粋狂いな人々・弐式

スーパーロボット大戦・涅槃U

スーパールート 第弐話 『標的ひとつに敵ふたつ』 後編


第弐話 『標的ひとつに敵ふたつ』 後編


 コクウが刈り取り船の状況を把握したのはバジュラとの前線に出てからだった。ワイルダー艦長が気を利かせてくれたと思うことにする。だが、思いがけない朗報もあった。ニルヴァーナが共闘に応じてくれたということだ。しかも、マクロス・クォーターの背中を守ってくれるという。それが思い切る理由としては十分だった。戦況は明らかにバジュラ戦のほうが緊迫している。mならば、こちらに出るといった手前、最後までこちらにつくべきだろう。コクウはバジュラからの生態ミサイルをニードルガンで迎撃してからサングリエ・カノンを威力を絞って正射。数匹を一気に撃退した。
 本来、サングリエ・カノンはマリシ・デーヴァの切り札の1つだ。威力を絞っているとはいえこれを使わされる状況というのは考えにくいのだ。
コクウ「どう考えても硬ぇな。ったく!」
 真横から突進してきたバジュラに槍で貫く。この戦いぶりは前線において鬼神に近いものだった。戦場に流れるシェリル・ノームの歌からは最も遠い人物だ。だが、これこそ最高の鼓舞になっているのかもしれない。コクウを援護すべく、多くのバルキリーが援護に回っている。
オズマ『こちらスカル1。S.M.S.オズマ・リー少佐だ。侍型の機動兵器マリシ・デーヴァを援護する』
コクウ「やめろ。気持ち悪い」
オズマ『なんだと?』
コクウ「俺にそんな口を利くな。・・・・・・・・・オズマ」
 通信が音声だけではなく映像まで映し出す。その表情を確認してオズマはすべてを理解する。
オズマ『コ、コクウ!? お前コクウか!? お前がどうしてここにいる!?』
コクウ「ちょっとあってな。今クォーターの後ろを守っている部隊に所属することになった。手伝ってやるよ。嬉しいだろ?」
オズマ『抜かせ! ちょっと前まで半死半生の男が!! 突然帰ってきたと思ったらこれか!?』
コクウ「だな。だが、その時の借りくらいは返させろ。階級を伴ってちゃ出来ないことを俺が代わりにしてやる。捕まったんだろ? お前の部下。そして、それを追ってお前の部下がそこに入った。・・・・・・・・・俺が連れ戻してやるよ」
オズマ『!!? バカを言うな!! そんな滅茶苦茶させられるか!!』
コクウ「やってやるさ。お前たちの機体は滅法速いがパワーがない。だが、マリシのパワーならやれる。・・・・・・・・・お前の返事なんか聞かないからな」
オズマ『馬鹿野郎が!!』
コクウ「誉め言葉だそれは!! マリシ・デーヴァ突貫する!!」
 機動力を最大にしてマリシ・デーヴァがバジュラ母艦との距離を縮めていく。
オズマ『クソ野郎共が!!』
 敵の対空防御もマリシの装甲では影響などほとんどない。だが、そんなことをコクウは意識している時間がなかった。それ以上にやらなくてはいけないことが1つ。そう、武器への集中。この場で過去、マリシ・デーヴァとペークシスでパワーアップしたマリシ・デーヴァの能力の刷り合わせを最大限イメージしていたからだ。
コクウ「過去の紡糸槍の弱点はその強度。だが、飛躍的にあがっていると仮定する。ならば、もう・・・・・・・・・手加減はいらない!」
 側面からの特攻。オズマの部下が捕まっている母艦の側面からコクウは力を一点に集中させる。
コクウ「・・・・・・・・・喰らえ。柔武装の六臂紡糸槍・・・・・・・・・その恩技を!!! 不空流穿(ふくうりゅうせん)!!」
 槍の鎬に力がたまる。その力が一気に集中。爆発した。完全なる威力の集中。更にその威力をコントロールしきったものだった。切っ先の先では母艦の側面にマリシが通れるほどの大穴が開いていて更にはその深さは装甲版を2枚ほど貫通しただけだった。その威力に感想一つもらすことなくマリシはその中へと侵入していく。
 まるで触手だった。それを槍で薙ぎ払いながらその中心部へと向かう。大して広くもない空間にいた。オズマと同型のバルキリーだ。コクウは集音マイクの制度をあげる。外の声が良く聞こえる。
アルト『な、何だこれは!!』
 まぁ当然の反応だろう。マリシ・デーヴァは見た目非常に派手だ。一見さん普通驚く。
コクウ「君らだな? オズマの部下は」
アルト『? 隊長の知り合いか?』
コクウ「ああ。オズマのダチだ。ちょっと待てろ。そのバルキリーに絡まってる触手を斬ってやる」
 手早く、しかも慣れた手つきで巨大なマリシ・デーヴァは触手をいとも簡単に断ち切ってしまった。
コクウ「その機体は動くんだな?」
アルト『あ、ああ』
コクウ「なら早く行け」
 アルトはその言葉に露骨に反論する。
アルト『だが、それじゃあ!』
コクウ「このマリシ・デーヴァは頑丈だ。いくら新型のバルキリーでもこのバジュラ母艦の爆発に巻き込まれて耐えられるのかい」
アルト『う・・・・・・・・・』
コクウ「ほら行けよ!」
アルト「・・・・・・・・・ああ。けど、脱出は」
 アルトが言わんとしていることは当然だった。このバジュラ母艦には脱出するための出口がない。マリシが入ってきた場所はもう閉じてしまっている。
コクウ「ああ、それは問題ない。・・・・・・・・・俺が作ってやる。・・・・・・・・・本日二発目! 六臂紡糸槍・不空流穿!」
 マリシ・デーヴァが先ほどの技を再び放った。そのバジュラ母艦の真上に再び巨大な穴が出来る。その胆力とでも言おうか、膂力にはアルトもあきれ返っているようだった。
コクウ「これで問題ないな?」
アルト『感謝する。侍型のロボット』
コクウ「いいさ。気にすんな」
 アルトが脱出した。すぐにマリシも脱出しようとするがそうは問屋が卸さなかった。母艦の周囲から触手が伸びてマリシ・デーヴァに絡みつく。
コクウ「最後の抵抗ってか? 笑えねーよ」
 この様子をあるとは認識できたのだろう。声を荒げてコクウを呼んだ。
アルト『おい!』
コクウ「問題ない。早く行けつってんだろうが」
アルト『しかし!!』
コクウ「舐めるなよ。お前みたいなヒヨッコに心配されるほど落ちぶれちゃいないさ。・・・・・・・・・出でよ。八臂日月剣(はっぴにちげつけん)!」
 バックパックに積んであったのだろう。槍よりは小ぶりだが剣が現れる。その剣を持つとコクウはそれを振り回して触手のほとんどを切り裂いた。そして、バルキリーが逃げた穴から同じく逃げ出す。そして
コクウ「見せてやる。マリシ・デーヴァの豪の武装、八臂日月剣(はっぴにちげつけん)による極技・滅鬼天扇斬!!!」
 バジュラ母艦のまん前からまるで扇を広げたような形の光がバジュラを切り裂いた。その神々しさは周囲のバルキリーが視認することとなる。そして、そのバジュラの母艦がそのまま爆散してしまう。
コクウ「・・・・・・・・・これの威力は想定の更に4割増だな。・・・・・・・・・・・・・・・・・・周囲の戦闘も大方終局に向かっているのか。これで残すはニルヴァーナか」
 コクウが心配するとおりにニルヴァーナの戦況は未だに終わってはいなかった。


 どれだけ楽観的な見方が出来たとしても、この状況は不利な戦況だった。ジリ貧という言葉はこのためにあるのだろう。もちろんヴァンドレッドが存在すればこのような状況下に陥ることはないだろうが。
マグノ「コクウがいないってだけでこうも精彩を欠くとはね」
プザム「はい。男と共闘すると言うことはそう難しくないことと思ってきました。ですがそれはコクウというクッションがあって始めて成立していたと思わざるを得ません。メイアからしてヴァンドレッドへの合体にあれほど抵抗があるようでは」
マグノ「適材適所と銘打っちゃいたがね、どうやらコクウのやつに甘えていたのは私らだったようだね」
 確かにそれもある。コクウがいないというのも男に対してのメジェール人の対抗意識のようなものがすべてヒビキへ移動してしまっているということが著しく精彩を欠く理由にもなっているのだろう。だが、それ以上に敵は強かった。ドレッド隊の編成は見事といえる。もちろんコクウの作った作戦書も功を奏してはいるが、それを実戦に流用することができるドレッド隊の基盤も相当なものなのだ。だが、それを用いても敵刈り取り母艦に決め手となる一撃を繰り出せずにいる。これが一番の問題なのだが。
アマローネ「敵刈り取り母艦! 徐々に前へと繰り出しています! このままでは戦線を維持できません!!」
マグノ「くっ! 仕方ないね。エズラ! 蛮型の兄ちゃんを船の正面に移動させな!」
プザム「・・・・・・・・・死中に活を見出させようと?」
マグノ「こういうやり方はあまり好きじゃないがね、此処は踏ん張ってもらわにゃならんさ」
プザム「・・・・・・・・・確かにそうです」
 ニルヴァーナは多少、乱暴な作戦に入る。
 ヒビキがその通信指令を受け取る。
ヒビキ『あ゛ぁ!? 俺にニルヴァーナを守れってのか!』
 露骨に文句を言うヒビキに困った顔で対応するエズラだったがすぐにBCが通信機の前に出る。
プザム「今はコクウがいない。ニルヴァーナの守りが手薄なんだ。しかも、このままでは敵刈り取り船の戦線通過を許してしまう」
ヒビキ『そんなの女共にやらせれば良いだろうが!』
プザム「別に悪い話じゃないだろう? 見せ場を譲ってやろうといっているんだ」
ヒビキ『見せ場ぁ?』
プザム「ああそうだ。真正面から敵母艦と対峙するんだ。絶好の見せ場だろう? 男を立てるならばまたとない機会だと思うが?」
ヒビキ『・・・・・・・・・悪くねぇな。よし! その仕事、男ヒビキ任された!!』
 通信が切れる。それを確認してからマグノは小さく笑った。
マグノ「本当、扱いやすい兄ちゃんだねぇ」
プザム「まったくです。少しはコクウを見習ってほしいですね」
マグノ「それはちょっと難しい注文だねぇ。・・・・・・・・・忌憚なく言えば、あれほどまでに出来た奴は男女を含めても早々お目にかかれる奴じゃないよ。武に長け、義に厚く、何よりも心を理解し行使する。色々抜けているようには見えるけどね」
プザム「その評価には私も同意します。私と戦ったときでさえ、恐らく奴は本気を出していなかった。あれほどの腕を持ちながら無為な暴力を嫌うのですから」
 マグノとプザム。ニルヴァーナを統べるこの2人をして此処まで言わせたコクウという男にブリッジのメンバーは驚きを隠せずにいるのだが。


 一方戦闘の最前線。言うなればもっとも危険な場所で戦闘を義務付けられたヒビキだが、自己が放って自己で揺れるプレッシャーを嗜めながら歯を食いしばっていた。真正面から接近してくるユリ型の刈り取り船がもうすぐ前に見えている。
ヒビキ『見てろよ。コクウの奴がいなくても戦えるって所を見せてやる!』
 意気揚々。ヴァンドレッドに合体することなくスペシャル蛮型が二十徳ソードを手にして特攻していく。コクウがいれば絶対にさせることはない無謀な作戦だ。いや、作戦ですらない。大型母艦に剣を用いて突貫する。内部破壊という公算などまったく持ってありはしない。
ヒビキ『だぁぁぁりゃああああああ!!!』
 蛮型が二十徳ソードを刈り取り母艦に突き刺した。だが、そこまでだった。突き刺したまま、刈り取り母艦は我関せずという姿勢を貫いて直進を止めることはない。刈り取り母艦からしてみれば蚊に刺された程度の損傷なのだろう。
ヒビキ『ぅあああああっ!!』
 刈り取り母艦は蛮型と共に戦線に迫っていく。この様子を気が気でない状況で見守っていたのは当然ながらにニルヴァーナのクルーだ。
プザム「ヒビキ! そのままでは刈り取り母艦が戦線を通過してしまう」
ヒビキ『そんな事言ったってよ!!』
プザム「ダメだ! 戦線を通過した。このままではこの刈り取り母艦がマクロス・クォーターと接触する前にどうにかしろ!!」
ヒビキ『くっそおぉぉぉ!!!』
 そのとおりだった。後方で待機していたマクロス・クォーターに突貫するかのごとく刈り取り母艦が特攻していく。だが、それを追撃する機体が1機あった。ドレッドノート、ジュラ機だ。
ジュラ『バーネット、カメラは回ってる!?』
バーネット『そんなこと言ってる場合!?』
 こんな状況下においても随分と余裕のある会話だった。ジュラ機が徐々に水力を上げていき、刈り取り母艦に取り付いているスペシャル蛮型に接近していく。完全に後方を突かれたマクロスが迎撃するには時間が足りない。
ジュラ『見てなさい! サードステージの開幕よ!!』
 瞬間、蛮型とジュラ機が接触する。そのとき、前の2機と同じように巨大な光が周囲を照らす。
メイア『ジュラ!』
ディータ『宇宙人さん!』
 まるで光に気圧されるように刈り取り船が怯む。
プザム「ジュラ、ヒビキ大丈夫か!? 応答しろ!!」
 光が徐々に薄らいでいく。そしてその光を放っていたものが徐々に見え始めた。赤い機体。その形はどう柔和に綴ったとしても蛸、蟹といった表現が近いように思える。赤い特異的な形の機体の周囲を鏡のようなビットが周囲に浮いていた。それはニルヴァーナ内部でも確認されていた。
マグノ「また、新しいのが出てきたね」
プザム「しかし・・・・・・・・・あれは・・・・・・・・・」
アマローネ「・・・・・・・・・蟹・・・・・・・・・」
 ニルヴァーナのブリッジと比較して、この新しいヴァンドレッドのコックピットは比べ物にならないほどに大盛況だった。このヴァンドレッドの形を認識したジュラが悲鳴にも似た叫び声を上げる。
ジュラ『いやぁぁぁあああああ!!! ああ、もうこんなのジュラのじゃない!!!』
 と叫ぶジュラに対してヒビキの対応は意外にも大人じみていた。この戦況かでどうにかしようと勝手の利かないコックピットをいじりながら対抗するための武器を探していた。
ヒビキ『くそぉ・・・・・・・・・どうやって動かすんだよこれぇ? だあぁぁ! うるっせい! 反撃しろ!!』
ジュラ『いやっ!』
 ジュラの自棄気味に押したボタンが移動スイッチだったのだろう。赤いヴァンドレッドはスラスターでマクロス・クォーターのまん前にまでやってくる。
ヒビキ『いい加減にしろ!! 拗ねてる場合か! 状況考えろ!!』
ジュラ『嫌よ!!』
ヒビキ『今戦えるのは、どうにかできるかもしれないのは俺たちだけなんだぞ!! コクウにはお前だって世話になったんだろうが。だったら、あいつの大事な場所、大事な奴ら、殺されても良いのかよ! 何よりも・・・・・・・・・みんなが度肝を抜けるところだろうが! ここでマクロス助けて、絶体絶命のピンチを抜けりゃ、コクウの奴に恩も売れる。なによりも、あいつにだって出来ないことだぜ!?』
ジュラ『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・悪くないわね。・・・・・・・・・そうと決まれば反撃よ!!』
ヒビキ『・・・・・・・・・女ってのは変わり身早いよなぁ』
 双方の意見がまとまった。何よりも大事な経緯だろう。絶体絶命の中、マクロスがさすがに転舵を開始した。恐らく反撃に打って出るのだろう。しかしながら、態勢を取り直したのは刈り取り母艦も同様だった。推力を上げてマクロスに迫る。
ヒビキ『そうは問屋が卸すかよぉぉおおお!!』
 ヴァンドレッド・ジュラが8つのビットを用いてマクロス・フロンティア船団そのすべてを防御フィールドで覆ってしまう。そのフィールドに刈り取り母艦が激突するが貫通するにはそれ相応の膂力が必要なのだろう。少なくとも単純な圧力での突破は不可能だ。これでどうにかマクロスは時間を稼ぐことが出来る。
 今状況に一番驚いているのは当然ながらにニルヴァーナのブリッジだった。
プザム「・・・・・・・・・なんという無茶苦茶な」
マグノ「驚かされてばかりだねぇ。しかし、これなら何とかなる」
 その通りだった。この状況を把握してからすぐ、マクロス・クォーターから通信が入る。
ラム『こちらマクロス・クォーター。ニルヴァーナ応答願います』
エズラ「こちらニルヴァーナです」
ラム『そちらの奮戦と巨大フィールドによる防御には感謝いたします。これより、マクロス・クォーターは後方敵刈り取り母艦に対して近接格闘戦を開始します。可能ならばフィールドの一部解除をお願いします』
エズラ「は?」
プザム「格闘戦とはどういう意味だ?」
 プザムは単純にリーリのほうを見てたずねた。当然だろう。戦艦が物理的に格闘戦など出来るわけがないというのが通念だ。その問いにリーリは真剣に答える。
リーリ「出来るんです。マクロスには格闘戦が。言うとおりにすべきだと思います。・・・・・・・・・面白いものが見れますよ?」
 リーリの含み笑いを見てマグノもそれに釣られるように笑い返した。
マグノ「良いだろう。向こうさんの非常識も見てやろうじゃないか。・・・・・・・・・エズラ、マクロス・クォーターに了承したと伝えな。それと兄ちゃんとジュラにもマクロスの接近に伴ってフィールドを解除させるように伝えておくれ」
エズラ「わ、わかりました」


 マクロス・クォーターのブリッジ内でも大盛況だった。
ラム「ニルヴァーナより通信。了承との事です」
ジェフリー「ボビー、勝算は?」
ボビー「ニルヴァーナからのデータとこちらで捕らえた情報を噛み合わせてみましたが、問題ありません。奴は鈍間です。でしょ? ラム」
ラム「はい。最大戦速ならこっちの勝ちです」
ジェフリー「ミーナ君?」
ミーナ「各部異常なし。改装後初となりますがいけると判断します」
ジェフリー「うむ。モニカ君?」
モニカ「行動パターンからプログラムを組みました。ナビゲートはお任せください」
キャシー「ちょ、待って下さい、艦長! 出るのは危険すぎます。いくら後方で敵が接近しているとはいえ、突然現れた人間のためにそこまでする必要は!」
ジェフリー「期せずして、コクウ・ブラックの行動により大統領からの命令は達成した。ダルフィムは安全圏に達し、同胞の命すらも救われた。更に、バジュラのデータ収集も順調に進んでいる。しかも、現状態として我々はニルヴァーナ所属のあの赤い機体に守られている。此処までの恩を受けたのだ。何もせずして黙っていることが出来ようか。・・・・・・・・・我々には戦う手段がある。全官トランスフォーメーション!!」
クォーターブリッジ要員『『『『『了解!!』』』』』
ラム「本艦はこれよりトランスフォーメーションを開始します。各員強行型シフトを開始してください」
ミーナ「メイン反応炉出力上昇」
モニカ「プラクタルモジュールシステム アクティベート」
キャシー「艦長! 私はまだ完全に納得したわけじゃ」
ジェフリー「足元!!」
キャシー「え、ああっ!」
 ジェフリーに言われたその瞬間にキャシーの足元から強行型専用の固定シートが出現する。完全自動でキャシーの体を半ば強制的に固定した。突然で無作法だとは思うが、ジェフリー当人はどこ吹く風だ。
ジェフリー「気をつけたまえ」
キャシー「艦長!」
ジェフリー「ボビー! このクォーターが何故400m級でありながらマクロスの名を冠されているか、いや、マクロスでありながら何故このサイズなのか思い知らせてやれ」
ボビー「OKボス! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふん、いっけけけぇぇぇぇぇぇっぇ!!! おりゃあぁぁあ!!!」
 マクロス・クォーターが出力最大、刈り取り母艦に向かい特攻を開始する。
 一方、ヴァンドレッド・ジュラでマクロス・フロンティア船団を護衛しているヒビキとジュラに先ほどのマクロスの通信要請が入ってくる。
ヒビキ『あ? 近接格闘戦? バカ言っちゃいけねーよ。船がどうやって格闘するってんだよ』
プザム『そんなことはどうでもいい。ただ、あのマクロス・クォーターが近づいたらその範囲だけフィールド解除しろ。出来ないのならフィールドをすべて解除してもいい。いいな?』
 真剣な表情で言うプザムに気圧された形で
ヒビキ『あ、ああ』
 と、ヒビキは納得する。通信が切れた後、直ぐだった。少々顔を青くしたジュラが響きの後ろ側を指差す。
ジュラ『・・・・・・・・・・・・・・・・・・ヒビキ、あれ』
 ヒビキが振り返る。やってきたのはマクロス・クォーターだ。だが、様子が異なっていた。形が変わりつつある。変形しながら突進してきているのだ。此処までくればヒビキでも容易に想像出来た。
ヒビキ『!? うそだろ! あの船変形するのかよ!!』
 ヴァンドレッド・ジュラをコントロールしてフィールドをマクロス・クォーターが悠々と通れる位の穴を開ける。その穴を認識したマクロス・クォーターが一気にフィールドの外部へと出て行った。外に出たころには完全に変形が終了してしまう。後は大怪獣決戦だった。
 刈り取り母艦から発進する小型の刈り取り部隊など簡単に迎撃されてしまう。そして、ユリ型の刈り取り母艦はなす術なくまん前にマクロス・クォーターの接近を許してしまった。そして、マクロス・クォーターの右腕部分が何らかの収束を始める。
ジェフリー「マクロスキャノン発射!!」
ラム「マクロスキャノン、エネルギーチャージ!!」
ジェフリー「ぶちかませぇぇ!!!」
ボビー「往生せぇぇええええ!!!!」
 マクロスキャノンが発射される。高威力のマクロスキャノンがユリ型の刈り取り母艦を撃ち抜き、更には捻じれを生じさせてから爆発。一発で仕留めた格好になる。
ボビー「どう? これがS.M.S.の戦いよ」
キャシー「戦果は確かに評価します。ですが、アルト准尉の勝手な行動やクォーターの強引な運用は後で問題に・・・・・・・・・うぅ」
 口を押さえたキャシーがブリッジから急いで出て行く。そのキャシーを見送ってからボビーは腹をさすりながら
ボビー「あら? おめでた?」
 と笑えもしない洒落を飛ばしていた。


 戦闘が終結する。かなり大規模な戦闘だったろう。ニルヴァーナのブリッジでは長老であるマグノもマクロス・クォーターの戦い方には驚きを隠せずにいた。
マグノ「何とまぁ、でたらめな戦い方だい。長いこと戦いを見てきたが、こんなの見たことがないよ」
プザム「まったくです。数100mある戦艦が人型に変形するなんて」
リーリ「面白かったでしょう?」
マグノ「リーリ、あの戦い方が普通なのかい?」
リーリ「マクロスって名の冠された戦艦は例外なく変形しますよ? あれは小さいタイプですけどね。だから名前がマクロス・クォーターなんです。旗艦クラスのマクロスは単純にあれの4倍はあります」
プザム「・・・・・・・・・なんということだ」
マグノ「あれで・・・・・・・・・小さいってのかい?」
リーリ「昨今のマクロスは単純に数千万規模での人間が生活しています。そのくらいでないと市民を守りながら宇宙を旅することはできないということでしょうね」
マグノ「そうか。・・・・・・・・・そうかもしれないね」
リーリ「ところでお頭、一乗組員として提案があるんですけど聞いて貰っていいですか?」
マグノ「ああ。かまわないよ?」
リーリ「私はこれからマクロス・クォーターと同行。マクロス・フロンティアに一時的に滞在することを提案します」
プザム「ほう・・・・・・・・・何故だい?」
リーリ「1つには物資の補給が必要です。悪い言い方ですが、戦闘で恩を売ったことにもなりますから航行するに最低限の必需品くらいは補給できると思います。2つ目はマクロスのフォールド技術です。簡単に言うとマクロスにはワープ航法が実用化されています。これを用いて移動すれば私たちが通常航行よりも遥かに速く到達することが可能だからです」
マグノ「そりゃいい事ずくめだね。だが、リーリ、忘れちゃいないかい? 私たちは海賊なんだよ?」
リーリ「・・・・・・・・・そりゃまぁ、・・・・・・・・・そうですよね。・・・・・・・・・・・・・・・・・・けど・・・・・・・・・私はお頭が海賊をしてるって未だに信じられないんです。ここの子達全員です。海賊なんて物騒な人間たちには見えないんです。私はコクウと一緒に変な人間と商売もしてきました。あ、ちょっと違いますね。コクウがいたから商売が出来た相手だってたくさんいたんです。でも、お頭たちは、マグノ一家はぜんぜん違うんです!」
 最後のほうは叫び声になっていた。それだけ溜めてきたものがあるということなのだろう。
マグノ「こりゃまた、随分と買いかぶられたもんだねぇ」
プザム「はい」
マグノ「私らは堅気じゃないんだよ? 規律を守る悪党だっているさね。ただそれだけさ」
リーリ「違います!」
マグノ「? 如何違うんだい?」
リーリ「本当にお頭たちが悪党なら・・・・・・・・・、コクウは従いません。絶対にです! コクウは無駄に頭が切れるし、融通が利かなくて妙に女々しい男だけども・・・・・・・・・正しいものを見分ける目だけは・・・・・・・・・コクウの眼は間違えたことがないんです。笑って、お頭とこの船のみんなと話しているコクウを私は信用しています!」
 絶対的な信頼。そんなものがあるのかどうかマグノは良くは知らないが、目の前にいるこのリーリウム・エイディという名の商人の眼もマグノに言わせれば絶対という名の意思をまとっているに他ならないものだった。
マグノ「・・・・・・・・・そうかい。なら勝手にそう思っていればいいさ」
コクウ「・・・・・・・・・ええ。思うことにします」
プザム「・・・・・・・・・コクウ」
マグノ「戻ったのかい?」
コクウ「はい。ただいま帰りました。・・・・・・・・・逐一聞いたわけじゃないですが、話の内容は概ね察しが付きます。今度酒の肴に聞いてみようと思っていたんですよ。マグノ一家の結成理由についてはね。リーリはその辺をうまく聞くコツって物を知りませんからね。御寛容ください。ただ、これだけは言いますが、あなた方は海賊という名を語るには少々優し過ぎるんです」
マグノ「いらない事をよく喋るねぇ」
コクウ「すいません。・・・・・・・・・それよりも、急いで帰ってきたのには理由がありましてね、これからのニルヴァーナの航行路についての提案があるんです」
プザム「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
マグノ「マクロスと共に行動を共にするって案かい?」
コクウ「! ・・・・・・・・・ご名答。・・・・・・・・・成程。そこからこの話になったわけですか。問題ありません。あの船には俺の知己も乗っていますから。最低限うまく逃がして貰えるはずです。まぁ、それほど大事になるとは思いませんけどね」
マグノ「・・・・・・・・・楽観的な意見じゃないんだね?」
コクウ「勿論です。酔狂でこんな事言いません」
 コクウのことはマグノもBCも信頼している。それだけのことをこの男はしてきた。故に2人とも顔を合わせてから納得したかのように頷き合う。
マグノ「良いだろう。リーリとコクウの案で行こう。エズラ! マクロスに通信を繋げな」
エズラ「はい!」
 これでニルヴァーナはマクロス・クォーターと共にマクロス・フロンティアに向かうことになる。




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