「 妖しく笑って 」


思い出して
追いかけるのなんか
好きじゃなかったはず
いつだって追いかけて欲しくて
風に髪なびかせて
ゆうゆうと歩いていたじゃない

なにをそんなに怖れているの
失うものなど
なにもないと
いつだって笑顔で歩いていたじゃない

夜の妖しい光に憧れて
道化のような笑みを浮かべ
いつだって
ふわふわと歩いていたじゃない

そうよ
なにも怖くない
失うものなど
なにもないから

ひとりなんか慣れっこ
だって
いつもひとりで歩いていたんだもの

さあ
あなた
わたしこれからは
追いかけない
つかまらないように逃げてみせるから
どうぞ
わたしを追いかけて

わたしは私の道を行く
自分だけの風の中を
顔を上げて堂々と


2004/09/17 20:51








「 華やかな嘘 」


夜の闇に紛れて
虚構の街が笑い声を上げる

闇の中で舌をだしているのはだあれ
後ろ向きで笑っているのはだあれ

ほら
涙だって煌いて綺麗だ
真実なんてどこにもない
騙されたふりして笑い転げる

やさしいぬくもりも
あたたかいえがおも
うそ
うそ
うそ

本当のことなんて
必要なかったんだね
ただおもしろおかしければ
それで
よかったんだね

やってらんない
あたし
いち抜〜けた

夜は綺麗なものだらけ
街は賑やかなとこばかり
淋しくなんかないでしょ

ばいばい
じゃあね
ふりむかないから

追いかけないで


2004/09/20 10:34








「 母なる海よ 」


水平線の見える場所
海が無言の言葉を放つ
寄せては帰す波は力強く
大きなうねりを上げている

潮騒の音
波打つ音
絶え間なく吹き付ける潮風は
全てを吹き飛ばしてしまうかのよう
海は大きい
果てしなく大きい
たくさんの想いを受け止めて
そうして
黙している

言葉はいらない
ここにこうして立っているだけで
全てを包み込んでくれる

波の音に心を澄まそう
潮風に身体を任せよう
全身のちからを抜いて
こころを空白にして

あの水平線のむこうで
夢が待っていてくれる
ゆっくりでいいから
おいでと
黙って待っていてくれる

海は大きい
ちっぽけな想いを全て飲み込んで
さらにまだ
包んでくれる

帰ろう
潮風に脊を押してもらって

帰ろう
家へ


2004/09/20 23:29








「 空に朧月 」


見上げた空に朧月
闇に染まるそのまえの
まだやさしい空に浮かぶ

今日という日が終わる
様々な想いを抱いて
暮れてゆく空は
やさしい目をしてる

葛藤や苦しみ
流せなかった涙
胸に秘め見上げる空

朧月夜はやさしい
やさしくて妖しい
昼間の熱が抜けきらない
まだ暖かい風が頬を撫でてゆく

おかえり
自分の棲家へ
まるで
そう語っているかのような
風が吹く


2004/09/21 14:15








「 月夜の想い 」


夜空に掛かる月が恋しい
細く尖った月は
何も語らず微笑んでいるけれど
きっとそこからは
なんでも見えるんだろうね

迷いも
哀しみも

ここにくれば
全てが解決すると思っていた
ふたりなら
何も怖くないと思っていた

でも
なんだかちがう
なにかがちがってしまった

それが何なのかが
わからなくて
いつも手探り
闇の中を彷徨っている

あの日
お互い違う場所で
あの月を見ながら誓った想い
月と同じように
夜毎形を変えるのだろうか

どこかの陳腐な台詞のように
あの月に誓わないでと

言えば良かったのだろうか


2004/09/22 21:58








「 おしゃべり 」


なんだかこころがほかほかする
ことばって不思議
ひとりごとは哀しいけれど
交わすことばはあたたかい

あなたの世界を教えて
わたしの世界を教えたい

かなしいことば
つらいことば
たくさんあるけど
あたたかいことば
いっぱい使いたい

そうして
たくさんのこころと触れ合いたい
みんなみんな
ともだちになれたらいいのにね

楽しい会話は
ひとをやさしくする
こころをあたたかくする

マシュマロよりもふわふわで
ストーブよりもあったかで
そんなふうに
素敵な時間をもちたい


2004/09/24 00:50








「 夢から覚めて 」


抱えていたものがなんだったのか
今となってはどうでもいい
のしかかっていたものが
なんであったのか
そんなものは
もうどうでもいいんだ

だって
君は隣で笑っているし
大好きなカラオケで
時間を気にせずにいられる
この空気

ねえ
何もなかったんだよ
本当は
悪いことなんて
起こったりしてなかったんだよ

そう
あれは夢
ふたりして
悪い夢を見ていたんだね

ほら
笑っているだろう
君も
僕も


2004/09/24 23:40








「 沈む夕陽に魅せられて 」


水平線に陽が落ちる
海と空を緋に染めて
一日我々を照らし
ぬくもりを与え続けた太陽
おそらく
明日も
あさっても
変わらずに昇ってきてくれるのだろう
約束なんてないけれど
そう信じさせてくれる

天と地の間で
我々は生かされている
自然は回り続け
変わることのない繰り返しで時を刻み
全てのものを許容し育み破壊する

何をもがいているのだろう
こんなちっぽけな存在
無数に蠢く人・・・人
この偉大な空間では塵にも等しい存在
天を仰げば
気が遠くなるような空間と時間が広がっている
大地が
受け止めてくれるから存在していられるというのに

我々が存在する理由など
本当はどこにもないのかもしれない
自然の大きな愛の中で
存在させてもらっている
そんな気がする
あの夕陽を見ていると

命は儚い
与えられた時間はごく僅か
この限られた時間
もがくだけで終わらせたくない
せめて
存在させて良かったと
思ってもらえるような
そんな生き方をしたい
この美しい自然に恥じないように


2004/09/25 12:27








「 友へ 」


名前も顔もわからない
モニター上の文字だけが
あなたを語る
嘘か真実か
確かめる術もないけど

語りかけてくれた言葉は
まちがいなく
こころの隙間に入り込み
ほんの少しの安らぎを与えてくれた

伝えたい想いも
伝えて欲しかった想いも
電源を切れば
それで全てが終わる

途絶えた電波を
探すには
広過ぎるよ

点より小さな接点を
断ち切るのは簡単
繋げていくのは
こころひとつ

ねえ
あの瞬間だけは
真実だったんだよね

切られた電波を
追いかけるようなことはしないよ
できないよ

でも
もう一度だけ

ありがとうをあなたに


2004/09/26 16:19








「 夜の灯りに魅せられて 」


夜の灯りはあたたかい
ここへおいでと
てまねきする
ここにいるよ
はいっておいで

今にも
誰かが顔を出しそうな


灯りがともる

あの灯りひとつひとつに
ひとのぬくもりがある
笑顔がある
しあわせがある

そんな想像膨らませ
夢見るように夜の街
今夜も
こころが浮遊する


2004/09/29 15:47






photo by 椎名