そして暮らしは楽になる。
アクセシビリティとは、ある資源に対してアクセスすなわち利用や接続する際のしやすさのことであります。
たとえば、パックになった蕨もちを食べようとするときに、蓋になっているフィルムをはがそうとします。フィルムの角はやや飛び出していてちょうど人差し指と親指でつかんで引っ張ることができるように見えます。ところが、この透明なフィルムと、プラスチックのパックは強力に接着されていて、フィルムを剥がして開けようと引っ張ってみても開かないどころか、フィルムの1層目が剥がれて2層目はパックの表面に残ったままということになります。もはや手で開けることはできません。
仕方なしに、ユーザーはナイフなどを使ってフィルムを切り開きます。使用したナイフの刃先には蕨もちがついてしまいますので後で洗わなければならないでしょう。続いて袋に入ったきな粉をかけますが、この袋がまた開かず、力んで開けようとすると開いた瞬間に目の前が黄色に染まります。
さて、今日では、wwwにおいて同じような現象がおきています。誕生から10年を待たずしてインターネットサービスの代表としての地位を築いたweb上には、皆さんもご存知のように星の数ほどの蕨もちがあります。これら無数のの蕨もちの中で、いったいどれだけの蕨もちが十分なアクセシビリティを有していると言えるでしょうか。
蕨もち職人の多くはデザインにこだわります。きれいな飾りをつけて派手な蕨もちを作る者も居れば、ある者はスクリプトを使って動的に変化する蕨もちを作るでしょう。
しかし、その一方で、限られた環境で蕨もちを食べようとしている人たちにはそれらの蕨もちが大変食べにくいことがあります。ある人は大変小さな皿を使っているかもしれないし、ある人は目が不自由なため、手探りで食べているかもしれません。そういった人たちにもすぐにおいしい蕨もちが食べられるような環境こそがアクセシビリティのある蕨もちであり、そのような環境を提供することが真の蕨もち職人の仕事なのではないでしょうか。
何時までも同じものを複製して暴利をむさぼるような企業に金を払い続けることもあるまい。
ほかに無料で使えるOSってあるだろうか。GNU Hurdとか?
OSがUNIXなので当然のようにX Window Systemを使う。
ほかに無料で使えるX serverってあるだろうか。というかたいした知識は無いんだよ。
いろいろ。SawfishとかWindow Makerとかが一般的なんだろうか。GnomeかKDEを入れると一通りそろって手っ取り早いかも。
一昔前は大多数のパソコンユーザはワープロとWebとe-mailしか使っていないとか言われたもんですが。
ほかにもあるみたいだけども。SSLとJava scriptが使えないと話にならない場合もあるわけで。
いろいろ。腐るほどある。Vine LinuxでSylpheedをずっとつかってる。コアな人はMHとか使うんでしょうか。emacsマニアの人はMewとかWander lustとか?
いきなり素人に「TeXをつかえ!」と言っても話にならないわけで。
もとより使う機会が無いので良く知らない。gnumericはLaTeXの表を吐き出すのに何度か使った。グラフが描けなかったような気が。
OpenOffice.orgはお勧め。abi word, KOfficeにいたっては触ったことも無い。
魔法使いならgnuplotとTgifと何か数値計算用の言語とかエディタとか使ってLaTeX文書をちゃっちゃと仕上げてしまうのかも知れない。
フォトレタッチならばGimpが最有力か。ドロー系のソフトは何だろう。sodipodiぐらいしか知らない。簡単な図ならTgifでも。
WAREZだの違法コピーだのは生産販売元の被害だけでなくて、オープンソースのソフトウェアも割を喰っているなどという記事がLinux Magazineに載っていたような。オープンなソフトよりも高機能な商用ソフトのコピーが安価ないし無料で手に入るならば、オープンなソフトを使う利点は半減する。利用者や開発者が減ればオープンなソフトは死滅するしかないだろう。
一方で高い金を払って結んだライセンス契約で、ろくなサポートもされずに「それは仕様です」などと言われても困るので、それならばサポートが無かろうが情報を集めてトラブルに対処できる管理者がいれば済むようなオープンソフトを使ったほうがよっぽどコストの削減になるわけでありまして。
飽きたので打ち切り。
夢のような家だった。
備考:ブランコとハンモックとロッキングチェア、そしてC&W
男はまた、課せられた難題に悩んでいた。タイピングならば幼いころからやっているし、ブラインドタッチだって会得して久しい。決して遅くはないが、かといってそれほどまで速いという訳でもなかった。
しかし、彼が師と仰ぐハッカーはそれこそ稲妻のような速さで文字を打ち込む技を見せた。一体どうやってあのような速度を得ることができようか。
男は先ず、速いタイピングを意識して1分間に何文字入力できるかを試してみた。ところが、何度やってみても、100文字を越すことは無かった。男は絶望してがくりと頭を垂れた。と、その拍子におでこがキーボードの上に乗っかってしまったのだった。
ふと男が頭を上げると、スクリーンには夥しい数の[rtyfghvb]+。そしておでこにはキートップの痕が。
「すごいな。この量は。キーリピートの速度を上げていたらえらい事に……。キーリピート? そうだ。これだ!」
男はハッカーに言いつけを達成した事を伝えた。ハッカーは「よくやった。」と一言だけ褒めると、再び厳しい目つきになってこう言った。
「では次は打つことを学べ。」
「打つ……とは?」
「タイピングのことじゃ。見よ!」
そういってハッカーは男のほうにディスプレイを向けた。そしてキーボードに手を置くとおもむろにタンッと打った。打鍵の音は一つだけだった。
しかし、コンソールには幾つの文字が現れたことだろう。ハッカーは一瞬にして、十数行からなるプログラムを打ち出した。文字数にしておよそ百数十。しかも打鍵の音は一つに聞こえた。
男は前にハッカーの言ったことを思い出していた。処理効率のボトルネックは人間であると。男は今、一瞬で流れ行く文字列を読み取る術を心得ている。すなわちこれが人間に対する入力である。そして次は出力能力を向上する番である。
備考:何時まで続くんだろう。
男は家に帰った後、思案していた。しかし、いったいどう訓練したものだろう。確かにスクリーン上に文字が流れているのは間違いない。けれども一瞬で流れて消えてゆく文字列をどうやって人間が読み取ることができるだろう。
そう思案しているうちに男の妻が帰ってきた。
「ただいまー。episode 2見たきちゃったよ。」
「episode 2 ?」
「うん。ギブリーズの。いやぁ、CG使ったアニメってあまり好きじゃなかったんだけど、ああいう使い方なら納得できるねー。」
男はバッと立ち上がると、「それだ!」叫んでビデオテープの山を探した。
「確かこの辺に……。あった!」
男はテープを引っつかんでビデオデッキに向かった。そしてそのテープに記録された映画の、冒頭の宇宙空間を黄色い文字がスクロールして行く画面を何度も繰り返し見始めた。
一ヶ月で男は倍速再生で文字を読むことができるようになり、一年で早送りでも見られるようになった。翌年には10kbytesほどのファイルをcatで読めるようになっており。その翌年には100kbytes長のファイルを読むことができるようになっていたのである。
こうして男は3年をかけて、ようやく師の言いつけを達成した。男は喜んで再びハッカーの門を叩いた。
備考:まだまだ続くよ。
スクリーンに出力された文字はたった三文字だった。古代エジプトから人間のそばで着かず離れず生き延びてきた生物の名が、そこには在った。cat。
「ば、馬鹿な!?これでは長いファイルが読めないではありませんか。」
ハッカーの曰く。パーソナルコンピューターに於いて、処理効率を上げる上で一番のボトルネックになっているものは何か。それはコンピューターを操作する人間である。したがって、コンピュータのハードやソフトを増強するよりも、人間の入出力能力、思考速度などを強化することによって、飛躍的に全体的な処理速度が向上するのである。
「まずは見ることを学べ。catでsyslogが読めるようになったらまた来るが良い。」
備考:まだ続くよ
昔、ある所にコンピューティングで名を上げようと野心に燃える男がいた。幼いころからタイピングを覚え、ソースを読んで言語を覚え、独学で通信やデータベースを学んだ。
しかし、まだ何か足りない。この先に進むには何かが欠けている。先達の偉大なるハッカー達とは一線を画す何かがあるのだった。
男は思い立って、町一番と噂の高いハッカーの下を訪ねた。男は優れたハッカーに弟子入りして、教えを請うつもりであったのだ。
ところが、そのハッカーは堅物で有名だった。一度目はインターフォンで門前払いだった。ハッカーはちょうどプログラミングの真っ最中だったのだ。二度目は何とか面会を許された。ちょうど食事時にジョルトコーラとジャンクフードを持って行ったのが功を奏した。ところが、入門は許されなかった。ハッカーは左手に持ったハンバーガーを頬張りながら、右手でキーボードを操り、銜えたストローでジョルトコーラを啜りながらこう言った。
「俺は弟子は取らない。」
男はその日はがっくりと肩を落として帰ったが、まだあきらめなかった。三度目にハッカーの門を叩いた時、ハッカーは男の作ったプログラムのソースを眺めながらこう言ったのだった。
「まあ、それほどまでに言うなら、少しばかり見てやらんこともない。見たところ、一通りはできるようだな。一つ聞くが、ページャは何を使っている?」
「は?ページャでございますか?」
男にはハッカーの質問の意図が良く分からなかった。ページャがプログラミングの腕前に関係あるのだろうか。」
「そうだ。長いファイルを見るときに使うだろう。」
「lessでございますが。」
「lessか。使い古されてはおるが、良いページャだな。」
ハッカーは笑った。男はその笑いに何か重要なものが含まれているような気がして訊ねた。
「先生は何をお使いですか?」
ハッカーはそう言うと、タタッとキーボードを打ち、ディスプレイを男に見えるように向けた。そこにはecho $PAGER
とあった。ハッカーはにやりと笑うと、エンターキーを打った。
備考:続く
理想的な設定とは、幾らでも無尽蔵に話をでっち上げられて、なおかつそれによって全体の整合性が崩れることなく、いつ打ち切りになっても不自然でないような設定である。
SFが書きたくなったらSFを、ラブコメがしたくなったらラブコメを、精神世界に溺れたくなったら精神世界を。作りたいものを、作りたいときに、作りたいだけ作って、食べてゆく。理想的な世界だ。
備考:開店当時はいつも込んでいて入れなかった和風レストランが、今はもう閑散としている。
この時代の唯一の価値観とは、新しいものが新しいというだけで価値のあるものだと言う事であるらしい。なるほど、使い捨ての偶像と、作り捨てられたような音楽と、ミリオンセラーが中古屋に並び、名作は古臭くなる。まったく持っていい時代に生まれたものだね。僕らは。
何しろ、審美眼を持つ必要がない。何が良い物か、何が悪い物か、見分ける必要がない。ただ新しいものをひたすらに追いかけていけば間違いがない。芸術家を名乗る物は喰いっぱぐれない。技術も、才能も、経験も要らない。ただ、新しいものを作り続ければいい。
かくして、消費者は芸術を知らず、芸術家は芸術を知らず、何も生まず、何も作らず、何も残らず。
人間の散歩に猫を付き合わせるその神経が解らん。
備考:炒飯
男の前には、二つのおしぼりと二つのコップが置かれた。男の向かいの席には、まだ人がいない。
憂鬱な面持ちで、コップの水を飲みながら男は思った。「一人ですって言ったのに……。