ケガと弁当は・・・

作業でケガをするのは、はっきり言えば本人の不注意とか、本人の技術や手順の未熟さに起因することが多い。私にしても、しょっちゅうではないにせよ、恥ずかしながら、仕事でケガをすることもあるし、ジープの整備でケガをすることもある。
ジープをちょすのは、なんということもない普通の作業なのではあるが、意外に危険なのだ。車体をジャッキアップするとか、一本30kg以上もあるようなタイヤを脱着するとか、バッテリーやオイル、燃料、ブレーキ液などを取り扱うとか、塗装、研削など、いずれも基本的な注意を怠れば、大怪我や、場合によっては命にかかわる危険作業ばかりなのだ。

DIY板金をするなら、絶対にそろえなければならないツールがある。安全メガネと革手袋だ


一番上中央白く見えるのはサビチェンジャーのカップ。
中断左から安全メガネのパッケージ、ジグソー、ディスクサンダー。
下段左から安全メガネ(逆さに置いてある)、ヤスリ。
おわかりとは思うが、フードの上に並べてみた。

安全メガネは、400円くらいからいろいろなものがホームセンターなどで入手できる。ゴムで固定するスキーゴーグルタイプのものが防塵性は高いようだが、その分密閉度が高く、私のような汗かきではすぐに曇ってしまう。私は、1000円くらいのメガネタイプの、ペトロイドレンズという強化ポリカーボネートレンズのものを使っている。普通のメガネの上からかけられるように設計されているので、メガネをかけている人でも使えるし、大きいので視界が広く、ペトロイドレンズは小粒の散弾ならはじき返すほどの強度がある。お金に余裕がある向きには、ガーゴイルズのとか(「ER」で使ってたやつね)、高価だが、普通の散弾ではぶち抜けないほどの強度を誇るという優れものもある。顔を撃たれても眼の周りだけは無事なわけだ。
私は仕事でグラインダーの切り粉が眼球に刺さってえらい思いをしたことがあるので、安全メガネは忘れないようにしている。眼球はデリケートで、ほんの小さな破片でも、大きなダメージを受ける。そのうえ、眼は金で買えないのだ。粉塵が飛び散る作業をするとき、溶剤などを扱うときは、絶対に安全メガネをかけること。これが鉄則だ。
手袋は、貧乏DIYではつい安い軍手を使いたくなるが、軍手は板の切り口などに引っかかりやすく、とがったものに対する抵抗力はゼロな上、滑るし分厚くて不器用になるしケバも出れば熱にも弱い。機械を触るのにはまったく不向きなのだ。
また、ドリルやグラインダーを使うときは、決して軍手をはいてはいけない。ちょっと回転部分に触っただけで、あっという間に完全に巻き込まれるのだ。それで指をへし折ったり、落としたりした人を何人も知っている。繰り返す。回転工具を使うときは、決して軍手をはいてはならない。
革手袋もいろいろあるが、溶接や玉掛作業に使う「背縫い」という分厚いやつは、硬くて不器用になるし、それほどの重作業でもないので必要ない。「クレスト」などと呼ばれる、柔らかい豚革の、グレーや黄色のやつがいいと思う。以前はやった「グリップスワニー」みたいなやつだ。私は掌が大きいので、作業服専門店でLLサイズの3双パックのやつを買って、仕事にも愛用している。本当は3Lサイズがいいのだが、3Lサイズはなかなか安売りしていないのだ。この手袋は、多少のことでは切れないし、ワイヤーブラシの毛程度ならめったなことでは突き抜けない。指先の感覚も軍手などに比べれば鈍らない。回転工具にもちょっと触った程度では巻き込まれないが、絶対巻き込まれないわけではないので、回転工具を使うときにはなるべくはかないほうがいいだろう。と言いつつ、私は手袋のままドリルやグラインダーを使っている。当然ながら、その場合のリスクは自己負担100%である。したがって、手袋のままドリルやグラインダーを使うことは、他人にはお勧めはできない。
ほかにも保護具としては、頭を守る帽子などのかぶりモノ、作業着、作業靴などが必要になるだろう。私の場合は、頭はタオルを巻いて汗止め兼保護に、冬は寒いのでニットのウォッチキャップ、作業着は仕事でもなじんでいて自分的には一番楽なツナギ服、靴はスニーカータイプの安全靴を履いている。サンダーでの切断など火花が飛び散る作業では、化繊のものは身につけないほうがいい。火花のシャワーで穴が開くのだ。ナイロンなどは、熱で溶けて肌に張り付くので最悪だ。服は木綿100%が一番いいが、木綿ベースの混紡ならばまあまあ耐えられる。靴は革の安全靴ならいうことない。

さて、身を護る準備ができたところで、よくやるタイヤ交換を例にとって、潜在する危険に対する注意事項を赤の太字で書いてみよう。

まず、ホイールの取り付けボルトを緩める。ホイールナットにレンチをかけて、少しだけ緩めておくのだが、このとき、レンチは必ず「引き」の方向に使う。レンチを押したり、あまつさえ足で踏んづけたりすると、滑ったときに体がレンチごと吹っ飛んでいく。緩まないときは、なぜ緩まないのか考えよう。普通のレンチは、あの長さで普通に力をかけたときに、対象となるねじを脱着できるように設計されているのだ。緩まないのは、多くの場合、インパクトレンチなどで締めこんでしまったための締めすぎか、サビによる固着だが、回転方向を間違えていることすらある。回転方向の間違いは別としても、そうなると普通の力では緩まないこともあるので、レンチにパイプなどをつないでアームを長くして回してやらなければならないこともある。その場合でも、必ず「引き」で使う。引張るほうが力が出るものだ。また、車載工具のホイールナットレンチは、基本的には緊急用と割り切るべきだ。力のかかり方が斜めになるので不慣れだと外れたり角をなめたりしやすく、手も痛くなったりする。今は十字レンチが安く買えるので、できるだけ長めのやつを1本そろえておくといいだろう。どうしても足で踏むしか緩める方法がないときも、十字レンチは役に立つ。ホイールナットにかかっているほうと反対のほうを、高さを合わせたジャッキに乗せて支えるのだ。レンチがホイールと直角になるようにセットする。それでクロスのバーを踏んでやれば、外れることはないし、踏み外す危険もぐっと少なくなる。
ジープは左側の車輪が逆ねじになっているので注意する。緩めるときは時計回りなのだ。左のナットを緩めるつもりで反時計回りに全力で回し、締めこみすぎてボルトをねじ切ってしまった人を見たことがある。

つぎに、タイヤを外すために、ジャッキアップするだろう。このとき、車が走らないように輪止めを入れているだろうか?輪止めは、カー用品を扱っている店ならたいてい置いてあり、安いものだ。日産車では折りたたみの金属製のものが標準工具のセットに入っていたものだ(現在はどうか知らない)。私は、ホームセンターで見つけた、ゴム製の三角のブロック形のものを使っている。もちろん、アングル材や角材から自作することもできるし、ありあわせの大き目の石ころでも用は足りる。とにかく、少なくともジャッキアップするタイヤの対角線上のタイヤに1個、できればジャッキアップするタイヤと違う車軸のタイヤの両輪に1個ずつ、輪止めをかませる。輪止めを入れる向きは、後輪ならタイヤの後ろに後ろから、前輪ならタイヤの前に前からである。
ジャッキアップは、取扱説明書などで定められた車体の所定の個所にジャッキを確実にかけ、ジャッキと車体側のフィット具合や、ジャッキの安定を確認しながら、ゆっくり上げる。ちょっとでもぐらつきが感じられたり、変な当たり方をしているようなら、ためらわずに中止して、やり直す。取説が失われていたり、地形などの都合で所定の個所に当てられない場合は、アクスルハウジングやデフなどの丈夫な場所にかけるのが基本だ。ジープならバンパーやフレームにかけてもいいが、もしそれで凹んだりつぶれたりしても、自己責任である。

ジャッキアップしたら、「ウマ」をかませよう。「ウマ」とは、ジャッキスタンドとか、クレードルなどとも呼ばれる、小さなスタンドだ。通常はフレームやアクスルのような、重量を支持できる頑丈な場所にかける。ウマの位置を決めたら、ジャッキをおろして、ウマに重量を預けてしまう。これで初めて、下にもぐりこんでも大丈夫なのだ。
底面が小さく不安定な車載ジャッキだけで支持した車体の下に入るのは、自殺行為と思われても仕方がない暴挙だ。下に潜らないまでも、ジャッキから車体が落ちれば大変なことになるので、ウマを入れることを強くお勧めする。ウマがないときは、スペアタイヤや外したタイヤをフレームの下に置いておけば、最悪ジャッキが外れても、完全に落ちることを防げる。ただし、下にもぐりこんでいると、車体が落ちたときにあなたがタイヤの幅よりも圧縮されてしまう可能性があるので、ジャッキアップした車体の下に潜るときは、絶対にウマをかけることだ

これで安心してタイヤを外せるので、緩めておいたナットを外し、タイヤを外す。ジープクラスではタイヤは1本30kg以上になるので、腰を痛めないように注意しよう。無理だと思うなら、手を借りることだ。
タイヤは外すとき以上に、着けるときに力が必要になる。ボルトとホイールの穴を合わせたりしなければならないためだ。タイヤは重いので、ゴムとはいえ、足の甲にでも落とすと泣いてしまうほどのダメージを受ける。十分注意しよう。

タイヤを着けたら、ナットを入れて、仮締めする。ナットを締めていないタイヤはぐらつくので、片手で少し押さえていないとならないだろう。ナットを入れたら、まずは指で締まるところまで締めこむ。次にレンチで締めていくのだが、まずはあまり力をいれずに、レンチが勝手に止まるところまで、すべてのナットを締める。締め方は、対角線が基本だ。ジープのような5本ボルトなら一本置きに星型を描くように、4本ボルトなら対角線同士をバッテン状に、6本なら対角線に締めて次の対角線・・・といくか、一本置きに三角に締めてから、最初に締めたやつの対角線からまた一本置きに締めればよい。次は、やや力を入れて締める。タイヤが少し回ってしまう程度でいい。
ジープは左側の車輪が逆ねじになっているので注意する。

タイヤの下に異物がないことを確認しておこう。そして再びジャッキをかけ、ウマを外す。ジャッキをおろすときは、ジープのような油圧式のジャッキではリリースバルブを緩めるが、急激に緩めると落ちてしまうので、様子を見ながらほんの少しゆるめて、ゆっくりおろす。
完全に接地したらジャッキを外し、ナットを本締めする。ホイールナットのトルクは、ジープで8-9kgmとなっている。これは、1mのアームに8-9kgの力をかける、ということだから、ナットの中心からレンチの握っている点の中心までの長さが30cmならば、27-30kgの力をかけなければならないことになる。ジープのホイールナットレンチなら、柄の端のほう(約20cm)で40-45kgだ。小柄な女性なら、足で踏んでもなかなかここまで力が入らないが、地面を支えにしてレンチの柄を引き上げるように回すと、案外簡単に力がかかってしまう。力に自信がない人は、長いレンチで力を補わなければならない。「トルクレンチ」という、締め込み力を測定できる工具で締めてみると、8-9kgmは意外にたいしたことはないことがわかる。インパクトレンチで締めるのは最悪だ。インパクトレンチで締めたら、パンクなどしたときに車載工具ではまず緩められないと思わなければならない。他人(GSや整備工場を含む)にタイヤ交換を頼むときは注意しよう。インパクトレンチは緩めるのには重宝だが、締めるときはうんと弱く設定して、仮締め程度に使うようにしなければならない。また、大のおとなが足で踏みつけて締め込むと、ボルトをねじ切るほどの力をかけられてしまう。ねじと言うのは締まっていればいいというものではない。所定の力で締め付けることが重要なのだ。
そんな要領で、上に述べたような順序で締めこんでいけば、完成だ。終わったら輪止めを外しておく。
数十キロ走行したら、増締めしておく。接地状態で再びレンチをかけ、所定の力をかけてみて、回らなければ問題はないし、回ってしまったら最初の力が足りなかったということだ。緩んでいるのに気が付かないと、ナットがひとつずつ脱落していき、やがては走行中にタイヤが外れてしまうことになる。運転している側はスピンするし、外れたタイヤは、走行速度で無制御に転がっていく、30kg以上の凶器となる。大惨事を招くのだ。
しつこいようだが、ジープは左側の車輪が逆ねじになっているので注意する。

雪の降る地方ではあたりまえに行っているタイヤ交換だが、作業には意外に危険が潜んでいるものだ。
ほかにも、たとえば電気関係の作業をするときは、必ずバッテリーのアース(マイナス)端子を外す、とか、バッテリーを外すときは必ずマイナスから外し、つけるときはマイナスを最後にする、とか、基本的な注意事項はたくさんある。
私も気づいたときはコラムに折り込むようにはするが、「ケガと弁当は自分もち」の、自己責任100%の世界がDIYである。私は皆さんのケガの責任など負わないし、負えるものでもない。このコラムを参考にされようなどという方は、作業内容と注意事項について各位事前に十分に勉強の上、実作業でも十分にご注意いただきたい


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