Cool & Dry

改造はもとより、純正部品であっても異年式や他型式の部品流用を行なうのであれば注意しておかなければならないのは、それが法的に問題のないものであるかどうか、ということに尽きる。
純正部品の流用であっても、異なる部品番号の部品の取り付けは、たとえ実際の取り付けに互換性があったとしても、場合によっては違法改造になる可能性がある、ということを知っておかなければならない。

どういうことかというと、たとえば、J55の標準装備のロールバーを外して、フルオープン時に昔ながらの低いシルエットにしたい、と思ったとする。その際、ロールバーを外すと、標準装備の三点式シートベルトは取り付けられないので、ウチのJ54から二点式のベルトを移植して対処したとしよう。これは、現実にやろうと思えば、実に簡単な作業で可能な改造だ。
しかし、J55は三点式シートベルトが装備された設計で認められた型式であり、また、ウチの昭和54年のJ54と、平成のJ55では、衝突安全基準も違う。いわゆる保安基準では、現行の基準でも、貨客兼用車の運転席については二点式シートベルトも認められていないわけではないと思ったが、元々三点式のものを20年も前の保安基準に適合している二点式に付け替えるとなると、J55に適用される現行の(厳密に言えばJ55の型式指定当時の)保安基準への適合性に疑問が発生するのだ。

いわゆる「保安基準」とは、新型車の設計の技術基準である。
「型式指定」を受けている市販車(車検証の「型式指定番号」がある)は、その設計がすべて保安基準に適合しており、定められた工程で製造すれば設計どおりの品質が確保されることを、国により認定されることで、生産の工程管理を行なうことにより、新車一台一台についていちいち国の審査を受けなくてもよいようになっているのだ。
そして「改造」とは、すなわち、その「国が認めた設計」に手を加え、一部を独自の設計に変更することに他ならない。
市販車のいわゆる「吊るし」の状態にわずかでも手を加えた時点で、厳密には「改造車」になり、使用者は原則として国による「構造変更検査(いわゆる「改造車検」)」を受けなければならなくなる。何らかの改造を行なった時点で、国が認めた、J54とかの型式ではなくなってしまう建前なのだ。
とはいえ、それでは車検場も大混雑になるし、使用者の負担も大きくなりすぎる、ということなのか、例外として、設計に大きな影響のないごく軽微な改造のうち、保安基準への適合が容易に確認できる、一部の「後付け」部品類の取り付けについては、「指定部品の取り付け」という扱いで、取り付け方法が溶接やリベット締めなどの「恒久的固定方法」でなく、車検証のクルマのスリーサイズの変更も一定の範囲内なら、現実にはいちいち構造変更検査を受けなくてもすむ、すなわち改造扱いにならないシステムになっている。
フォグランプやオーディオ機器の取り付けなどがその代表で、改造扱いにならないため、車検証の型式にも「改」の字はつかない。
部品流用でも、流用部品が同年式以降の類似型式車の純正部品で、この「指定部品」のカテゴリに入っており、実際に大きな加工をせずに取り付けられるのであれば、改造扱いにならないケースが多いが、実際の保安基準への適合の可否は、車検時の検査官の判断になるので要注意である。
しかし、それ以外の改造、とくに車検証の記載事項(クルマのスリーサイズ、エンジン型式、排気量、燃料の種類、乗車定員、積載量など)に変更の発生するような改造や、指定部品であっても恒久的固定方法による取り付けを行なう場合などは、すべて国の構造変更検査を受けなければならないのだ。
使用者が改造の安全性を証明し、検査に合格すると、車検証の型式に「改」の字が付け加えられ(J54改とか)、いわゆる「公認改造車」ということになる。これは改造の設計や現状が保安基準に適合していることの証明でもあるので、なんら後ろ暗い思いをすることなく、改造された愛車をころがすことができるのだ。

上記の例でいえば、運転席の二点式ベルトが現行の保安基準で認められているうえで、ベルトが現行の保安基準に適合しており、かつ、ベルト取り付け部が三点から二点になったときも必要な強度と衝突安全性が確保されていることなどが証明できなければ、合法改造にはなりえない。すなわち、違法改造なのである。
逆に、たとえばウチのJ54に純正ロールバーを取り付け、そこに三点式のベルトを取り付けるのも、もともとそのようなオプションが設定されているなどで車体側にもそのための補強なり台座なりがあれば別だが、そうでなければ、ロールバーの取り付け強度や、ベルト取り付け部の強度などの証明ができなければ、合法改造にはならないのだ(だからいわゆる「ディーラーオプション」は、後付け部品でも改造したことにならない)。
シートベルトが二点式から三点式になり、一見、安全性が向上しているように見えるのだからよさそうなものだと考えてしまいがちだが、衝突時にシートベルトがロールバーごともげてドライバーがフロントガラスから飛び出さないことを証明しない限り、見かけがどうであれ、安全なことにはならず、違法改造にすぎないことになるのだ。
もっとも、元々付いている純正二点式ベルトを装備したままで三点式ベルトを装備していれば、車検自体は問題なく通る。車検はクルマの製造当時の保安基準を適用するからだ。ただし、その場合、三点式ベルトは「競技用部品」と同様の扱いになり、公道でその三点式ベルトを使用することは、道路交通法ではともかく、道路運送車両法で違法になる。

そして、さらに忘れてならないことは、
使用者レベルでそのような改造を行なった場合に、安全性を証明する責任は、改造を行なった、すなわち設計を変更した使用者自身にある、
ということだ。
まあ、当然といえば当然であろう。
だから、ここで私が書いているような中古部品流用とか社外部品取り付けなどいうのは、あくまで私が私のクルマに私の責任ですべて私自身が行なっている話なのだ。結果について、ほかの誰に責任を押し付けるつもりもない。
また、改造の保安基準への適合の証明と、適否の判断は、原則としてクルマ毎に個別に行なわれるものであり、同様の改造を同様のクルマに行なったとしても、その都度証明は必要になる(キャンピングカー製作などのような、ある程度数のまとまった「製造」になるような場合は共通の設計で個別の設計審査を省略できる規定はあるようだが、一般的ではない)。
したがって、このコラムを読んで、あなたがあなたのクルマに同じ事を試してみようとあなたの自由だし、私には知る由もないのだが、
あなたが行なった改造の結果についての責任はすべてあなた自身にあり、私は一切あなたの行なった改造の責任など負わないし、負えないし、負うつもりもない。結果について私に文句を言われても私の知ったことではないので、ご承知置きいただきたい。
一応付け加えれば、これは「情報発信者の責任逃れ」ではない。もともと責任がないのだ。

私は、当ホームページ上で、違法改造を奨励するつもりは更々ないし、そのような書き方をしているつもりもない。
むしろ、安全で公明正大な合法改造によるカスタムや、古いクルマを部品流用などの手法を駆使して維持することこそ、クルマの楽しみ方として、広く世間に認められて然るべきだと考えているのだ。

違法改造だろうが、ばれなければいいではないか、などという考えでいると、ばれたときにはついでに重ーいツケを払う羽目になるのが世の常である。そうなってからではまさに後の祭り、手遅れになる。違法に改造されたあなたの愛車が、あなたの行なった違法行為を無言のうちに何より雄弁に証明してしまうのだ。運転免許証を持っている以上、法律を知りませんでした、などというたわごとは通らない。「免許を持っている」=「運転者として、クルマの使用者として当然知っておくべき法規類は公開もされているし、当然熟知している」=「違法を承知の上で」改造したことになるのだ。それが法律だ。
そして、関係法令の遵守は、免許を受けた者に課せられた責任であり、義務なのだ。免許は、車の運転、使用という「一般には行なうことが認められない危険な業務」を「一定の必要な知識と技量を持っていると認められる者には特別に行なうことを許可する」という、重い意味を持つものなのだ。

違法改造車を走らせる、ということは、すなわち、安全性の証明がなされていない車を走らせていることになる。
私は、そんなリスクを、誰に対してであれ、奨励などしないし、できるものでもない。

老若男女、実に気軽に手軽に、さまざまな形で行なわれている「カスタマイズ」などという名の「改造」だが、実は「国が認定したクルマの設計に手を加える」という大変なことになること、その設計変更のリスクは使用者自身が負わなければならないことは、クルマの使用者として知っておくべきことである。
知っていれば、フルスモークガラスとか、透明テールランプに普通の白色球を入れるとかいう危険な改造はできないはずなのだ。違法改造車では、場合によっては事故を起こしても保険がおりなくなることだってあるのだ。

雑誌などに煽られ、「カスタム」というスタイルばかりが一人歩きしていて、安全性や法律をなおざりにした改造が平然と行なわれている昨今のクルマ事情には、憂慮すべき点が多々ある。
自動車メーカーですら「カスタム」の名を冠した改造車まがいのモデルを出しているが、あれらはきちんと「型式指定」を受けた、決してカスタムでもなんでもない、ただの大量生産品のバリエーションにすぎないのだ。だまされてはいけない。はっきり言って、名前に偽りあり、JAROもんの誇大表示なのである。
しかしそれに目先を奪われ、自分にもあのくらい作れる、とばかり、「メーカーカスタム」と同じように自分で手を加えて仕上げてしまったら、それは「改造車」であって、安全性についての責任は、使用者が負うこととなる。場合によっては、ディーラーでは、点検すら受け付けてもらえなくなるかもしれないのだ。それはすでに、メーカーの設計ではなくなってしまっているため、法的にもメーカーは品質について責任を負えない、ということなのだ。法律というのは実にクールでドライである。
自分のしたことの結果について自分で責任を負えない者は、ゆめゆめ改造や流用などという、大それたことをしてはいけないのだ。

ちなみに、新車状態への「完全レストア」ならば、上に述べたような法的問題は一切発生しない。金と手間ひまをかけるだけの価値はあるのだ。
しかし、車は早く使いたいし、かける手間はあってもかける金はない、という、私のような者には、手の届かない夢の世界でもあるのだなあ、これが。


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