第1楽章「祈り」 | 音楽之友社 菊倍箱入 17,000円 |
第2楽章「唄」・第3楽章「祭り」 | 音楽之友社 菊倍箱入 17,000円 |
こんな見出しで始まる記事が朝日新聞に載っていた。 長崎県・生月島(いきつきしま)の隠れキリシタンの人たちが唱えるオラショ(祈り)は、16世紀のスペイン・グラナダ地方で歌われたグレゴリオ聖歌だったということを、13年間の執念の研究で、皆川達夫立教大学教授(当時62歳)が突き止めた。
生月島では、島民人口の約2割に当たる隠れキリシタンが、1500年代に伝えられたキリスト教の信仰を守り続けている。 彼らは信仰の発覚を防ぐため、1年のうち限られた時期に布団をかぶって口伝えで教えている。 水につかったり、まきの上に正座したりして覚えるということも昔は行われていたらしい。
皆川氏がオラショに出合ったのは1975年。
三つの集落でテープに収めさせてもらい、全文をラテン語歌に復元することが出来た。
そしてそれは下の表のように、なまりがはげしいものの、かなりしっかりと伝えられていた。
中世ヨーロッパの音楽史が専門の皆川氏は、どこかに元の歌と楽譜があるに違いないと確信し、イタリアのバチカン、フランス、ドイツなど、4年をかけて各地の図書館を調べ歩いた。
さらに3年をかけて、今度はスペインを回ることにした。
マドリードの国立図書館で、ある行列聖歌集を手にしたとき、全身の震えが止まらなくなったそうな。
そう、紛れもなく、そこに 原典 があった。
これらの聖歌は16世紀の当時、スペインやポルトガルの田舎で歌われていたもので、今ではもう廃れてしまったらしい。
そして、世代をこえて歌いつがれた生月島のオラショの節まわしが、いかにも日本的な小節(こぶし)などで御詠歌や念仏のような響きに変わりながらも、原典の聖歌と同じ音の上下動をしのばせていることを皆川氏は発見した。
最後に氏の言葉で締めくくろう。
「これはもう奇跡です。 発覚したら殺されてしまう弾圧の極限状況のなかでしょう。 人間の信仰の強さに、改めて感嘆しました。 ひたすら唱え、歌って、ぎりぎり自分たちを支えたのでしょうか」
O | gloriosa | Domina | excelsa | supra | sidera |
(オー | グロリオーザ | ドミナ | エクセルサ | スーペラ | シーデラ |
A集落 | ぐるりよーざ | どーみの | いきせんさ | すんでら | しーでら |
B集落 | グロリオーザ | ドーミノ | エクセンサ | スンペラ | シーデラ |
C集落 | うぐりよざ | どーみの | いきしょしょー | しーでら | しーでら |
qui te | creavit | provide | lactasti | sacro | ubere |
クィ テ | クレアヴィト | プローヴィデ | ラクタスティ | サクロ | ウーベレ) |
きてや | きゃんべ | ぐるーりで | らだすて | さあくら | おーべり |
キテ | キャンペ | グルリデ | ラタステ | エサクラ | オーベリ |
きけ | くろやんで | ほろびで | らたーちり | さくら | おーびして |
第一楽章 | 祈り (Oratio) | 最初は分冊にする予定だったけど、 第一楽章から第三楽章まで まとめて こちら からどうぞ。 |
|
第二楽章 | 唄 (Cantus) | ||
第三楽章 | 祭り (Dies Festus) | ||
第四楽章 | 自分勝手な思い |
参考文献: | 朝日新聞 1988年12月9日 |
バンドジャーナル別冊 ザ・シンフォニックバンド Vol.4 音楽之友社 1991年6月 |