粋狂いな人々・弐式

スーパーロボット大戦・涅槃U

スーパールート 第弐話 『標的ひとつに敵ふたつ』 中編


第弐話 『標的ひとつに敵ふたつ』 中編


 総員が戦闘態勢に入っていた。コクウの練った案は直前ギリギリまで調整した案だ。隊を二つに分けての挟撃。正面はマリシとニルヴァーナでの殲滅攻撃をかける。小型のバジュラが多いので装甲が厚いマリシとニルヴァーナならばそれなりに持つはずだった。この方法しかコクウに思いつかなかった。
 真正面から待ち受けるマリシにヒビキの蛮型がよってくる。
ヒビキ『何で俺は前線に出れねーんだよ!! あんな蟲野郎、俺だって!』
 その傍らにはディータの登場するドレッドも待機いていた。
ディータ『そうだよう! 私たちもリーダー達と戦いたい!』
コクウ「ダメだ。お前たちのヴァンドレッドの力には俺も期待してるんだ。つーか、何で合体していないんだ? いつでも大砲ぶっ放せるように準備しとけよ」
ヒビキ『あれ疲れんだよ』
コクウ「軟弱な。・・・・・・・・・まぁいいけどさッ!」
 左腕に内蔵されているニードルガンを数発発射する。それがバジュラの斥候に当たる。通常なら劇は出来るほどの攻撃だ。少なくとも、コクウはそう理解していた。しかし・・・・・・・・・
コクウ「!? まだ動くのか!? ・・・・・・・・・ちぃっ!」
 マリシの動きは機敏といえた。腰に備えついている棒状の物体を取り出すとそれを引き伸ばす。それが刹那の瞬間に槍状の武器に早代わりした。
コクウ「六臂紡糸槍、流扇の檄!!」
 その槍を用いてマリシ・デーヴァはバジュラの装甲を瞬時に粉みじんにしてしまう。さすがのバジュラもその攻撃には耐えられる、宇宙空間にて爆発する。
コクウ「予想外の耐久値だな。ニードルガンをあれだけ食らってまだ動くのか・・・・・・・・・」
 すぐさま、通信機のスイッチを入れてヒビキを含めた周囲のドレッドに通信を入れる。
コクウ「コクウだ。バジュラの耐久値は予想を超える! 倒したと思っても絶対に浮かれるな!」
 必要な措置では間違いなくあった。だが、男というだけで受け入れられないコクウの言葉を素直に受け取った人間が何人いるだろうか。すでにドレッド隊とバジュラ編隊が戦闘を開始した。本当にマクロス・フロンティアの援軍が来るのだと仮定したらばバジュラとマクロスとの戦闘がそろそろ始まるはずだった。戦線からドレッド隊がこぼしたバジュラに槍を突き刺しながら、コクウはニルヴァーナに通信を入れる。
コクウ「こちらコクウ、マクロス船団はどうなっている!?」
エズラ『はい。まだ、戦闘が開始されていません。ですが、バジュラの攻撃でもうギャラクシーの船団も壊滅寸前です』
コクウ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・こないのかフロンティアは。・・・・・・・・・S.N.S.は・・・・・・・・・」
エズラ『・・・・・・・・・フォールド反応!! ・・・・・・・・・多数の船団が出現します!』
コクウ「!! 来たか!」
エズラ『はい。多くの艦船が出現しました。・・・・・・・・・リーリウムさんに検分をしてもらいます』
コクウ「・・・・・・・・・詰めだな。・・・・・・・・・よしヒビキ、ディータ!! 前に出ろ。スイーパーは俺がやる。お前たちはドレッド隊と合流して敵を蹴散らせ!」
ヒビキ『待ってました!!』
ディータ『はーーい』
 嬉々として2機が前に出て行く。その中でも相変わらず、コクウは見事なスイーパーぶりを勤めていた。槍捌きも非常に見事だといえるだろう。巨大なマリシ・デーヴァが的確にバジュラにダメージを与えていく。そこに驕りの類は一切ない。戦闘に従事しながらもコクウは考えていた。この敵、バジュラについてだ。生物とも兵器とも取れる様相。その戦いぶりと動きを見ながらもコクウは感じていた。これは・・・・・・・・・
コクウ「兵器じゃない・・・・・・・・・のか?」
 動きに統制がない。しかしながらも生物らしい動きの斑のようなものがある。もっとも非常に微弱なのだが。
コクウ「バジュラ・・・・・・・・・。これは兵器じゃない。生物なのか。しかし、個性が皆無だ。・・・・・・・・・だが、総じて感じる感情がある。これは・・・・・・・・・怖がっているのか? 俺たち人間を。・・・・・・・・・ということは、俺たちはまだ出会いが早すぎたってことなんだろうなぁ。・・・・・・・・・だが、ここは通さねーよ。・・・・・・・・・バジュラ共」
 襲ってきた次のバジュラに槍を突き刺しながらコクウが小さく覚悟をもらす。


 マリシ・デーヴァが最終ラインを固めてくれている。このおかげでニルヴァーナを気にすることなく、ドレッド隊はバジュラと戦闘を行うことが出来ていた。そういう意味で心情の細かな部分にまで気にしたこの作戦はなかなかに悪いものじゃない。リーダーであるメイアもそう思っているのかもしれない。何よりもコクウから直前に渡されたデータはとてつもないほどに参考になるものだった。それをコクウから渡されたときには遅いと文句をつけたが、そのおかげでいくらかでも優位に戦況を進めている。硬い装甲だが、武器のチョイスと攻撃ポイントを絞りさえすれば勝ち目はある。
メイア(・・・・・・・・・それでも、それでも、私たちは男に頼るわけには行かない)
 とまぁ時代錯誤的なことを考えていたりする。
 そんなことを考えている最中にメイアの炎をさらに燃え上がらせる油がやってくる。
ヒビキ『だらぁぁぁあああーーー!! 男ヒビキ参上!!』
 ヒビキの蛮型だった。空気を読めないにもほどがある参上から、非常に直線的な動きをしながら敵バジュラに突っ込んでいく。だが、その動きはバジュラですら看破するに易い物だった。生態ホーミングミサイルとでも呼称すれば良いのかミサイルが多数蛮型に直撃する。
ヒビキ『嵌めやがったなぁ!? 何だ!? くそ、動け! うごけぇぇえええええーー!!!』
 装甲でどうにか攻撃はとまったが、恐らく行動プログラムにエラーが出たのだろう。思い通りに動いていない。それを好機とでも捉えたのだろう。ディータのドレッドがヒビキの蛮型に接近する。
ディータ『宇宙人さん! 合体しましょぉー!!』
メイア『ディータ止せ!!』
 メイアの静止を聞くことなく合体しようとするディータ機に邪魔が入る。バジュラが狙ってか狙わずか、その間に割って入り妨害する。
ディータ『きゃあぁっ!』
 ディータ機と近接していたメイア機が跳ね飛ばされる。激しい揺れ。建て直しに若干の時間が必要だろう。
メイア『こ、んなことで・・・・・・・・・』
ヒビキ『・・・・・・・・・負けてたまるかぁぁああーーー!!』
 スラスターの推力が復活したのだろう。突然加速した蛮型とメイアのドレッドが接触、光り輝いた。蛮型とドレッドが合体する。その形はディータの機体とのそれではない。鳥のような機体に変形してしまった。
バーネット『・・・・・・・・・うそ』
ジュラ『かっこいーー』
コクウ「あ・・・・・・・・・合体しちゃったよ。・・・・・・・・・しかし、あの形状から察するに・・・・・・・・・」
 一人感心しているコクウを尻目にその合体した新しい形のヴァンドレッドの中で軽く紛争が勃発していた。それが通信機を通じて周囲のドレッドとマリシ、ニルヴァーナの知るところとなる。
ヒビキ『なんだこりゃぁあ!』
メイア『こんなところで何している! お前の助けはいらない!! 降りろぉぉおお!!』
ヒビキ『出来りゃとっくにやってるよ! ぅあっ!』
 その小規模な紛争も機体が攻撃を受け、大きく揺れることで一時休戦状態になる。
ヒビキ『今は揉めてる場合じゃねぇーー』
コクウ「その通りだな」
ヒビキ『コクウ』
 コクウの映像のすぐ横に別な映像をくわえて送ってきていた。それは新たに合体したヴァンドレッドの外から見た映像だった。
コクウ「この映像を見ろ。お前たちの合体した機体の外観だ。この機体、スピードメインの機体だと推測できる。・・・・・・・・・ふははは。いいぞ、勝ち目が見えてきた。しかも、完全な形でのだ。よく聞け、ヒビキ、メイア。お前たちはこのルートで敵陣を中央突破しろ。出来るならいくつかバジュラを地獄に送ってやれ。そして、俺からの合図を受けてたらこのルートから最優先で退避しろ。それでこの戦いは終わる。いいな?」
メイア『勝手に決めるな! そんな俄仕込みの案に乗れるわけがないだろう!!』
コクウ「俄かだろうかなんだろうが、これでで死人が減るなら大歓迎だ。・・・・・・・・・メイア、お前は違うのか?」
メイア『・・・・・・・・・・・・・・・・・・クッ』
ヒビキ『本当にこのルートで飛べれば勝てるんだな?』
コクウ「お前たちがバジュラよりも速いってことが最低条件だけどな。・・・・・・・・・反るか?」
ヒビキ『バカ言うな! そんなことがあるかよ。やったろーじゃねーか』
コクウ「そうこなくっちゃ。・・・・・・・・・頼むぞ。敵の足を止めろ」
 最後の言葉は恐らくコクウの本心なのだろう。非常にまじめな表情での言葉だった。それを受けてヒビキはヴァンドレッドのスロットルを最大に持っていく。突如、ヴァンドレッドが加速した。それもありえないほどのスピードでだ。
バーネット『何よ! あの加速!!』
ジュラ『いいなぁ、メイア』
 ヴァンドレッド・メイアがエネルギーを放射しながら敵に突進していく。さすがにこの攻撃を止める術はバジュラは持ち合わせていなかった。コクウの指定したルートを微塵もずれることなく突進していく。
ヒビキ『体がもたねぇ』
メイア『口数の多い奴だ』
ヒビキ『うるせぇ。生きてる証拠だよ』
メイア『その口、いつまで持つかな』
 こんな減らず口が効ける間は問題ない。コクウはそう考えながら巨大なサングリエ・カノンを展開していた。
コクウ(充電完了。・・・・・・・・・そうだそうだ。予想以上のスピード。バジュラがギリギリで反応しきれるほどの速さ。理想的だ。・・・・・・・・・このまま進め。進め。・・・・・・・・・よし此処だ!!)
コクウ『ヴァンドレッド! 逸れろ!!! 次いでサングリエ・カノン発射ぁぁあああ!!!』
 コクウの第一声に見事にディータとメイアが反応した。ヴァンドレッド・メイアがコクウの指定してエリアから緊急離脱する。ヴァンドレッド・メイアの動きに気を取られて足を止めたバジュラ郡がサングリエ・カノンのエネルギーに飲み込まれた。挟撃である程度密集したバジュラにヴァンドレッド・メイアという餌は余程に効果覿面だったのだろう。バジュラのほぼ9割以上がサングリエ・カノンの餌食になってしまった。
コクウ「よし、残りは殲滅戦だ。ドレッド隊に任せるぞ」
 残り少ないバジュラの殲滅をドレッド隊に支持してからコクウはニルヴァーナに通信を入れる。
コクウ「こちらコクウ。敵バジュラの9割以上撃破を確認。ドレッド隊に殲滅戦を指示した。マクロス船団の戦況情報をくれ」
エズラ『了解しました。・・・・・・・・・マクロス船団はバジュラ部隊と未だ交戦中。相当数の戦闘艦が投入されている模様で不利ではありませんが、敵バジュラの絶対数がこちらよりも上なので戦況は五分というところです』
コクウ「了解した。・・・・・・・・・・・・・・・・・・すまないがお頭に繋いでもらえるか?」
エズラ『わかりました』
 コクウが申し出るとすぐにマグノが代わって出る。
マグノ『どうしたんだい? コクウ』
コクウ「勝手を言います。マクロス船団の援軍に行かせてください」
マグノ『・・・・・・・・・どういうことだい? お前はマクロス・ギャラクシーと縁深くはないんだろう?』
コクウ「ギャラクシーとは縁深くありませんが、フロンティアには大恩があります。4年前、漂流していた俺を助けてくれたのがマクロス・フロンティアの人間なんです。黙ってみていれません」
マグノ『・・・・・・・・・ダメと言ったらどうするんだい?』
コクウ「・・・・・・・・・申し訳ないですが、行かせて貰います」
 コクウの意志は固い。もとより、生半可な覚悟でこういったことを言う男ではないことはマグノは重々理解していた。
マグノ『良いだろう。許可しよう』
コクウ「! ありがとうございます」
 許可を貰うや否や、マリシ・デーヴァを反転させたコクウが更なる戦地へと赴いていった。その映像を見ながらマグノは艦内でため息をつく。
マグノ「本当に、色々と厄介な男だよ。あんたも大変だねぇ。リーリ」
リーリ「そうなんですよねぇ。変に義理堅いって言うか。受けた恩の3倍返しは当たり前なんです」
プザム「どうしますかお頭? すでにドレッド隊はバジュラ殲滅を終えています。このまま奴が帰還するのをここで待ちますか?」
マグノ「さて、どうしようか。コクウにああは言った物の、正規の移民船団と付き合いを持ったら厄介だねぇ」
リーリ「そんなことないと思いますよ? このフロンティアの部隊はS.M.S.がメインですから援軍に出ることが政治的に悪い結果を呼ぶということはないと思います。フロンティアだって一枚岩じゃないですが、この戦艦、マクロス・クォーターの人間はなんの主観もなしに信用していい人間が集まっていると思います。・・・・・・・・・とまぁ、ここまでが商人としての意見です。私も個人としてはコクウと同意見なんです。あそこに私も長くいました。コクウほど覚悟のある言葉じゃないかもしれないけども、助けてほしいです」
マグノ「BC、どう思う?」
プザム「ここで、緊急事態という事態を利用して友好関係を得ることで最低限情報くらいはもらえることが出来るかもしれません。さらに、刈り取りの情報を伝えるということが出来るならば援軍に出るのも悪い案ではないと思います」
マグノ「そうだね。・・・・・・・・・よし! 兄ちゃん転舵だ! 援軍に出るよ!」
バート「うぃっす!」
マグノ「ドレッドたちは補給を急がせなよ!!」
 更なる戦闘にニルヴァーナが向かう。


 大型敵戦艦。マクロスの保有物のそれではない。バジュラの母艦だ。ニルヴァーナとの戦闘に出てきたバジュラは小規模だったという意味なのだろう。異様なほどに多くのバジュラ。それらが飛び回る。これが本当の戦争だった。だが、気負いの類は一切ない。奇妙だとは自分でも思う。それほどまでにコクウは落ち着いていた。VF-25メサイアの全高はバトロイド形態で15m弱。マリシ・デーヴァはゆうにその3倍はある。異様な機体が戦場に入ってくれば警戒するのは当然だろう。戦闘区域に入るや否や、マクロス戦闘艦から通信が入る。
ラム『こちらマクロス・クォーター。所属不明機、所属と戦闘区域侵入理由を速やかに示してください。繰り返す。所属不明機、所属と戦闘区域侵入理由を速やかに示してください』
 サウンドオンリーの通信がマリシのコックピットに響き渡る。その通信にコクウは口の端を少しあげてから、通信を返す。
コクウ「マクロス・クォーター! こちら元エイディ商会所属のコクウ・ブラック。機体名マリシ・デーヴァ。フロンティアのデータベースに乗っているはずだ」
ラム『・・・・・・・・・データ照合。確認。コクウ・ブラック。侵入理由は?』
 多少口調が柔らかくなる。別に大した問題ではないが、その言葉にもしっかりコクウは答える。
コクウ「簡単だ。オズマ・リーに借りを返すためだ。こちらの母艦もこの周辺区域でバジュラに襲われた。その際にあんたらを見つけたんで、序に戦わせて貰う」
ラム『・・・・・・・・・え!? ちょっと待って!』
 コクウは一瞬レーダーを見る。知覚できる範囲にバルキリーがいないことを確認する。そして、バジュラが密集している場所に向かってコクウはすでに充電を終了させているサングリエ・カノンを発射する。機体の大きさから鑑みれば予想を遥か上を行くビームの威力に通信機の先が沈黙していた。通信官が別人に代わったようだ。今度はいい年齢の男が出てきた。顔に傷のある歴戦の男という雰囲気だ。
ジェフリー『マクロス・クォーター艦長のジェフリー・ワイルダーだ。・・・・・・・・・君は4年前の彼か?』
コクウ「はい。突然に失礼しますワイルダー艦長。これであのときの借りが返せるとは思えませんが、こんなことしか思いつきませんでした。浅慮と笑ってください」
ジェフリー『今は感謝しよう。こちらの戦闘状況と注意区域など指定周波数で流す。巻き込まれないようにしたまえ』
コクウ「わかりました。ご要望があればいつでも仰ってください」
ジェフリー『わかった。よろしく頼む』
 通信を終えてマリシ・デーヴァは槍を手にバジュラの母艦の方向へと突進していく。


 コクウの戦闘状況を逐一というわけではないがマクロス・クォーターのブリッジで確認されていた。マリシ・デーヴァは近接先頭にも主観が置かれている。そういう意味ではバジュラにスピードでは劣るものの、バルキリーよりは優位に戦闘を進めることが出来るようだった。その戦闘状況を検分してからオペレータの一人で褐色の美人であるミーナ・ローシャンが感想を口にする。
ミーナ「わぉ。このコクウ・ブラックって人、堅気とは思えないですね。確かにバジュラを相手にするにはうってつけの機体ですけども、いきなりで此処までできる人なんていませんよ?」
 そのとおりだった。コクウの戦績は途中参加でありながらS.M.S.全体でもオズマ・リーに次いでの2位だ。これはちょっとしたものなのは誰の目にも明らかだった。
キャシー「・・・・・・・・・当然ね」
 キャサリン・グラス。大統領令嬢がコクウの戦闘ぶりに驚きは感じていないようだった。むしろ、妙に納得したような雰囲気だ。
モニカ「グラス中尉、彼のことご存知なんですか?」
 オペレータ三人娘の一人モニカ・ラングが振り返ることなく聞き返した。
キャシー「ええ。パイロットの適正はオズマを置いてきぼりにするくらいよ。その上これ以上ない破天荒。艦長に敬語を使っていたのが不思議で仕方ないわ」
ラム「話くらいしなくて良かったんですか?」
キャシー「とんでもない。オズマですら手を焼くような男と話なんかしたくないわ」
 その言葉にそう出しのボビー・マルゴが面白いものを見つけた子供のような表情になる。おっさんだが。
ボビー「あら、そんないい男ならちょっと興味あるわ」
キャシー「どうぞ。ああ、コクウは腕っ節もとんでもなく強いから後ろから襲いかかりでもしようと考えているなら骨の2、3本は覚悟したほうが良いわよ」
ボビー「危険な男ってことね♪」
キャシー「とりあえずそれで良いわよ」
 とまぁ他愛もない話をしていると索敵担当のモニカが真剣な口調で報告する。
モニカ「艦長! 所属不明の編隊を確認しました! ならびに別方向からデータにない形質の所属不明郡を確認!」
ジェフリー「!? バジュラの新手か!?」
モニカ「いえ、・・・・・・・・・・・・・・・・・・データ照合中ですが未だにヒットしません!」
ラム「!! 艦長! 前方敵編隊からの通信が入りました! モニター許可を」
ジェフリー「許可する!」
 ラムがメインモニターに通信相手を出した。その相手はまだ妙齢というには少しかかるような少女だった。その当人、リーリウム・エイディが口を開く。
リーリ『はじめまして。私はエイディ商会代表のリーリウム・エイディといいます。マクロス・クォーター艦長のジェフリー・ワイルダー艦長とお見受けします』
ジェフリー「いかにも、ワイルダーだが?」
リーリ『時間がありませんので単刀直入に申し上げます。私たちはコクウ・ブラックと同様にこの戦局において共闘を希望します。まず冒頭に申し上げますが、あの敵郡は我々が引き連れてきたものではありません。今我々に接近している敵郡を『刈り取り部隊』と呼称しています。一通りの敵のデータ一式は送らせていただきますが、この部隊は人間を搾取することを任務として行動している所属不明の部隊です。恐らく、マクロスの皆さんを刈り取るために接触してきたと考えられます』
ジェフリー「唐突だな」
リーリ『存じています。刈り取り部隊との戦闘は我々が担当します。ですが、こちらも万全というわけではありません。取り逃しがないとも限らないので敵データのみで構いません。共有のご許可を至急に頂きたいのですが?』
ジェフリー「・・・・・・・・・良いだろう。・・・・・・・・・そちらの艦船名を教えて貰えるかな?」
リーリ『はい。この船はメジェールとタラークの船、ニルヴァーナです』
ジェフリー「了解した。データはすぐに送らせる。ニルヴァーナ、健闘を祈る」
リーリ『了解しました』
 通信が切れてからキャシーがジェフリーに提言する。
キャシー「よろしいのですか? あのような申し出を勝手に受けて」
ジェフリー「背に腹は変えられん。敵の情報を貰って共闘まで申し出てくれたのだからな。もしも、彼らがああ言ってくれなければ、全艦船の半数を反転させての挟撃戦になってしまうところだった。しかも、勝手に戦えばいいものを逐一こちらに許可を求めてくれた。コクウ・ブラックもそうだったが、礼儀を尽くしてくれる者を無碍には出来んよ」
 ジェフリーの言葉にまだ突っかかろうとしたキャシーの言葉をとめたのは現場からの報告だった。
モニカ「スカル3、ロスト!」
キャシー「スカル1! 何が!?」
オズマ『ルカが敵に食われた!』
ボビー「食われた?」
キャシー「撃墜されたの?」
オズマ『違う。あの船がルカを捕獲して飲み込みやがった』
アルト『ルカぁぁぁぁぁああーーー!!!』
 彼の言葉がマクロス・クォーターのブリッジにこだました。


 通信を終えたリーリはエズラと通信席を交代する。
リーリ「ありがと、エズラ」
エズラ「どういたしまして」
 これでとりあえずリーリのお役目は終了した。
マグノ「よくやってくれたね」
リーリ「いえ。お頭には感謝しています」
マグノ「構わんさ。そのおかげで『刈り取り』の奴らの情報を最高の形でマクロス・フロンティアの連中に渡すことが出来たんだ。当初の目的を考えれば最上の結果だよ」
プザム「そのとおりだ。バジュラといったな。その情報も手に入る。それに、ニルヴァーナ一隻で戦うよりは遥かにましだ」
マグノ「よし、ドレッド隊発進させとくれ。コクウがいないからって尻込みするんじゃないよ」
 マグノの言葉を受けてドレッド隊が編成を組みなおす。コクウの作ったプランを参考にして、さらにメイアが手を加えたものなのだろう。敵は巨大な刈り取り船だった。まだ闘ったことのないタイプだが、それでもやるしかない。
 そんな覚悟を見せる中、エズラがきょとんとした顔をする。大した問題でもないのだが、気になってしまっているのだろう。くるりと振り向く。おっとりした声で喋る。
エズラ「リーリ、たぶんマクロス・フロンティアからだと思うんだけども歌が聞こえるの」
プザム「歌?」
 リーリではなくプザムの方が速く反応した。それにリーリは『あー』と、思いついたように答える。
リーリ「そうだった。マクロスって言うのはね歌を流すんだよ」
マグノ「歌ってあの歌かい?」
リーリ「たぶんその歌です」
マグノ「何の為に?」
リーリ「昔は違ったようですが今は兵士の意識の高揚の為だと思います。ちょっと、ごめんエズラ。声を聞かせて」
 そういうとエズラはその音をブリッジに流す。かなりテンポのいい曲だ。だが、リーリが知りたかったのはその声の主だった。数秒聞き入ってから
リーリ「この声は・・・・・・・・・シェリル・ノームか。昔はファイヤーボンバーが主流だったのに。・・・・・・・・・そうか。彼女はマクロス・ギャラクシーの出身。なら適任か」
 リーリが一人納得する中、プザムには他に気になることがあるようだった。タイミングを見計らってからリーリに向き直る。
プザム「この歌は高揚以外を目的としていないんだな?」
リーリ「?? それはこの歌が何かの洗脳とかそういう別な目的で流されているんじゃないかって言うことですか?」
プザム「有体に言えばそうだ」
リーリ「うーん。ないと思いますよ。マクロスは文化を大事にするから、その延長くらいにしか思っていません。あぁ、昔はそっちのほうがメインだったそうですけども。効きたくなければ消しても問題ないですよ。 でも、私は結構こういうノリは好きですけどね」
セルティック「あー、私も好きーー!」
マグノ「随分と面白いことをするんだねぇ、マクロスって言うのは」
リーリ「ちょっと複雑な歴史があるからですよ。それはまた機会があればご説明します」
 『射手座☆午後九時 Don't be late』。この曲はしばしの間、ニルヴァーナのブリッジに流れることになる。
 歌とは別にうるさいと素直にメイアは思ってしまった。原因はジュラだ。
ジュラ『いい!? あんたは今度私と合体するのよ! そして、優雅な姿で戦うの!』
ヒビキ『そんなん知るか!』
ディータ『ダメェ!! 宇宙人さんはディータと合体するの!!』
 コクウの戦闘指揮は各員にちょうどいいくらいの緊張感を与えていたのかもしれない。いなくなった途端にこれではメイアはため息の1つも尽きたくなってしまう。
メイア『いい加減にしろ。合体に頼るな』
ディータ『はーい』
 返事をしたディータはまだましだろう。ジュラは合体する気が満々といった表情だ。
メイア『編隊を崩すなよ。バジュラよりは装甲が薄いといってもそれでもこっちよりは硬いんだ。逸れるなよ』
ドレッド隊『『『『『『了解!』』』』』』
 敵部隊は母艦1にそこから発進する刈り取りの小型機が多数だった。問題なのは敵の回収船。この形が異様だった。一言で表現するならばユリ型の母艦だった。戦闘が始まる。




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