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インドネシアの経済(2005年まで)

E05-3-10 来年のインドネシア経済は05年より成長鈍化か?(05年12月22日)

E05-3-9. インドネシア銀行金利0.5%引き上げ12.75%に(05年12月8日)

E05-3-8. 05年3Qの成長率は5.34%とまずまず(05年11月23日)

E05-3-7.2006年からジャカルタの最低賃金は819,100ルピアに(05年11月3日)

E05-3-6. インフレ率17.9%に、金利12.25%に引き上げ(05年11月2日)

E05-3-5.インドネシア銀行金利を11%に(05年10月5日)

E05-3-4. ルピア、株価ともに大暴落(05年8月29日)

 ⇒SBY曰く「金利は上げるが、石油価格は10月以降に考える」(05年9月1日)

E05-3-3. 05年2Qの成長率は5.54%にダウン(05年8月16日)

E05-3-1. 05年1Qの成長率は6.35%(05年5月17日)

E05-3. 05年の成長率は5.5%の見通し、経企庁長官(05年5月4日)

E05-2. ルピア危機の再現?(05年4月29日)

E05-1. 05年1Qの投資は173%増(05年4月16日)

 

E03-1. インドネシアの2002年の実質GDPは3.66%の成長(03年2月17日、4月14日加筆)

2月 17日付のフィナンシャル・タイムズ紙によると、インドネシアの2002年の実質経済成長率は3.66%に達したという。2002年の第4Qはバリ島の爆発事件(10月12日)があったものの3.82%に達した。

インドネシア経済は国内総支出(GDPと数字は同じ)の約70%を占める個人消費が比較的堅調で4.72%の成長をしめしまた政府支出も12.8%の高い伸びとなった。輸出は2001年に引き続き02年も不振であった。

部門別には運輸・通信部門(携帯電話など)が7.83%、公益事業(電力など)6.17%、金融部門5.11%、建設部門4.11%であった。

2003年の成長目標を政府は4%としている。しかし、これは輸出が引き続き期待薄なことに加え、個人消費も息切れが予想され達成は危ぶまれている。

02年のGDPは実質で3.66%となったが、内訳をみると固定資本形成と輸出の伸びが若干ながらマイナスとなり、個人消費が成長を支えた形になっている。4Qの数字を見ると、頼みの個人消費は1.4%の伸びにとどまっている。

一方、固定資本形成の伸びは2桁になっている。短期の数字の動きで判断するのは危険をともなうが、確かに中国よりも安い人件費とインドネシア国民の親日ムードもあり、ぼちぼち日本企業の投資も増えつつある。

表 20−1 インドネシアの実質総国内支出の伸び率(前年同期・年比、単位%)  

           1998年 1999年  2000年  2001年 2002年 02年1Q 02年2Q 02年3Q 02年4Q
実質GDP      -13.1   0.8    4.9    3.46    3.66   2.4    3.8    3.9   3.82
民間消費       -6.2      4.6        3.6         2.32         4.72    6.6         5.9         4.9   1.4
固定資本形成   -33.0    -18.2      13.8        10.43       -0.19     -7.6       -4.5         2.1  11.5
輸出          11.2    -31.8       26.5         1.90      -1.24     -5.2      -7.0         1.6   4.4 

資料出所:月刊「海外経済データ」(内閣府)2003年3月号より作成

なお、03年の成長見通しについてはESCAPは当初は5.4%と見込んでいた。しかし、最近の動きとして、SARSの影響もあり、3.4%程度であろうというのが現地駐在国連機関(UNSFIR=the United Nations Support Facility for Indonesian Recovery)の見方である(4月19日, Bisnis Indonesia)

 

E03-2. 外国直接投資、03年上期には44%増、実態はマイナス(03年7月12日)

03年1〜6月の外国直接投資(FDI)は承認ベースで43.7億ドルとなり、前年同時期の30.4億ドルを44%上回った。 投資環境が良くないなどといわれる中で、一見かなり投資は戻ってきているように見受けられる。

しかし、BKPM(投資調整庁)が明らかにしたところによると、実態は逆であり、新規投資は−34%、能力拡大は−27%であり、実質的には大きな減少になっている。

なぜ、見掛の数字が増加したかというと、既に操業している国内資本の企業が、税金逃れのため「外資に衣替え」したに過ぎないという。最大の投資国はモーリシアスである。 これにはIndosatに出資した、シンガポールの国営持株会社の分も入っている。

それにしても、あきれ果てた話しである。

一方、国内資本の投資は8.17兆ル(996百万ドル)ピアと前年同期の12.77兆ルピアに比べ−36%と大幅に落ち込んだ。 これは国内の華人系資本が国内市場において大きなビジネス・チャンスを見出せない状況を反映しているものと思われる。

また、下表に見られるように、2002年は前年比−35%と大きく落ち込んでいる。今年はさらに悪化しているというのが実態である。

表-4 インドネシアのFDI承認ベース(単位:100万ドル)

  1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003・上期
投資件数 790 1,035 1,164 1,508 1,333 1,135 497
投資金額 33,832.5 13,563.2 10,890.6 15,143.1 15,055.9 9,774.1 4,370

資料出所:ジャカルタ・ジャパン・クラブ「インドネシアの概況2003」他

http://www.jjc.or.id 参照(役に立つ経済情報などが満載されています)

 

E03-3. 03年3Qの成長率は4.14%(03年10月13日)

インドネシア銀行が10月8日に発表した03年3Qの実質GDP成長率(速報)は前年同期比4.14%であった。この分で行けば年間成長は予測値の3.5〜4.0%という数字は実現できそうであると当局者は語った。

8月の輸出は49.7億ドルと7月の実績52.5億ドルを下回った。これはノン・ミガス(石油・天然ガス以外の商品)の輸出が37.2億ドルと7月の42.5億ドルから12.5%も減少したためである。

しかし、この8月の実績は前年同月に比べ0.86%上昇しているので、特に問題はないと中央統計局のスダルティ・スルバキ局長は述べている。

1〜8月の輸出の累計は406.6億ドルで前年同期比8.75%アップである。このうちノン・ミガスの輸出は297.7億ドルで5.7%増であった。

しかし4%成長ではインドネシアの場合、失業者の減少にはつながらない。

毎年250万人の新規労働力が市場に参入してくるため、最低でも年率6%の経済成長が必要であるという。

インドネシア政府は6%成長を達成するだけの財政的手段を持ち合わせていない。金利は8.59%とかってない低水準に達している。悲しいことにこれだけが支えである。

特に問題なのは投資の不足で、外資の参入を促進するような「投資環境の整備」についてメガワティ政権は全くといっていいほど無策であった。

治安の確保、汚職の減少、法の整備と執行(裁判官の浄化を含め)など進歩は少しは見られたが、満足すべきレベルとは程遠い。特に悪徳政治家、軍人、警察、役人の跋扈を許していることが最大の問題であろう。

ただし、インドネシア経済は暗いニュースばかりではない。金利の低下も影響してか、このところ株式市場は活況を呈しており、先週末(10月10日)のジャカルタ証券市場の指数の終値は644.82ポイントであった。

これは1ヶ月前の572.85ポイントと比べ約72ポイント(12.6%)の上昇である。一方、「好況に沸く」と自称するバンコク市場は582.15ポイントで、1ヶ月前の560.57ポイントに比べ、3.8%の上昇にしか過ぎない。

その差を説明することは難しいが、インドネシアの場合はルピアの下落が通貨危機以来タイなどに比べ大きすぎ、国際的な常識で見たらインドネシアの株価が以上に低すぎたためであろう。

とにかく、インドネシア経済は悪いなりに、安定に向かっていることだけは確かである。クンチョロ・ヤクティ経済調整相以下クイック・キアンギー企画庁長官、ラクサマナ国営企業担当相、リニ・スワンディ通産相など役者をそろえた効果であろう。

その点、長期不況に苦しむ日本の経済閣僚の質のお粗末さには暗澹たる気分にさせられる。経済政策の基本を銀行の再建などというあさっての方向におかれては景気は良くならない。

21世紀の日本経済においては民間銀行の果たすべき役割は極めて限られているのである。事実、今日現在も100兆円にのぼる預金の貸付先がなくて銀行はウロウロしているではないか?

一方、アメリカの主力銀行は国際市場で活躍しているのである。日本の銀行は国際市場で活躍できる人材すら極めて乏しい現実を再認識すべきである。

表3. アセアン4カ国と日本の通貨(対米ドル)

  インドネシア タイ マレーシア フィリピン   日本
  ルピア バーツ リンギ ペソ
95年平均 2,249 24.9 2.50 25.7 94.1
96年平均 2,340 25.4 2.52 26.2 108.8
97年7月1日 2,432 24.7 2.53 26.4 114.8
98年1月23日 13,250 54.4 4.54 43.9 126.2
99年6月23日 6,750 35.7 3.80 37.7 122.1
02年3月21日 9,860 43.3 3.80 51.0 131.8
03年10月10日 8,378 39.2 3.80 54.7 108.3
03年10月29日 8,538 40.0 3.80 55.3 108.0
04年2月10日 8,395 38.9 3.80 55.9 105.4
04年7月1日 9,390 40.8 3.80 56.0 108.0

 

 

E03-4. ジャカルタの最低賃金は来年1月から671,550ルピア(79ドル)/月に(03年11月9日)

ジャカルタ地区の最低賃金は現行の631,000ルピア(74.2ドル)から40,000ルピア(6.3%)引きあげられて、671,000ルピア(約79ドル)となることが決定した。

これは、労組、使用者および行政府の3者からなる、ジャカルタ賃金・社会保障委員会の協議によるものである。

この賃金のなかには交通費と食事手当ては含まれていない。

実施時期は2004年1月1日かtらとなっているが、企業側は事情により1年間の実施延期が許されるという。

労働組合側はこの金額に不満で、最低722,356ルピア必要であると主張していた。

 

 

E03-5. 2003年の実質GDP成長率は4.1%(04年2月17日)

インドネシアの2003年の実質GDPの伸び率は4.1%であった。02年は3.69%であったから、少し改善されたといえよう。部門別には製造業が3.50%と前年の3.42%と伸び率としてはほとんど変わらない。

運輸・通信が10.66%と大きな伸びを示した。これは携帯電話の爆発的普及が寄与しているものと見てよいであろう。建設が6.71%とやや堅調な伸びを示している。

石油関係の伸びはさほど良くない。これはデフレーターの影響があるかも知れない。ノン・ミガス(石油・天然ガスを除く)のGDPは4.6%ということである。

いずれにしても、GDPの成長が7〜8%はないと失業の改善にはつながっていかない。

表61 インドネシアの実質GDP(93年価格、兆ルピア、%)

  2001 2002 2003  02/01  03/02
農林水産 67.32 68.67 70.37 2.02 2.48
鉱業 39.40 40.40 40.59 2.56 0.45
製造業   108.72 111.98 115.90 3.42 3.50
電気・ガス・水道 7.11 7.54 8.05 6.05 6.76
建設 24.31 25.49 27.20 4.90 6.71
商業・レストラン 65.82 68.33 70.89 3.83 3.75
運輸・通信 31.34 33.83 37.48 8.01 10.66
金融・不動産所有 28.93 30.59 32.51 5.74 6.28
サービス 39.25 40.08 41.46 2.11 3.44
GDP 411.75 426.94 444.45 3.69 4.10
ノン ・ミガスGDP 379.02   394.53   412.70 4.09 4.60

資料出所;http://www.bps.gp.id/sector/nra/gdp/中央統計局

 

E04. 04年のインドネシア経済 

E04-1. 04年1Q(1-3月)のGDP成長率は4.46%(04年5月25日)

インドネシア中央統計局が5月24日発表した、04年1Qの成長率は4.46%(速報)であった。鉱業部門がマイナス成長になった以外は各部門ともそれなりの成長を遂げた。

農業が1.53%、製造業が5.46%、建設業が7.31%、商業・ホテル・レストランが6.13%、運輸・通信が13.81%、金融が4.85%、その他サービスが4.37%であった。また、民間消費が5.71%であり、これが経済を支える形になっている。

投資は前年比4.24%であったが、前年1Qの水準が低かったので、たいしたことはない。また、輸出は0.85%という低い伸びにとどまった。これは中国の安値輸出に市場を奪われた結果であるという。

また、3月にはインドネシアの歴史始まって以来、初めて石油(原油)の純輸入国になった。これはインドネシアの石油開発の遅れによるものであり、消費の増加にすら追いつかなくなっている。

ただし、インドネシアでは石油化学プラントが比較的多く、石油製品の生産と輸出が増えていることが予想される。

E04-2. 04年1-6月の外資の直接投資は34%のマイナス(04年7月16日)

BPKM(国民投資調整委員会)の発表によれば、インドネシアに対する外資の直接投資(FDI)は04年1−6月の合計で30.5億ドル(認可ベース)と前年同期比-34%と大きく落ち込んだ。

しかしながら既存プロジェクトの拡張工事で実額としてはかなりカバーされているという。これについては公式数字は発表されていないがコンパスによると拡張工事は昨年上期は5.84億ドルだったものが今年上期は10.5億ドルと倍近苦になっているとのことである。

一方、国内資本による投資は15兆7,700億ルピア(17.5億ドル)、前年比52%増と大きく伸びた。

インドネシアの経済の発展を支える輸出産業は外資が入ってこないと飛躍が期待できず、早期の回復が望まれるが、今年は大統領選挙の最終結果が出るのは9月までかかるため、今後大幅な増加はありえない。

しかし、SBY、メガワティの誰が大統領になっても、かなり政治面では落ち着きを示す可能性が高い。4月の国会議員選挙と7月の第1回大統領選挙とも比較的平穏に行われたことは今後のインドネシアの政治的安定を示唆するものであろう。

現在のインドネシアの経済は意外にも好調な部類に属する。その理由の1つは「中国特需」の恩恵を多少なりとも受けていることと、無視できないのは消費野好調である。

なぜ消費が好調かといえば、選挙戦で多額の現金がばら撒かれたことにもよるが、消費者金融の拡大によって、家電製品や自動車などの耐久消費財が良くうれているということである。

いずれにせよ、インドネシアの経済の本格的な回復は2005年以降にになるであろう。

E04-3. 04年1-6月の自動車販売は27.7%増(04年7月19日)

GAIKINDO(インドネシア自動車産業連盟)の発表によると今年の1−6月期の自動車販売は輸出を含め、242,784台と昨年同期比+27.66%と極めて好調に推移している。

04年6月だけで見ると46,646台と前年同月比37.54%に達している。

過去数年の自動車販売(輸出を含む)台数は以下の通りである。

 1997年  1998年  1999年  2000年  2001年  2002年  2003年
392,203 68,413 125,653 345,653 339,607 360,081 391,853

⇒スズキ自動車はインドネシアをAPV車の生産基地に(04年7月31日)

スズキ自動車はインドネシアの工場をAPV(多目的自動車)の生産基地にし、インドネシアから世界に輸出していく態勢をを採ると発表した。

ホンダも既に過去2年間で1億ドルの投資を行い、Honda Streamを近隣諸国に輸出していく態勢を整えつつあるとしている。

韓国の現代自動車のみはインドネシアの生産拡大をしばらく延期すると発表した。理由は明らかにされていない。

東南アジアの自動車産業はタイの躍進が目立つが、インドネシアも人口2億3千万人を有する大国であり、徐々に自動車産業が育っていくものと考えられる。

E04-4. 04年2Qの成長率は4.3%(04年8月20日)

中央統計局の発表によれば04年2Q(40−月)のインドネシアの実質GDP成長率は前年同期比4.3%となった。国内総支出の69%を占める民間消費が5.3%伸びたのが最大の要因であるという。

 

E04-5. 意外に悪くないインドネシア経済(04年10月19日)

9月の大統領選挙は現職のメガワティ大統領の惨敗に終わったが、メガワティ政権の末期の経済状態は意外に悪くはなかったことが明らかになってきた。

GDPの数字は04年3Qも4%台であろうが、外資の投資認可実績や自動車販売や携帯電話の伸びなどにはかなりの見るべきものがある。

海外からの直接投資(FDI)は9月だけで42.4億ドル(承認ベース)に達し、04年1−9月では79.9億ドルであった。これは前年同期比24%増であった。

これはSBY(ユドヨノ)が大統領に勝ちそうだから増えたという見方もあるが、承認には数ヶ月を要することを考えれば、むしろインドネシア経済の全体的な安定化傾向が買われたと見るほうが自然であろう。

また人件費も最低賃金で月79ドル(ジャカルタ)であり、中国よりはかなり安い。インドネシアでも熟練工は育つし、仕事も熱心にやる。ただし、業種内容は化学や薬品といったものが多いそうである。

国内投資は04年1−9月で25兆1,300億ルピア(3,015億円)で前年同期比44%増であった。

自動車販売はインドネシア自動車産業連盟(GAIKINDO)の調べによれば04年1-9月の国内販売台数は348,647台に達し、前年同期比で29.8%ッ増である。

GAIKINDOの公式04年販売見込みは42万台であるが、別の調査機関の見方では46.5万台には達するということである。月割計算でも46万台くらいは優にいきそうである。

PT. Toyota Astra Motor(TAM)は1−9月の販売は99,798台と前年同期比30.3%増となった。三菱66,888台、スズキ58,613台、ダイハツ34,350台、ホンダ34,290台であった。

ただし、ホンダは最近急速に販売を伸ばしており、9月だけで5,600台販売したということである。ホンダはタイについでインドネシアでも生産を増やしていく方針であるという。

最近インドネシアで目立つのは携帯電話の急増である。国営のインドネシア・テレコム社は05年には10兆ルピア(1,200億円)の大型投資を行う計画であり、その半分は携帯電話関連の投資である。

同社の04年の売り上げは33.7兆ルピア(前年比24%増)に達するみこみであり、さらに05年には40.6兆ルピア(20.5%増)を見込んでいる。

テレコム社の子会社のTelkomsel社は携帯電話は04年6月末には1,240万台契約しており、1年前の770万台から比べると61%増である。同社のインドネシア国内シェアは52%であるという。(ということは全国で約2400万台近くの普及台数があるということになる)。

1つの国民経済で自動車や携帯電話といった目玉成長製品があると全体的に活況感が出てくるものである。インドネシアは中国の5分の1弱の人口規模であるが、これからの発展は大いに期待できるであろう。問題は政治である。

 

E04-6. 04年3Qの成長率は5.03%(04年11月27日)

インドネシア中央統計局が11月26日に発表した04年3Qの実質GDP成長率は前年同期比5.03%であった。

下の表に見るとおり、インドネシアでは従来最も得意の産業分野であった鉱業、すなわち石油・天然ガス・非鉄金属などがさっぱりである。前年同期比マイナス5.96%である。

それに反して、サービス部門が概して好調である。携帯電話の爆発的普及により運輸・通信部門が実に14.19%と2桁の伸びを示した。商業、建設も好調であった。

製造業は5.28%とさほど高い伸びではない。これは過去の設備投資が少なかったためである。

石油。天然ガスを除くGDPという珍しい数字も発表されているが、それは5.96%と比較的高い数字である。逆に言えば石油・天然ガスがインドネシア経済の足を引っ張っていることになる。その理由は、ここ数年の開発が足りなかったためである。

最近のインドネシアは石油の純輸入国になっている(天然ガスは別)。

GDE(国内総支出)でみると、民間消費が5.09%増と堅調である。固定資産形成が13.09%と高いのは不動産投資に支えられていると見ることができる。製造業の設備投資もやや復調の兆しが見られる。

輸出が伸びたのは国際的な石油価格の異常な上昇によるところが大きい。インドネシアは石油の輸入国にもなっているので、輸入も大きくなっている。

政府消費は上期に集中して行われたものとみられる。3Qではマイナスになっている。

 

表72-1 インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDP伸び率(単位;%)

  ’04年3Q対2Q比 04年3Q対前年比 04年1-9月前年比
農林水産業 7.11 2.39 3.23
鉱業 0.67 -5.96 -5.48
製造業 1.87 5.28 5.58
電気・ガス・水道 2.87 3.40 4.60
建設 4.03 8.89 8.15
商業・ホテル・レストラン 2.94 9.44 7.96
運輸・通信 5.32 14.19 13.64
金融 2.87 6.67 5.44
その他 0.71 4.54 4.68
実質GDP 3.05 5.03 4.89
石油・天然ガスを除く 3.07 5.96 5.70

 

表72-2 インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDE伸び率(単位;%)

  ’04年3Q対2Q比 04年3Q対前年比 04年1-9月前年比
民間消費 0.99 5.09 5.33
政府消費 -1.04 -2.74 3.77
総資本形成 5.13 13.09 11.32
在庫増減 44.46 1.69 20.83
輸出 12.31 19.85 8.26
輸入 9.75 29.87 24.15
実質GDP 3.05 5.03 4.89

インドネシア語ではあるが10ページのプレス・リリースがhttp://www.bps.go.idで見ることができる。内容的にはともかく、これだけのものは他のアジア諸国では出していない。

(04年12月2日追記)

なお、実額ベースの輸出は04年10月には72.6億ドルに達し、9月(71.5億ドル)比1.5%像であった。また、04年1−10月累計では585.3億ドルに達した。03年1−10月は508.6億ドルであったので、前年同期比15.1%増加したことになる。

 

表 72-3、インドネシアの貿易収支(単位;億ドル、%)

  04年10月 04年1−10月 03年1−10月 同左伸び率
輸出合計 72.6 585.3 508.6 15.1
 ミガス 14.0 128.7 114.2 12.7
 ノン・ミガス 58.6 456.6 394.4 15.8
輸入合計 43.2 378.0 268.7 40.6
 ミガス 10.5 92.9 63.3 46.8
 ノン・ミガス 32.7 285.1 205.4 38.8
貿易黒字 29.4 207.3 239.9 -13.6

(注)ミガス=石油・天然ガス、ノン・ミガス=それ以外のもの。

(資料出所)原典は中央統計局(http://www.bisnis.com/から引用)

 

E04-7. 04年の自動車販売は前年比36.4%増(05年1月15日)

インドネシア自動車工業会(GAIKINDO)の集計によると04年のインドネシアの国内自動車販売は483,317台と昨年の354,331台にくらべ36.4%増加となった。

また、同工業会は05年は10%の伸びは期待でき、52万台は達成できると見ている。

インドネシアの自動車販売は月を追うごとに好調になっており、04年11月のインドネシアの国内自動車販売は35,162台と03年11月の21,683台にくらべ62%増加となった。

アストラ・インターナショナル社だけをみると、16,093台を販売し、03年11月の8,879台にくらべると、実に81%の増加であった。これにはインドネシアの経済が上向きであることと、低金利が影響しているものとみられる。

なお、04年1−11月の販売累計は434,743台と昨年の同時期の326,225台に対し33%増である。

アストラ・インターナショナル社の04年1−11月の国内販売は193,999台であり、前年同期の136,098台に比べ43%増である。

ちなみに、フィリピンは自動車販売が不振で04年は03年を4.6%下回る88,003台であった。ただし、GDP についてはフィリピンはインドネシアよりも好調であるという。

 

E04-8. 04年の輸出は697億ドルで新記録(05年2月4日)

インドネシア中央統計局は異例の速さで2004年の輸出実績(速報)を発表した。それによると04年の輸出総額は697.1億ドルで03年実績を11.49%上回った。パーム油、電機製品、衣類、石炭、錫などの伸びが大きかったという。

これらいわゆるノン・ミガス(非石油・天然ガス)製品は輸出総額は541.3億ドルに達し、前年比11%増加し、輸出全体の78%に当たる。

特に注目すべきはパーム油という食料油、石鹸、工業用潤滑油(冷延鋼板などに使われる)など多様な用途を持つ一種のヤシ油が爆発的に売れたということである。向け先は中国とインドが多かったという。

パーム油の最大の輸出国はマレーシアであるがインドネシアはそれに次ぐ。この2カ国でパーム油の世界輸出量の88%を占め、パーム油の国際価格を事実上支配できる。

製造業製品の輸出は12.02%、鉱業品の輸出は9.18%伸びた。石油・天然ガス(ミガス)の輸出は14.18%伸び、155.9億ドルに達した。

一方輸入は40%伸び、461.8億ドルに達した。特に石油の伸びが大きく52.36%伸び、116.3億ドルに達した。これは原油価格の高騰が影響したことはいうまでもない。

ノン・ミガス製品の輸入は35.74%伸びて、345.5億ドルに達した。これは設備投資が活発化したことによって機械設備といった資本財や原料、中間材料などの伸びが大きかったことによる。

 

E04-9. ジャカルタの最低賃金は711,843ルピア/月に(04年11月6日)

インドネシアでは最低賃金制度が施行されているが、2005年からはジャカルタにおいては工場労働者の月額最低賃金が現行の671,550ルピアから約40,000ルピア(+6%)引き上げられて711,843ルピア(約78ドル)になることが内定した。

この水準は中国の沿海部と比べるとほぼ60%程度であろう。2003年のインフレ率は5.78%(公式数字)であり、ほぼそれに見合った数字である。各年の最低賃金は以下の通りである。

  月額最低賃金(Rp) 対前年比% インフレ率%
2000 231,000 16.7 9.35
2001 344,250 49.0 12.55
2002 591,000 71.7 9.08
2003 631,000 6.8 5.78
2004 671,550 6.4 6.50
2005予定 711,843 6.0  

2005年の数字については労使双方の委員により話し合いが行われていたが決着がつかず、労働側委員が会議をボイコットしたため、経営者側委員のみの決定であるが、スティヨソ知事はこの数字を公式なものとして発表する近々予定である。

労働者側委員の主張はジャカルタの最低生活費759,953ルピア(政府機関の調査)を下回るので、この水準にまで引き上げるべしということである。ただし、通常は残業手当などを含めればこの数字はカバーされる。

この6%の上昇率であれば、2005年に予想される石油製品(特に調理用の軽油)の大幅引き上げがあり、一般庶民にとっては苦しい数字であろう。ただし、最低賃金をきちんと守っているのは日系企業などいわばお行儀のよい会社に限られるようである。

 

E05. 2005年のインドネシア経済

E05-1. 05年1Qの投資は173%増(05年4月16日)

インドネシアの投資調整委員会(BKPM)によれば05年1−3月の非石油天然ガス(ノンミガス)部門のFDI(外国直接投資)投資額(承認ベース)は42億8000万ドルと前年同期比173%の増加となった。

新規投資は285件、26億9000万ドルで04年の225件4億5400万ドルを大きく上回った。

増強工事は81件で6億8450万ドルで04年同期の67件、6億9900万ドルとほぼ同水準であった。

また、国内資本投資からFDIに切り替わったものが37件8億9900万ドルあった。同じカテゴリーのものは04年同期には20件、3億1000万ドルであった。

問題は新規投資の中身であるが、電機、機械関係は17件とさほど多くなく、繊維が20件あった。大半が流通・サービス部門である。金額の内訳は発表されていない。

製造業部門の投資が増えないと輸出増加にはつながらないが、外資からの投資が増えてくること自体インドネシアにとっては歓迎すべきことには違いない。その背景としては昨年10月に発足したSBY政権の期待感もあるし、インドネシアの人件費が既に中国以下になっていることも大きな要素である。

国内資本の投資は9兆800億ルピア(1ドル=9400ルピア)と昨年同期の7兆8200億ルピアからみると156%の増加である。

 

E05-2. ルピア危機の再現?(05年4月29日)

インドネシアでは4月に入ってから株式市場の低迷とルピア安が続いているが、ここ数日ようやく鎮静化の動きを示している。

発端は石油公社プルタミナが原油を輸入するため、市場から直接ドルを調達(1日平均5千万ドル)したのが原因と見られている。現在、インドネシアは350億ドルの外貨準備があり、中央銀行はプルタミナに対し今後はインドネシア銀行(中央銀行)から外貨を購入するように指示をした。

プルタミナが自分で外貨を買うことについては、そこで何か不正がおこなわれているのではないかという不信感ももたれているという。プルタミナの過去の汚職に次ぐ汚職の歴史を見れば、そうかもしれないと思うが、今回は実態はわからない。

確かに、ルピアは1ドル=9,500ルピア前後でしばらくは安定してきたが、4月25日(月)には約2%も下落した。また、株式市場も4月13日に1116.67と最近のピークを記録した後に4月25日は1019.88と9%近く下落している。バンコクの株価指数は5%程度の下げにとどまっている。

しかし、3月1日の指数から見ると4月28日の水準はバンコクは11%も下げているが、ジャカルタは5%の下げにとどまっている。為替相場を見ると3月1日の水準から見るとインドネシアもタイも3.3%程度の対ドル下落であるが、ここ数日はルピアの下げが大きかった。

このような不安定な動きに対してSBY大統領はジャカルタ証券取引所に4月27日(水)に自ら出かけていって、「不安の沈静化」に努めている。この辺が腰の重いメガワティとは違うところである。

ジャカルタの株価や通貨が下げたのは、米国の株価の動きや石油の価格問題やインフレ懸念もあるが、何といってもマンディリ銀行のスキャンダルのニュース(4月21日の記事参照)が大きく作用している。汚職退治はインドネシア経済にとっても最重要課題であることが判る。

なお、4月28日付けのフィナンシャル・タイムズ(インターネット版)によればインドネシア銀行は最近のルピア安とインフレ対策として若干の金利引き上げを検討しているという。現在のSBI(インドネシア銀行債券=国債に相当する)のレートは7.7%であるが、それを0.15〜0.20引き上げる模様である。

表E05-2、ルピアと株価指数・タイとの比較

ルピア/ドル   株価指数  タイ・バーツ  タイ株価指数
3月1日 9,273 1093.28 38.27 738.75
4月1日 9,468 1095.07 39.18 695.83
4月7日 9,490 1111.62 39.65 677.97
4月13日 9,487 1116.67 39.52 698.28
4月20日 9,590 1070.95 39.56 684.19
4月25日 9,750 1019.88 39.41 664.47
4月27日 9,588 1032.22 39.55 664.63
4月28日 9,580 1038.36 39.58 659.24

 

E05-3. 05年の成長率は5.5%の見通し、経企庁長官(05年5月4日)

スリ・ムルヤニ・インドラワティ(Sri Mulyani Indrawati)経済企画庁長官はインドネシア経済は目標とする年率5.5%の成長路線に乗っており、今年は比較的順調に推移すると言う見通しをAP記者との会見で語った。これはASEANの中では最も高い数字になる可能性がある。

04年末の失業率は9.9%であったが、07年には5.5%にまで低下させることが政策目標である。そのために、政府は予算措置を初めさまざまな施策を講じている。

確かに、インドネシアの05年1Qの輸出は197.6億ドル=前年同期比31.39%とすこぶる好調である。ノンミガス(非石油天然ガス)製品の輸出は154.3億ドルで04年1Qの実績115億ドルを34.2%上回る伸びである。

ところがその内容をみてみると、非石油天然ガスと入ってもそれ以外の鉱物品(石炭やマンガン、銅、アルミなどの非鉄)の輸出が125.7%も増加してるのである。これは原材料価格の国際的急騰によるものであり、インドネシアの努力の賜物とはいいがたい。

それ以外にはパーム油や天然ゴムなども比較的好調を維持していると思われるが、肝心のエレクトロニクス等の伸びはさほど大きくないものと推測される。

インドネシアの04年の輸出は697.1億ドルと過去最高を記録し、05年も10%以上の増加は見込まれる。

(WSJ4月27日,ジャカルタポスト5月4日記事参照)

 

E05-3-1. 05年1Qの成長率は6.35%(05年5月17日)

インドネシア経済は日本同様思いがけず好調の様子で6.35%の伸び(実績見込み)となったとのことである。これは大方の予想(5.5%前後)を上回るものである。おそらく東南アジア諸国では最高の伸び率ではないかと思われる。

好調の原因は設備投資が昨年を可なり上回り、外国直接投資が05年1〜4月実績で49億ドル(認可ベース)と前年同期の25.9億ドルを89%も上回っている。

その要因としては発足後半年間のSBY政権が一応汚職退治にまじめに取り組んでいる(何時まで続くかは未知数ではあるが)ことや、軍営企業も2年以内に全てなくすという従来には無い本格的な改革路線を打ち出している。

また、今までであったら闇から闇に葬り去られていた「ムニール暗殺事件」は下手人が軍情報部関係者という容疑がもたれるなか政府の特別調査チームを編成して真相解明に当たっているなど従来の政権に見られない点が注目される。 (SBYの本音は別かも知れないが)

しかし、より本質的には人口2億2-3千万人を擁する大国であり、労賃も中国を下回り、日系企業なども操業実績が古いとことが多く、中国の次はインドネシアだという見直し気分が出てきているところが大きい。

国内実質総支出でみると、設備投資 の伸びが14.98%、輸出が13.39%、輸入が15.38%、民間消費が3.22%、政府消費が-8.52%であった。 特に、設備投資(総固定資本形成)が04年2Qから2桁の伸びを示している。

部門別では運輸・通信部門が12.8%で好調である。これは携帯電話の爆発的普及を反映したものである。また、建設部門の伸びが製造業のそれを上回っている。ジャカルタでは不動産への過剰投資が危惧され始めている。

 

E05-3-2. 05年1-5月のFDIは30億ドルに達する(05年6月22日)

インドネシアの海外からの直接投資(FDI=Foreign Direct Investment)は承認ベースで1〜5月の5ヶ月間で321件、30億ドルに達したと、BKPM(投資調整委員会)のルトフィ(Lutfie)委員長は述べた。

一方、国内投資のBKPM承認額(何らかの投資優遇措置を受けるもの)は89件、6.7兆ルピア(6億9791万ドル)に達した。

 

E05-3-3. 05年2Qの成長率は5.54%にダウン(05年8月16日)

インドネシア統計局の発表によると、05年2Qの成長率は1Q(6.19%に下方修正)にくらべややダウンして5.54%となった。石油価格の上昇により、いまや石油の純輸入国になったインドネシアはやはり経済的な打撃が少なくない。

加えて、通貨のルピア安を食い止めるべく、インドネシア銀行(BI)は今年はじめから約50億ドルのルピア買いおこなったという。また、BIは金利を8.5%から8.75%に引き上げるなど引き締め基調の政策を採っているととのことである。

インドネシアの景気は目下のところさほど悪いわけではない。どちらかというとミニ不動産バブルといった雰囲気である。建設部門の7.44%よいう数字がそれを物語っている。

注目すべきあ運輸・通信の13.91%という高い伸び率である。これは携帯電話の需要が依然として活発であることを示している。

自動車の販売も好調で、05年1〜7月は345,167台が売れた。これは前年同期比30.4%の伸びである。ただし、インドネシア政府は石油消費を抑制するために、自動車に物品税を課すことを検討中であるという。

問題は輸出の伸び率が鈍化してきていることである。05年1Qは13.4%であったが2Qには7.29%に落ちてきている。これはインドネシアがエレクトロニクス部門が弱いことと、石油の輸出余力がなくなったためである。

鉱業部門の-2.87%がそれを物語っている。石油価格の上昇はインドネシアにとってはマイナスに作用しているのである。しかし、石油の埋蔵量はそこそこあり、開発が進めば当然若干は改善される。石油公社プルタミナとエクソンモービルとの紛争など早く解決して増産体制を強化しないと苦しい状況は続く。

 

表E05-3-1インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDP伸び率(単位;%)

  05年1Q前年比 05年2Q前年比
農林水産業 1.63 -0.33
鉱業 1.04 -2.87
製造業 7.05 6.65
電気・ガス・水道 7.81 7.59
建設 7.32 7.44
商業・ホテル・レストラン 9.96 9.48
運輸・通信 13.12 13.91
金融 6.51 9.97
その他 4.90 4.36
実質GDP 6.19 5.54
石油・天然ガスを除く 7.29 6.75

表E05-3-2 インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDE伸び率(単位;%)

  ’04/1Q 04/2Q 04/3Q 04/4Q 05/1Q 05/2Q
民間消費 5.7 5.3 5.0 3.8 3.2 3.46
政府消費 10.1 4.7 -3.8 -1.3 -8.5 -5.61
総資本形成 2.5 14.7 20.5 25.4 15.0 13.21
輸出 1.2 2.0 17.1 13.7 13.4 7.29
輸入 15.3 25.2 32.0 27.1 15.4 10.08
実質GDP 4.4 4.4 5.1 6.7 6.3 5.54
除く・ミガス 5.1 5.4 6.2 8.0 7.3 6.75

04/1Q〜05/1Qの数字は未修正です。

 

E05-3-4. ルピア、株価ともに大暴落(05年8月29日)

最近の原油価格高騰によって、石油の純輸入国に転じたインドネシアは通貨のルピアと株式市場は下落傾向にあったが、ついに8月29日(月)に投機筋からの売りがはいり、通貨ルピアは1ドル10,840ルピア(前週末10,390ルピア)と4.4%も下落した。

これは2001年11月6日の1ドル=10,835ルピア以来の安値である。

同時に株式市場も売りが殺到し、8月29日の終値は994.77と前週末の1048.87から5.4%も暴落した。ジャカルタ証券取引所指数が1,000ポイントを切ったのは04年12月27日の997.52以来の8ヶ月振りのことである。

為替と株の安値はこの先どこで止まるかは予想も付かないが、1ドル=10,500ルピアを超えることはないというのが昨日までの銀行筋の見方であり、おそらく11,000ルピアあたりで止まる可能性は高いと見られる。

株式も、企業業績から見る限り、さほど悪材料は見当たらず、早晩、反発が予想される。このままインドネシア経済が1997.98年のような危機状態に突入することはないであろうが、政策対応いかんによっては混乱は長引く可能性もある。

問題はスシロ・バンバン・ユドヨノ(SBY)政権の経済閣僚のトップのユフス・カラ副大統領やアブリザル・バクリ経済調整相ともに政商的ビジネスマンであり、こういう場合の対処方法についてはほとんど知識・経験がないことである。

その点、メガワティ政権時代のクンチョロ・ヤクティ経済調整相やクイック・キアンギー経済企画担当相やラクサマナ・スカルディ国営企業担当相といった場数を踏んだ切れ者エコノミスト集団とは比べ物にならない。

経済閣僚チームの入れ替えについてはここ数日、ジャカルタで話題になっている。

 

⇒SBY曰く「金利は上げるが、石油価格は10月以降に考える」(05年9月1日)

インドネシア銀行(中央銀行)はルピアの暴落を防ぐために、8月30日にとりあえず基準金利を8.75%から9.5%へと0.75%引き上げた。

「これによって、市中銀行の貸出金利は16%位になるだろう。当面は、新たな設備投資にはブレーキがかかることは間違いない」とヒダヤトKADIN(インドネシア商工会議所)会頭は語った。

実際にはバブル的様相を呈しているインドネシアの「不動産ブーム」に水をさすことになりかねない。不動産業者が倒産することになれば、インドネシア経済はさらに混乱を増すことは確かであり、注意を要する。

8月30日の朝方には一時、1ドル=11,800ルピアまで跳ね上がったが、この措置によって、昼ごろには1ドル=11,000ルピアまで落ち付き、夕方には1ドル=10,525ルピアまで下がり、8月31日にはさらに10,250ルピアへと落着きをみせた。(上の表参照, E05-3-5に移動

日本政府はインドネシアへのスワップ枠を60億ドルにまで拡大するということをいち早く公表したのもルピアの安定化には「好影響」を与えたものと思われる。

ルピア暴落の背景は一義的には原油価格の1バーレル=70ドルを超す、異常な高騰によるものと考えられ。さらに、インドネシアでは石油燃料に対する「補助金」が財政収入の20%にも当たることから、ルピアが売られたと考えられている。

実際、補助金付き石油燃料は国際的に見て異常に安いことから下の表参照、、「密輸出」が後を絶たず、最近でもバタム島から900トンの小型タンカーで密輸を試みた3人組が逮捕されている。

石油製品の補助金をなくせば、ずべてがスッキリすることは目にみえており、国際的圧力がかかっているが、1998年にスハルト政権が崩壊した直接のきっかけは「石油製品」の値上げに伴う暴動によるものであったため、国民の反発を恐れて、インドネシア政府としても簡単には値上げに踏み切れない。

SBY大統領は05年3月に値上げした際に、「年内には再値上げをしない」と約束した手前、値上げの時期をできるだけ先延ばししたいことは確かであり、とりあえず「10月までは様子を見る」ことにすると言明した。

⇒10月1日に平均126%の値上げ。

(参考)

アジア諸国の石油燃料価格(1ドル/リッター)

インドネシアの赤字は05年10月1日値上げ後

  ガソリン ディーゼル
インドネシ(旧) 0.24 0.22
      (新) 0.45 0.43
シンガポール 1.00 0.70
マレーシア 0.43 0.34
タイ 0.62 0.55
中国 0.51 0.50

資料出所;WSJインターネット版05年8月31日

 

E05-3-5.インドネシア銀行金利を11%に(05年10月5日)

インドネシア銀行(中央銀行)は10月4日(火)基準金利を10%から11%に引き上げた。これは10月1日の石油製品価格の大幅引き上げに伴う、インフレ率の上昇(年率12%を予想)を抑制することが目的であるという。

8月30日に0.75%引き上げ9.5%とし、ついで9月6日にはさらに0.5%引き上げ10.0%としたばかりである。

これによって、短期的には「景気を冷やす」効果があるが、それは一時的にはやむをえない措置であるといえよう。 インドネシア銀行幹部は石油値上げの影響が一巡して、物価が安定すれば金利水準は引き下げられるであろうと述べている。

インドネシア銀行総裁ブルハヌディン(Burhanuddin Abudllah)は10月の値上げによってインフレ率は一時的に2.25%から3%程度は上昇し、05年通年では(12月末には)12%程度の上昇になるであろうと述べている。

また、05年の経済成長率(実質GDP)は「設備投資と輸出への影響」が出てくるため当初の5.9%よりやや下がって5.7%程度になると語った。

しかし、石油製品値上げはバスや電力などの公共料金の値上げを伴い、可なり広範囲の物価上昇となる可能性がある。そうなると、個人消費への影響は避けられない。06年は成長が鈍化するといられるが、ブルハルディン総裁は5.9%は行くと強気である。

一方、バリ島爆破事件にもかかわらず、証券市場は活発で、通貨ルピアも安定している。これは石油製品の値上げがうまくいきつつあることが好感されたものと見られる。

表、E05-3-4、SBY政権発足以来の為替と株価

ルピア/米$  

株価指数

04年10月1日 9,149 835.91
05年1月3日 9,290   1000.88
05年3月4日 9,355 1103.01
05年7月1日 9,786 1138.99
05年8月3日 9765 1192.20
05年8月18日 9,963 1100.30
05年8月22日 10,004 1076.35
05年8月26日 10,390 1048.47
05年8月29日 10,840 994.77
05年8月30日 10,525 1039.82
05年8月31日 10,250 1050.09
05年10月3日 10,295 1083.41
05年10月4日 10,180 1101.17
05年10月5日 10,031 1104.06

 

E05-3-6. インフレ率17.9%に、金利12.25%に引き上げ(05年11月2日)

インドネシアの05年10月のインフレ率は前年同月比17.9%に上昇したものと推測される。これは10月1日に石油製品価格の大幅ひきあげ(上の項参照)にともない、バス料金、タクシー料金などいっせいに値上げがおこなわれたためである。

想定を上回るインフレ率の上昇(05年12月末で12%程度と予想)に驚いたインドネシア銀行(中央銀行)はインフレ抑制策として基準金利を1.25%引き上げ12.25%とした。

機敏な措置には違いないが、これほどまでに金利を引き上げると、企業の投資活動にも悪影響が出てくることは必至で、インドネシア経済の投資不足=供給力不足による慢性的インフレ体質=ハイコストエコノミーの原因がなかなか払拭されないであろう。

 

E05-3-7.2006年からジャカルタの最低賃金は819,100ルピアに(05年11月3日)

ジャカルタ行政府は2006年1月1日から当地で雇用される労働者の最低賃金は1ヶ月当たり819,100ルピア(約9500円)とすると発表した。これは現行の711,843ルピアの15%アップとなる。

10月にインフレ率が17.9%(上の記事参照)になっていることから、この上昇はほぼインフレ率に見合ったものであり、労働組合側はこれを不服として1,203,015ルピアへのアップを要求していた。

最低賃金の決め方は経営者協会、労働組合、ジャカルタ・労働局(Jakarta Manpower Agency)の3者からなるジャカルタ労働協議会で決定される。

ジャカルタでは現在、25,000社の企業に350万人が雇用されているといわれている。(ジャカルタ・ポスト、05年11月2日)

 

E05-3-8. 05年3Qの成長率は5.34%とまずまず(05年11月23日)

インドネシア中央統計局(http://www.bsp.go.id/)の発表によれば、05年3Q(7〜9月)の実質GDPの伸び率は5.34%と2Qの5.54%とほぼ同水準であった。

多少気になるのが、製造業の伸びが5.59%と2Qの6.65%より低くなっている点である。運輸・通信が依然として12.87%と高いのはインドネシアにおいては携帯電話が相変わらず「普及過程」にあることを物語っている。

輸出が、実質3.39%と急激に低下していることは問題である。工業製品、とりわけエレクトロニクス関連がインドネシアの場合は弱体であるkとが影響しているものと思われる。

内需では個人消費が4.43%と比較的好調を維持している(2Qは3.46%)。自動車の販売は好調に推移しており2004年483,000台であったのにたいし、05年は550,000台近くまでいく(13.8%増)可能性があるという。

固定資産形成は9.18%の伸びを示し、依然として好調である。このうち、不動産投資がどれくらいを占めるかは問題であり、この部門は既に飽和状態にあることは間違いない。

外国資本の直接投資は05年1―9月実績では76.4億ドルが実施されており、昨年の29.4億ドルを大きく上回っている。その内訳を見ると、運輸、倉庫、通信部門が最大で21.9億ドルであり、化学、薬品部門が10.9億ドル、建設部門が8.91億ドルである。

エレクトロニクスや機械部門はあまり増えている様子がないのが気がかりである。これらの部門の投資が増えないことにはインドネシアの輸出は今後あまり大きな伸びは期待できない。

05年3Qの投資承認金額(投資調整委員会のまとめ、内外資本合計)は139.5兆ルピア(約138億ドル)と前年同期比23%増である。その内訳は明らかにされていないが増える傾向にあることだけは窺える。

05年4Q以降の展望にについては、10月1日からの石油製品の大幅値上げと、ルピア防衛のための高金利政策(05年11月1日から12.25%)、金融引き締め政策は経済の足を引っ張ることは確実であり、一時的にせよ成長率は鈍化していくことが予想される。

 

表E05-3-5インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDP伸び率(単位;%)

 05年1Q  05年2Q  05年3Q 05年1Q-3Q
農林水産業 1.63 -0.33 1.64 1.72
鉱業 1.04 -2.87 -2.54 -0.82
製造業 7.05 6.65 5.59 5.85
電気・ガス・水道 7.81 7.59 9.78 8.83
建設 7.32 7.44 6.31 7.23
商業・ホテル・レストラン 9.96 9.48 7.88 9.24
運輸・通信 13.12 13.91 12.87 13.31
金融 6.51 9.97 9.07 8.41
その他 4.90 4.36 5.36 4.87
実質GDP 6.19 5.54 5.34 5.76
石油・天然ガスを除く 7.29 6.75 6.27 6.78

表E05-3-6 インドネシア4半期別実質(2000年価格)GDE伸び率(単位;%)

  ’04/1Q 04/2Q 04/3Q 04/4Q 05/1Q 05/2Q 05/3Q 05/1Q-3Q
民間消費 5.7 5.3 5.0 3.8 3.2 3.46 4.43 3.75
政府消費 10.1 4.7 -3.8 -1.3 -8.5 -5.61 16.15 0.62
総資本形成 2.5 14.7 20.5 25.4 15.0 13.21 9.18 12.38
輸出 1.2 2.0 17.1 13.7 13.4 7.29 3.39 9.50
輸入 15.3 25.2 32.0 27.1 15.4 10.08 9.29 14.06
実質GDP 4.4 4.4 5.1 6.7 6.3 5.54 5.35 5.76
除く・ミガス 5.1 5.4 6.2 8.0 7.3 6.75 6.27 6.78

04/1Q〜05/1Qの数字は未修正です。

 

E05-3-9. インドネシア銀行金利0.5%引き上げ12.75%に(05年12月8日)

インドネシア銀行(中央銀行)はインフレ抑制策として基準金利を11月1日より1.25%引き上げ12.25%としたばかりだが、再度インフレの高進を抑えるために0.5%引き上げ、12月6日(火)から12.75%とした。

インフレ率は10月1日の石油燃料の大幅引き上げ以降急上昇し、10月=17.89%、11月=18.38%となった。これはあくまで公式発表の数字であり、実態はおそらくもっと上昇しているであろうと思われる。

インドネシア銀行のブルハヌディン(Burhanuddin Abdullah)総裁は05年12月のインフレ率は18%になるであろうが、石油値上げが直接影響した部分と変動が多い食品を除く、コア・インフレーション(本来のインフレ率)は9.5%であろうと語った。

2006年は石油や食品の価格も落ち着くのでインフレ率は06年末には8%程度まで低下すると述べ、この12.75%という近年では異常な(スハルト時代には20〜30%は当たり前という感じであった)高金利は短期的な措置であることを示唆している。

通貨のルピアは金利引き上げを好感してか、急に上昇し、株価も上昇している。金利を上げると株価が下がるという「理論」はマユツバで、米国でも韓国でも金利が上がっても株価はむしろ上昇している(金利以外の要因もあるが)。インドネシアも然りである。

表、E05-3-7 05年12月初めの為替と株価

ルピア/米$  

株価指数

05年12月1日 10,032 1096.37
05年12月2日 9,999 1119.42
05年12月5日 9,953 1120.58
05年12月6日 9,925 1123.44
05年12月7日 9,840 1151.36

 

E05-3-10 来年のインドネシア経済は05年より成長鈍化か?(05年12月22日)

先ごろの内閣改造で経済企画庁長官から財務相に異動したスリ・ムルヤニ・インドワワティ女史は来年のインドネシア経済は05年の実績見込み5.5%を下回るであろうとの見通しを明らかにした。

05年は上の表E05-3-6インドネシア4半期別実質成長率で見るとおり、期を追うごとに鈍化しており、05年4Qは3Qの5.35%よりも下回ることは確実視されている。

というのは10月1日から石油製品の大幅な値上げがあり、インフレが高進し、それを抑えるために金利を上げるという政策が採られ、そのため05年4Qはかなり成長率が鈍ることが予想される。

その影響は06年の上期くらいまでは続くことが予想されるからである。インドネシア政府の公式見通し(2006年の政府予算の前提)は6.2%であったが、実際は5.3〜5.7%の間であろうとの見方をしている。

2006年度予算の前提数値はインフレ率8%、金利9.5%、為替1ドル=9,900ルピアであるが、為替を除き、インフレ率と金利はこの水準に納まることは難しい。

世界経済がどうなるかももちろん問題である。スリ・ムルヤニ財務相はこれらの外部要因の見通しについては触れていないが、05年より来年がよくなる見通しはあまり期待できない。

特にインドネシアの場合はエレクトロニクス関連や機械関連の輸出産業が周辺国に比べかなり立ち遅れているので、なかなか輸出で稼げない事情にある。