スポーツコラムNo.42

政権交代は既得権打破の絶好機(2010/1/18)


−メディア改革の絶好機−

コラムタイトルを見ると政治コラムと間違うかもしれないが、政治の話をメインにするつもりはない。ただ政治とスポーツはこれまで密接に繋がっていて森元首相が日本のスポーツを牛耳ってきた。

そのため日本のスポーツ団体の多くは自民党と密接な関係を持ち、政権与党となった民主党とのパイプはほとんどないと言っていいだろう。

政権交代が影響を及ぼすのはスポーツ団体だけの話ではない。「スポーツコラム」や「ココおかしいと思いませんか」で日本のメディアの惨状、レベルの低さは散々指摘していてメディアを変えなければ日本スポーツに明るい未来はないのではと思うほど今のところメディアは影響力を持ち、その影響力が悪い方向に発揮されてきた。

−クロスオーナーシップの規制−

2000年末に執筆したスポーツコラムNo.3にて新聞・TV・ラジオを同じ系列が所有する企業(例:読売新聞-日本テレビ、産経新聞-フジテレビ-ニッポン放送、朝日新聞-TV朝日or朝日放送、毎日新聞-TBS-TBSラジオなど)がプロ野球球団を所有してメディアスクラムを組んで視聴者に一方的な情報を流すことはやってはならないことと書いた。

系列企業で固めることをクロスオーナーシップと言うが、このクロスオーナーシップが存在することで新聞-TV-ラジオが同じ方向を向いてしまい、言論の多様性がなくなり、国民・市民を先導しやすくなり(大袈裟に言えば洗脳)、プロ野球もそうやって他スポーツを排除して繁栄してきた。

例えば新聞の押し紙問題を新聞は自身にとって不利になるので取り上げないが、TVも系列企業に不利になるため取り上げない。本来なら新聞が取り上げられないところをTVが追及してこそ多様なメディアの存在意義があるが、日本の場合は新聞・TV・ラジオが一体となっているので北朝鮮を笑うことさえできないほどだ。

このクロスオーナーシップを規制しようと原口総務大臣が口火を切った。大手メディアにとっては都合の悪い話なので当然のように黙殺しているが、CSの「朝日ニュースター」で上杉隆と共に記者クラブ開放(記者クラブに関しても押し紙同様大手メディアが国民に知られたくない問題)を強く訴えていた神保哲生がクロスオーナーシップ禁止へ総務相が動き出したと伝えている(その記事へ)。

クロスオーナーシップが出来なくなると影響が最も大きいのが誰の目にも明らかなのがプロ野球だろう。
読売新聞の子会社である巨人は読売新聞と系列の日本TVの猛プッシュによって読売新聞の販売促進ツールとして利用されてきた。

読売新聞と日本TVの縁が切れれば日本TVは巨人をゴリ押しする理由はなくなる。そうでなくとも日本TVにとって巨人戦中継は重荷になっており、日本TVとしては本音では巨人と距離を取りたいだろうが、読売新聞との関係上現在それは許されない。

日本TVからの多額の放映権料が巨人を支えており、放映権料の大部分が消えてしまうと球界の盟主さえ立ち往生してしまう。

他の球団も中日や横浜も新聞・TVが所有しており、クロスオーナーシップの規制は球界全体に及ぶ。

プロ野球はこのクロスオーナーシップとプロ野球のみに認められた税制優遇が力の源となっており、この力の源泉がなくなればプロ野球は完全に止めを刺されることになる。

−日本スポーツの方向性を示せ−

2009年終盤に話題となったのが「事業仕分け」。スポーツ予算も事業仕分けの対象となり、大幅削減と判定されて五輪選手などが予算削減撤回を求めて記者会見を行ってスポーツ予算の確保を訴えた。

この光景に何か違和感を覚えたのは筆者だけだろうか。既得権を奪われることに抵抗する官僚と同じようにしか見えなかった。

民主党としても自民党とズブズブだったスポーツ界に冷や飯を食わせてやろうという思いも0ではなかったとは思うが、日本オリンピック委員会やその他スポーツ団体、選手は日本のスポーツの在り方についてこのままで良いと考えているのだろうか。

今回の予算削減反対は主にピンポイントで行われるトップ選手育成費用の予算を削減に対してだった。五輪選手はいわばその税金の恩恵を受けている既得権益者で既得権がなくなることに反対するのは勝手だが、日本のスポーツをどのような姿かたちにしていこうというビジョンをスポーツ界は持っているのだろうか。

筆者は2000年末に執筆したスポーツコラムNo.2で次のように記述しているが、今もその思いは変わっていない。

「スポーツをする環境が整っていない状態で一握りのエリートを作るよりも、誰もがみなスポーツを気軽にできる環境を整備し、その中から優秀な選手がナショナルトレセンなりできちんとした指導を受けられれば継続的にいい選手が生まれ、そうなればさらなる日本のスポーツの発展も可能となると思う。」

民主党はスポーツ界に明るい人材が少なく、上層部の議員になるとほとんどスポーツに対する見識はないように見え、日本のスポーツに対する方向性はまだはっきりとしていない。
ただトップ選手の育成よりも総合スポーツクラブの推進など普及に力を入れるヨーロッパ型を目指そうという筆者の考えに近いものがあるようだ(老若男女スポーツを気軽に出来る環境があると医療費の削減も見込める)。

一社丸が抱えの企業スポーツが主流で不況になるとあっさりと手を引き、その企業の意向があまりにも大きな影響を及ぼす今の日本のスポーツ界の構造をどう改めていくかを議論せずに自分たちの既得権を維持しようと予算の維持を訴えるのでは理解は得にくい。

政権交代によって既得権を壊す絶好のチャンスなので他の業界と同様にいびつな日本のスポーツ界の構造を再構築する絶好の好機だと思うので、改めて日本のスポーツの在り方の方向性を議論する良い時期だと思う。
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