「 白昼夢 」


夢だったのかもしれない
探していたものを見かけた気がして
追いかけた
追いかけて迷い込んだのは見知らぬ庭

初めてのはずなのに
いつか来たことがあるような
そんな懐かしさとやさしさをたたえて
ひっそりと息づいていた

歩き回る
かつてそうしたかもしれないという
記憶の底からの声に引かれて
いまにも顔出しそうな
古い記憶

噴水の前を横切ったような気がして
追いかける
まわりこんだら何もなかった
あたりを見渡し
やはり見知らぬ場所だと思い知らされ
目が覚める

夢だったのかな
確かに呼ばれた気がしたのに
夢だったのかな
手を振る影が見えたのに

ここはいつもの部屋
庭なんてどこにもありはしない
ひとりベッドにまるくなっている


2004/12/19 23:50








「 青の想い 」


なにげない風景に
なにげない想いが重なって
静かに消えていく
まどろんでいた
冬の空気に酔いしれて

冷たい風
あわい光
それでも顔をあげれば
目を開けていられないほどにまぶしい

中途半端な意識のそこで
複雑な想いが絡み合い
ほぐれずに続いていく

消えてしまえ
消えてしまえ
蜃気楼のように

哀しい記憶はなかったことに
辛い想いは封じ込めて

ゆらゆらと
ふわふわと
蜃気楼のように
まどろんでいよう


2004/12/21 20:20








「 うつむかないで 」


冷たい風にせきたてられるように
あるく
まわりを見ることさえ忘れ
急ぎ足で

でも
見上げてごらん
街は輝いている
空には月

ためいきが出そうなほど
冷たいゆえに
澄んだ空気

ぴんと張り詰めた夜の空気は
見も心も引き締まる
凍えた背中を伸ばそう
縮めた首を伸ばそう
見上げれば


うつむくには
まだはやい


2004/12/22 23:29








「 ここへおいでよ 」


さみしいこころを抱いている
行き場の無い想い抱えてる
顔を上げることができない
そんなとき

ふと見上げた窓の灯りの暖かさに
こころが吸い寄せられていくのがわかる

マッチ売りの少女が
ぬくもりを求めてマッチをすったように
人はぬくもりがないと生きていけないのかもしれない
自分で自分の膝を抱くのは哀しすぎる
涙は誰かに拭いてもらわなきゃ

どんなに寒い夜でも
あの灯りの中にはきっと
ぬくもりがある
そう信じさせてくれる窓の灯り

ねえ
ここへおいでよ
みんなでぬくもり分かち合おう
一人で過ごすには淋しすぎる
聖誕祭の夜だもの
少しばかり幸せになってもいいよね


2004/12/24 15:20








「 探し物 」


とおい昔に見た夢
ティンカーベルの魔法の粉
キラキラ
サラサラかけられて
夜の空を飛び回る

高く高く
速く速く

自由自在に夜の空
街の灯りに見とれながら
満天の星に抱かれながら

とおい昔の夢なのに
ひさしぶりに同じ夢を見た
聖夜が起こした奇跡かな
それともサンタのプレゼント

やさしい気分で眠れたよ
ワクワクドキドキ
そんな幸せ感じたよ

でもやっぱり何かを探してた
探してるものが何なのか
いまだに探し続けているんだね
せかいは
広すぎるんだもの


2004/12/25 16:24








「 メリーゴーランド 」


まわるまわるよ回転木馬
夢を乗せて
夢を追いかけて
目覚めることのない世界を
ぐるぐると

ふたりの出会いも回転木馬
夢を食べ
夢を追い続け
覚めることの無い幻想

現実に戻るのはいつ
確かな地に足を降ろすのはいつ

答えの無い問い
繰り返し
繰り返し
まわり続ける

まわるまわるよ回転木馬
光を追いかけ
光を放ち
夢の世界をかけめぐる


2004/12/27 11:24








「 夢の片隅に 」


めくるめく想い抱きしめて
ただひたすらに歩き続けている
苦しい眠りに身を委ねて
明日に希望を繋ぐ

ねえあなた
知ってる?
何度眠れない夜をひとりで過ごしたか

覚めない夢にうなされ
現実との境目を必死で探す
目覚めたあとの不安

あなたの存在を確かめたくて
伸ばした手が
虚空を舞う

となりから寝息が聞こえているのに
届かない想い
満たされないこころ

二人で見たはずの夢は
まだあんなに輝いているのに


2004/12/28 22:58








「 佇んで 」


陽が落ちる
空がフェイドアウトして
街が闇に包まれる
浮かび上がるシルエット
隠されていくこころ

ポツポツと点き始めた街灯の
淡い光に照らされて
あなたの影が消えていく
追いつけない
背中

待ってと
声に出して叫びたいのに
乾いてしまった喉からは
声が出てこない

薄闇に消えていく
消えていく


振り向きもせずに


2004/12/29 15:42








「 あきらめない 」


子猫のように
じゃれあって生きてきた
ふたり
けんかしたり
よりそったり

同じものにひとみ輝かせ
おなじことにこころ痛めて

いつまでも
大人になんかならないと
単純に信じ込んでた
今が全て
未来なんか見ない

それでいいと思ってた
いつまでも続くと思ってた

でも
いつかは
それじゃ生きていけないことに気付く

楽しいことだけ
見つめて
難しいことは
見ないふりしてたけど

いつかは認めなくちゃいけないんだよね
確実に時が未来を連れてくるんだもの

だけど
あきらめない
いつまでも子猫のように
じゃれあって
よりそって
生きていきたい


2004/12/30 23:21








「沈む夕日に 」


長い人生のほんの一部
たった一年間のできごと
振り返ってみればささいなできごと
そのときは精一杯の人生に

であったひと
ふりかかった事件
ふれあえたものも
すれちがったものも
全てが愛しい思い出

この沈む夕日に感謝を
今こうして生きていることに
まだ倒れずに歩いていることに

明日は新しい日が昇る
新しい一年の
新しい太陽

たとえ空が雲に覆われていても
たとえ空から冷たい雪が降っていようとも
その厚い雲の上では輝いているであろう
太陽の

その大きな恩恵を
つつしんで受けさせてもらおうと
あらたな決意を胸に秘め
今日の日に別れの挨拶を
この一年に感謝の挨拶を

であった全ての人に
この身に起きた全てのことに
感謝を

ありがとう


2004/12/31 23:10






photo by 椎名