「 信じる 」


可能性があるなら
信じてみたいと
いつもいつだって願っているけど
みんな擦り抜けていくよ
信じ合うこと
そんなに怖いことじゃないのに

暗い路地で片寄せあって生きてる
捨て猫のように
わずかなぬくもりを信じて
歩いている

遠い未来を夢見たりはしない
すぐ目の前の今が確かなものにできれば
それだけでいい
すぐ側の足元さえ明るければ
それでいい

今見交わす瞳があるなら
それだけで信じられると
そう思うことは危険なことかな

とりあえず

笑い合えればそれでいいのに


2004/11/24 22:20








「 遠くの母へ 」


自分らしく生きたいと
家を出たのが4年前
何もかもを投げ捨てて
飛び出したんだ
今更後ろなんか見たりしない

ほら風は冷たいけど気持ちいい
髪がさらさらなびいていくよ
頬があからむくらい心を上気させて
胸の中の熱い想い前に出そう

いつか
幸せそうで良かったと
言ってもらえるように
自分らしく
あるがままに
ふわふわと夢を追いかけて歩いていこう

こんなはずじゃなかったと
あなたは思っているでしょうね
おかあさん
でも
家を出るとき
身体に気をつけてと
言ってくれた言葉が嬉しかったから

遠く離れているけれどいつまでも
愛しています
世界中の全ての人が敵になっても
あなただけは愛してくれると
信じているから


2004/11/25 18:55








「 小さき者のおもひ 」


地底のマグマを噴出し
地形を変え続けるガイア
低いところに水を蓄え
緑を育てるガイア

あなたのぬくもりに包まれて
無数の命が育まれる
何もみかえりを返せないのに

せめてあなたのように生きられたら
こころの熱いものを噴出し
その暖かさで愛を育てられたら
どんなにかいいだろう
低いところには
水も蓄えて愛の養分とできるように
そんなふうに生きられたら

常にぬくもりを渇望し
いつも乾いている
これが現実
情けないやら
申し訳ないやら
せっかく命を与えられたというのに

ひとはなんて小さいのかな
わたしはこれから
どうなっていくのかな
澄み切った風が
いまのままでいいんだと
囁いてくれたようで
顔を上げてみる

そこには抜けるような青空と
誇らしげにそびえている山
あれが命を飲み尽くしたマグマの塊だなんて
とても思えないくらいたくさんの命を抱いている

長い年月と
幾多の試練を乗り越えて
おそらく今があるのだろう
きっといつかは
わたしも・・・・・


2004/11/28 07:20








「 七転び八起き 」


もうだめだと
毎日思う
もう動けないと
毎日思う
疲れた体ひきずり
しびれた頭抱え込み

けれど
我が家に抱かれて
眠りにつけば
おだやかな夢と
やさしいぬくもりに包まれ
癒されてゆく

夜が開け
目覚めた体には
元気が戻り
まだ動ける
まだ生きていける
そう思えてくるのは何故だろう

そんなことの繰り返しで
人生は静かに流れてゆく
いつか振り返ったとき
こんなに長い道のりを歩いてきたんだと
自分が誇らしく思えるだろう

どんなに
もうだめだと思っても
朝になれば
踏まれた麦がまた起き上がるように
まだ立ち上がれるのだと
そう信じて
今日も夜の中にこの身を沈めよう
あの空に
朝日が輝くまで


2004/11/29 21:34








「 想い 」


ここで咲き続ける
たとえ誰も見てくれなくても
冷たい風が吹いてきても
命を受けてここにいるのだから

いまのままでいいんだと
あなたは言ってくれた
背中に羽が生えたようだった
夢見ることをやめなくていいと
そう言ってくれたから

咲いては散り
散っては咲き
想いは空の彼方
虹を探しに飛翔する

そしてわたしは
ここで咲き続ける
見守ってくれるあなたがいるから


2004/11/30 14:16








「季節に習って 」


風が吹けば穂が揺れる
新しい命を飛ばすために
きらきら太陽の恵みを受けて
風にのり命が飛ぶ
来年の春
芽吹くために

冷たい風が木々の葉を散らす
アスファルトの上落ち葉の乱舞
木漏れ日の中
舞い上がる
空に向かい
そして地に落ちる
長い冬の間に
朽ちて土の養分となるために

夏の間蓄えたエネルギーを
次の命のために役立てる
人は同じことができるだろうか
夏の輝きをひきずり
寒さに諦めて冬を受け入れるまで

前進することも叶わず
後退することもできない
立ち止まり
春に焦がれ
耐え忍ぶのみ

美しい自然の恵みを胸にしまい
次の春に一歩前進することができるよう
長い冬を耐えるだけではない生き方を
できればいいのに


2004/12/02 16:37








「 振り向くな 」

冷たい風が吹くたび
何かに追われているみたいで
後ろを振り向いてしまう
ただあるのは自分の足跡だけなのに

正面から吹き付ける風は
前に進むことを拒もうとするかのように強く
冷たい
負けないように歯を食いしばり
おなかに力を入れて足を出す
俯いてなんかやらない
負けを認めたくないから

たとえ吹き戻されても
また一歩進めばいいんだ
後ろに下がるよりはまし
それが維持にしかならなくても
後退よりはましなはず

もしも何かが追いかけてくるとしたなら
それはおそらく過去の自分
遣り残したことを後悔する自分
過去にしばりつけようとする何か

全てを振り切って前を見よう
だってほら
手招きしてる
やっとここまできた
少しだけ見えてきた
ささやかだけど
探し続けた夢が
虹の彼方はもう目の前にあると


2004/12/03 22:34








「 ここにいてもいいですか 」


この世にたったひとつしかないものだから
かけがえのないもの
たとえば大切にしたいものとか
守りたいものとか

たくさんの偶然と奇蹟があって初めて
出会いがある
出来事も
人も
その日その時間にその場所に行かなければ
遭遇しないこともあるはず

そんなふうにして出会って
かけがえのないものになったあなた
大切にしたいと思う
守りたいと思う

それでも運命のいたずらに
すれ違ってしまうこともあるんだね
永遠になんて言葉
誰が作ったんだろう
そんなものありはしないのに

大切にしたくて
できなくて
守りたくて
守れなくて

人はみんな
そんなジレンマの中で
もがきながら生きているのかもしれない
宇宙の営みから見れば
小さな
小さな
できごとなのに

また一年が終わる
いくつ出会いがあって
いくつ別れがあったのか
胸の中に風が吹く
わたしの存在を笑うかのように


2004/12/04 21:44








「 浮かれてみたいな 」


夜の街
浮かれて歩けば夢心地
浮いた足取りふわふわふわり
信号なんか気にしない
点滅してもへっちゃらさ
なんてね

歩いていたよ
昔はね
今はどうだろ
ちゃんと待ってる
姿勢を正して

浮かれたいけど
浮かれられない
夢見たいけど
夢見られない

年を重ねるってことは
そういうことなのかな
哀しいね
淋しいね
現実ばかりがちらつくから

それでもたまには
浮かれたいなって
そんな日は
お酒の力を借りるのかな
信号の色さえわからなくなるくらいに

酔ってみたいな
一度くらい


2004/12/06 22:27








「 マッチで手はあたたまらない 」


輝く街の灯りにジングルベルが鳴り響き
年の瀬に浮かれ始めている
煌びやかに飾り付けられた店先
どんな夢を売っているのだろう

人の波が溢れる
せわしなく行き交う人々
ぽつんとあたしは
立ち尽くす

まぶしくて近寄れないよ
なんだか場違いだよ
両手をポケットにつっこんでさ
ひとり立ち尽くしている

一年の終わりに夢を見る
キリスト信者でもないくせに
メリークリスマス
プレゼントを選ぶのは楽しい作業

引き換えにもらう夢は
きっと胸を暖かくしてくれるんだろうな
風は冷たい
ポケットから両手が出せない

ねえ
あたしの手もあたためてよ


2004/12/07 23:29






photo by 椎名