Movie Review 2008
◇Movie Index

ドーヴィルに消えた女('06フランス)-Mar 15.2008
[STORY]
刑事ジャック(クリストフ・ランベール)の元に謎の女(ソフィー・マルソー)が現れ、ノルマンディーにあるホテルの401号室に行くよう告げて消えた。そのホテルのオーナーは現在行方不明で、401号室には30年前に事故で死んだ女優ヴィクトリアの写真で溢れていた。そしてヴィクトリアは謎の女にそっくりだった!
監督&脚本もソフィー・マルソー(『Parlez-moi d'amour』)
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フランス映画祭2008オープニング作品で、団長を務めたマルソーが監督・脚本・出演をした。

ストーリー展開がちょっと変わっていて先が読めないため、テンポは遅めだけど飽きずに見れたが、全体的に古臭い印象を受けた。見ながら「これ設定は現代?」と首をひねったほど。1980年代の映画という感じ。
主演がランベールってところがまず古(失礼だろ)そのランベールは昔あんなに男前だったのに見る影もなく、髪はスカスカ肌はガサガサで、見慣れるまでに時間が掛かった(もっと失礼)いくらフランスの役者にナチュラル志向な人が多いといっても出番の多い人がこれでは見るほうもつらい。対するマルソーがほとんど劣化せず美しさを保っているから余計に目立つ。彼女の美貌とファッションが1番の見どころと言ってしまってもいいだろう。

で、古臭いに話を戻すが、クライマックスはヨットの上だし、極めつけはラスト。(ネタバレ)断崖絶壁の上でランベールとマルソーのキスシーンを空撮ですよ?(ここまで)いまどきそんな映画ねーよ(笑)と思わずツッコミを入れそうになりました。まぁ女優が死んだのが今から30年前というとちょうど1980年代になるわけで、何もかもがその時代でストップした映画という捉え方をしたらいいかもしれない。ランベールもあの頃をキープしていれば良かったのに・・・。
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スルース('07アメリカ)-Mar 14.2008
[STORY]
推理作家のアンドリュー・ワイク(マイケル・ケイン)が住むロンドン郊外の豪邸に、俳優のマイロ・ティンドル(ジュード・ロウ)が訪ねてくる。彼はワイクの妻マギーの浮気相手で、ワイクにマギーと離婚するよう説得しに来たのだった。ワイクは仕事のないティンドルに、浪費家の妻を満足させられずに捨てられるだろうと言う。 それでも諦めないティンドルにワイクはお互いに儲かる話を持ちかけるが・・・。
監督ケネス・ブラナー(『魔笛』
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1972年に公開された『探偵<スルース>』のリメイク(この映画は元々は舞台劇を映画化したもの)
『探偵』のほうでマイロを演じたマイケル・ケインが今回はワイク役を演じている(『探偵』でのワイク役はローレンス・オリヴィエ)

オリジナル版は前からずっと見たいと思っていたのだが、自分が会員になっているレンタルショップには置いてないのでとても残念に思っていた。それが今回リメイクされるということで、ものすごく楽しみにしていたのだ。それなのに「ナニコレ?」

見終わった後でもう一度チラシを見てみた。なになに、“設定はそのままに、全く新しいアプローチで甦りました。”――新しいアプローチだぁ?“新たな解釈を加えてケインが熱演すれば”――新たな解釈ぅ?・・・そんなものいらねーーー!おそらく新しく加えたところがつまらなくしちゃったんだな。リメイクによくある失敗だ。あーあ。

登場人物は2人だけ(妻の写真が出てくるくらい)なので、それだけ監督や役者の力量が試される作品であり、みなそれぞれ自信を持ってやっているようだけど、ストーリー展開もセリフ回しにしてもすべてが上滑り。ここからネタバレになるけど刑事が登場してすぐにマイロが化けてるって分かってしまったので(マレーネ・ディートリッヒが出演した某映画はもちろん、ジェーン・マーチの某映画(笑)ですら気付かなかった私なのに!)ワイクもきっと知ってて焦ってるフリをしてるのかと思ってた。それが本気でビビってると分かって見てるこっちが白けてしまった。この映画でのジュード・ロウは特にイケてない。演技もひどかったし、得意のキメ顔ばっかり。さらにネタバレだが刑事の扮装をやめてからの展開が本当にヒドイ。いきなり同性愛的な雰囲気出して何をしたかったのか。もうどんなセリフを聞いても真剣に見ることができず、もういいよ、早く終わってよ、と見るのもイヤになってしまった。なかなかそこまで思う映画ってないから、かえって印象には残る映画かもしれないが・・・。ホント90分で良かった。
↑ネタバレ以外のところだけ読むとホントにヒドイ感想ですなぁ。ネタバレのところもヒドイこと書いてますが。

ま、これがリメイクされたことで、オリジナル版がDVD化されるかもしれない。それだけが良かったことかな。早くオリジナルを見てみたい!
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バンテージ・ポイント('08アメリカ)-Mar 8.2008オモシロイ★
[STORY]
スペインでテロ撲滅のサミットが開催されることになり、広場には各国の首脳とともに大観衆が集まっていた。そしてアメリカのアシュトン大統領(ウィリアム・ハート)が演説を始めようとした瞬間、大統領が狙撃されてしまう。シークレット・サービスのバーンズ(デニス・クエイド)とテイラー(マシュー・フォックス)は狙撃犯を見つけるため、観光客のハワード(フォレスト・ウィテカー)からビデオカメラを見せてもらうが、そこにはさらなる事件を引き起こす映像が映っていた。バーンズは広場の人々を避難させようとするが間に合わず、大爆発が起きてしまう。
監督ピート・トラヴィス(イギリスのTVドラマ『キング・オブ・ファイヤー』)
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タイトルの“バンテージ・ポイント”とは、有利な地点、見晴らしのきく地点という意味。式典が始まる午後12時から広場が爆発するまでの20分ほどを、それぞれの場所で目撃した人物の視点で順番に見せていくという設定の作品。
最初は同じことの繰り返しで飽きるかも?と思ったけれど、視点によって全く違う事実が明らかになって飽きさせない。例えばある人物が遠くから仲良さそうな男女を目撃するが、男の視点に移った時には女を憎んでいることが分かる。しかも続きが気になるところでストーリーがブチッと切れて、次の人物の視点に移ってしまう。「ああもう!いいところで!!」と歯噛みするものの、切り替わった新しい視点のストーリーに今度は夢中になっていく。

ご都合主義な展開もあるし、細かいところを気にすればキリがないけど、上映時間90分という短さと纏まりの良さで手軽に楽しむにはいい映画だ。『セルラー』を見て面白い!と思った時と同じような印象を受けたなぁ。アメリカとテロを扱っているので『セルラー』みたいなユルいシーンはないけどね。メインテーマではないが、このアメリカとテロの問題については皮肉を織り交ぜたり揶揄するようなシーンがあるので、そこに注目して見てもいいと思う。もちろん難しい話は一切無視して、事件の謎にのめり込むもよし、単純にカーアクションにハラハラしてもよし、だ。

主要登場人物は少ないものの何気に豪華なキャスティングだ。オスカーを受賞したウィテカーにハート、シガーニー・ウィーバー、スペイン人ではやっぱり男前(萌え)なエドゥアルド・ノリエガも出演。その中で主役のクエイドがちょっと地味では?!と思ったんだけど、シークレット・サービスという要人の影になる職業の役だから派手じゃおかしい。クエイドで良かったのだ。映画のラストでウィテカーが主役みたいな目立ちかたをしてしまったとしても、彼は承知の上でしょう(ホントかよ)シークレット・サービスは要人に感謝されればそれでいいのよ。本当にお疲れさまでした。
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ペネロピ('06アメリカ=イギリス)-Mar 1.2008
[STORY]
イギリス。名家ウィルハーン家の一人娘ペネロピ(クリスティーナ・リッチ)は、魔女が先祖にかけた呪いのせいで豚の鼻と耳を持って生まれてしまった。その呪いを解くには、ウィルハーンと同じ名家の男がペネロピと結婚すること。両親は成長したペネロピに次々と見合いをさせるが、彼女の顔を見た途端、男たちは逃げ出してしまうのだった。そしてそのうちの1人エドワード(サイモン・ウッズ)が新聞記者にペネロピのことをばらしてしまう。記者はスクープ写真を撮るため、ギャンブラーに落ちぶれた名家出身のマックス(ジェームズ・マカヴォイ)をペネロピのもとに送り込むのだが・・・。
監督マーク・パランスキー(『ロスト・ストーリー 〜現代の奇妙な物語〜』)
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女優のリース・ウィザースプーン製作の作品で、当初はウィザースプーン自身がペネロピを演じるプランもあったらしいが(リッチで正解!)本作ではペネロピと友達になるアニー役で出演している。

脚本はいいし、キャスティングも役者の演技もいい。だけど演出にしてもカメラワークにしても、なんか違うんだよな〜と言いたくなるような撮り方が目に付き、だいぶ損をしている映画だと思った。惜しいなぁ。最初は「これは当たり映画かも」と、いい感触を得たんだけどペネロピの求婚者たちが次々と逃げていくところで「あれ?」となり(面白いシーンのハズなのにハズしている)その後シーンを重ねるごとに「惜しい」「おかしい」と感じるようになってしまった。もっと上手く撮れる監督だったらよかったのに。いけないことだけど、例えばジャン=ピエール・ジュネが監督だったら・・・なーんて考えてしまうわけ。ペネロピも含めて全員変人度が高くなりそうだけど(笑)それでもテンポ良く可愛く切なく、ちょっと毒を入れて面白く作ってくれたんじゃないだろうか。ジュネに限らず、こういう作品はフランス人やイギリス人のほうが上手く料理しそう。

ブタの鼻でもペネロピ可愛すぎ(笑)求婚者たちが悲鳴を上げて逃げていくのに違和感を覚えたほどだ。鼻だけじゃなく耳もブタなのだから、髪の毛で隠さずにそこもピョッコリ見えていたほうが、まだ納得しただろう。それに最初から可愛すぎていては見てるほうも「別にこれでもいいじゃん」って思っちゃう(『西遊記』の猪八戒などで見慣れているせいかもしれないが)最初はギョッとしても見慣れるうちに可愛く見えてきたり、性格が可愛らしいので感情移入していってしまう――というほうがよかったのでは。とはいえ、彼女がありのままの自分を受け入れるところや、そのあとの母親の言葉で涙腺決壊してしまったけどね。

そしてペネロピの写真を隠し撮りしてスクープしようと企む新聞記者レモン(ピーター・ディンクレイジ)が、彼女の気持ちを知って味方になっていくところにもジワーっとした。中指立てるところも好き(笑)ウィルハーン家の執事もよかったんだけど、演出次第ではもっと面白いキャラクターになっただろうに、しつこいようだけどほんとに惜しい!
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いつか眠りにつく前に('07アメリカ=ドイツ)-Feb 23.2008
[STORY]
病気のアン(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)を看病する2人の娘は、母が「ハリス」という男性の名を何度も口にするのを目にする――。
40数年前。アン(クレア・デインズ)は親友ライラ(メイミー・ガマー)の結婚式に出席するため彼女の別荘にやってきた。 そこでメイドの息子で医者のハリス(パトリック・ウィルソン)と出会う。ハリスはライラの初恋相手で、結婚式直前だというのに ライラはまだ彼に未練があるようだった。そしてアンもまたハリスに惹かれていく。そして結婚式当日を迎えるが・・・。
監督ラホス・コルタイ(『Fateless』)
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原作はスーザン・マイノットの同名小説(小説の原題は『EVENING』で映画の原題も同じ)で、脚本と製作総指揮も務めた。
レッドグレーヴの実娘ナターシャ・リチャードソンがアンの娘コニーを、メリル・ストリープが演じたライラの若い頃を、実娘のメイミー・ガマーが演じているという、2組の母娘が共演を果たしている。
(いやもうストリープとガマーのそっくりなこと!表情なんてストリープのモノマネしてるみたい(失礼)それほど若くないのに20代の娘を演じるなんて無理してるなーなんて思ってたらガマーって1983年生まれなのね!びっくりした(さらに失礼))

※ ここから先はネタバレを含む感想です。

重い病にかかり意識が混濁するアンが思い出したのは、その後の彼女の運命を決めた数日間の出来事。アンは恋も夢も諦めた人生を送ってきたわけだけど、回想シーンで当時のことを見始めて、なんか全く同情できないなーと思ってしまった。演出のせいかもしれないけど、まずアンとハリスが惹かれ合うところがダメだった。一体いつから互いにいいと思うようになったのか分かりにくく(全然ドラマチックでもロマンチックでもない)2人ともライラの想いを知ってるはずなのに、彼女のことなんて頭にないように盛りまくり(苦笑)結婚式当日になってもまだ躊躇うライラにアンは、ハリスと逃げたいのか聞くのだが「あんた昨日ハリスとキスしといて、よくもそんなこと聞けるわね!」とムカついてしまった。ハリスが一緒に逃げるわけないと確信しててわざと聞いてんのかよ?!と。ホントにそれでも親友か?バディ(ヒュー・ダンシー演じるライラの弟)に対してもそうだけど、あまりにも2人とも無神経。あの頃は若かったから・・・っていうのは理由にならないだろう。

そんなわけでその後のアンの人生を見て、報いを受けて当然だと思った。だが、彼女がわざと幸福を避けるような選択をしているようにも見えて、次第に嫌な感じが薄れていった。ハリス以外の男を選んでも彼より愛せるわけもなく(その男も気の毒)かといってハリスと一緒になったとしても常に2人はバディに縛られ、幸せにはなれなかっただろう。アンが料理を作るのを諦めて幼い2人の娘に歌を歌う姿は、彼女の人生を象徴しているようで見ていられなかった。

けれど、アンの娘にライラ(ストリープのほう)が「お母様の人生は完璧よ。あなたを産んだのだから」というセリフで救われた。アンも娘たちも救われるが、何より見てるこっちが救われた(笑)落ち着かなかった心がストンと落ちた感じ。久しぶりに心に残る言葉になった。
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