Movie Review 2013
◇Movie Index

聖☆おにいさん('13日本)-May 19.2013
[STORY]
世紀末を無事に超えることができたイエス(声:森山未来)とブッダ(声:星野源)は、日本でバカンスをしようと立川の小さなアパートに住み始める。2人はテーマパークや銭湯、商店街、夏祭りなど日本の四季を堪能していくのだった。
監督・高雄統子(テレビアニメ『けいおん!』演出を経て劇場アニメ映画初監督)
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原作は『荒川アンダー ザ ブリッジ』も映画化されている中村光の同名漫画。『聖☆おにいさん』と書いて「せいんと☆おにいさん」と読む。

原作は1巻が出た時から読んでいて現在8巻まで出ているが、映画は主に初期の頃のエピソードを春から冬にかけて描いている。ブッダやイエスの弟子や天使たちは登場しない。彼らを出してしまうと、ただでさえ短い映画が説明だけで終わってしまうだろうから登場させなかったのは賢明だったと思う。しかし、そのかわりにブッダの額のボタン(白毫)を押したい子どもたちが登場するのだが、

このガキどもが、めっちゃウゼエ!

原作にも確かにあるエピソードだ。でも長々と見せるような話じゃない。単なるネタの一部にすぎない。それなのにアニメではガキどものほうが主人公になってブッダとイエスが脇に回ってしまっている。しかも嫌がってる相手に対してしつこく追い回すってところが見てて胸糞悪くなったし。原作ファンには面白くもなんともない話だったが、原作を知らない人が見てもおそらく面白くなかっただろう。まさに誰得(苦笑)

春のエピソードはほんわかしてて良かったし、冬のイエスの誕生会をサプライズにしたいブッダの話は原作でも好きな話だったので面白かった。四季があって宗教に寛容でモノが溢れている国、それが日本。生まれてからずーっと日本に住んでると気が付かないけど、いいところ、いいものがいっぱいあり、日々の生活でささやかな幸せが得られる。なぜ2人がバカンスの地に日本を選んだのか?というところをもっと取り上げ、夏と秋のエピソードもガキなんか出さないで厳選してほしかった。残念だ。

残念といえば、ブッダとイエスの声を担当した星野と森山の2人の声質が似ていて、時々どっちが喋っているのか分からなくなった(2人の姿が映らず、風景に声だけが聞こえるシーンとか)のも残念。2人とも物語の雰囲気には合っているのだが、2人の違いが分かる声や喋りの人に演じてもらいたかったな。
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中学生円山('13日本)-May 19.2013
[STORY]
団地に住む中学2年生の円山克也(平岡拓真)はある目的のために、身体を柔らかくする“自主トレ”に励んでいた。そんなある日、彼の上の階に下井(草g剛)という子連れの男が引っ越してくる。彼は克也の自主トレがどんなものか知っているようで「いつか届くよ」とにこやかに言うのだった。そんな時、団地の近所で殺人事件が発生し、克也は下井が殺し屋なのではないかと妄想するようになる。
監督&脚本・宮藤官九郎(『少年メリケンサック』)
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宮藤官九郎によるオリジナルストーリーで、長編映画の監督としては3作目となる。
クドカンのテレビドラマは大好きで、昼ドラから深夜ドラマ、毎日15分のものまで見ているが、実は監督している映画を見るのは初めて。どの映画も予告を見た感じアバンギャルドっつーかエッジが効き過ぎのような暴走してそうな感じがして敬遠してたんだ。でも今回はちょっとユルそうだったし『11人もいる!』のトボけた次男(平岡くん)が良さそうだったので見てみることにした。

うーん、予想通りやっぱり暴走してた。自分で監督すると好きなようにやっちゃう人なんだろうな。遠藤賢司のことがすごく好きなんだろうけどライブシーンが長すぎで観客置いてけぼりだと思ったし、ヌーブラダンスもアクションシーンも冗長で飽きてしまった。撮ってて自分で面白くなっちゃってカットするの忘れちゃうんじゃないだろうかって、ニヤニヤしながら演技を見ているクドカンを想像っつーか妄想してしまった(笑)

もう1つ気になったのは中学生の妄想にしては捻り過ぎてるかなと。もっと単純で直球のエロさだと思うんだけどなぁ。中学生に見てもらいたいからR指定を避けたかったというのは分かるが、そもそも自分のを舐めたい中学生の話なんて、リアル中学生は恥ずかしくて見に行けないよね(笑)中学時代なんてとうの昔よ〜っていう大人が見る映画だよ。いま中学生で気になってるけど見に行けないという子は、大人になったら手に取ってみてはどうだろうか(笑)

とはいえ、ところどころはやたら面白かった。特に下半身裸の克也を見てしまった時の父親・克之(仲村トオル)のセリフが最高だった。言葉の使い方が上手いんだな。アクションでは下井の息子が宙に投げ出されるところ。ここは劇場でも一番盛り上がっていた。妄想なんだからこういうぶっ飛んだシーンがもっと多様されてたらよかったのに。

キャストはみんなハマってた。草なぎ演じる下井の紙一重な感じがゾクゾクしたんだけど、どうして彼がそういう人になったのか彼の過去が明らかになって合点がいったが、同時にちょっと悲しくなった。
それからエンケンに恋する克也の妹あかね(鍋本凪々美)がちょうどいいブス(ごめん)でさ、これで美少女だったらロリコンとか犯罪とか思ったかもしれないけど、彼女だと全くそんなことを思わなくて、ナイスキャスティングだった。
最後に平岡くん。君は本当によくやったよ。エライ。まさかこんなにパンツ脱いじゃうシーンが多いとは思わなかったからビックリ。これでもう出来ない役はない!怖いもんはない!おばちゃん一生応援するわ(笑)だからこのまま役者を続けてほしいな。
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探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点('13日本)-May 11.2013
[STORY]
札幌ススキノにあるショーパブ“トムボーイズ・パーティー”のオカマ、マサコちゃん(ゴリ)が何者かに殺された。1ヶ月が過ぎてもまだ犯人が捕まらず、マサコと仲の良かった探偵(大泉洋)は自ら犯人捜しを始める。そんな中、ヴァイオリニストの河島弓子(尾野真千子)がマサコの事件を調べていることが分かり、探偵は弓子を依頼人にして事件の解明を約束する。そして相棒の高田(松田龍平)とともにマサコの交友関係から調査するが・・・。
監督・橋本一(『探偵はBARにいる』
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2011年の映画『探偵はBARにいる』の続編で、原作は東直己の『ススキノ探偵シリーズ』5作目の『探偵はひとりぼっち』
前作の好評を受けての続編といった感じ。冒頭から随所にパート1と同じパターンの笑いどころが用意されていて面白かったんだけど、1作目を見ているからこそ笑えるシーンが多い。「またかよ!」とか「またお前か!」とかね(笑)だから2作目から見た人にはさほど面白くないかもしれないなと思った。

探偵を演じた大泉は調査中のオンと普段のオフの切り替えが上手くて好きなキャラクターだが、今回は助手の高田とのやりとりが少なかったのが残念。探偵が1人でショーパブに行ったり女にうつつを抜かしていたりと単独行動が多く、根城のBARケラーオオハタで2人で飲むシーンも少ない。今回はアクションシーンがやたら長く感じられて(特に路面電車とトムボーイでのアクションがしつこい)見たいのはこういうんじゃないんだけどなぁ〜ってうんざりしながら流し見た。それより2人の会話をもっと頼むよー。

あと前作は謎の電話の依頼主が誰なのかという謎と、悪女なのかそうじゃないのか分からないヒロイン(小雪)、怖いヤクザ(高嶋政伸)に狙われるドキドキ感で物語を引っ張っていったが、本作で怪しいのは橡脇(渡部篤郎)くらいだし、ヒロインの尾野は明らかに怪しくない。前作の小雪もその時は色気がないなぁと思ったが、ドレス姿が綺麗だったし華があった。尾野は華やかさがないばかりか厚かましいオバハンって感じだったもん。トムボーイのオカマちゃんたちのほうが可愛かったかもしんない(笑)

物語はこちらのほうが多少複雑で意外性はあったかな。そうそう喫茶店『モンデ』のナポリタンは前作よりケチャップ多めで油ギトギトにリニューアル(?)したね。店主変わったとか?(笑)まぁまるっきり同じパターンというのも面白くないが、いいところは残しつつ次回作もぜひ製作してもらいたい。
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ヒステリア('11イギリス=フランス=ドイツ=ルクセンブルク)-May 1.2013
[STORY]
1890年イギリス。ヒステリー症状を訴える女性たちのために、婦人科医のダリンプル(ジョナサン・プライス)は“マッサージ療法”を考案する。診療所は予約でいっぱいになり、人手不足になったためモーティマー(ヒュー・ダンシー)という若い医師を雇ったことからさらに人気になってしまう。そんな様子をダリンプルの娘シャーロット(マギー・ギレンホール)は軽蔑し、父やモーティマーと衝突する。
監督ターニャ・ウェクスラー(『Ball in the House』)
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世界初の電動バイブレーターを発明したイギリス人医師ジョセフ・モーティマー・グランヴィルを描いた実話を元にした作品。実際もこんな話だったの?と海外ページまで調べてみたけど、医学的な功績以外の私生活などは載ってなかったので諦めた(笑)

優秀な医者だがそのせいで大病院からは煙たがられていたモーティマーは、人手不足の婦人科で働き始める。しかしやることはご婦人へのマッサージだけ。毎日それだけって医者として疑問に思わないの?と思ったし、腱鞘炎になって即クビを言い渡されて引き下がるのもどうなのよ?と思ったし、バイブを開発したらすぐに復帰で娘と婚約っていいのかそれで?と、モーティマーってぶっちゃけアホっつうかダリンプルに舐められてるの分かってるのかなぁと思いながら見てた。

でもそれは素直で真っ直ぐな性格だからこそなのだろう。考え方も他の男たちと違って柔軟で、人の言うことをちゃんと聞く人なのだ。最初はシャーロットと言い合いばかりしてたけど、最後はちゃんと彼女のことを理解し受け入れている。この時代にしては珍しいタイプの人だったんだろう。モーティマーの友人エドモンド(ルパート・エヴェレット)もこの時代にしては変わった人に違いない。だから画期的な発明ができたのだろう。この2人以外の男はあとダリンプルくらいしか登場しないので、他に典型的な男がもう何人か出てきて対比させればもっと引き立ったかもしれない。

シャーロットは最初に出てきた時は、いわゆるフェミ女!な匂いをプンプンさせていてあまり好感が持てなかったのだが、口だけじゃなくて貧しい人の面倒を看ていると分かってからは嫌ではなくなった。普段は忙しいのか適当な身なりだが、ドレスアップした姿は綺麗で、思わずモーティマーが見惚れるのも納得(笑)というか、女性が監督だからか、バイブが登場したりマッサージシーンがあってもいやらしさは全くなく、むしろロマンス小説みたいなシーンが随所に盛り込まれていた。とにかくロマンチックな場面に力が入っていて、女性向けの映画だなと思った。エロいのを期待した男性はガッカリするだろう。

ところでエンドクレジットでは各時代のバイブが紹介されていくんだけど、日本の某有名家電メーカーの製品が出てきた時にはビビりました。何で!?と思ってこちらも調べてみたら驚愕の事実が!そうだったのか。日本人が知らないことっていっぱいあるのね〜。
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カルテット!人生のオペラハウス('12イギリス)-May 1.2013
[STORY]
イギリスの田舎にあるビーチャム・ハウスという老人ホームには、引退した音楽家たちが暮らしていた。だが資金難のため存続の危機にあり、コンサートを開くことで存続させようと計画が進められていた。そんな時、かつて大スターだったジーン(マギー・スミス)が入居してくる。元妻との再会を避けたいレジー(トム・コートネイ)だったが、シシー(ポーリーン・コリンズ)とウィルフ(ビリー・コノリー)とともにオペラのカルテットを組むよう依頼されてしまう。
監督ダスティン・ホフマン(初監督作)
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原作はロナルド・ハーウッドの舞台『Quartet』で映画の脚本も手掛けている。
監督は『レインマン』などに主演した俳優のダスティン・ホフマン。本作が初監督というのがまず意外だったが(日本未公開なだけで、もう何本か撮ってるのかと思ってた)アメリカ人なのにイギリスが舞台でイギリス人が出演する映画を撮るというのも意外だった。しかも映画自体も上品できちんとしてて踏み外さないって感じの演出。普段の生活からして几帳面な人なのかなと思わせる作品だった。

逆にもうちょっと崩しちゃってもいいのになーと思った。せっかくジーンとレジーが元夫婦っていう設定なのだから、お互いの積もり積もった不満をぶつけ合うシーンがあってもよかったのに。そういうのがないので最後のシーンがお約束とはいえ取ってつけたような感じに見えてしまった。それとせっかく個性的な人たちがたくさん出演しているのに活かしきれていない。4人が歌うと決めるまでの過程も物足りないし、上で上品と書いたが“お上品”過ぎるのもつまらないものだなと思った。

メインの出演者は俳優や女優だが、演奏の練習をしている老人たちはかつて超一流の楽団などに在籍していた音楽家たちらしい(エンドクレジットでその輝かしい経歴が紹介されていく)私はクラシックやオペラは全く分からないので彼らの顔や名前を見てもサッパリだったけど、確かに演奏上手いなぁ〜と感じていた。好きな人や詳しい人が見たらそれだけで大興奮なんだろうな。彼らが出演しているのを見るだけで満足という人もいるかもしれない。
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