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Input-Output Analysis「産業連関分析の覚え書き」



1. 産業連関分析
1.2 逆行列係数

 前節までの議論では輸入を特に明示的に区別しなかったが、国内中間需要x、および最終需要Yの中に含まれているはずである。現実にはある財が消費される際、それが国産品であれば国内産業の生産活動に波及するが、輸入品であれば波及しない。従って、この輸入品をどのように扱うかによって、生産額波及はその効果も意味も異なってくる。輸入の扱い方には大きく分けて「競争輸入方式」と「非競争輸入方式」の2通りがある。

1.2.1 競争輸入型モデル

 国産品と輸入品を区別しない、つまり競争的である(代替的である)と考える方法で、列部門として「輸入」部門を設け、国内中間需要、および最終需要に含まれる輸入分の総計をマイナスで計上する。
Figure 1-3 競争輸入型産業連関表
(n×n)
需要部門




投入財
中間需要部門
(Activity)
j = 1,...,n
最終需要








注3

財(品目)
(Commodity)
i = 1,...,n
x ( = A·X) F -M X
Y E
付加価値 V 
総生産 X
 第 i 財(commodity)について、第 j 中間需要部門(Activity)における投入額を xij、国内最終需要 Yi、輸出 Ei、輸入 Mi、総生産 Xiと表せば、次の需要均衡式が成り立つ。
A·X + F - M = X
(1.2.1)
ただし、
A =
a11a1ja1n
·
·
·
·  
 · 
  ·
·
·
·
·
·
·
ai1aijain
·
·
·
·
·
·
·  
 · 
  ·
·
·
·
an1anjann
X =
X1
·
·
·
Xi
·
·
·
Xn
M =
M1
·
·
·
Mi
·
·
·
Mn
F = Y + E
Y =
Y1
·
·
·
Yi
·
·
·
Yn
E =
E1
·
·
·
Ei
·
·
·
En

1) ( I - A )-1 型モデル

(1.2.1)式より、
( I - A ) · X = F - M
(1.2.1)'
X について解くと、
X = ( I - A )-1 · ( F - M )
(1.2.2)
となる。 これにより、最終需要 F、及び輸入 M が与えられたとき、国内需要( F - M )を満たすために直接・間接に必要とされる総生産 X が求められる。

このモデルでは、生産波及は全て国内産業に向けられることになるが、これは即ち、輸入品も国内と同等の産業構造の元で生産されたものと仮定していることになる。 ここで、各部門ごとのCO2排出量を生産額で除したものを、CO2排出係数と定義する。
第 j 部門のCO2排出係数: Cj = (第 j 部門のCO2排出量) / Xj
(1.2.3)
第 i 財のCO2排出係数: Cfi = (第 i 財のCO2排出量) / Fi
(1.2.4)
これより、直接・間接のCO2排出量は、次のように求められる。
CO2排出量: D = Ct · X + Cft · F
中間需要部門からの
CO2排出量
最終需要部門からの
CO2排出量
(1.2.5)
C :部門別排出係数ベクトル、Cf :財別排出係数ベクトル

2) [ I - ( I - ^
M
) A ] -1
型モデル

 (1.2.2)式においては輸入Mは外生的に与えられるが、一般的には国内の生産活動によって誘発されるものと考えるのが自然なため、輸入を内生化したモデルが必要となる。
 各品目毎(行別)の輸入比率(輸入係数)が全ての部門において一定と仮定し、輸入係数 miを次のように定義する。
mi =
Mi
ΣjaijXj + Yi
(1.2.6)
輸入係数 mi を対角要素とし非対角要素を 0 とする、輸入係数行列を次のように定義する。
^
M
=
m10
·  
 · 
  ·
0mn
(1.2.7)
これを用いて、輸入ベクトルMは次のように表せる。
M = ^
M
·( A·X + Y )
(1.2.8)
Y:国内最終需要ベクトル、E:輸出ベクトル

(1.2.1)式より需給バランス式は、
A·X + ( Y + E ) - M = X
(1.2.1)'
X = ( I - ^
M
) A·X + ( I - ^
M
) Y + E
M = ^
M
·( A·X + Y )
(1.2.9)
となり、X , Mについて解くと、
X = { I - ( I - ^
M
) A } -1
{ ( I - ^
M
) Y + E }
M = ^
M
·[ A· { I - ( I - ^
M
) A } -1
{ ( I - ^
M
) Y + E } ] + Y ]
(1.2.9)'
となる。
 このモデルでは、輸入係数 mi ,国内最終需要 Y,輸出 E を与えたとき、直接・間接に必要とされる総生産 X 及び輸入 M が求められる。


ここで、( I - A )-1型と [ I - ( I - M ) A ]-1型の逆行列係数行列を比較してみる。
( I - A )-1には輸入品への波及も含まれているため、
( I - A ) -1
[ I - ( I - ^
M
) A ] -1
である。ただし、等号は mi= 0 (i = 1,...,n) の場合に成立する。
日本のように輸入の大きい国では、この差は大きいため、 [ I - ( I - M ) A ]-1型が適している。特にLCAに用いる場合、エネルギー・鉱物資源はほとんど輸入に頼っており、国内のアクティビティーをそのまま適用するのは不適当である。 [ I - ( I - M ) A ]-1型であれば、次に示すように輸入品の環境負荷物質排出係数を別途与えることができる。
 部門別環境負荷物質の排出量ベクトル D は、次のように計算できる。
D = Dd + Dm
(1.2.10)
国内発生分:D d
= ^
C
d
·X + ^
C
f
·Y
     ^
C
d :国内中間需要部門別排出係数の対角行列
     ^
C
f :国内最終財別排出係数の対角行列
輸入先発生分:D d
= ^
C
m
·M = ^
C
m
· ^
M
·( A·X + Y )
     ^
C
m :輸入財別排出係数の対角行列
(1.2.11)


注3) 国内最終需要 = 国内最終消費 + 投資 + 在庫


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