フライの捕球                     トップページへ


 これも、凡才が苦手な分野の一つですね。フライの追い方にもコツは有りますが、ゴロとは違い、理屈で覚えなくてはならない事が多いので意外に厄介です。まずは、ポイントを並べてみましょう。

バットに当たった瞬間に走れ
バットに当たった瞬間に落下点を予測し、走りながら修正
落下点のやや後ろから回り込め
風の影響を事前に把握し、距離に置き換えておく
正面の打球は右反転か左反転かを事前に決めておく
全力で走っても、目の高さを変えない
他の選手の位置と守備範囲を事前に確認しておく
その他

 沢山有るので、これ位にしておきますが、凡才は聞いただけで混乱してしまいますね。正直な所、天才秀才と凡才の間で、フライ捕球の差は、縮めにくい技術の一つですので、指導される方の苦労も多い事でしょう。
 凡才は、ポイントの幾つかが出来ていない訳ですが、やれと言われても、なかなか出来ないのが現状です。沢山ノックを打って数をこなす事で、少しずつ上手くはなりますが、限られた時間で、より上達してもらう為には効率の良い練習が必要ですね。この項では、初心者を前提に、順を追って練習方法を紹介しますので、選手の状態に合わせて、必要と思われる部分を参考にして下さい。

1) 姿勢維持
 凡才の多くは、フライが上がると上体が起きてしまいます。上を見上げる時の自然な行動なのですが、打った後に目線の高さが変わるわけですから、上がる速度や距離感に大きく誤差が出てしまいます。これでは、落下点予測など不可能ですので、いくらノックしても上達しません。まずは、目の高さを変えずに走る事をしっかり練習しましょう。

練習方法の例
 上体が起きてしまう選手の多くは、スタートの意識に問題があります。見た目には、もたもたしているのですが、本人は早く落下点に行きたくてしかたありません。この、「早く落下点に行きたい」意識こそが、上体が起きてしまう最大の原因です。色んな選手に色んな表現で指導してみましたが、比較的多くの選手に効果が有ったのは、「忍者走り」です。忍者は物音を立てずに走るイメージが有りますので、忍者になったつもりで「静かに早く」打球を追うのです。うまく行けば、スタート前の余分な力が抜けてスムーズなスタートが出来るようになり、結果的に上体も安定します。選手によっては「が〜っとスタート」じゃなくて「すう〜っとスタート」だよ。なんて表現も結構効果があります。凡才先生の場合は、上手に出来るようになった選手に「これで君も立派な忍者だ」などと、冗談を言ったりします。このスタートの感覚は、盗塁にも大いに役立ちますので、ぜひ覚えて下さい。

2) 落下点予測
 落下点の予測は難しいですね。天才秀才の場合は数をこなせば自然に身に付くものですが、凡才は数の前に理屈が必要です。まずは、打者目線でいきましょう。「引っ掛けた」・「詰まった」・「しっかり打った」と、まず3種類に分けます。その中間もあるわけですが、3種類に分けるのは、選手に打者のスイングをしっかり意識してもらうためです。
 「引っ掛けた」・「詰まった」場合は飛距離が出にくく、「しっかり打った」場合は飛距離が出やすい。これを前提に、打った(ノックの場合も)瞬間に落下点を予測し、そこまで全力で走る練習をします。最初からうまく行くわけではありませんので、まずは打った瞬間にスタート出来るかどうかに注目して下さい。この練習は、「捕れる」「捕れない」ではありません。自分の予測と実際の落下点の誤差を小さくするのが目的ですので、落下点に近づく毎にほめてあげましょう。どのレベルの選手であっても、この練習の目的は落下点予測ですので、良いスタートを第一としましょう。

3) フライの追い方
 先に落下点予測の練習をしましたが、今度は、そのポイントに上手に移動するためのコツです。これは、外野だけでなく内野の選手にも重要なポイントになります。
 正面以外のフライは、その方向に(右なら右へ)移動するわけですが、予測した落下点に直線で追うのは危険です。風もあれば、打球に回転もありますので、常に微調整が必要です。この微調整を前提にしなければ上手な守備とは言えません。フライの追い方の鉄則は、「予測した落下点に後ろから回り込む」事です。その理由は以下の通りです。

理由1、打球が予想以上に伸びた場合は、結果として直線的になり、後方の守備範囲が広くなります。
理由2、目視しやすく(打球が見やすい)、グラブも出しやすい。
理由3、捕球後の送球がしやすい。
など

 追い方のイメージは、予測した落下点の少し後方に向かって走り、打球が近づいてきたら微調整する。こんな感じが良いでしょう。追い方が良くなったら、捕球後の送球方向を前提とした練習にも役立ちます。

 正面のフライは、距離が(前か後ろか)分かりにくい事と、打球の回転や風により軌道が変わる事などから、事前に反転方向を決めておく必要があります。一般的に、右打者なら左、左打者なら右が良いわけですが、打者の状態や風によっては逆が良い事もあります。変化の大きさは、流し打ちした打球やトップフライの変化が特に大きいので、頭に入っていないと取れるものも取れなくなってしまいますので、変化の大きい打球に対しては、先回りするくらいの意識が必要です。

4) フライ捕球の落とし穴
 ライナーを含め、フライの捕球は、キャッチボールとは違います。一度グラブに入っていながら、掴みきれずに落としてしまう事は、誰にでも経験があるでしょう。高校生でさえ、意外な落球をする事があります。特に、体から遠い位置で捕球しなくてはならない場合は、打球の勢いや回転で掴みきれない事があります。
 フライは、捕れるか捕れないかで戦況が大きく変ってしまう事が多いので、何とか捕れるようになりたいですね。そこで、落球しにくいフライ捕球のポイントです。打球の勢いや回転を止めなくてはなりませんので、以下のコツをマスターしましょう。

回転を止める
 キャッチボールの時は、主にグラブのポケットで捕球しますね。人が投げたボールならこれが理想的ですが、打球は激しく回転している事がありますので、網を使います。網を使う事により、グラブ全体でボールを包み込んで、飛び出しを防止し、回転を止める事が出来ます。網といっても、ポケットよりボール半個分程度、網側であれば十分ですので、「親指と人差し指でボールを挟む」こんなイメージが良いでしょう。特に、トップフライやライナーでは抜群の効果を発揮しますので、ぜひ、覚えて下さい。(ショートバウンド捕球のイメージでも使えます)ただし、ポケットよりも持ち替えにくくなりますので、慌てずにしっかり持ち替えてから送球する習慣を付けましょう。

打球(主にライナー)の勢いを止める
 強い打球は、その勢いで球がグラブから飛び出さないように、勢いを吸収しなくてはなりません。分かりやすく例えると、ジャンプした後の着地のようなものです。着地では、強い衝撃を吸収するために、膝をバネのように使っています。捕球での主体は、肘ですので、肘が使えるように捕球しましょう。プロのように守備のうまい選手は、正面のライナーをバックハンドのように使います。グラブと肘が体の前にきますので、肘から先を、打球の勢いを止めるバネに使う事ができます。さらに、打球の勢いを止める動作が、そのまま送球動作になるため、捕球後の動きも軽快にこなす事ができます。

5) 捕球後の送球予測
 守備位置の考え方と同様に、どこに送球したら良いのか事前に確認しておく事がとても大切です。投手が投げる前に、ゴロ・フライ・抜けた場合などを想定しておくと、「最低限止めれば良い」のか、「最短時間で送球する必要があるのか」を、捕球する前の早い段階で判断できるので、捕球・送球の処理を正しく行う事ができますし、自分が捕球者ではない場合でも、捕球者に適切な声掛け(アドバイス)が出来ます。これが出来るようになると、捕球後にきょろきょろ見回すことなく、瞬時に適切な送球が出来るようになりますので、うまく行った時には、チームのピンチを救う「超ファインプレイ」になる事もあります。

6) フライへの飛び込み(ダイビングキャッチ)
 内野はどこにフライが行っても、捕れる可能性があるのならば飛び込んで構いません。しかし、外野が飛び込む場合はリスクがあります。シングルヒットが3塁打になったのでは良い判断とは言えませんね。ピンと来ない人のために、少し例を紹介しましょう。(例の前提として、飛び込めば捕れる可能性がある場合)

 打球
ライト − セカンド後方への小飛球(ふらふらと上がった打球など)
レフト − ショート後方への小飛球
センター − 正面の小飛球

 上記の打球では、他の選手がカバーできますので、殆どの場合は飛び込んでかまいません。例外として、2アウト以外でランナーが2塁にいる場面では、飛び込んだ結果、打球がそれて2塁ランナーが一気にホームインしてしまう事がありますので、「最終回の裏で同点」のように、絶対に点をやれないような場面では、大きなリスクになります。(2アウトの場合は、ランナーが一斉にスタートするので、捕りに行くしかありません)
 ライト線やレフト線では、他の選手のカバーは時間が掛かりますので、必ず止めなくてはなりませんが、飛び込んではいけないわけではありません。ノーバウンドで捕れると思って走った場合でも、回転や風でノーバウンド捕球が困難になる事もあります。捕球直前に、こんな事態になった場合は、中途半端なプレイをせず、そのまま突っ込んで下さい。ノーバウンドで捕れると思うくらいですから、ノーバウンドが無理でもショートバウンドなら十分可能性があります。「ノーバウンド捕球」の目的を「止める」にシフトするだけです。特に、ライン際の打球は早い事が多いので、迷っている暇はありません。最初にやろうとした事が出来ないと判断したら、次にやるべき事を全力でやりましょう。

 他にも色んな場面が有りますが、イニングと点差を考え、やってはいけない事を確認した上で、積極的な守備をしましょう。


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