粋狂いな人々・弐式

スーパーロボット大戦・涅槃U

リアルルート 第壱話 『シルバースノー・ウェディング』 後編


第壱話 『シルバースノー・ウェディング』 後編


 ダンナーベースは大盛況だった。先に出撃した2機が苦戦している。火力も練度も高いはずなのだがその卓越したパイロットの予測を敵の擬態獣は超えていたようだった。そんな中で戻ってきた男が1人。
小波「搭乗者交信できません」
ゴオ『すまん待たせた! 今から出る!!』
桃子「猿渡さん、出撃ですか!?」
ゴオ『声が小さい!!!』
桃子「は、はい! 了解です!!」
小波「最後に出たのいつ?」
桃子「去年の大雪の日」
小波「って言うか交通整理じゃん」
桃子「って言うか何故タキシード?」
霧子「状況は!?」
 急ぎダンナーベースに戻ってきた霧子が状況を確認する。
影丸「不利な接近戦に持ち込まれ、交信不能です」
 霧子の言葉に黒の司令官が答えた。
霧子「よし! ゴーダンナー出撃準備!!」
小波「プログラムスタート!」
桃子「本基地は第一次非常体勢に入りました。非常マニュアルに従いコードαを発令。繰り返します・・・・・・・・・」
影丸「発進口開け!!」
ゴオ『ジェットボーイ始動!』
桃子「進路クリアー」
小波「発進準備完了」
影丸「ゴーダンナー、出撃!!」
ゴオ「GO!!! 死ぬんじゃねーぞ 光司、静流!! 待ってろよ! クラブマリナー!!」


 ダンナーベースから発進したのは青い機体だった。それを車から降りたハデスが一瞥する。
ハデス「急がないとネージュが敵と認識されかねねーな」
 ハデスも急いでダンナーベース内に走る。


小波「通信回復! Gガンナー交戦中です!!」
 更にパイロットの声がベース内に響く。
静流『マルチコンデンサー停止。ストロングバスター大破! ウイングキャノン使用不能! ガドリングアーム残弾ゼロ。・・・・・・・・・ここまでか』
 諦めたと思われる言葉。だが、ベースの人間の誰もが諦めの言葉とは受け取らなかった。
静流『これがホントの奥の手ね』
 擬態獣に剥ぎ取られた装甲の中から女性的なシルエットのロボットが出てきた。そして、腕に内蔵されたガドリングガンを発砲し、一端敵と距離をとる。
桃子「Gガンナーバトルユニットを強制解除しました」
小波「静流さん! コアガンナーの装甲じゃ12号の攻撃は受け切れません」
静流『ゴオが来るまで持たせて見せるわ!!』
 12号がシールドを展開。広範囲の攻撃に露骨にコアガンナーが受けてしまう。ビルに叩きつけられたコアガンナーの中で漏らすように静流が口にする。
静流『ああっ!! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゴオが・・・・・・・・・来るまで!!」
 敵の止めを刺すべく、動き出した。別にそれほどの巨大なパワーでなくともコアガンナーならば破壊するのは容易だろう。しかし、その攻撃は実行されなかった。青い機体が空中から馳せ参じる。
ゴオ『おりゃああぁぁ!!!!』
 ダイナミックな蹴りが擬態獣に入る。
ゴオ『生きてるか!!?』
静流『私を誰だと思ってるの? 言った通り、飛んできたじゃない』
ゴオ『すっぽんぽんにひん剥かれちまって、ズタボロじゃねーか』
静流『自分で脱いだのよ』
ゴオ『光司は!?』
静流『死んだわ』
光司『死んでません』
ゴオ『ん!!』
 素早い反応といって良いだろう。ゴオは擬態獣の攻撃を察知すると繰り出すはずだった。腕に己の機体の腕を回すように捕らえて動きを封じる。
ゴオ『馬鹿野郎!! こんなになっちまいやがって!! うあああっぁぁぁぁぁあ!!!』
 更に力を入れ、敵の腕を引きちぎった。
桃子「一撃!?すごいパワー」
影丸「あれがお前達の知らない、奴の力だ。」
 力勝負は不利と判断したのか敵擬態獣は距離をとると取り込んだクラブマリナーという名の機体の武装であろうアンカーを発射した。
シズル『ゴオ!!』
ゴオ『何!!?』
影丸「ドリルアンカー!?」
ゴオ『ぐぁぁぁああああーーー!!』
 その巨大な力のアンカーに吹き飛ばされ、数棟のビルをゴーダンナーが貫通していく。
霧子「巨人・・・・・・・・・今だ目覚めずか」
小波「・・・・・・・・・博士! 旧ダンナーベースの緊急迎撃システムが作動しています」
霧子「何だって!?」
小波「永久封印ドッグ起動プログラム・・・・・・・・・オン!? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・そんな?」
桃子「ネオオクサー!?」
小波「恐らく被弾が原因と思われます」
桃子「侵入者です。・・・・・・・・・? ・・・・・・・・・博士、司令、面会者がベース外に来ているようです。その・・・・・・・・・至急な用件だそうですが?」
影丸「そんなのは後回しだ」
桃子「それが・・・・・・・・・擬態獣迎撃の件で責任者に会わせろと言っているそうなのですが?」
霧子「?? 会っている時間はないわ。どこに来ているの? 受付?」
桃子「はい」
霧子「通信繋いで」
桃子「了解です」
 直ぐに桃子がブリッジと受付の映像を繋げる。そこにいたのはかなり精悍な顔をした男だった。スラブ系だろう。
霧子「ダンナーベースの責任者の葵霧子です。あなたの所属と氏名を述べた上で用件を聞きます。手短に」
ハデス『はじめまして葵司令。俺はHMCのパイロット班責任者のレオニト・ハデスだ。これから到着するであろうお届け物の説明に来た』
霧子「HMC? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ヘムルートとマオ・インダストリーの試験会社!? どういう意味?」
ハデス『簡単に言えば・・・・・・・・・俺はご祝儀の説明書だ』
影丸「貴様、ふざけているのか!」
ハデス『そんなつもりはないですよ。なら、実質的に言います。これからダンナーベースと擬態獣との戦闘にウチの機体が横槍を入れます。そちらの戦闘行動に邪魔するつもりは毛頭ありません』
影丸「馬鹿な! どこの組織にも属そうとしないヘムルートとマオ社の子会社である貴様等がダンナーベースの戦闘に力を貸すというのか!?」
ハデス『今回の戦闘においてのみだがな』
霧子「信用できないわ。何が目的?」
ハデス『だから言ったろ? ご祝儀だ。・・・・・・・・・これ以上の説明が必要なら俺をブリッジに入れろ。葵司令、あんたの知り合いに直接説明させる』
影丸「危険です司令。直ぐに拘束すべきです」
霧子「1人で来る理由にはならないわ。・・・・・・・・・わかったわ。ブリッジに上がることを許可します。受付に連れて来て貰って」
ハデス『どうも』
 通信が切れる。話が漏れることがないので影丸がその心境を吐露する。
影丸「よろしいのですか? あのように得体の知れないものを?」
霧子「企みがあるなら1人で来たりはしないわ。それよりも、ネオオクサーはどうなってる?」
 霧子は頭を直ぐに切り替えた。


静流『ゴオ逃げて!!』
ゴオ『ぐぅああっ!! ぐはぁあっ!』
静流『あなたの間合いで戦えなければ勝ち目はないわ』
ゴオ『ぐぅうああっ!』
静流『ゴオ!! 無駄死に止めて』
ゴオ『くそっ! もう後がねぇ』
 後には街。前には擬態獣。もう最悪の状況下だった。ゴオと静流は辛酸を舐めたような表情になる。引けない中、別な方向から攻撃が来る。フォトン・ペネトレイター・バレット通称FP弾。この銃弾が擬態獣を貫いていく。
ゴオ『何だ!? 光司か?』
 遠距離射撃だ。近くに静流がいるので彼女ではない。銃弾の飛んできた方向にいたのゴオも見たことのない白い機体。いや、銀色の機体なのだろうか。その機体が間違いなく擬態獣に向けて発砲した。
ゴオ『白い機体!? ベース!! あれは何だ!!?』
霧子「味方らしい。細かな説明はまだ私たちも受けていない。わかり次第知らせる」
ゴオ『・・・・・・・・・・・・・・・・・・了解』
 ゴオの言葉を受けてブリッジに入ってきた男が1人。ハデスが到着する。
ハデス「いいタイミングだな」
霧子「さぁ、説明してもらえるかな? あれは何だ?」
ハデス「俺から説明するよりもパイロットに説明させたほうが早いんですよ。・・・・・・・・・ああ、そこの腹黒そうなオペレータさん」
桃子「・・・・・・・・・・・・・・・・・・私!!?」
ハデス「そう。あなた。周波数1224.2。更に暗証コードでH722FAA。入力してください」
桃子「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
霧子「やっておやり」
桃子「了解」
 直ぐにキーボードを叩いて通信が繋がる。そこに現れた女性の顔を見て流石に驚きの表情を受けべたのは霧子だった。
霧子「・・・・・・・・・フローさん?」
ネージュ『はい。おば様』
霧子「・・・・・・・・・・・・・・・・・・何の冗談なのかしら? 説明してもらえるのよね?」
ネージュ『はい。私は杏奈を親友と自負しています。これが杏奈に送ることが出来るプレゼントです。・・・・・・・・・親友を未亡人になんてさせません』
霧子「あなた、HMCの人間だったのね。・・・・・・・・・でも、幾ら新型を持ち出しても擬態獣は実戦経験の浅いテストパイロットが出来るようなことじゃ」
 霧子の言葉にいつの間にか空いた席に座っているハデスが笑い声を上げる。
ハデス「ふははは。・・・・・・・・・経験の浅いパイロット? 冗談でしょうよ。ネージュ、いや、フローレンスは現在確認される中でも最強クラスのパイロットですよ?」
霧子「何の証明があって?」
ハデス「別にありはしませんがね。・・・・・・・・・別に気にすることはないでしょう? あなた方の使命は街を守り擬態獣と戦うこと。その戦いに俺等が勝手に横槍を入れるんです。死んだって文句は言いません。あなた方へのお願いはただ1つ。ネージュの機体の情報の漏洩の防止のみをお願いしたい」
霧子「条件が良すぎるわね」
ハデス「だから、ご祝儀ですって。・・・・・・・・・・・・・・・・・・まぁ、ダメって言っても勝手にやりますがね。・・・・・・・・・言いたいことは以上です。俺帰りますので」
影丸「待て!! そんな勝手なことを」
ハデス「俺を拘束しますか? 構いませんよ? 俺は法に触れるようなことは何もしてませんからね。そっちに善良な民間人を拘束する権限はない。そっちの立場が危うくなるだけです。更に言えば、俺はネージュが死ぬなんて微塵も思っちゃいないんですよ。だから、心配もしません。軍神の育てた天才にそんなもの無用ですから。まぁ、戦闘が終わるまでは受付にいますよ。何かあったら呼んでください」
 それだけ言い捨てると本当にハデスはブリッジを後にした。そして、その行動をネージュがフォローする。
ネージュ『あの、おば様ごめんなさい。ハデスはいつもはもっと気さくな人なんだけども・・・・・・・・・』
霧子「・・・・・・・・・・・・・・・・本当に良いの? フローさん」
ネージュ『私が親友の為にしてあげれることはこれくらいですから。・・・・・・・・それに、私の尊敬する人はいっつも言っていました。絶望だけはさせないって。私もそう思います。杏奈に絶望なんてさせません』
霧子「・・・・・・・・・・・・・・・・わかりました。HMCテストパイロット、フローレンス・K・リューデルメを登録します。・・・・・・・・フローさん、機体名教えてもらえる?」
ネージュ『はい! ありがとうおば様! ・・・・・・・・この子は・・・・・・・・グリューです。ツヴァイト・グリューヴルム』
霧子「ツヴァイト・グリューヴルム? ・・・・・・・・2番目の蛍?」
ネージュ『はい!』
影丸「味方認識に登録急げ。ゴオと静流にも大至急伝えろ!!」
桃子・小波「「了解!」」
 オペレータが大至急に伝える。強敵構えにいるにも関わらず、もう一方に気を使うのはパイロットにとっては苦痛でしかない。数拍を置いてからネージュはゴオに通信を入れる。
ネージュ『・・・・・・・・猿渡さん。話は聞いてもらえましたか?』
ゴオ『君は・・・・・・・・。君は確か杏奈の?』
ネージュ『はい。フローレンス・K・リューデルメです。HMCからの救援として今作戦に参戦します。よろしくお願いします』
ゴオ『ダメだ!! 君みたいな女の子が戦うなんて!!』
ネージュ『優しいんですね。猿渡さんは。でも、問題ありません。私はもうとっくの昔に覚悟を済ませています。・・・・・・・・! あまり敵さんも待ってくれないみたいですね。猿渡さんは体勢を整えてください。こっちは時間を稼ぎます』
ゴオ『だから!!』
 一方的にネージュが通信を切った。こういう手合いは説得よりも現物を見せるほうが早い。そうネージュは経験則で知っていた。
 ツヴァイト・グリューヴルム。ネージュの搭乗する機体名だ。はっきり言うとこれはセツヤやネージュのような特殊部隊員専用に開発された機体だったりする。過去の戦闘においてセツヤの異様なまでのレスポンスに追従する為に作られた機体だ。勿論レスポンスだけではない。強力さよりも柔らかさ。柔よく剛を制するという言葉をセツヤはエトランゼのデータからそれを明らかにしていた。そんなデータを活用すべく開発されたのがこのツヴァイト・グリューヴルムである。ネージュがテストパイロットをしている由来がここにある。素体スペックは高いが、決して強力な機体ではない。だが、この柔らかさとレスポンスは他の機体の追従を許さない。
 グリューはエクセス時代から使い慣れている多目的小型マシンガンの派生機、ロレンツォUの弾装を取り替える。そして、動き出した。海上での戦いだ。だが、ネージュは巧みにバランスを取りながら水上をまるでホバークラフトで浮いているかのように移動しながら先ほど放ったのと同様のFP弾を斉射する。その弾丸はほとんど外れることなく満遍なく擬態獣に着弾していく。擬態獣に大穴が次々と開いていく。間違いなく効果があった。擬態獣はたまらずドリルアンカーを発射するがグリューにはかすりもしない。
 ゴーダンナーで確認しながら思わずゴオは口にした。
ゴオ『・・・・・・・・すげぇ』
 これは新米とは違う。間違いなく歴戦の猛者の動きだった。気負いも緊張もない。
影丸「まさかここまでとは。マオ社とヘムルート社。戦時中でも他の部隊への強力をことごとく断っている企業がこのような機体を開発していたとは・・・・・・・・」
霧子「問題はそこじゃない。・・・・・・・・・・・・・・・・小波、フローレンス機の的中率は?」
小波「はい? 的中率ですか。・・・・・・・・今計算します。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え!?」
霧子「どうだ?」
小波「あの、多分データミスか入力ミスだと」
霧子「いいから」
小波「・・・・・・・・100%です」
影丸「!!!」
霧子「こんな馬鹿げた数字が出るようなことはない。どんなに最強の機体を作ろうともこんなことはありえない。これはもう過去の概念を超えた機体なんだろうね・・・・・・・・。マオ・インダストリー社、ヘムルート社、HMC。それとフローレンス・K・リューデルメ・・・・・・・・」
 踊っている。このように表現しても誰も文句は言わないだろう。それほどまでに美しい動きだった。そんな動きの最中にもネージュは周囲の反応を逐一確認している。
ネージュ『猿渡さん』
ゴオ『静流は助けた。だが、ゴーダンナーのエネルギーはもう底尽きかけてる!』
ネージュ『困りましたね。本来グリューはテスト機ですから。手持ちの火器しか用意できなかったんです。これほどまでに耐久値が高いとは思いませんでした。残弾はFP弾装があと2つだけ。効いてはいるみたいですけど、敵さん回復早いですし致命傷にはならないみたいです。時間稼ぎしか出来ませんよ?』
ゴオ『! 大丈夫だ。フローレンスさんは弾が尽きたら逃げてくれ。あんたは最後まで付き合う必要はない』
ネージュ『出来ませんよ、そんなこと』
ゴオ『これが俺達の使命だ。あんたには関係ない』
ネージュ『・・・・・・・・・・・・・・・・お断りします』
 ネージュは不覚にも一瞬だけ語彙に力を込めてしまった。そのせいでという訳ではないが擬態獣がゴーダンナーに攻撃を仕向ける。だが、その攻撃はゴーダンナーと擬態獣との間へと突然現れた機体によって阻まれた。
???『エンジェルウォール!!!』
 何かの斥力磁場のようなものだろうか。敵の攻撃がそのピンク色の女性的なシルエットの機体の発生させた障壁によって阻まれる。
桃子「気絶しました」
霧子「電気ショック」
???「!! グラビティ・ボンバー!!」
 現れた機体の掌から発射された。擬態獣の動きが何かに縛り付けられてように散漫になる。恐らくそういう武器なのだろう。その間に、ネージュは通信を入れる。
ネージュ『?? 援軍ですか?』
 ネージュは敵に節約しながらも発砲しつつ、横目で現れた機体を一瞥した。
影丸「カウントダウン! ブレイクアウトまで55秒」
桃子「了解」
 どうやらこの機体の出現はダンナーベースの人間は織り込み済みのようだった。だが、ゴオはそうではないらしい。
ゴオ『何故オクサーがここにいる! 封印したはずだ!!』
???『助けに来た!』
ゴオ『杏奈か!!』
ネージュ『うそぉ! 杏奈!?』
杏奈『フロー? フローなの!?』
ネージュ『あちゃー。知られちゃったよ。杏奈には知られたくなかったのに』
杏奈『なんで!? 何でフローが戦ってるの!!』
ネージュ『・・・・・・・・ゴメンね杏奈。私も色々事情あるんだよ。結構ピンチだからさ、・・・・・・・・杏奈になら、生き残ったら教えてあげるよ。今は戦わせて。親友のために』
杏奈『・・・・・・・・フロー』
霧子「能書は後だ。お前達、合体しな」
ゴオ『が、合体って!?』
霧子「ダンナーのエネルギーはもうほとんどない。合体して一気に蹴りをつけるしかないだろう」
ゴオ『・・・・・・・・しかし』
杏奈『私も一緒に戦う』
ゴオ『バカ! 素人に何が出来る。早く逃げろ!』
杏奈『バカって何よ!! ゴオちん見たいに戦えないけどこうやって守ることくらいはできる!!』
ゴオ『ダメだ帰れぇ!!』
杏奈『嫌だ!! 病める時も健やかなる時もどんなときも一緒!! 私たち結婚したんでしょ!!』
桃子「けっ!」
小波「ケッ!?」
静流『・・・・・・・・こん??』
霧子「ちなみに紹介が遅れたが私の娘だ。・・・・・・・・よろしくな」
桃子・小波「「えぇぇぇええええーーーー!!!」」
影丸「残り30秒」
ネージュ『あははははははははは』
ゴオ『ダメと言ったらダメだ。俺はお前を戦いに巻き込む為に一緒になったんじゃない!』
杏奈『そんなぼろぼろになって戦ってるのに黙って見ているだけなんて、私は嫌!!』
ゴオ『・・・・・・・・・・・・・・・・わかってくれ。俺はもう二度と愛するものを失いたくないんだ』
杏奈『ゴオちんだけじゃない。ここで負けたらもっとたくさんの人が戦いに巻き込まれちゃう。みんなの大切なものをなくしちゃう』
ネージュ『猿渡さん、何か有効な手段があるなら使用してください。・・・・・・・・あなたの考え方は立派だと思います。好感も持てます。でも、どんなに辛くても、ここで誰かが傷つけば後悔するのはあなたなんですよ。戦いが危険だというならあなたが杏奈を守ればいい。戦いながら。それが出来ないとは言わせない。絶対に! 猿渡ゴオ!!』
ゴオ『くぅ・・・・・・・・・・・・・・・・、ダメだダメだダメだ!! 俺はいやだぁああ!!』
桃子「ブレイクアウトまであと10秒」
影丸「覚悟を決めろゴオ!!」
杏奈『このバカちんが!! それでも男か? 泣き言言うな!! そのロボットは何の為だ! 大事なものを守る為じゃないのか!! 名前も知らない町の人は大事じゃないのか!!?』
ゴオ『うおおおおおぉぉぉぉおおおおおお!!!!!』
 その瞬間、ゴーダンナーとネオオクサーが白い光に包まれた。
小波「12号活動再開。ゴーダンナー合体します」
霧子「フローさん、頼めるかしら?」
ネージュ『露払いですか? 残り弾装一個。使っちゃいますよ?』
霧子「恩に着るわ。最高のご祝儀よ」
ネージュ『どういたしまして』
 グリューが動き出した。というよりも動き出した擬態獣に動きをあわせたという表現が正しい。異形の敵の行動であってネージュにしてみれば動きが読めない相手ではない。1発1発を無駄にしないように丁寧に撃ち放つ。
ゴオ『ドライブチェーンジ!! ゴォ!!』
杏奈『ドライブチェーンジ!! ゴォ!!』
 ダンナーの胴体部が開いてその場所に示し合わせたように変形したオクサーが収まる。
ゴオ・杏奈『『ダンナー!! オン!!』』
ゴオ『リボルバー・・・・・・・・オープン!! ・・・・・・・・・・・・・・・・ゴーダンナー、ツインドライブ!!』
 ゴーダンナーの色が青から烈火の色の変色する。グリューの中で射撃を続けながら思わずネージュは口にしてしまう。
ネージュ『何とまぁ。色んな機体見てきたけど・・・・・・・・これは一際すごいね。・・・・・・・・ふふふ。残弾ゼロ。猿渡さん、もう露払いも限界だよ。任せるからね』
ゴオ『了解だ!! 協力に感謝する!』
 数秒間の動きは完全にネージュによって封じられているようだった。だが、回復しつつも擬態獣はドリルアンカーをゴーダンナーに撃ちはなってくる。
ゴオ『カウンター・・・・・・・・ナックル!!!』
 炎を宿らせた拳を飛ばした。しかもあの強力な敵のアンカーを貫いて威力が収まることなく敵の胴体までも吹き飛ばす威力だ。
ゴオ『行くぞ・・・・・・・・杏奈!!』
杏奈『はい!』
ゴオ『くらえええぇぇぇぇええーーー!! ああああぁぁーー!! ハアアァァァァーーーートッ!!! ブレイカカァァァァァアアアーーー!! ・・・・・・・・今だ撃てぇ!!』
杏奈『はああぁぁーー!!』
 飛ばした拳ですらあれほどの威力があったというのに、今度はそのゴーダンナーが敵にものすごい慣性を残したままで敵に突進。その拳で敵の胴体をぶち抜いた。更に杏奈がトリガーを引いたことでゴーダンナーの内臓武器が始動。一瞬にして擬態獣が凍結されてしまう。
ゴオ『さらばだ。クラブ・・・・・・・・マリナー!! お前が守ったこの街を・・・・・・・・お前が守りたかった人々を・・・・・・・・お前の手に掛けはさせない』
 恐らくは最後の膂力だろう。それを用いてゴーダンナーが飛び上がる。そして、一気に固まって身動きが完全に取れない擬態獣に向かって滑空する。
ゴオ『ソオオォォォォルッ!! ブレイカカカカァァァーーー!!』
 飛び蹴り。表現すればこれだけなのだが、中身は完全に別物だった。凍って動きの取れない擬態獣をゴーダンナーごと貫通させて完全に爆散。塵と化してしまった。
ネージュ(これがダンナーベースと各国のベースでも最強と謡われるゴーダンナーか。でも、まさか杏奈の旦那さんがゴーダンナーのパイロットだとは思わなかったなぁ)
影丸「任務完了だ。これより接収を開始する」
霧子「フローさん、どうする?」
 まぁ、ダンナーベースの司令としては当然の質問になるだろう。突然参加とは言え、世話になった組織の機体を無碍にするわけには行かない。そういう意図が込められているのだろう。
ネージュ『うんと・・・・・・・・、機体の回収作業とかはいらないです。機体は自動制御でHMCに返しますから。私はちょっと杏奈やおば様に話すこともありますから残ります。それと、口約束ですけどもグリューのデータはそちらの観測データの一切からの削除をお願いしますね』
霧子「わかっている」
ネージュ『ハデスがいるので迎えに来てくれると思います。直ぐに挨拶に伺いますので』
霧子「了解した。私も少し話があるんだ。お茶菓子を用意しておくわ」
ネージュ『はい♪』
 ネージュは直ぐにグリューを着陸させてからリモートプログラムを走らせてグリューをHMCのシャンディの元へと送った。グリューの進む方向とシャンディへの連絡を済ませてから暫くしてハデスが現れる。恐らく着陸場所を読んでいたのだろう。思ったより来るのが早かった。
ハデス「見事だったな。実戦は久々のはずだが、鈍ってねぇ」
ネージュ「どうも。でも、毎日ハデス相手にグリュー動かしてるから、鈍りようはないよね」
ハデス「そうかもしれんけどな。それで? どうすんだこれから」
ネージュ「一応、挨拶には行くよ。勝手に横槍入れたのこっちだし、データの削除はしてくれるみたいだし」
ハデス「どうだかな。ベースは軍の息も国連の息もかかってる」
ネージュ「もう! ハデスは心配性だよ!」
ハデス「お前は楽観過ぎだ」
ネージュ「へへへ、褒められた」
ハデス「ったく。褒めてねーって。お前だからな。言うべきこと、言っちゃまずいことは心得てんだろ?」
ネージュ「勿論」
ハデス「問題は、向こうさんが俺達のことどこまで知ってるかだな?」
ネージュ「それは無理だよね。割れてるよ。私たちのセキュリティはユメコやジャス達ほど徹底されていないから。手は出さないと思うけどもね」
ハデス「それでも行くってのか?」
ネージュ「杏奈のお母さんは変なことしないよ。部下の人の暴走くらいは考えられるけども、もしそうなっても小娘1人を捕らえるくらいの感覚で来るならどうにでもできる」
ハデス「そうか。・・・・・・・・そうだな。いざとなったら俺は自分のことだけ考えることにするさ」
ネージュ「そうして♪」
 ネージュは話を終えると車に乗り込む。結婚式に出席したように、彼女はドレスのままなのだが、ハデスはその姿を見てやはりネージュの技能の高さに内心舌を巻いていた。コックピット内での動きというものは熾烈を極める。そんな中でもネージュのドレスには皺はあっても破れているような箇所は一箇所もなかった。卓越した身のこなしがなせる業なのだろう。その結果にハデスは内心苦笑いを浮かべながら運転席に回った。


 ダンナーベースに到着するとネージュとハデスは先ほどとは打って変わって丁重に案内され、指令室にまで案内される。そこには杏奈の母親である霧子と影丸がいた。まずはネージュは丁寧に開口一番頭を下げる。
ネージュ「わがままを受け入れてくれてありがとうございました。そして、ごめんなさい」
霧子「助かったのは事実よ。礼を言うのはこっち」
ネージュ「なら、恐縮するのはやめます。お役に立てたのなら無理した甲斐がありました」
霧子「しかしまぁ、娘の友人にしては随分と不釣合いなお淑やかな子と思ったら、まさか凄腕のパイロットだったとは」
ネージュ「凄腕なんてそんな。私なんてまだまだ」
霧子「アレでかい。他のパイロットが見たら二の句を失うような行動しておきながら」
影丸「司令、例の話を」
霧子「わかってる。忘れちゃいないよ。・・・・・・・・・・・・・・・・フローさん、あなたダンナーベースでパイロットをするつもりはないかい? あなたなら特別待遇で向かいいれるつもりだけども?」
ハデス「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 自社の社員の引き抜き。直属の上司であるハデスならばこれを止めるべき立場にいるのだが。ネージュの隣に座ってただ出されたコーヒーを飲んでいるだけだった。意にも介さない。
ネージュ「ごめんなさい、おば様。お誘いは嬉しいんですけども、私にも色々都合があるんです。HMCの待遇にも満足していますし」
 霧子はハデスを一見してから取り直すように笑う。
霧子「そうらしいね。」
影丸「いや、考えるだけでも考えてみてくれないか? フローレンス嬢のパイロットとしての技量は軍の高水準のラインを完全に凌駕している。こんな逸材ならばどこでも招き入れたいと思ってしまうのは当然だ」
ネージュ「私くらいのパイロットなんて五万といますよ?」
ハデス「・・・・・・・・・・・・・・・・いねーよ。・・・・・・・・まぁ、予想通りの話になったな」
影丸「レオニト・ハデス。私は君も相応の待遇で招き入れても良いと思っている。共に考えてもらえないか?」
ハデス「・・・・・・・・・・・・・・・・俺のことも誘うってことは・・・・・・・・」
ネージュ「そうだねぇ。私達の経歴がばれてると考えるべきだろうねぇ」
影丸「!!」
霧子「・・・・・・・・・・・・・・・・勝手に調べたことは謝罪させてもらう。君等が4年前のあの戦争の・・・・・・・・孤独戦争を終わらせた者達だったとは」
ネージュ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ハデス「・・・・・・・・・・・・・・・・」
 ネージュもハデスも共に押し黙ってしまう。
霧子「・・・・・・・・・・・・・・・・歴史的な観点から見れば、あの戦争は先の見え過ぎた男、出来すぎた男の取った英断のおかげで今の世界があるといっても過言ではない。だが、奴はあの当時の危機感のない世界では受け入れられなかったように思える。BETA、ラムズ、シャヘル、擬態獣といった世界共通の敵の猛威に振るわれてこそ、彼の手腕は最大限に発揮できるのではないかと思っている」
ハデス「・・・・・・・・そんな小難しいことあの人は考えちゃいなかったさ。時代が如何の、先が如何の、そんなことあの人は考えない。考えていることは救うことだけだった」
霧子「・・・・・・・・・・・・・・・・救う?」
ネージュ「あの人は・・・・・・・・セツヤは心を救おうとしてたんです。目の前の人を絶望させない。肉体の死では人は死なない。精神の死こそ本当に人が死ぬって・・・・・・・・思っていたんだと思います」
霧子「・・・・・・・・心を救う? だが、それは・・・・・・・・」
ハデス「そう。大事な者を、人を守るよりも、難しい。俺の知る限りでその道は最難関な志だった。だが、あの人はやりぬいた。あの時、世界中に希望を残した。そして、その希望を貫いて世界を救ったんだ。・・・・・・・・彼は俺等の誇りだ」
ネージュ「私たちは彼の志を継いでいるんです。あなた方のやり方が彼のやり方から反れるとは思わないけども、充分だとも思わないんです。これが・・・・・・・・お誘いを断る本当の理由です」
霧子「・・・・・・・・・・・・・・・・なぜ、私達の前でその話を」
 ネージュはコーヒーを一口含んでからにっこりと笑う。
ネージュ「何ででしょうね? 私が信用しているからだと思いますね」
霧子「!!」
ハデス「ネージュ」
ネージュ「そうだね。そろそろお暇します。あ、杏奈に会ってから」
霧子「案内させるわ」
 ネージュとハデスが立ち上がって司令室を後にしようとすると
霧子「フローさん!」
 霧子が声を荒げてネージュを呼び止めた。目を大きく開いて驚いて振り返るネージュに霧子は深々と頭を下げた。
霧子「・・・・・・・・本当にありがとう。娘のために無茶をさせて。母親として、感謝しています」
 恐らくは霧子はネージュを裏切らないだろう。ハデスは徐にそう思ってしまった。この人はそれができない。背に腹が変えられない状況に追い込まれない限りは裏切ったりしない。そんな霧子にネージュは再び愛くるしい笑顔を向けて
ネージュ「気にしないでください!!」
 そう言って答えた。




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