高速道路伸延の陰では

≪ 前ページ | 次ページ ≫  消され逝く自然(目次)に戻る  keiji clip board (TOP)に戻る
  ☆2006/5/27UP目指すも2007/1/26UP 2014/7/14更新
高速道路といえば、「便利」「料金が高い」「ドライブを彩る格好いいフィールド」…
皆さんは何をイメージされますか?
もしかしたら、「最高速度を競う場所!」なんて犯罪者も居るかも知れませんね(^_^;ゞ

国は、高速道路を建設することの直接的な効果として…
輸送時間の短縮、走行費用の節約、交通事故の減少、運転者の疲労軽減と快適性の向上、既存併設道路の混雑緩和…などを挙げ、間接的な効果としては、地域間の交流を促進・拡大することで、既存の輸送コストが下がり、輸送が安定し、新規産業も起こり、遠方への娯楽が楽しめるようになる等で、地域全体が住みやすくなると謳っています。

う〜ん、なんだか、どれも良いこと尽くめみたい?
でも、この謳い文句、な〜んか抜けてる…いや、嘘八百であることに気付きません?

そこでチョット目線を変え、一般には知られない”陰”の部分にスポットを当ててみます。


左画像は、そびえ立つ四国山地の、愛媛県側からの展望です。
四国横断自動車道と称した道路は、清冽な雲を抱く神聖な四国山地を強大な機械力を以って大きく削り盗ったり、風穴を掘っています。


そうして削り裂かれてしまった山脈も、創生から現在までの幾百万年〜幾億年もの間に果てしなく繰り返された豪雨による激しい侵食や 地殻変動も受け続けながら、私たちの先祖を含む幾多もの命を営々と育み、まさに悠久を抱いて在り続けてきたのです。

ここでチョット、できれば5メートル長の巻尺を用意し、
広い場所で全部ビロビロ〜っと一直線に引き出してみてください。
5mのが無ければ2mのでも結構です。

ハイ、用意が出来るまで待ってます…ごゆっくりどうぞ(笑)



…さて、用意は出来ましたか?(笑)

では、その1mmの目盛りを仮に100年間と見立てましょう。其の巻尺は、貴方の命(一生)の何倍ですか?どう頑張って長生きしても貴方の命より数千倍も長いですよね?
でも山の歴史は、そのさらに数十倍以上であり、遠く遠く及ばないわけですよね。

約一万年前…(巻尺の10cm)おおまかには石器時代ですね…其の頃の住居跡として、愛媛県美川村上黒岩の岩陰遺跡を例に、山の永さを覗ってみましょう。

急峻な崖に生じた岩陰地形を住居とした遺跡が、約一万年の時を越えて保たれています。そこは何千年もの間、末期の氷河期を生き抜いた先祖たちに住居として選ばれ続け、以前の住居跡を軽く埋め立てては(または崖の自然崩落で埋まって?)新しい住居として継続使用してきた形態が明らかになっています。

先代から引継いできた場所を、掘り返して消滅させずに(温存しながら)継続使用してきた使用形態は、全国の遺跡で見られますが、それも先祖への畏敬の念であると思います。一部の層からは人骨まで出土しており、故人への思いも窺い知れる貴重な場だと思います。

…おっと!遺跡のページではないので話を戻しますが、こうした岩陰などの地形、目の前の渓流、周辺の山姿などの地形は、たった一万年くらいでは何ら変らないのですね。

そう、私たちにとっては思い描くことも難しい悠久の時を、山は抱いているのです!
 

さて、ちょっと悠久の大地を上から観てみましょう。

母なる大地から見ればダニ・ノミ程度の存在であるヒトが不釣合いに大きくて大袈裟な道路を、周囲(自然など)に無配慮なまま延々と作っている人間中心な様子が、手にとるように判りますね!



ここ↓は高知県の中土佐町で、高速道路の建設を始めた現場です。

な〜んの変哲も無い山ですが、ここも軽〜く数百万年は経っている筈です。
(四国の太平洋側は隆起した土地なので、かつての四国の山岳が雨の浸食を受けた土砂が海に堆積し、それが再び陸に押し上げられた地層かも知れません)
とにかくこの山の地層も、数十万年以上の間、ほとんど変わらず在り続けてきたわけです。
もっと奥のほう(吉野川上流域など)には、数億年前の地層も存在します。


あの山も、この山も、あなたの命の数万回分それ以上の時を越えて、私たちの先祖の代から見守り続けてきた母なる大地です。恐れ多いですね。

その母なる大地を、目先の利益のために切り崩して二度と還らないように破壊している私たちは、母なる大地を足蹴(あしげ)に出来るほど偉くなったのでしょうか?

利己的で軽薄な欲望で殺りたい放題にするなど、百万年は早いような気がしますが。

次ページに続きます...
 

≪ 前ページ | 次ページ ≫  消され逝く自然(目次)に戻る  keiji clip board (TOP)に戻る
作成(2006)2/12-13|5/24-27,31|6/1,2,9|7/11|11/23|(2007)1/25,26|edit(2012)4/8|edit(2014)7/13