ゲーム分割                 トップページへ

 通常、初回から最終回迄で1試合ですが、傾向や勝負所を分かりやすくするために、一定の基準で分けて考える方法があります。

代表的な分け方

1)イニングで分割する方法

 イニングで分割する場合は、前半後半の2分割と3イニング単位の3分割の方法があります。分割の基準は、主に、双方の投手のスタミナや、打線の傾向で判断します。

 例えば、自チーム投手の不安定イニングが終盤の場合、前半15と後半69の2分割か、前半16と後半79の2分割が、目安になります。

終盤に不安定な場合、理由にもよりますが、一番多いのは、球威の低下や、制球力低下など、疲れによる乱れです。次に多いのは、相手打線が自チーム投手に、目が慣れてくる場合です。

 いずれも、前半のままでは抑えるのが困難でので、後半には、投手交代したり、配球を変える等の工夫が必要になります。この変え時の目安として、イニングを分割するわけです。

もちろん、実際の試合は流動的ですので、事前に心の準備をしておく程度の意味合ですが、何も考えずに対処するよりも、圧倒的に早い対処が可能です。後手、後手に回ったのでは、接戦を制する事はできません。

 3イニング単位の3分割の場合、終盤に狙い球を絞らせないために、序盤と中盤でも、配球を変えておき、終盤は打者によって配球を変えて、連打を浴びないような工夫をします。

 終盤に球威が落ちる場合は、回を追う毎に、必然的に変化球が増えますが、ストライクの大半が変化球では、それを狙われてしまいますので、序盤に変化球を多めにして、スタミナを温存し、中盤にストレートを沢山見せて、終盤に備える必要があります。

 この配球の考え方は、攻撃にも役立ちます。カウントを整える球と決め球との違いはありますが、良いチームほど配球には気を遣っていますので、必ず傾向があります。打者毎に配球を変える程の慎重なバッテリーでも、ピンチの時の配球や投手に疲れが見え始めた場合の配球は、打たせる(勝負する)球を、先に決めてから配球してくる事が多いものです。

 決め球の予測が出来れば、カウントを整える球の予測もしやすくなります。一般的に、決め球よりは、カウントを整える球の方が打ちやすいので、これを狙えば安打の可能性が高くなります。

2)打順で分割する方法

 イニングで分割する方法は、主に、投手に着目した方法ですが、打者に着目した考え方が打順で分割する方法です。

 1巡目、2巡目・・・と、なりますから、イニングに関係なく分割が可能です。当然ながら、配球は重要で、基本的な考え方は、イニングで分割する方法と同様です。

 イニングで分割する方法との大きな違いは、出塁数(率)を管理する事です。例えば、味方の得点力に対し、投手力に不安がある場合、最初から被安打数の上限目標を決めておき、それを元に、1巡目あたりの許容被安打数を算出します。

 仮に、見込める得点が3点だとして、2点以内に抑える為の被安打数の平均は、58となります。これを、1巡あたりに換算して、およそ1.5本〜2本となりますので、数本打たれても、これ以内に抑えれば、理論上の勝算は十分にあると言えます。

 何があるか分からないのが野球ですが、不安が大きいのは、良い事ではありませんので、この不安を軽減するための方法の一つと言えるでしょう。精神力の強い投手には不要かもしれませんが、そうでない場合は、ランナーが出ただけで平常心を失う投手も少なくありませんので、「まだ、大丈夫」と、思わせる工夫も大切です。

 この考え方は、15番の上位打線と69番の下位打線に分割する事も出来ます。強力な打線を相手にするような時は、特に有効な方法で、1巡あたり、15番を2安打以内、69番を1安打以内と言った具合に計算する事で、不要な緊張を抑え、平常心を維持して、最少失点に抑えるのです。

ゲーム分割のメリット

 ゲーム分割の考え方は、視野を狭めるのではなく、広げるためのものです。チャンスやピンチの場面では、そこで試合が決まってしまうような、錯覚に陥りやすいものですが、野球は、最終回まで戦って勝敗が決まるスポーツ(コールドを除く)ですので、最終回で勝ち越している事が大切です。

 一番怖いのは、最小失点が可能な場面で、大量失点をしてしまう事ですが、その原因の多くは、小さなピンチで、必要以上に警戒しすぎる事です。現実が厳しい場面なら、理屈で平常心を維持した方が、悔やまれる結果は少なくなるでしょう。

 大量失点ほどは目立ちませんが、1点足りなくて負けてしまう場合、十分にチャンスが有った試合である事が多いものです。つまり、取れるはずの点数が、取れなかったために負けてしまうのです。


もったいない例

 初回、先頭打者がセンター前ヒットで出塁。2番が四球で、12塁。Wスチール成功で23塁。3番にも四球で、ノーアウト満塁。

 この例のイニング(初回)で、皆さんは、何点をイメージしますか?イメージの仕方で、実際に取れる点数も変わってしまいます。

戦術の例

 スクイズ・ヒット&ラン・積極的に強打・2ストライクまで狙いを絞り、じっくり

相手投手を分析

 先頭打者に出鼻をくじかれた影響が感じられます。どんな投手でも、初回から失点したくはありませんから、2番の選手には、コーナーを意識していたようですが、試合は始まったばかりで、投球リズムが取れていないようです。ノーアウト12塁で3番打者ですから、勝負所です。クリーンナップの3番を抑えるために、投手の意識は、配球に対するウエイトが大きくなっています。その隙を突かれて、Wスチール成功。今度は、パスボールも出来ない、スクイズも警戒が必要となりました。3番の四球は、甘く入って打たれるよりも、凡打を誘って四球もやむなしと言った感じでしょう。

 打者が4番ではありますが、とりあえず、守りやすくなった分、ちょっとだけ落ち着きを取り戻せる場面です。満塁ですから、内野ゴロを打たせてホームゲッツーを狙いたい所ですが、相手は4番、簡単には凡退してくれません。ストライクを先行させたいものの、スクイズの可能性もありますので、スクイズ警戒を兼ねて、凡打のための布石として12球、見せ球を使いたい場面です。

 この段階では、0点に抑える事も可能ですので、相手は、考えに考えて配球してきます。つまり、相手は慎重になっている場面です。スクイズ無し、と判断して初球から勝負するにしても、いまだに、投球リズムの取れていない投手ですので、狙ったコースを外す可能性は少なくありません。

 どんな作戦でも、成功すれば、それなりに点が取れます。2連続スクイズで2点を目指すのも、方法の一つですし、ヒット&ランでも、成功すれば得る物は大きいのですが、簡単にストライクが来る可能性は高くありません。もし、失敗すれば、相手を助ける事になってしまいます。

 凡才先生なら、ここは、好球必打でじっくり行き、狙う点数は、4点です。考え方としては、満塁のランナーは、得するおまけです。ランナーのおかげで、抜けやすい前進守備になっていますし、打者が出塁してくれれば、必然的に点が入ります。つまり、走者を帰すための打者と考えるのではなく、打者を出塁させるための走者と考えるのです。4番か5番のどちらかがヒットを打てば、どちらかがアウトになっても、2点入って1アウト12塁です。67番で勝負しても良し、6番が送って7番でもう一勝負でも良しです。状況からして、このシュミレーションが実現できる可能性は、十分にあります。それでも、常にゲッツーの危険はあります。しかし、運が味方してくれないものを考えても仕方ありませんので、それは、そうなってから考えるようにしています。

 分かりやすいように、具体的にシュミレーションしましたが、実際の凡才先生のイメージは、いたって単純で、相手が苦しんだ分だけ点が入ると考えています。続けて四死球になったり、4番がタイムリーを打てば、更に、投手の制球が難しくなりますので、しばらくは、じっくりです。投手が開き直って、打者に集中する意識が高くなったり、自滅に気づいて、向かってくるようになったら、バントやラン&ヒットなどの戦略的な攻撃を仕掛けます。逃げる者は追わない、向かってくる者は撃退するのが、基本路線です。

 取れる時には、取れるだけ取る。選手に、この意識があれば、自然に、多くの点が取れるゲームメイクが出来るようになります。


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