「 光を追いかけて 」


走る車の先に光
暗闇を抜け出すために
めざして走る

矢の様に後ろに飛ぶ光
流れる時間さえ追い越して

この先に未来がある
この先に輝く夢がある

激しいビートの曲かけて
走り抜ける
思考より速く

戸惑う隙もないほどに
ためらいなど打ち捨てて
前へ
前へ
沈黙も気にならないほどに

速く
速く
光を追いかけて


2004/12/08 18:41








「 この街で 」


この街で生きてきた
なりふりかまわず
後ろ見ることも忘れ

この街で生きてきた
あなたの背中だけを見つめ
儚い夢だけ追いかけて

夜になると
華やかな灯りが街を満たす
こころを満たす
それが表面だけのものと
わかっているのに

とらわれる
溶け込んでいく
自分を失いながら

この街で生きていく
これからも
隣にあなたがいてさえくれれば

なんとか歩いていけると思うから


2004/12/09 21:51








「 虚無 」


何もせず沈黙のうちに一日が終わる
何も
何もなかった
一日

喜ぶことも
憂うことも

こころが動かない時間は
虚しさだけが残る
瞳に光が無い
燃え尽きたわけでもないのに
煙さえ残っていない

そこに何かがあったなどと
それさえも感じさせない
空虚な時間

終わってしまう
あんなに陽が傾いて
空がフェイドアウトしてゆく

追いかけてみれば
何か見つかるだろうか
もう一度
この瞳に光を
消えてしまった炎を

どうぞ
わたしを見て
あなた


2004/12/10 15:16








「 かりもの 」


何気なく動かしている足
確実に違う場所へこの体を運んでくれる
意識したことなどなかったのに

はしゃいで飛び跳ねてみたり
何かを追いかけて走ってみたり

随分と働いてくれていたのに
感謝などしたことなかった

自分の体であって自分のものではない
生まれたときに借りてきたものだと
誰かに教えられたことがあった

壊れ始めてやっと
感謝しなければいけなかったこと
もっと大切にしなければいけなかったこと
気付く

人はみんな愚かだから
大切なものにかぎって
失い始めてやっと気付く

たとえば
愛にしても


2004/12/11 22:47








「 求めて 」


ぬくもりが欲しくて惹かれた
あなたの手のあたたかさに触れたくて
遠いところから
求めて求めてここまできた

虹の彼方が見たくて
確かめたくて
そこになにがあるのか
ただ確かめたくて

差し出されたあなたの手は
おおきくて
あたたかくて
ずっと握っていて欲しくて

随分いろいろ悩んだし
随分いろんなことを犠牲にした
それでもぬくもりが欲しくて
それくらい心が震えていたから

ぬくもりに包まれて
さらに夢を見る
虹の彼方を追いかける夢
あなたとふたり


2004/12/12 14:08








「 ともだち 」


外は冷たい風が吹いていても
心の中は
ほら
春の陽だまり

どんなに強い風が吹いてきても
ここだけは
ほら
こんなに静か

小さな
小さなふれあいだけど
寄せてくれるこころがあれば
強くなれる
笑顔になれる

ともだちって
あったかいね


2004/12/13 22:59








「 休息 」


曇り空の向こうに夢が霞んで見えるから
雲が晴れるのを待とう
そんなに急がなくても
そこに変わらずあり続ける空のように
夢は待っていてくれる

疲れたら休めばいい
意地悪く雨が降ったら隠れればいい
また顔出せる時が必ずくるから

光が恋しい
いつもいつだって輝いていたい
しょんぼりするのはたまにでいい
笑って唄などくちずさんで歩きたい

光が恋しい
空が恋しい
眩しすぎる光の中に飛び込んで
溶けてしまいたい

想いよ
光になれ


2004/12/15 15:02








「 冬の空気 」


夕闇が忍び寄り
冬の寒さが深まる
昼間の暖かさが嘘のように
急激に冷えていく空気

北の国では降り始めた雪が
静かに積もっているのだろう
あのこの手や足を冷たくしているのだろう
家は温まっているだろうか


暖め続けたあの家
もう
私の居場所など残らない
あの家

あのこは
どんな顔で帰っていくのだろう
どんな声で
ただいまを言うのだろう

冷えた空気は透明な時間をさかのぼる
二度と戻ってなどきやしないのに


2004/12/16 21:55








「 座して黙する 」


澄んだ水のように
さらさらと
濁りのないこころで

小さな波紋がひろがる
広がり続けて
大きな輪になる

そしてまた
小さな波紋ができ
続く
いつまでも

繰り返す日々
変わらない波紋の大きさのように
何度も
何度も

澄んだ水のように
さらさらと
波紋を受け止め

繰り返される日々に

従う


2004/12/17 23:46








「 桜の下で 」


満開の桜が散る
狂ったように咲き競い
狂ったように散り急ぐ

昔母に
あまりにも生き急ぐと
嘆かれたことがあった

情熱にかられ
激しく生きてきた
立ち止まるのがもったいなくて

けして散り急いでいるわけではない
一歩前にもっと素敵な夢があるようで
進みたい情熱にかられるだけ

激しく咲いたら
散るのも早いのだろうか
はらはらと
ほろほろと
散るときは静かに
静かに逝きたい

叶うならば
満開の桜吹雪の下


2004/12/18 14:59






photo by 椎名