何もないのなら何もないで良いとは思わないかね?
「ブザーがなりましたら3時でございます」彼女はそれを一時間も繰りかえした。
僕はもう疲れた。目の前のものに追われて本当にやるべき事がどんなにおろそかになっているか。一週間前僕は何をしていたかも覚えていない。それどころか、昨日教わったことすらも、いや、昨日何を教わったのかさえ覚えていない。
昨日はこんなことをやったような気がする。それは記憶じゃない。情況証拠からの推測だ。ぼくが寝ている間に世界がそっくり変わってしまって、朝起きると僕はそれに気がつかないんだ。確かにそうだったような気もする、などと自分に言い聞かせて世界を受容することしかできないんだ。
もう一度、目を閉じてしまったら、もう二度と目覚めないんじゃないかしら。やらなければならないことを抱えたまま向うへ行ってしまうのではないかしら。やめよう。きっと憑かれているんだ。
目覚し時計は言った。
「遅れますよ! 遅れますよ! 遅れますよ!」
彼は目覚し時計を見た。電車の時間までにはまだ余裕が有る。慌てず騒がず身支度を整えて行けば良い。彼はそう考えた。いや、彼でなくとも普通はそう考えただろう。
日常と言うものは恐ろしいものだと言うことを肝に命じておかねばなるまい。彼は昔、そう考えただろう。そしてまた今日、それを思うことになる。それこそが日常と言うものの真の恐怖と呼べるのではないか。
彼は家を出て、少しの異和感を憶えながら駅へ向かう。その異和感は駅についたときに頂点に達した。そして、自分の左腕を見て愕然とした。
彼は溜め息をついた。絶望や悲壮感や自棄をこらえて、彼はただ溜め息をついた。
彼は家に帰ると先ず目覚し時計を問い詰めた。一体これはどういうことなのか。目覚し時計はきょとんとした顔で
「私は何が遅れるかなんて言ってませんよ。」
と言った。
今日昼過ぎ、○○県△△市××商店街の牛丼屋の前で男性が倒れているところを発見されました。第一発見者は牛丼店の従業員で「食べてすぐ牛になるぞ。」と声をかけたところ反応が無かったので不信に思い救急車を呼んだと言うことです。
男性は急拠集中治療室に運ばれましたが、意味不明の重態です。現場から50メートル程離れた地点で凶器と思われるハリセンが見付かっており、警察では傷害事件と見て捜査を進めています。
神は言った。
「もしあなたが本当に、自分自身のためにならないむだな時間を費したくないと思うのなら、限られた時間の中で半端なことをやるか、限られた時間を過ぎてなお高みへ登ろうとするのか、良く考えなさい。」
彷徨える魂よ、安らかに眠れ。十時間ぐらい。
街の明かりは日付が変わっても未だ明るい。
願い事は一個につき1つだ。ずっとお願いしていたからってどうなるわけでも無さそうだよ。
願い事? 何か有ったかな……。
まぶしい道路のあかりを避けて、道路の下に潜り込む。
まあ、50こぐらいは見えただろうか。近くの自動販売機にはお汁粉がない。缶コーヒーで我慢の時だ。
寒いので帰宅。大きいのも見えたし、続けざまに降るのも見えたし。
誰か「願い事って、三回言わなきゃいけないんだよね。」
天砕寺「ん? 金金金!」
こころなしいそがしい。
不規則きわまりない生活をあなたに。夜寝て深夜起きているのは電気代の無駄か。そして、朝飯を喰って眠れ。
壷の中に赤い玉が4個と白い玉が7個入っています。壷の中から無作為に1つの玉を取りだすとき赤い玉が取りだされる確率はいくらですか。
それぞれの玉の大きさや材質に依ります。たとえば全ての白い玉の直径が壷の口径以上であるとき、硬い材質の玉は取りだすのが困難です。また、玉の大きさがそれぞれ異なる場合、無作為抽出に依る根元事象の可能性は同様に確からしくありません。よって、この問題を数学的に扱うことはできません。
彼、いや、あるいは彼女だったかも知れない。そんなことはどうでも良い。とにかくそいつは階段の中程で小さくうずくまって震えていた。
「なあ、そんなところにいると、目の悪い奴らに踏みつぶされっちまうぜ。」
そいつは答えなかった。ただ震えていた。そいつはこんな所に居るべきじゃなかった。もっと、俺の手の届かないような所に居なきゃいけない。もっと自由で居なきゃ。
そこに日が当たるにはまだずいぶん時間があった。ひょっとしたら、ずいぶん長い間そこで苦しんでいたのかも知れない。俺はそいつを手に乗せると日の当たるところまで連れていってやった。
体が温まれば少しは楽になるだろう。小さな体にとっては体温の低下は一大事だ。ましてや日の当たらないコンクリートの上なんて。
しばらくして
「どうだ?調子は。」
と俺は訊ねた。少しは良くなったようでそいつは少しばかり立ち上がって俺の目を見た。俺はそいつの尻の方を見て言った。
「おい、糞をするな。」
銀髪の男は静かに口を開いた。
「払い込み……ですか。」
先手を突かれて俺は慌てて答える。
「あ、はい。」
男は俺から紙を受け取って、なれた手つきで端を切り取ると脇にある機械に放りこんだ。
「10826円になります。」
と、男は言った。俺は札を二枚と硬貨を二枚、皿にのせた。
「200円のお返しです。」
そう言って男は見慣れたニッケル硬貨を二枚、皿にのせて返した。
はて、俺はいくら払ったんだっけ?
過ぎた時間がもどらないのは我々にとって幸福であったと言えよう。何しろ、元に戻ってやり直す必用が無いのだから。
やるべき事をやらなかった場合は、その代償に何かが待っていることだろう。しかし、まあたとえば日記を書くとか書かないとかそういうのは割とどうでもいい話であって、本当にやるべき事は代償を得ないための知的活動と言うか何と言うか。
お年玉の袋を振ったときにカサカサと音がしたら、それは嫌な一年になるだろう。クリスマスに髭もじゃの男が煙突から侵入して白い粉をまき散らして行ったり、空を駆けるトナカイの引くそりがビルに突撃したりしたら困る。
人の信条を踏み躙るのはよろしくないだろうが、そのよろしくないことをさきにやったのは彼らの方だ。だけどもやられたのはキリスト教じゃなくて仏教の方じゃなかったか。
「だから宗教戦争にするなって。」
「ああ、はいはい。」
この戦争は資本主義社会とイスラム貧乏人の戦いだ!
やめなさいって。
離れた相手と会話ができると言うのはそれは素晴しい事なのかも知れない。だけど、僕らはそれに縛られてはいないか。
呼び鈴は容赦なく僕を呼びつける。僕がどういう状態にあるのか呼び鈴は知りもしない。呼び鈴は何も知らない。何も知らない呼び鈴に対して、僕が事情を説明しなきゃいけないと言うのなら、僕はその点について縛られている。
僕が何も知らず、その呼び鈴を無視しても良いのなら。僕はそれから解放されている。しかし、それでは意味が無いんだ。その呼び鈴が僕にとって重要な呼び鈴なのか、僕にとって不愉快な(かつ相手にとってはなんらかの利益になるような)呼び鈴なのか、それが分からないのが問題なんだ。
古き良き時代の伝達方法を見てご覧。誰が送ってきたものか、誰に送ってきたものか、重要なものなのか、他の人が開けるべきでないのか、中にどんな書類が入っているのか、それなりに見て分かる。
或いはRFC821やら1939やらで定められた伝達方式で伝達された情報を眺めてご覧よ。そこにはあのいまいましい呼び鈴には無いようなものが色々あるんだ。
重要なのは僕らがそれを無視できると言う点だ。無視できる上に、見る情報を選別することができるような材料がある。それが重要な点なんだよ。分かるかなぁ。わかんねぇだろうなぁ。
ゲームと印刷ぐらいにしか使っていないモノをそれだけのために、その、等級を上げるというか何というかどうですかそれは。どうなんですか。一応こまめにデフラグ、こまめにSCANREG /FIXで使えてはいるんですが。