「 あなたへの子守唄 」


おやすみ
おやすみ
今日という時間

おやすみ
おやすみ
せかいの人々

まぶたはゆっくり閉じなさい
やさしい夢を見るように

めくるめくいちにちを
あたまのなかで回転させて
過ぎてゆく時を惜しむように

ねむりなさい
ねむりなさい
つかれたこころ

ねむりなさい
ねむりなさい
であったかなしみ

あすはきっと
きょうよりも素敵な日


2004/09/30 00:56








「 願い 」


たくさんの花の中の一輪
同じ花の中の一輪
その
たった一輪の花になりたい

たくさんある中から
わたしだけを見つけて
そうして摘んでください

きっと
いつまでも同じ笑顔を
あなたにだけ


2004/09/30 22:53








「 静物 」


待ち続ける
時も季節もなく
動かず
想わず

通り過ぎる人
季節


わたしはここにいる
ここにいる

しかし
止めることのできぬ想いは
果てしなく飛び回り
あなたのところへと

待っていることは
伝えない
伝えられない

何も与えることはできないから
光だけが
友として輝きを与えてくれている

ここにいる
わたしはここに
いつまでも


2004/10/04 13:50








「 雨の夜 」


秋の長雨人恋し
時折激しい雨の音
耳に記憶を呼び覚ます

遠い遠い過去達の
雨にまつわる記憶達

哀しいこともあったけど
楽しいこともあったよな

窓辺で見つめた雨だれも
フロントガラスつたう雫も

流れてゆく
流れてゆく
思い出も記憶も
時間とともに
雨とともに

秋の長雨人恋し
あなたを待つのはこんな夜
窓の外走る車も恨めしく
雨音だけが訪ねてくるから

湯気たつミルクを
そっと飲み干そう

冷えたこころ抱きしめて


2004/10/05 16:00








「 秋晴れの日に 」


忘れていたよ
こんな青空
抜けるような空に飛行機雲
太陽めがけ迷わず突き進む

昨日までの雨が嘘のように消え去り
透き通った空気は胸のつかえを取り除き
深呼吸した肺に
あらたなエネルギーを呼び起こす

こんなにやさしい気持ちになれること
思い出させてくれた
友の言葉に感謝を
今日この日を
晴天に導いてくれた運命に
感謝を

人はこんなにも
素直になれるんだね
自然の前では

あたたかい力が湧いてくる
青空にかかる白い雲のように
まぶしい光は
こころのすみずみまで照らし出し
顔をあげさせてくれた

素晴らしい
この
今日という日の全てに感謝を


2004/10/06 18:44








「 冷たい闇の中で 」


触れ合うこころが欲しかっただけ
伸ばした手を引いてくれたのは
あなた
届かぬ想いを拾い集めてくれたのは
あなた

何がいけなかったというの
そっと寄り添いたかっただけなのに

この道はとても冷たくて
一人では凍り付いてしまうほど
ぬくもりがなければ
歩き続けることは苦しすぎる

震えていたの
ひとりで
そっと肩を抱いてくれた
そのぬくもりを
守りたいと思うのが
なぜ
いけないの

誰かにすがりついて
尋ねてみたい

わたし
生きていてもいいですか


2004/10/07 16:48








「 眠れぬ夜のララバイ 」


夜の街を彷徨い
行きずりの男に身体を委ねる
ひとときのぬくもり求めて

ハレルヤ
どうぞお願い
儀式の間は
愛していると囁いて

そして
きれいさっぱり忘れて
二度と思い出さないように

それだけのおんな
それでいい

明日は明日の風が吹く
空っぽのこころに風が吹く
眠れぬ夜はララバイ
唄ってあげるよ
アタシのために

雨さえ降らなきゃ歩いて行ける
行き着く先が地獄でも

ハレルヤ
悪びれずに笑顔で
ハレルヤ
虹の向こうまで


2004/10/08 01:17








「 昨日見た夢 」


また夢を見ちゃった
馬鹿だね
夜が明ければ終わること
知りすぎているくせに

団地の入り口に金木犀の木
これが金木犀だなんて
今まで知らなかった

名前に憧れてた
どんな花なんだろう
どんな香りなんだろうと

色も香りも
自己主張の強い木
夢の中まで追いかけてくる

闇の中で目を覚ます
誰かに呼ばれた気がしたから
夢だったんだね
みんな
みんな

夢の中で
はちきれそうな笑顔が
静かに手を振った


2004/10/08 22:37








「 うつる季節に 」


通いなれた道
住み慣れた家
そうして
一緒にいることに慣れきったふたり

あたりまえの毎日が
黙々と流れ
口にできなくなった言葉が
行き場を失いふきだまりになる

いつかそれが
大きな塊になって
のしかかってこなければいいと
願いながら
月日は静かに流れていく

季節が移り変わるように
人の心も変わり続ける

見慣れた顔
聞きなれた声
おそらく
行動パターンまでにも
慣れきっていく

いつか
気がつく
風が吹き始めることに
冷たい
秋の風が

いつまでも
春のやさしさを持ち続けられればいいのに


2004/10/14 23:38








「 散歩 」


木々の隙間から見上げた空は
青空ならよかったのだけど
残念ながらの曇り空
ちょっと重たい灰色の

それでもこころが軽いのは
あなたの笑顔があったから

もうじき紅く染まるはずのもみじが
見上げた空に
黒いシルエットを見せている
小さな葉を精一杯広げて
残り少ない青葉の時期を
まっとうしている

与えられた時間

何も語らないけれど
自然は雄弁だ

言葉のない想い
受け取って歩こう
短い秋を楽しみながら


2004/10/15 22:21






photo by 椎名