瀕しているともいえよう。


このままではインドネシアで生き残れる工業製品は極く限られたものになり、植民地時代のように1次産品中心の輸出国に逆戻りしかねない。

総合的に「工業化政策」を再検討すべき時に来ていることは明らかである。到底タンジュンな「自由貿易」政策などではやっていけないのだ。アメリカですらそうではないか。


⇒インドネシア、公務員の靴問題で工業相と商業相がイガミ合(09年2月19日)

ファフミ・イドリス工業相は輸入の靴(主に中国製)に国内市場があらされ、インドネシアの靴メーカーが苦境に立たされている現状を何とかすべく、せめて公務員は「国産の靴をはくべし」という政令を出そうと関係閣僚に呼びかけている。

これに対し、マリ・パンゲツ商業相(華人系)は「自由貿易の精神に反する」としてそっぽを向いているという。確かに「自由貿易の原則」には抵触するかもしれないが、インドネシアの製靴業者も苦境にたっていることは事実である。

おまけに、インドネシアに出回っている輸入靴の大半が中国製で、しかも正規の輸入手続を踏んでいないものが多いとなったら商業相の責任も追及されざるを得ない。

マリ・パンゲツ商業相としては、靴輸入問題については「水際で不正輸入は断固阻止する、とか中国にはダンピング輸出をさせないように働きかけるから心配後無用」ぐらいのことを言ってもよさうだが、「自由貿易」の原則論を一歩もでていないように見受けられる。

もともと、「中国寄り」と取りざたされるマリ・パンゲツ商業相も閣内のゴタゴタにそっぽを向いているだけでは済まされない問題ではある。通関の汚職や不正を取り締まるのは商業相に責任があるからである。

イドリス工業相はASEAN−オーストラリア、ニュージーランド、インドなどとの一連のFTA(自由貿易協定)には最近反対の立場を強めているといわれている。

確かに、インドネシアの工業化の実態を見れば、年々足元を掘り崩されている感無きにしも非ずである。特に中国には徹底的にやられている。当分、インドネシアが工業化という面では目だった発展は期待できない状態にあることは間違いない。

ユドヨノ大統領がどういう方針で臨むかが重要であるが、どうもイロイロな問題にあまりハッキリした判断や方針は打ち出してはいないようである。

ユスフ・カラ副大統領は「経済にことはオレにまかせろ」などと大見得を切りながら、実際は「日和見主義」を決め込んでいるようであり、「個人の利益に関係ないことにクビを突っ込まない」方針のように見受けられる。

インドネシアは大事なときに「仕事の出来るリーダー」がいない国である。日本人としてはあまり大きな声で言えないが。


E09-17.インドネシアの08/4Qの成長率は5.2%,通年で6.1%と好調?(09年2月17日)


インドネシア中央統計局が発表した08年4Q10〜12月)の実質経済成長率は5.2%と3Qの6.1%に比べ鈍化したとはいえ好調を維持している。2008年の成長率も6..1%と発表されている。

注目すべきは製造業が4Qは1.8%ときわめて低いことである。これで5.1%の成長が遂げられるのであればインドネシアは最早工業国とはいえないであろう。製造業の伸びは3Qは4.3%と2Qの4.1%と1Qの4.2%であったから、著しく鈍化したことになる。

その背景になったのは輸出の伸びが実質1.8%にとどまったことである。3Qまでは10%台の伸びを維持していたのである。

電気・ガスと水道の伸びは率は9.3%、3Q=10.6%と引き続き好調だが、実際には停電あり、飲み水は慢性的に不足であり、実態とおよそかけ離れた数字である。

運輸・通信では携帯電話の普及がさらにブームを続けているため15.8%(3Q=17.1%)と異常に高い伸びを続けている。何時までも携帯電話ブームでは説明がつかない段階にきている。

建設は5.7%(3Q=7.5%)とややましであるがジャカルタ中心のビル建設は限界にきており、誰が買うのかと危惧される状態である。

GDEでみると、個人消費は4.8%(3Q=5.3%)と意外に 好調である。信じがたい数字である。

固定資本形成(設備投資、ビル建設など)が9.1%(3Q=12.0%)引き続き好調である。インドネシアが設備投資ブームであるというニュースは聞こえてこない。不可解な数字である。

 輸出の伸びが1.8%と3Qの14.3%と2Qの16.1%、1Qの15.0%に比べ極度に落ち込んだ。貿易統計だけは比較的ゴマカシがないようである。製造業の1.8%を考えれば、インドネシアの成長率は2〜3%程度が妥当なところではなかろうか?

インドネシアの一般国民はこういう経済状態に馴らされてきているので、目下のところさほど社会的に深刻な緊張状態はない。コメの生産が良くなってきたことが庶民生活の安定の支えのひとつになっているのかもしれない。しかし、これから失業者が急増してくることは間違いないので要注意である

表E09-17-1、インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDP伸び率(単位;%)

2006年 2007年 2008年 07/4Q  08/1Q 08/2Q 08/3Q 08/4Q
農林水産業 3.0 3.5 4.8 3.1 6.1  4.6 2.4 4.7
鉱業 2.2 2.0 0.5 -2.1 -1.9
-0.9 1.6. 2.1
製造業 4.6 4.7 3.7 3.8 4.2
4.1 4.3 1.8
電気・ガス・水道 5.9 10.4 10.9 11.8 12.6 112. 10.6 9.3
建設 9.0 8.6 7.3 9.9 7.9 8.0 7.5 5.7
商業・ホテル等 6.1 8.5 7.2 9.1 7.1
7.9 7.6 5.6
運輸・通信 13.6 14.4
16.7 17.4 20.3 19.6 17.1 15.8
金融 5.7 8.0 8.2. 8.6  8.2 8.7 8.5 7.4
その他サービス 6.2 6.6 6.4 7.2  5.6
6.5 6.7 6.0
実質GDP 5.5 6.3 6.1 6.3  6.3 6.4 6.1 5.2
除石油・天然ガス 6.1 6.9 6.5. 7.0  6.8 6.9 6.6 5.6

注:部門別の伸び率は改定された数字ではありませんのでご注意ください。

 

表E09-17-2 インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDE伸び率(単位;%)

2006年 2007年 2008年
07/4Q  08/1Q 08/2Q 08/3Q 08/4Q
民間消費 3.2 5.0 5.1
5.6 5.5  5.3 5.3 4.8
政府消費 9.6 3.9 6.5 2.0 3.6  2.2 16..9 10.3
総資本形成 2.5
9.2 10.4
12.1 13.3  12.8 12.0 9.1
輸出 9.4
8.0
6.9
7.3
15.0  16.1 14.3 1.8
輸入 8.6
8.9 7.0
13.6
16.8  16.7 11.9 -3.5
実質GDP 5.5 6.3 6.5 6.3 6.3  6.4 6.1 5.2

注;08/1Qまでは改定された数字です。

資料出所;インドネシア統計局
(09年2月16日発表)

インドネシア靴生産者協会のエディー・ウィジャナルコ(Eddy Widjanarko)会長によれば、インドネシアの製靴業界は輸入品特に中国からの安価な靴の大量輸入により、国内生産は圧迫されているという。


国内市場の60%は輸入の靴で占められており、その大部分が中国製であるという。通関実績を見る限りはそれほど大きなシェアになるはずはないが、密輸(通関コードや輸入価格ののごまかしを含め)が相当な部分を占めているという。

また、中国政府も靴の輸出(他の品目もそうだが)の増値税(付加価値税)の減免がおこなわれており、靴については17%が還付されているという。

もともと靴はインドネシアにとっても重要輸出品目であったが、業界自体が持ちこたえられなくなりつつあると危機感をアピールしている。

また、鉄鋼製品についても同様な問題が起こっており、もともと国際競争力の弱いインドネシアの鉄鋼業界は安値の輸入品輸入品におしまくられて、ガタガタになっているという。

インドネシア政府は「特定品目」については関税を高くするなどとして一定の保護策を打ち出しているが、輸出国は「関税コード」を誤魔化して輸出してきているという。

ASEANと中国の「自由貿易協定」は双方にとってハッピーな「Win-win solution=双方が勝者)などと喧伝されていたが、靴や鉄に限らずインドネシアの工業品は「全敗」の危機に瀕しているともいえよう。


このままではインドネシアで生き残れる工業製品は極く限られたものになり、植民地時代のように1次産品中心の輸出国に逆戻りしかねない。

総合的に「工業化政策」を再検討すべき時に来ていることは明らかである。到底タンジュンな「自由貿易」政策などではやっていけないのだ。アメリカですらそうではないか。


⇒インドネシア、公務員の靴問題で工業相と商業相がイガミ合(09年2月19日)

ファフミ・イドリス工業相は輸入の靴(主に中国製)に国内市場があらされ、インドネシアの靴メーカーが苦境に立たされている現状を何とかすべく、せめて公務員は「国産の靴をはくべし」という政令を出そうと関係閣僚に呼びかけている。

これに対し、マリ・パンゲツ商業相(華人系)は「自由貿易の精神に反する」としてそっぽを向いているという。確かに「自由貿易の原則」には抵触するかもしれないが、インドネシアの製靴業者も苦境にたっていることは事実である。

おまけに、インドネシアに出回っている輸入靴の大半が中国製で、しかも正規の輸入手続を踏んでいないものが多いとなったら商業相の責任も追及されざるを得ない。

マリ・パンゲツ商業相としては、靴輸入問題については「水際で不正輸入は断固阻止する、とか中国にはダンピング輸出をさせないように働きかけるから心配後無用」ぐらいのことを言ってもよさうだが、「自由貿易」の原則論を一歩もでていないように見受けられる。

もともと、「中国寄り」と取りざたされるマリ・パンゲツ商業相も閣内のゴタゴタにそっぽを向いているだけでは済まされない問題ではある。通関の汚職や不正を取り締まるのは商業相に責任があるからである。

イドリス工業相はASEAN−オーストラリア、ニュージーランド、インドなどとの一連のFTA(自由貿易協定)には最近反対の立場を強めているといわれている。

確かに、インドネシアの工業化の実態を見れば、年々足元を掘り崩されている感無きにしも非ずである。特に中国には徹底的にやられている。当分、インドネシアが工業化という面では目だった発展は期待できない状態にあることは間違いない。

ユドヨノ大統領がどういう方針で臨むかが重要であるが、どうもイロイロな問題にあまりハッキリした判断や方針は打ち出してはいないようである。

ユスフ・カラ副大統領は「経済にことはオレにまかせろ」などと大見得を切りながら、実際は「日和見主義」を決め込んでいるようであり、「個人の利益に関係ないことにクビを突っ込まない」方針のように見受けられる。

インドネシアは大事なときに「仕事の出来るリーダー」がいない国である。日本人としてはあまり大きな声で言えないが。


E09-18.インドネシアの09/1Qの成長率は4.4%(09年5月19日)

インドネシア中央統計局が発表した09年1Q(1〜3月)の実質経済成長率は4.4%とそこそこの成長率を維持した。周辺諸国が世界不況のあおりでマイナス成長に陥っている中でインドネシアの数字は異常ともいえよう。

注目すべきは製造業が1Qは1.6%(4Qは1.8%)と全部門の中で最も低いが、輸出が-19.1%と落ち込んでいるのにまおプラスを維持していることである。

善意に解釈すれば、インドネシアは農業中心の経済になりつつあり、製造業の経済全体に与える影響は低下しつつあるということであろうか?そうだとすれば、インドネシアは時代に逆行しつつあるといえよう。


電気・ガスと水道の伸びは率は11.3%と異常にたかし。08年4Q=9.3%、3Q=10.6%と引き続き好調だが、実際には停電あり、飲み水は慢性的に不足であり、実態とおよそかけ離れた数字である。

運輸・通信では携帯電話の普及がさらにブームを続けているらしく16.7%も伸びている。08年4Q=15.8%(3Q=17.1%)と異常に高い伸びを続けている。何時までも携帯電話ブームでは説明がつかない段階にきている。

建設は6.3%と08ねんQ=5.7%(3Q=7.5%)とややましであるがジャカルタ中心のビル建設は限界にきており、誰が買うのかと危惧される状態である。

GDEでみると、個人消費は5.8%ときわめて好調である。08年4Q=4.8%(3Q=5.3%)と貧困層が多い中で意外に 好調を維持している。こういう数字を信じがたく思っているのはインドネシア人自身かもしれない。

固定資本形成(設備投資、ビル建設など)が3.5%と08年4Q=9.1%(3Q=12.0%)にくらべやや落ちてきた。

 
表E09-18-1、インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDP伸び率(%)

2007年 2008年  08/1Q 08/2Q 08/3Q 08/4Q 09/1Q
農林水産業 3.5 4.8 6.1  4.6 2.4 4.7 4.8
鉱業 2.0 0.5 -1.9
-0.9 1.6. 2.1 2.2
製造業 4.7 3.7 4.2
4.1 4.3 1.8 1.6
電気・ガス・水道 10.4 10.9 12.6 112. 10.6 9.3 11.4
建設 8.6 7.3 7.9 8.0 7.5 5.7 6.3
商業・ホテル等 8.5 7.2 7.1
7.9 7.6 5.6 0.6
運輸・通信 14.4
16.7 20.3 19.6 17.1 15.8 16.7
金融 8.0 8.2.  8.2 8.7 8.5 7.4 6.3
その他サービス 6.6 6.4  5.6
6.5 6.7 6.0 6.6
実質GDP 6.3 6.1  6.3 6.4 6.1 5.2 4.4
除石油・天然ガス 6.9 6.5.  6.8 6.9 6.6 5.6 4.8

表E09-18-2 インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDE伸び率(%)

2007年 2008年
 08/1Q 08/2Q 08/3Q 08/4Q 09/1Q
民間消費 5.0 5.1
5.5  5.3 5.3 4.8 5.8
政府消費 3.9 6.5 3.6  2.2 16..9 10.3 19.2
総資本形成 9.2 10.4
13.3  12.8 12.0 9.1 3.5
輸出 8.0
6.9
15.0  16.1 14.3 1.8 -19.1
輸入 8.9 7.0
16.8  16.7 11.9 -3.5 -9.7
実質GDP 6.3 6.5 6.3  6.4 6.1 5.2 4.4

注;08/1Qまでは改定された数字です。

資料出所;インドネシア統計局
(09年5月15日発表)


E09-19.インドネシア金利を0.25%引き下げ6.75%に(09年7月3日)

インドネシア銀行(I中央銀行)はOvernight Benchmark Rateを7月3日(金)から0.25%引き下げ6.75%とすることとした。これはインフレ率がこのところ急激に低下しており、5月の6.04%から6月には3.65%にまで下がったことを反映したものだという。

かつてインドネシアは2桁インフレ、2桁金利は慢性的な現象であり、これがインドネシア経済の基礎体力を奪う元凶の1つであったが、ようやくここまで来たということである。

しかし、公定歩合に相当する金利が6.75%というのは依然として国際的には大変な高金利であるが、インドネシア銀行としてはこれ以上の引き下げの余地はあまりないとしている。あっても6.5%どまりであろうという見方が多い。


逆に、インドネシア銀行としては金利がここまで下がったのだから民間銀行はもっと貸付を増やして、経済成長に貢献してもらいたいという意向である。

インドネシアは今年の経済成長は09年2Qは3.7〜4.0%は確実であり、通年でも4%前後行くのではないかという、現在の世界的水準から見て楽観的な見通しを持っている。

輸出は減るが内需特に民間消費が好調だというのである。

雇用情勢が良好とも思えない中で、どうすれば民間消費が5.8%(09年1Q)も伸びるのか私には到底理解できない。

多くのインドネシア人がマレーシアに出稼ぎにいっているが、そこでもなかなか職が見つからず、難儀をしている人が大変多いという。それどころかマレーシアで日常起こっていることは「悲劇」とすらいえよう。メイドが虐待されているケースがあまりに多いので今後はマレーシアにはメイドは派遣しないなどと息巻いているが、それではインドネシア国内で働き口があるのかといいたい。

現在大統領選挙もたけなわであり(7月8日投票)、ユドヨノーブディオノ組みが勝利することは確実視されているが、安定政権のもとインドネシア経済の長期的成長にマトモに取り組んでもらいたいものである。その決め手は外国の製造業の誘致であることはいうまでもない。


E09-20.インドネシアの09/2Qの成長率は「活発な個人消費」のおかげで4%(09年8月11日)

インドネシアの経済は09年2Qも比較的順調で前年同期比.0%の成長を遂げた。1Qの4.4%からみればでやや落ちたが、輸出も製造業もサッパリ振るわない中では「奇跡の成長」というべきである。

注目すべきは製造業が2Q=1.5%(1Qは1.5%)と全部門の中で最も低いが、輸出が-15.7%と大きく落ち込んでいるのにもかかわらqずプラスを維持していることである。しかも輸入が-23.9%と大きなマイナスになっていることは中間財や資本財が大きく落ち込んでいることを意味している。

農林水産業も2Qの伸び率は2.4%と1Q=5.2%に比べ伸び率が鈍化している。

異常に高い伸びを示しているのは電気・ガスと水道の15.3%(1Q=11.4%)運輸・通信の17.5%(1Q=17.1%)である。製造業もほとんど伸びないにも関わらず、かつ電気水道もないないそ家庭が多いが、ユドとの政権下ではそういった問題が一挙に解決に向かっているのであろうか?

運輸・通信では携帯電話の普及がさらにブームを続けているらしい。これも変である。何時までも携帯電話ブームでは説明がつかない段階にきている。

建設は6.4%と1Q=6.3%なみであるががジャカルタ中心のビル建設は限界にきており、かなりバブル気味である。

GDEでみると、個人消費は4.8%と1Q=6.0%荷比べやや鈍化したとはいえきわめて好調である。失業者も多く貧困層が多い中で意外に 好調を維持している。こういう数字は信じがたい。

固定資本形成(設備投資、ビル建設など)が2.4%と1Q=3.4%に比べやや鈍化している。

総じてインドネシア政府の公表するGDPの数字はほとんど信用できないインドネシア版大本営発表といったところであろうか?インドネシアに比べタイはなっていないなどという新聞記事が飛び出してくるのだからタイのアピシット政権もいいハタ迷惑である。

 
表E09-20-1、インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDP伸び率(%)

2007年 2008年 08/2Q 08/3Q 08/4Q 09/1Q 09/2Q
農林水産業 3.5 4.8 4.6 2.4 4.7 5.2 2.4
鉱業 2.0 0.5 -0.9 1.6. 2.1 2.4 2.4
製造業 4.7 3.7 4.1 4.3 1.8 1.5 1.5
電気・ガス・水道 10.4 10.9 112. 10.6 9.3 11.4 15.4
建設 8.6 7.3 8.0 7.5 5.7 6.3 6.4
商業・ホテル等 8.5 7.2 7.9 7.6 5.6 0.5 -0.1
運輸・通信 14.4
16.7 19.6 17.1 15.8 17.1 17.5
金融 8.0 8.2. 8.7 8.5 7.4 6.3 5.3
その他サービス 6.6 6.4 6.5 6.7 6.0 6.8 7.4
実質GDP 6.3 6.1 6.4 6.1 5.2 4.4 4.0
除石油・天然ガス 6.9 6.5. 6.9 6.6 5.6 4.8 4.4


表E09-20-2 インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDE伸び率(%)

2007年 2008年
08/2Q 08/3Q 08/4Q 09/1Q 09/2Q
民間消費 5.0 5.1
5.3 5.3 4.8 6.0
4.8
政府消費 3.9 6.5 2.2 16..9 10.3 19.2 17.0
総資本形成 9.2 10.4
12.8 12.0 9.1 3.4
2.7
輸出 8.0
6.9
16.1 14.3 1.8 -18.7 -15.7
輸入 8.9 7.0
16.7 11.9 -3.5 -26.0 -23.9
実質GDP 6.3 6.5 6.4 6.1 5.2 4.4 4.0


E09-21.インドネシア人出稼ぎ労働者が82.4億ドル送金(09年9月16日)

テンポ(Tempointeractif.com)の伝えるところによると、サムエル証券(Samuel Security Indonesia)のエコノミストであるラナ(Lana Soelistianingsh)氏がおこなった推計で、2008年の海外出稼ぎ労働者からの送金の額は82.4億ドル(約7,500億円)に達したという。

また、09年の上期は35億ドルに達し、2009年全体では89億ドルに達する見込みであるという。

現在439万人のインドネシア人が海外で働き、本国の家族に送金しているという。1人当たり約17万円の送金額である。

所得レベルの低い家族にとってはこれは大変大きな金額であり、インドネシアの個人消費はこういう送金によって支えられていることが分かる。

これはフィリピンでも同じことであるが、今までインドネシア人の海外労働h者からの送金額については調査資料がほとんどなかった。


E09-22.インドネシアの09/3Qの成長率は4.2%(09年11月11日)

インドネシアの経済は09年3Qも比較的順調で前年同期比.4.2%の成長を遂げた。1Qの4.4%、2Qの4.0%とほぼ同様の成長率で世界不況どこ吹く風といった趣であり、ご同慶の至りである。

注目すべきは製造業が3Q=1.3%、1Q,2Q=各1.5%(1Qは1.5%)と全部門の中で最も低い。インドネシアは最早製造業には成長を期待しないでもよいらしい。

そのかわり、といってはナンだが、通信・運輸で18.2%,%、電気ガス水道で14.6%という高い成長を維持し続けるツエー部門がある??今や、インドネシアは携帯電話をネコでも使っているらしい。電気も有り余って、停電などどこにいってもないし、真昼間からスラム街でも街灯をつけているらしい。

もちろん、これは冗談だが、あきれ返った話しである。こんな数字はおよそ生活実感からカケ離れている。インドネシア政府もこれらの数字の根拠についてもっとよく調査する必要がある。

建設は8.8%と好調持続、鉱業も6.5%とますます快調、これではユドヨノ大統領もブディオノ副大統領もやることがなくて困ってしまうだろう。

GDEでみると、個人消費は4.7%と2Qの4.8%と替わらず、好調そのもの。失業者も多く貧困層が多い中で 好調を維持しているのはどうも海外出稼ぎ労働者の送金がタンマリあるらしい。フィリピン・スタイルである。しかし、こういう数字は信じがたい。

固定資本形成(設備投資、ビル建設など)が4.0%と2Qの2.4%より良くなっている。建設ブームの(?)のおかげであろうか?

輸出が-8.2%と悪いが、2Qの-15.7%よりはよほど改善されている。輸入は-18.3%と大きく落ち込んでいるのは設備投資なんかやる必要がないので減っただけだ。

総じてインドネシア政府の公表するGDPの数字はほとんど信用できない。外国人のあまり賢くないエコノミストや新聞記者は騙せても、インドネシア国民は騙せないであろう。インドネシアの成長率はプラスになっているはずがない。あくまで私の勘だが-2〜3%がよいところであろう。

 
表E09-20-1、インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDP伸び率(%)

2007年 2008年 08/2Q 08/3Q 08/4Q 09/1Q 09/2Q 09/3Q
農林水産業 3.5 4.8 4.6 2.4 4.7 5.2 2.4 2.7
鉱業 2.0 0.5 -0.9 1.6. 2.1 2.4 2.4 6.5
製造業 4.7 3.7 4.1 4.3 1.8 1.5 1.5 1.3
電気・ガス・水道 10.4 10.9 112. 10.6 9.3 11.4 15.4 14.6
建設 8.6 7.3 8.0 7.5 5.7 6.3 6.4 8.8
商業・ホテル等 8.5 7.2 7.9 7.6 5.6 0.5 -0.1 -0.6
運輸・通信 14.4
16.7 19.6 17.1 15.8 17.1 17.5 18.2
金融 8.0 8.2. 8.7 8.5 7.4 6.3 5.3 4.9
その他サービス 6.6 6.4 6.5 6.7 6.0 6.8 7.4 5.8
実質GDP 6.3 6.1 6.4 6.1 5.2 4.4 4.0 4.2
除石油・天然ガス 6.9 6.5. 6.9 6.6 5.6 4.8 4.4 4.6


表E09-20-2 インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDE伸び率(%)

2007年 2008年
08/2Q 08/3Q 08/4Q 09/1Q 09/2Q 09/3Q
民間消費 5.0 5.1
5.3 5.3 4.8 6.0
4.8 4.7
政府消費 3.9 6.5 2.2 16..9 10.3 19.2 17.0 10.2
総資本形成 9.2 10.4
12.8 12.0 9.1 3.4
2.7 4.0
輸出 8.0
6.9
16.1 14.3 1.8 -18.7 -15.7 -8.2
輸入 8.9 7.0
16.7 11.9 -3.5 -26.0 -23.9 -18.3
実質GDP 6.3 6.5 6.4 6.1 5.2 4.4 4.0 4.2

資料出所;インドネシア統計局(09年11月10日発表)


E10-01.インドネシア対中国自由貿易の修正を要望(10.01.13)


WSJの1月12日付けインターネット版に”Indonesia Wants China Pact Revised"なる記事が出ている。

これは前から指摘されていた問題で、2010年1月1日に発行する「ASEAN-中国』自由貿易協定による被害がインドネシア産業界にとってあまりに大きく、実施を1年間遅らせてくれという要望書を政府はASEAN事務局に送付した。

しかし、インドネシア政府内でもパリ・パンゲツ商業相(華人)はいまさら何をといった風情で「インドネシアは国際的な約束は守るが、産業界から提起された問題について特別委員会を作って調査する」と最初からまるで他人事である。

これは商業省としては何も行動をとらないということを意味している。危機感を募らせているのは工業相やインドネシア商工会議所やインドネシア経営者連合などである。

先週、バンドンやその他の都市で、数千人の労働者が「中国との自由貿易反対」のデモをおこなった。繊維産業の多いバンドンでは過去2年間に271社の繊維会社が倒産している。

インドネシアの産業界は「中国との自由貿易協定締結に際しては産業界としては事前の説明はなく、産業界として前々から懸念を表明していたが、政府が勝手に決めてしまった」と強い不満を表明している。

特に、鉄鋼、繊維、玩具、電気製品などが深刻な打撃を受けているという。これらの製品は今まででも「密輸」されてきており、繊維製品はインドネシア市場の40%が既に中国製品で占められているという。
ASEAN事務局は「1年延期というインドネシア政府の申し出は取り上げられる可能性はほとんどない。こういう問題はASEAN10カ国の合意がないとダメだ」と取り合おうとしない。

シンガポールなどは「自由貿易推進派」の急先鋒なので、とうてい「自由化延期」などという話しが前に進むはずがない。

2010年はASEANにとっては地獄への第一歩の年であることは間違いない。既にASEANは中国の経済的植民地となりつつあることは筆者がつとに指摘してきたとおりである。

特に、インドネシア、フィリピンは既に工業国から1次産品国へと後戻りしつつある。インドネシアは既に対中貿易収支は赤字に転落している。ユドヨノ大統領が「ボンヤリ」していたおかげである。アロヨ大統領に至っては「どうなろうと関係ない。いいじゃないのシアワセならば」といった態度である。


⇒インドネシア労組、中国との自由貿易協定廃止要求(10・2.2)

インドネシアの労働組合代表が1月27日、第2次ユドヨノ政権発足100日を記念して大統領官邸前でデモを行い、ASEANと中国の自由貿易の取り消しを要求した。

これに対しパリ・パンゲツ商業相は強気の姿勢であり「インドネシアはこの自由貿易協定の模範になる」と息巻いている。ユドヨノ大統領もさほど心配は要らないと楽観視しているという。

インドネシア金属労連のサイド・イクバル(Said Iqbal)委員長は国会議員団に対し「われわれが要求するのは自由貿易でなくて、公正な貿易(fairtrade,not free trade)である」として今後とも闘っていくことを宣言した。

またイクバル委員長は「労働者にも公務員並みの健康保険を適用することを求め、社会的な慈善よりも制度としての健康保険を強く要求する」と述べた。

これらの問題は、今後のインドネシアにとって大きな政治課題になることは間違いないであろう。



E10-02 インドネシアの09年成長率は4.5%、不況どこ吹く風??(10-02-19).

インドネシアの経済は09年4Qも比較的順調で前年同期比.5.4%と3Qの4.2%を上回る成長を遂げたという政府(中央統計局)の発表である。1Qの4.4%、2Qの4.0%っより成長率が高くなっており、世界不況どこ吹く風といった趣であり、ご同慶の至りである。一向におめでたくないのがオラン・クチルこと一般庶民である。

問題の製造業が4.2%と3Qの1.3%からみるとかなり良くなっていた。これではインドネシアは中国の脅威などさほど感じないはずだ。一体何を製造しているかが問題ではあるが。

例によって、通信・運輸は12.2%の伸びで、3Qの18.2%,%をやや下回るが依然好調である。、電気ガス水道も14.0%と3Qの14.6%には及ばないが高い成長を維持し続けている。

農業は4.6%、鉱業は5.2%、建設は8.0%、サービスは5.7%といった具合で、全てが理想的な数字である。おとぎ話のようなこういう数字はおよそ生活実感からカケ離れている。

GDEでみると、個人消費は4.0%と依然好調で、3Qの4.7%と2Qの4.8%と比べやや低下した程度にとどまっている。失業者も多く貧困層が多い中で 好調を維持しているのは謎である。

政府支出の伸びが17.0%とはいかにも高すぎる。

固定資本形成(設備投資、ビル建設など)が4.2%であり、3Qの4.0%、2Qの2.4%より良くなっている。製造業の投資はマイナスになっているはずだから、建設ブームのおかげであろうか?

輸出が3.7%とプラスに転じた。3Q=-8.2%、2Qの-15.7%と悪かったが、何が輸出増加につながったのであろうか?輸入は1.6%とこれまたプラスである。3Q=-18.3%からみると一体どうなったのであろうか?

2009年通年でも4.5%の成長である。輸出が-9.7とひどい落ち込みであったが、個人消費+4.1%、政府支出+15.7%で何とかしのいだ形になっている。しかし、何かが変である。日本の有力新聞など読んでいるとインドネシアはしっかりしていて好調だが、タクシンがいなくなったタイはダメダみたいなことが書いてある。私には逆に見えて仕方がない。ついにオレさまもヤキが回ったか?

 
表E10-1、インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDP伸び率(%)

2007年 2008年 2009年 08/4Q 09/1Q 09/2Q 09/3Q 09/4Q
農林水産業 3.5 4.8 4.1 4.7 5.2 2.4 2.7 4.6
鉱業 2.0 0.5 4.4 2.1 2.4 2.4 6.5 5.2
製造業 4.7 3.7 2.1 1.8 1.5 1.5 1.3 4.2
電気・ガス・水道 10.4 10.9 13.8 9.3 11.4 15.4 14.6 14.0
建設 8.6 7.3 7.1 5.7 6.3 6.4 8.8 8.0
商業・ホテル等 8.5 7.2 1.1 5.6 0.5 -0.1 -0.6 4.2
運輸・通信 14.4
16.7 15.5 15.8 17.1 17.5 18.2 12.2
金融 8.0 8.2. 5.0 7.4 6.3 5.3 4.9 3.8
その他サービス 6.6 6.4 6.4 6.0 6.8 7.4 5.8 5.7
実質GDP 6.3 6.1 4.5 5.2 4.4 4.0 4.2 5.4
除石油・天然ガス 6.9 6.5. 4.9 5.6 4.8 4.4 4.6 5.8


表E10-2 インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDE伸び率(%)

2007年 2008年
2009年 08/3Q 08/4Q 09/1Q 09/2Q 09/3Q 09/4Q
民間消費 5.0 5.1
4.9 5.3 4.8 6.0
4.8 4.7 4.0
政府消費 3.9 6.5 15.7 16..9 10.3 19.2 17.0 10.2 17.0
総資本形成 9.2 10.4
3.3 12.0 9.1 3.4
2.7 4.0 4.2
輸出 8.0
6.9
-9.7 14.3 1.8 -18.7 -15.7 -8.2 3.7
輸入 8.9 7.0
-15.0 11.9 -3.5 -26.0 -23.9 -18.3 1.6
実質GDP 6.3 6.5 4.5 6.1 5.2 4.4 4.0 4.2 5.4

資料出所;インドネシア統計局(2010年2月10日発表)



E10-03インドネシアの2010/1Qの成長率は5.7%(2010-5-11)

インドネシアの経済は2010年1Qも前年同期比.5.7%と依然好調を持続している。好調の原因は依然として不明である。

問題の製造業が3.5%と09/4Qの4.2%よりもやや下がっている。一体何を製造しているかが問題ではあるが。

例によって、通信・運輸は+11.9%と09/4Qの12.2%の伸びで依然2桁の伸びを続けている。電気ガス水道も7.2%と09/4Qの14.0%、3Qの14.6%には及ばないが高い成長を維持し続けている。

農業は2.9%、鉱業は3.5%、建設は7.3%、サービスは4.6%といった具合で、全てが理想的な数字である。インドネシアはおとぎ話のようにシアワセな国になってしまった。

GDEでみると、個人消費は3.9%と09/4Qの4.0%に引き続きと依然好調である。3Qの4.7%と2Qの4.8%と比べやや低下した程度にとどまっている。失業者も多く貧困層が多い中で 好調を維持しているのは謎である。

政府支出の伸びが-8.8%となったが、これは余裕のなせるワザであろう。

固定資本形成(設備投資、ビル建設など)が7.9%と09/4Qの4.2%よりも良くなっている。

輸出が+19.6%と大きく伸びた。09/4Qは3.7%であった。3Q=-8.2%、2Qの-15.7%と悪かったが、何が輸出増加につながったのであろうか?工業製品は製造業の伸びを見る限り、さほど伸びてはいないようである。輸入は+22.6%とこれまた09/4Qんお1.6%とくらべ大幅なぷらすである。

こういう状況であれば、スリ・ムルヤニ・インドラワティ財務相も後ろ髪惹かれることなく、世界銀行に転出できるというものである。

 
表E10-1-1、インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDP伸び率(%)

2008年 2009年 09/1Q 09/2Q 09/3Q 09/4Q 10/1Q
農林水産業 4.8 4.1 5.2 2.4 2.7 4.6 2.9
鉱業 0.5 4.4 2.4 2.4 6.5 5.2 3.5
製造業 3.7 2.1 1.5 1.5 1.3 4.2 3.6
電気・ガス・水道 10.9 13.8 11.4 15.4 14.6 14.0 7.2
建設 7.3 7.1 6.3 6.4 8.8 8.0 7.3
商業・ホテル等 7.2 1.1 0.5 -0.1 -0.6 4.2 9.3
運輸・通信 16.7 15.5 17.1 17.5 18.2 12.2 11.9
金融 8.2. 5.0 6.3 5.3 4.9 3.8 5.5
その他サービス 6.4 6.4 6.8 7.4 5.8 5.7 4.6
実質GDP 6.1 4.5 4.4 4.0 4.2 5.4 5.7
除石油・天然ガス 6.5. 4.9 4.8 4.4 4.6 5.8 6.1


表E10-1-2 インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDE伸び率(%)

2008年
2009年 09/1Q 09/2Q 09/3Q 09/4Q 10/1Q
民間消費 5.1
4.9 6.0
4.8 4.7 4.0 3.9
政府消費 6.5 15.7 19.2 17.0 10.2 17.0 -8.9
総資本形成 10.4
3.3 3.4
2.7 4.0 4.2 7.9
輸出 6.9
-9.7 -18.7 -15.7 -8.2 3.7 19.6
輸入 7.0
-15.0 -26.0 -23.9 -18.3 1.6 22.6
実質GDP 6.5 4.5 4.4 4.0 4.2 5.4 5.7

資料出所;インドネシア統計局(2010年5月10日発表)