■錆びた天使(6)■


「……すげえな」
 そこには、民間の建物警備の範囲を遥かに超えた武器が並んでいた。まるで、軍隊だ。
 つまり、こんなに武器が必要になるようなことを、この研究所は行ってたということだ。
 だが理由はともあれ、今の二人にとって価値があることには間違いない。二人はそれぞれ、武器を物色した。
「木村さん」
 箱を漁っていた宮田が、黒いものをぽんっと放った。馴染のある重みに、木村がにやっと笑う。ジェリコ941──通称ベビーイーグルだ。
「サンキュ。分かってるなあ、お前」
 軽くそれを構えて照準を確認し、グリップに弾倉を挿入する。
「アンタ、それ好きですよね」
「あー、K・B・Gに入って初めてちゃんと扱いを教わったのがこれだったからなあ」
「へえ」
 あまり聞く機会の無い木村の昔話に、宮田が興味を示す。
「それまでは、銃なんてただ撃てりゃいいと思ってたからさ。K・B・Gに入った時に、鷹村さんがイチから、撃ち方も手入れも教えてくれたんだ」
 あれで結構、面倒見がいいんだぜ、と木村は無邪気に笑う。
「……へえ」
 心なしか、宮田の声の温度が下がった。
「最初っから手にしっくりきてさ。やっぱ、最初の銃が相性いいって、ラッキーだよな」
 宮田の方を見ながら、木村は銃身にちゅっと口付けた。言外の含みに、宮田が固まる。
「……アンタ、こんな時に何言ってんだ……!」
「んー? 銃の話だろ?」
 片目をパチンと瞑り、嬉々としてそれを腰のガンホルダーに突っ込む。
「……ラッキーで良かったですね」
 宮田も自分が選んだ銃に弾倉を装着する。
「まあ、ベビーなんて可愛いもんじゃなかったけどな」
「すみませんね、可愛くなくて」
 ガシャン、と重たい音を立てて、宮田の太もものホルスターにデザートイーグルが収まる。腰にはベレッタを差し込み、残った弾倉をポケットとウエストポーチに詰め込む。いつの間にか、宮田の肩からは余分な力が抜けていた。
 木村と宮田は、ドアの方を見た。何やらずるずると、足をひきずるような音がする。
「さてと、じゃあ行こうぜ」
「ええ」
 木村が銃を片手に、ドアロックに手をかける。同時に宮田は銃を構えた。



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