Movie Review 2013
◇Movie Index

華麗なるギャツビー('13アメリカ)-Jun 15.2013
[STORY]
作家希望だったがあえなく証券会社に就職したニック・キャラウェイ(トビー・マグワイア)は、ニューヨーク郊外の小さな家に移り住む。隣は豪邸で、毎晩豪華なパーティーが開かれているようだった。ある時、その豪邸の主人ジェイ・ギャツビー(レオナルド・ディカプリオ)からパーティーの招待状が届く。彼と対面したニックは、彼の従妹で富豪と結婚したデイジー(キャリー・マリガン)とギャツビーがかつで恋人同士だったことを知らされる。
監督バズ・ラーマン(『オーストラリア』)
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原作はF・スコット・フィッツジェラルドの小説『グレート・ギャツビー』で、本作で5度目の映画化。
実は5回も映画化しているにも関わらず『ギャツビー』の映画を見るのは初めて。前の映画化は2000年だけどこれはテレビ映画だったので 見てないし、その前の監督コッポラ&主演レットフォードの映画は1974年。リアルタイムでは無理でした(笑)
3Dでの上映もあったけど、この映画を3Dで見る意味はあんまりなさそうだなと思って(しかも3Dは吹替版ばかり)2Dで見た。タイトルバックの ところやパーティーシーン、車が走ってるシーンは3Dだと迫力あるかな?って思うくらいで、あとは2Dでも十分だと思った。

監督がバズ・ラーマンということで、やはりド派手なパーティーシーンに力が入っていた。1920年代の設定なのにヒップホップな曲を使ったりビヨンセやファーギーが歌ってたりと本来ならそぐわないはずなんだけど、あのパーティー自体が儚く消える夢のような世界を表現しているみたいで、さほど違和感なく受け入れられた。最近は映画をブロードウェイでミュージカルにするのが流行りだが、このバズ・ラーマン版の『ギャツビー』もミュージカル化されるんじゃないかなと思った。

たった1人の女のために手段を選ばず巨万の富を築いたギャツビー。やってる仕事は違法バリバリなくせに誰よりも一途で純粋っていうのが可笑しいような悲しいような。トムやデイジーのような典型的な苦労知らずの金持ちは、人を人とも思わないところがあり何かあれば容赦なく人を切り捨てる。そういう人間だって観客の私ですらすぐに見抜いてるのに(笑)なぜそんな女に執着するか。純粋というより単なるおバカじゃないか。他にもっといい女がいるだろうし、金やエネルギーはもっと他のことに使えよ勿体ない!と、名作と言われる物語に対して身も蓋もない感想で申し訳ないが、これは憤りもあってのこと。パーティーではあんなに人が集まったというのに最後は仕打ちがこれか!と(泣)ギャツビーにとってデイジーは単に惚れた女というだけでなく、彼が憧れてきた世界の象徴だったんだろう。悲しいけど、でも彼にはどちら側に人間でもないニックという存在がいて、まだ少しは救われたんじゃないかなって。なんかそうやって自分を納得させないと空しすぎるわ・・・。

本作のディカプリオはオスカー狙いの作品ではないせいか、ヘンな気負いがないように感じた。狙ってる作品だとガッチガチで見てて疲れてしまうんだけど、この映画では役に集中しているように見えた。しかし、ニックの言うギャツビーのとびきりの笑顔というやつは、私にはあんまり魅力的ではなかったなぁ。「うわっ」ってのけぞっちゃった(失礼)
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言の葉の庭('13日本)-Jun 9.2013
[STORY]
将来は靴職人になりたい高校生の孝雄(声:入野自由)は、雨になると授業をサボって庭園の四阿で靴のデザインを考えていた。ある日、孝雄はいつもの四阿で昼間からビールを飲んでいる雪野(声:花澤香菜)という女性と出会う。そして帰り際に「雷神の 少し響みて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ」と言い残して去っていく。それから2人は雨の日のたびに顔を合わせるようになる。
監督&脚本・新海誠(『ほしのこえ』)
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アニメーション作家、新海誠による6作目の監督作品で、同時上映は野村不動産グループのショートフィルム『だれかのまなざし』

新海の作品は2004年の『雲のむこう、約束の場所』の時に話題になったので見てみようかなと少し心を動かされたんだけど、結局見ないで終わってしまい、本作が初の新海作品となった。
本作をなぜ見ようと思ったかというと、ズバリ新宿御苑(笑)一応、映画の中ではモデルにしただけで新宿御苑ではないんだけど、どっからどう見ても新宿御苑。新宿御苑じゃないから苑内で飲酒するシーンもあるけど、本物の御苑もお花見シーズンなどは酒盛りしてますな(笑)

そんなわけで馴染のある風景をアニメでどう見せてくれるのか興味があって見に行った。ストーリーはあまり期待してなかったし、実際見ても「うぅ〜ん」という感じ。まず、その場面の画やシチュエーションが先にあって(この作品の場合は雨の中、四阿で男の子がスケッチをして、スーツ姿の女性がビールを飲む構図)後からストーリーが出来上がったのかな?という印象を受けた。そこから始まってもいいんだけどさ、2人が学校で繋がってたというのが近すぎて、ちょっと嫌というかキモいなぁと思ってしまった。だってこれ男女の設定逆にしたらどうよ。逮捕だよ逮捕(笑)ユキノがどっかのOLさんとかだったらまだキモいと思わずに見られたと思う。近い設定じゃないと話が進まないだろうけど。

もう1人?の主役である雨の描写は素晴らしかった。土砂降り、霧雨、雷雨、水溜りに落ちるところや雨上がり、濡れた地面に滲む影。ピクサーアニメなどでも水の表現はよく見るが、雨粒1つ1つに命を宿すような繊細さは日本独自のものだろうなと見惚れてしまった。秦基博が歌う主題歌『Rain』(元々は大江千里の歌だね。懐かしいけど秦が歌うほうが好きだな)も物語によく合ってて、ストーリーではモヤモヤしたけど、映画が終わった時には少し気分が回復した(笑)彼の過去作品にも俄然興味が沸いたので、これから少しずつ見ていこうと思う。
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きっと、うまくいく('09インド)-Jun 8.2013スバラシイ★
[STORY]
旅行のため飛行機に乗っていたファルハーン(R・マダヴァン)は工科大学の同級生だったチャトルから、10年前に卒業してから行方が分からなかった親友ランチョー(アーミル・カーン)の居場所を突き止めたという連絡を受ける。そこでもう1人の親友ラージュー(シャルマン・ジョーシー)も呼び、ランチョーが住むという町へ行くことにするが・・・。
監督&脚本ラージクマール・ヒラーニ(『Munnabhai M.B.B.S.』)
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原題は『3 Idiots』で、2010年の第3回したまちコメディ映画祭では『3バカに乾杯!』のタイトルで上映された。邦題はランチョーのモットーである“Aal Izz Well”(英語のAll is well)から名付けられている。
原作はチェタン・バガットの『Five Point Someone』で、本作はヒンディー語だが、タミル語でも映画化されている。

インド映画といえば私にとってはスーパースター☆ラジニカーントが主演の映画なので、彼が出演している映画以外はさほど興味がなかったんだけど、本作は公開前も公開してからも良い評判ばかり聞くので、もしやこれは見ないと損する映画なのでは?と思って、私にしては珍しく公開からしばらく経ってからの鑑賞となった。

いやーこれは大当たり!何でもっと早く見なかったんだろう。面白かったー。最近は大好きなラジニ映画ですら微妙なのが多くて寂しかったんだけど、これは見てインド映画もまだまだ色々あるんだなぁと思った。これは役者というより物語の勝利だね。あ、でもアーミル・カーンのこともちょっと好きになってしまったんだけど(笑)ちなみに彼とシャールク・カーン、サルマン・カーンの3人で御三家っつーか“三大カーン”って呼ばれてるらしい(3人とも同い年)撮影時は何と44歳。無茶するなぁ〜と思ったけど、インド人の見た目と年齢の釣り合いがよく分からないので(笑)違和感なく見れたし、カーンが無理してでもこのランチョーという役を演じたかった理由は、映画を見てよく分かった。

勉強していい大学に入って、いい会社に就職して金を稼ぐ。ちょっと前の日本もそんな風潮だったけど、今のインドがそういう状況らしい。映画では、大学に入ってただ良い成績を取ることを目的にするんじゃなくて、工学の本質を理解して学ぶことや、学んだことを社会でどう活かすかが重要だというメッセージを若者たちへ伝えている。また、とにかく就職に有利な大学へ無理やり入学させるんじゃなく子どもの意思もちゃんと聞いて尊重しなさいってことを親世代にも伝えている。

インド映画によくある大袈裟なアクションがちょっとウザかったり、文化の違いからかドン引きするようなエピソードなどもあるが、それを凌ぐ明るさと大らかさ、パワーに圧倒される。悪役も単なる悪い奴じゃなくて、最終的に主人公のためになるキャラクターというのも良かったし。笑いと涙、感動が171分みっちり詰まってて、歌と踊りのシーンが少ないため尚更内容が濃く感じた。劇場を出てすぐに人に勧めてしまったよ(笑)
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リアル〜完全なる首長竜の日〜('13日本)-Jun 2.2013
[STORY]
浩市(佐藤健)の恋人・淳美(綾瀬はるか)は1年前に自殺未遂を起こして昏睡状態になっていた。自殺の原因を探るため、最新の脳外科医療“センシング”を使って、浩市が意識不明の淳美の意識に入り込んで直接会話をすることになった。浩市が淳美の意識に入ると、彼女は2人が住んでいるマンションで漫画を描いており、締切を気にしていた。そして浩市に「以前描いた首長竜の絵を探してほしい」と言うのだった。
監督&脚本・黒沢清(『トウキョウソナタ』
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原作は第9回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した乾緑郎の小説『完全なる首長竜の日』
私は黒沢作品ではオリジナルストーリーしか今まで見たことがなく、今回のように原作があるというのは初めてだ。といっても人物設定やストーリーは映画化にあたって数多くの変更がなされているそうで、センシングや首長の設定が原作通りらしい。

今までの黒沢作品は話がどう動いていくのか全く分からず、結末も正直言って「分かんねーよ」ってものばかりだった(笑)分からないけど面白いって思った作品もあったし、分からないところは自分なりに解釈したりして納得した作品も多い。それが本作はちゃんと起承転結があった!(奇跡!)←ぉぃ

前作の『トウキョウソナタ』も途中は物語がどこへ行くのかさっぱりだったけど着地は納得できるものだった。それよりも本作のほうが最初から目的がはっきりしており、結末もこれしかない、というものだった。原作通りなのかな?と思ってパラリと原作を見てみたところ、違ってて逆にビックリ(笑)ということは、黒沢と共同脚本の田中幸子が映画のラストを決めたってことだよね。というか、『トウキョウソナタ』も田中が共同だったので、彼女が黒沢作品に関わるようになって起承転結をつけるようになったのかもしれない。でもエンドクレジット後に何かドンデン返しがあるかもしれないと思って劇場内が明るくなるまでは席を立てなかったんだけど(笑)結局何もありませんでした。

途中は見事に騙されたし(でも伏線はちゃんとあったんだよね。浩市が運転してるところとかさ)センシング中の映像が怖かったり幻想的だったりで惹き込まれた。マンションの部屋の描写も綺麗で、外の風景が溶けていくような映像は特にいいと思った。でもメインの首長竜は微妙。邦画にしてはVFXのクオリティは低くないが、暴れる竜から逃げるアクションがモタモタしていて全然迫力がない。もっと迫り来るような映像は撮れなかったんだろうか。死体の映像では本領発揮とばかりにめちゃくちゃ怖がらせたくせに、アクションは苦手だったかな(笑)

余談だけど、松重豊がご飯を食べるシーンを見て思わず吹きそうになってしまった。シリアスな映画なのに一気に自分の中でゴローワールドが広がっちゃったよ。今後、松重さんは『孤独のグルメ』以外でご飯食べるシーンは禁止でお願いします(笑)
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愛さえあれば('12デンマーク)-May 25.2013イイ★
[STORY]
美容師のイーダ(トリーヌ・ディルホム)は乳がんで乳房を切除したが、夫のライフ(キム・ボドゥニア)と信頼し合っているから再生手術は必要ないと考えていた。だが、ライフが若い女と浮気をしている現場を目撃してしまい、夫は家を出てしまう。イーダは1人で娘の結婚式のためにイタリアへ行かなければならず空港へ向かうが、動揺していたために娘の義父になるフィリップ(ピアーズ・ブロスナン)の車に追突してしまう。
監督スサンネ・ビア(『未来を生きる君たちへ』)
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脚本はビアが監督した4本の映画の脚本を手掛けているアナス・トーマス・イェンセンで、本作が5作目となる。

彼女の監督作品はすべて見ているわけじゃないけど、今まではシリアスだったり深刻な問題を扱っていて見終わっても考えさせられるものだった。それが本作は、乳がんを克服した女性が主人公という深刻さはあるけれど、舞台になっているのが気候が良く美しいイタリアなせいか軽快なロマンチック・コメディに仕上がっていた。あとやっぱり主人公が幸せになる話ってホッとするね。特につらい思いをたくさんした人が報われるというのがいい。

しかし結婚式や葬式を舞台にした物語って、いくらでもネタになるからちょっとズルイなって思った。本作でもイーダの夫が愛人連れて来ちゃうし、フィリップの亡き妻の姉がフィリップに言い寄るし、新郎パトリック(セバスチャン・イェセン)の親戚の男の子がゲイでパトリックが好きだし、イーダの息子はマザコン気味だし、新郎はマリッジブルーだし、相関図を作ったらいくつも矢印がついちゃうみたいな(笑)ただ、これだけ列挙するとドタバタになりそう、というかハリウッド映画ならハチャメチャにしちゃうんだろうけど、そうはしないである程度の落ち着きや品位を保たせたところがヨーロッパ的というか女性監督ならではなのかなと感じた。

ストーリーで気になったのは2つ。パトリックが怖気づいたり思わぬ行動を取ってしまうところがちょっと理解できなかったし、その後の彼の決断もどういう心境で決めたのかやっぱりよく分からなかった(男性なら分かるのかね)マリッジブルーだったのか、それとも目覚めてしまったのか(笑)
もう1つはフィリップの心の変化。フィリップとイーダの出会いは最悪だったし、イタリアに到着してからもしばらくはよそよそしく、カフェで1人くつろいでいる時にイーダが勝手に隣に座ってしまうんだけど、その時も明らかに迷惑そうだった。店を出る時には少し和やかになっていたので、おそらくその間の会話で距離が縮まったのだろう。そこをカットしたのかあえて描かなかったのか分からないが、カットだとしたら残念。いつまでも妻を忘れられずにいた男がどうして別の女性を好きになったのか、そのきっかけを見せるのって大事だろうに。

でも赤いドレスを着たイーダはとても綺麗だったし、身勝手な夫とおバカな愛人がイチャイチャしているのを目の当たりにしても自制している姿は、男性を惹きつける魅力に溢れていた。だから気になるところはあったけど、イーダがどんどん綺麗になっていくので見ている間は暫し忘れてしまった。監督も彼女を美しく見せることを一番に考えた映画だったんじゃないかな。
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