国内経済を単純化し、産業部門1と2だけからなるものと仮定した場合、取引基本表は次図のように表すことができる。
Figure 1-1 産業連関表の基本モデル (2×2)
需要部門
投入財 |
中間需要部門 (Activity) | 最 終 需 要 | 総 生 産 |
財(品目) (Commodity) |
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付加価値 |
| |
総生産 |
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第 i 財(Commodity)について、第 j 中間需要部門(Activity)における投入額を xij、最終需要 Fi、総生産 Xiと表せば、次の需要均衡式が成り立つ。
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x11 + x12 + F1 = X1 |
x21 + x22 + F2 = X2 |
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| (1.1.1) |
また、第 j 部門の粗付加価値 Vj、総生産 X'jと表せば、次の収支均衡式が得られる。
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x11 + x21 + V1 = X'1 |
x12 + x22 + V2 = X'2 |
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| (1.1.2) |
が得られる。
ここで、データ間に次の条件が成り立つものとする。
(1) 各中間需要部門 j への第 i 財の投入量 xijは、総生産量X'jに比例する。
(2) 各部門間に加法性が成り立つ。
このとき線形性が成り立つので、
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投入係数 | aij = xij / X'j |
粗付加価値係数 | vij = Vj / X'j |
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| (1.1.3) |
を定義できる。
式(1.1.1)より、
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a11X'1 + a12X'2 + F1 = X1 |
a21X'1 + a22X'2 + F2 = X2 |
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行部門(財)i = 1,...,m、列部門(中間需要部門)j = 1,...,nとして一般化すると、次の需給均衡式が得られる。
ただし、 |
A = |
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a11 | … | a1j | … | a1n |
· · ·
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· · · |
· · ·
|
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· · ·
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ai1 | … | aij | … | ain |
· · ·
|
|
· · ·
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· · · |
· · ·
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am1 | … | amj | … | amn |
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、 |
また、付加価値については次の収支均衡式が得られる。
ここで、先の条件(1)、(2)に加えて次の条件を仮定する。
(3) 各財と各中間需要部門は1対1に対応する。(1 Activity - 1 Commodity)
これはつまり、一つの財が複数の中間需要部門から生産される「代替生産」や、一つの中間需要部門が複数の財を生産する「結合生産」が存在しないものとするということである。このとき、「各財の産出額の総計=総生産額X」と「各中間需要部門の投入額の総計=総生産額X'」が一致する。
X = X' (m = n)
Figure 1-2 産業連関表の基本モデル (m×n)
需要部門
投入財 |
中間需要部門 (Activity) j = 1,...,n | 最 終 需 要 | 総 生 産 |
財(品目) (Commodity) i = 1,...,m |
x ( = A·X) |
F |
X |
付加価値 |
V | |
総生産 |
X' |
(1.1.4)式より、
となり、Xについて解くと注1、
X |
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| = (I + A + A2 + …)·F |
| = F + AF + A2F + … |
| (1.1.4)'' |
I : 単位行列、(I - A)-1 : 逆行列係数(レオンチェフ逆行列係数)
となる注2。
これにより、最終需要Fが与えられたとき、その需要を満たすために直接・間接に必要とされる生産量の総計Xが求められる。
さらに、(1.1.5)式より
V = | ^ v | ·X |
= | ^ v | ·(I - A) | -1
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F |
として、粗付加価値誘発額を求められる。
注1) |
Xが非負であるためには、行列式 | I - A | の全ての主座行列式が正であること(ホーキンス・サイモンの条件)が必要十分であり、また、このためには係数の列和について
n Σ i = 1 |
aij < 1 (j = 1,...,n) |
であること(ソローの条件)が十分条件である。
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注2) |
(1.1.4)''第3式の第1項Fを直接波及、第2項AFを間接1次波及、第3項A2Fを間接2次波及…と呼ぶ。 |
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