打撃姿勢と腰の回転 トップページへ
腰の回転には、多種多用な指導方法と理論があります。「腰は回転させるな」とか、「腰を思い切り回転させろ」とか、これだけ見ると、相反する理論のようですが、前提が違うだけで、どちらも間違っている訳ではありません。
腰の回転の主な目的は、「打撃姿勢の確保」と「スイングにパワーを付加する」の二つですが、えてして「スイングにパワーを付加する」事に意識が行き過ぎる選手が多く、この過剰な意識を抑止する手段として「腰は回転させるな」と、指導される事があります。
確かに、「スイングにパワーを付加する」事は、打者にとって非常に魅力的ですが、この意識が過剰なために結果を出せない選手は非常に多いのが実情です。
飛距離の優先順位
腰の回転は、スイングにパワーを付加しますが、優先順位は高くありません。
第一順位 タイミング
第二順位 ミートポイント
第三順位 打撃姿勢
第四順位 腰の回転速度
プロのホームランバッターがよく口にするのは、タイミングとミートポイントです。次の参考動画では、タイミングとミートポイントへの集中力の高さを意識してご覧下さい。
参考動画 パ・リーグ 完璧なホームラン集 2014 今年のホームラン前半戦総集編
123のドンピシャでフルスイングだけではありません。中には、泳いで当てただけに見えるものや、差し込まれて苦しいスイングもありますが、タイミングとミートポイントへの集中力が、無意識に選手の体を動かしています。つまり、好打者にとっての理想的なバッティングは、タイミングとミートポイントがコントロールできるバッティングと言えます。
タイミングとミートポイントをコントロール
打撃姿勢や腰の回転が完璧でなくても、タイミングとミートポイントが良ければ安打の可能性は高まり、飛距離も出ますが、結果の安定しない選手や、中々結果を出せない選手の多くは、打撃姿勢や腰の回転が単調になっている事があります。
打撃姿勢は、良い方が打ちやすいと言う程度の事ですし、腰の回転は強い方が、飛距離が出やすい程度の事です。この意識が過剰になると、タイミングとミートポイントへの意識が低下し、安打そのものの可能性が低下します。
良い結果を出せるようになった選手の話を聞くと、共通した意識の変化が感じられます。結果が出せなかった頃は、常に100点を目指していたのに、結果が出ている現在は、実際のボールに合わせて、80点のバッティングしか出来そうにない時は、80点をやりきる。60点のバッティングしか出来そうにない時は、60点をやりきる。安打に出来そうにない時は、打つのをやめるか、ファールにする。と言うように、100点でなくとも良いと考えるようになっている事です。この柔軟な意識が、柔軟なバッティングの元になっているようです。
この柔軟な意識は、選手の打撃成績に劇的な変化をもたらします。1割台しか打てなかった選手が、突然3割を越えたり、内野にしか飛ばなかった選手が、長打を連発するようになったりします。この、好調な選手たちがイメージしている「打撃姿勢や腰の回転」は、そのものが目的ではなく、タイミングとミートポイントに対する手段になっている事です。
外角打ちで、グリップを外にだすには、腰の回転を最小限に抑えなくてはなりませんし、内角では、十分に回転させなくてはなりませんが、実際の打席で、打撃姿勢と腰の回転が100点の状態で打てるのは、まれです。この誤差を、最初から計算に入れて、素振りの段階から、80点の場合や60点の場合も想定した練習が必要となります。
練習方法
素振り
結果の出せない選手の素振りの多くは、タイミングが合っている事が前提になっていますので、タイミングが合わなかった場合も想定して素振りをしましょう。
一般的な素振りの分類
コース
4種類(ストライクゾーン付近を4分割か、四角)〜9種類(9分割)
球種
3種類(直球、スライダー、シュート)〜9種類(直球、スライダーの縦横と大小、シュート、フォーク、チェンジアップ、微妙に変化する癖球)
通常は、この範囲だと思いますが、これに、タイミングとミートポイントを加えます。
タイミング
3種類(早い、ピタリ、遅い)〜5種類(早すぎ、早い、ピタリ、遅い、遅すぎ)
ミートポイント
3種類(前、ピタリ、後)〜5種類(前すぎ、前、ピタリ、後ろ、後ろすぎ)
これらを合わせると、108種類〜2025種類もの素振りが可能です。時間で言うと、108種類で10分〜15分、2025種類では、3時間以上になりますが、毎日3時間では現実的ではありませんから、素振りに使える時間の中身を、維持と改善に分けて考えましょう。
維持は、今出来ている事を忘れないようにするための素振りです。(スランプを防ぐには絶対に必要です)改善は、苦手な事を克服するための素振りです。交互に組み合わせたり、ランダムにしたり、組み合わせ方は自由ですが、最後は、今出来ている事を忘れないための素振りで締めくくり、良いイメージで終わるようにしましょう。
才能の無さを練習でカバーしてきた凡才先生も、一度だけ連続3時間の素振りをしましたが、ふらふらになりました。実際に素振りに使える時間は、1日30分〜1時間程度でしたので、似ている打ち方を統合したり、全体を3〜4日に分割したりして、全体をカバーしました。
凡才先生が目指したバッティングは、想定できる全ての球種を打てるようになる事です。分かっていれば、どんな球でも打てるのなら、相手投手が高確率で投げてくる球や、決め球を狙っておけば、特別な才能を持っていない自分にも打てると考えたからです。実際、配球が多彩な相手には、手を焼きましたが、ファーストストライクをアウトローで取りに来る投手や、2〜3球目に、変化球を上から落としてストライクを取りに来る投手は、楽でした。制球の良い投手で、こんな配球なら、ボールの方からバットに当たってくれる印象さえありました。
投手は、ストライクゾーンを広く使うべきですが、打者は、2ストライクまでは、打つべきゾーンを狭くして、成功率を上げた方が、良い結果になるでしょう。
ティーバッティング
素振り同様、タイミングとミートポイントに幅を持たせますが、投げる人が意識的に変化を付ける事が大切です。
*注意*
この練習は、打撃ミスしやすいので、絶対に人にぶつけない自信が付くまでは、必ず、柔らかいボールを使用して下さい。
フリーバッティング
フリーは実際の打席に一番近い練習ですので、目的をはっきりしておきましょう。目的と言っても、単一な目的では、実践的ではありません。3つ以上の多彩な切り替えもありますが、成功率を考えると、メインとサブの2種類が効果的です。
ここでも、タイミングとミートポイントに幅を持たせますが、メインは、はじめから意識の高い状態にありますから、タイミングさえ合えば、良い打球になる可能性は高くなります。サブは、ミートポイントのミスをしやすいので、ミートポイントへの意識を高めにしておきましょう。
目的の例
1) メイン
内角以外は丁寧にセンター返し
サブ
内角はファールでもいいから、しっかり打つ
2) メイン
高め以外は強打
サブ
高めは上から叩く
3) メイン
ストレートは強打
サブ
変化球はセンター返し
メインとサブの意識の比率は、状況により変えると効果的です。例えば、1ボール1ストライクの場面では、メイン:サブ=7:3 だったり、3ボール1ストライクの場面では、メイン:サブ=9:1 と言った感じです。外角低めに絶対の自信がある打者なら、初球をメイン:サブ=10:0 にする事も出来ます。
このように、意識的に実戦を想定した練習をしないと、練習では良くても、本番に弱い選手になってしまいます。状況に応じた的確な判断は、日頃の練習で習慣付けておく事が大切です。
沢山練習しても、それだけでは上手になりません。実戦のつもりで練習した分しか、結果は出せないと思って下さい。
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